お待たせいたしました、次話投稿します!!
「ぃぃいいいやっほーーー!!」
大忙しで地下にあるという大図書館の方へ、パチュリーを伴って走っていると、遠くからドップラー効果を伴って、誰かがやって来る事に気づいた。
見れば遠目ではあるものの、遠方より何かに跨った白黒の服をきていると見られる少女らしき姿が、蝋燭に照らされながら図書館の方に向っているのが分かる。
「――やれやれ、急がないといけませんね。かなり速いですよ彼女は」
「……はぁ、はぁ。む、むきゅんむきゅん。……だ、大丈夫よ。まだリミットはあるわ」
魔法で飛んでいると思しきパチュリ―が、変な音を出しながらイオの後ろでそう告げた。
そんな彼女に、ちょっぴりいやな予感がしたイオは、
「……あの、大丈夫なんですかお体」
「え、ええ。ちょっと、ね……喘息だけど」
「駄目じゃないですか!?」
せき込みながら告げられたその言葉に、イオは吃驚して突っ込んでしまう。
慌てて彼女を押しとどめながら、
「ちょ、いいから休んでいてください!倒れられたら僕が怒られますって!」
「だ、大丈夫よ、今日は調子がいいし…………多分」
「最後の一言で台無しだー!?」
絶対に休んで下さい!とイオはやや強引に近くにあった客室と思しき部屋に飛び込むと、
パチュリ―をベッドに寝かせ、大急ぎで白黒の服を着た少女の向かった方向へ、全速力を以て追いかけ始めた。
「あ!ちょっと……もう、話を聞きなさいよ」
きっちり寝かせられる格好になったパチュリ―が慌ててイオを呼びとめようとするが時すでに遅し。
仕方なしにこの部屋で休んでいると、咲夜がいきなり現れた。
「パチュリ―様?大丈夫ですか?」
「ええ……大丈夫だと言ったんだけどねえ。イオに強引に引きとめられちゃったわ。……全く、私だって、たまには体を動かしてるのに」
何処となく不機嫌そうになりながら、パチュリーはイオに寝転ばされた状態で文句をぶつぶつと言う。
そんな彼女の様子に、咲夜は苦笑して、
「体を労わって下さっているんですから、そんな風に言わないで上げてください。彼はああ見えてかなり紳士なんですから」
「…………そんなの、分かっているわよ」
それでもやっぱり、パチュリーは不機嫌にならざるを得ないのであった。
―――――――――
「――ここ、か……!!」
バタン、と白黒服の少女を追った先にあったドアを開き、イオは目的地と思われる部屋へ入って行った。
――そして、すぐに驚愕の表情を浮かべる事になる。
「うわ……なんだこれ」
眼の前に広がっていたのは、ひたすらに広大な数多くの蔵書が収められた図書館だった。
入口から見える範囲は元より、よく遠くを眺めてみると、どうも、視界に入る以上にこの図書館は広大であるようだ。
好奇心が湧き、思わず近くにある本を手に取りかけて、
「と、いけない」
先程入って行ったと思しき少女を追わなければと、きょろきょろとイオが姿を探していると、
「よしよし、今日はなぜか知らないけどパチェも美鈴もいなかったし、大量にゲットなんだぜ♪」
そう言いながら、恐らく盗ったと思われる大量の蔵書が詰まった袋らしき物を肩にかけながら一人の少女がやってきた。
先が曲がったとんがり帽子に、白黒のモノトーン調のエプロンドレスを着た少女。
一眼見て、目的の人物らしいと直感を抱きながら、
「――ちょっと、そこのお嬢さん?何をしているのかな?」
と、声をかける。
突然、聞こえてきた声にビクリと反応を返し、彼女が慌ててこちらの方を向いた。
「お、お前誰だ?紅魔館の奴じゃないな?」
何時の間にか(と彼女は思っている)現われていた、蒼紺色の髪と金色の眼を持つ青年に、彼女は恐る恐るそう尋ねる。
「……そう、だね。とりあえず……今言えるのは、この紅魔館の館主に雇われた何でも屋という事くらいかな。イオ=カリストと申します。以後よしなに……そして、お休み」
「――!?」
聞き覚えのある『何でも屋』という言葉、そして特徴的なその容姿が一瞬にして消えたのを知覚し、肌が粟立つとともに咄嗟に彼女は魔力で補強した箒で迎撃した。
直後、ギリギリの所で彼の一撃を受け止めきる事に成功する。
「……んー、そんなに遅く振りぬいたつもりはないんだけど……やれやれ、やっぱり腕が落ちたかなあ。結構休んでたし」
ギリギリ……と箒と刀が拮抗する中、イオがのんびりとしかし残念そうな面持ちでそう呟いた。
その言葉に、彼女は血の気が下がって行くような感覚を覚えつつも、
「……く、こんな力持ってるくせに、腕が落ちただって?何の冗談だ」
「まあねえ……レミリアさんと戦った後、怪我やら筋肉痛やらで結構ベッドの上だったしね。――と、それより君の名前、そういや訊いてなかったね」
「はっ。――霧雨魔理沙。至って『普通の魔法使い』だぜ!」
イオの言葉にそう言い返すと同時に大きく飛び下がる。
腰の辺りをごそごそと探りながら、何やら不思議な機構をしている、魔力が感じられる道具のようなものを取り出し、こちらに向けた。
「お前がパチェとどんな関係なのか知らないが、邪魔するようなら遠慮なくぶっ飛ばすまでだぜ!」
「――言ったね?じゃ……スペルカードルールで戦ろうか」
あ、ちなみに五枚ね。
その言葉と同時に、イオはするりと空に浮かび上がると、次々に木や雷、そして風の弾丸を打ち出していく。
「おわっ!?い、いきなりはないだろう!?」
「パチュリ―さんの事も考えずに、盗みに入るような子はこれで十分だよ」
慌てる魔理沙に、イオは淡々と弾幕を張りながらそう言うが、彼女はそれに笑って、
「はっ。違うね。私はただ、死ぬまで借りているだけだぜ!!」
言葉の応酬がなされ、しばらくの間イオと魔理沙の間で弾丸が飛び交った。
撃って、避け。撃ち返す。
「――さて、じゃあ僕から行こうか」
一瞬弾丸が止まったところで、イオは後方に大きく飛び下がると、光輝くカードと共にスペル宣言をした。
――木符『木人形=戦乙女形態(ウッドゴーレム=モード・ヴァルキュリー)』――
レミリアとの初戦で用いた、ウッドゴーレムの召喚スペル。
木で作られた戦乙女たちが、次々に突撃槍に大気の渦を纏いながら突貫していく姿を眺めつつ、イオはどんどん彼女達を創造していった。
休みなく襲いかかって来るヴァルキュリー達に、しかし魔理沙は箒に飛び乗り危なげなく避けていく。
そうしてよけながらも彼女はイオの事を忘れることなく、魔力で構成された弾丸を撃ってきた。
星型や光の球体が主にあるその弾幕達は、見るからに派手であり美しさを競う弾幕ごっこにおいては最高に近い弾幕であろう。
だがしかし、イオはそんな弾幕など歯牙にもかけずにグレイズをしまくっていた。よく見れば紙一重の部分を、持前の瞬発力であろうか、次々に避けるその様は、『疾風剣神』の異名面目躍如といったところだろう。
「ちょ、避けるスピードが速いって!何をすればそんなに速くなるんだぜ!?」
彼女にとって予想外だったのか、慌てたようにそう叫ぶと、
「ああもう、いっぺんぶち当たれ!!」
――魔符『スターダストレヴァリエ』――
箒に飛び乗り、イオに向って突貫してきた。
だが、そんな見え見えな攻撃などイオの敵でも何でもなく、
「――よっと」
結果として彼は何でもなさそうに避けたのである。
楽しそうに笑いながら、魔理沙に向って、
「ほらほら、当ててごらんよ。でないと、君負けちゃうよ?」
などと言いながら挑発していった。
「うざい!どっかのブンヤみたいにすげえうざい!!」
「あっはっは、ほらほら行くよー!」
両者言い合いをしながらもお互いに距離を取り、ほぼ同時にスペルカード宣言。
――雷遁『雷神之鎚=収束型(ミョルニルスパーク=レーザー)』――
――恋符『マスタースパーク』――
突如として二人の掲げ持つカードから、同系統と思われる極太のレーザーが照射され、ほぼ同時に激突した。
互いに拮抗しているそれらの光線に、
「く……!くそ、なんてやつだ……!?」
「んー……ちょっと、こりゃきついね」
両者一歩も譲らず、互いの実力を認め合いながらも込める魔力をどんどん増やしていく。
そのまま両者ともスペルブレイクするかと思われたその拮抗は、だが、魔理沙の魔力が付きそうになる所で均衡が崩れた。
「――やっべ!ちょ、タンマタンマ!!?」
次第に押されていく自身の光線に、魔理沙は慌てるしかない。
しかし、
「あ――こりゃだめだ」
その言葉と共に、撃墜される音が響き渡った。
その機を逃さず、イオはフッと掻き消えると落下地点へと急ぐ。
その先にいた、今まさに地面へと激突しようとしている魔理沙は、体中からすすけたような煙を出しながらギュッと眼を瞑っていたものの、何時までたっても激突の痛みが襲ってこない事に気づき、薄らと眼を開け――直後、大きく眼を見開いた。
――目の前で、童顔ながら端正な顔立ちをした、イオの安堵したような笑顔があったからだ。
「な……!?ちょ、放せ変態!!」
「(ぴきっ)……言うに事欠いて変態?ねえ、魔理沙だっけ?ちょーっと、反省が足りないんじゃないかなー?」
御姫様抱っこされている事に気づいた彼女の叫びに、笑顔のイオのこめかみに、青筋が立った。
ただでさえ、命の恩人とも言えるパチュリーの蔵書を盗んでいる上、激突の落下から救ったのにこの扱いをされる。
いくら温厚なイオであってもこれには憤慨せざるを得なかった。
故に、
「O☆HA☆NA☆SHI、必要みたいだねえ……!」
凄くイイ笑顔でそう告げるイオに、かなり嫌な予感を感じ取ったのか、魔理沙が慌てて腕の中で暴れながら、
「は、放せ!何するつもりだぜ!?」
と、逃れようとして叫んだ。
だが、そんな彼女をギュッと抱きしめたイオはというと、相変わらずイイ笑顔で、
「――え?何するって……くすぐり?」
「――っひ!?や、止めろーー!!?」
広大な図書館に、魔理沙の悲鳴が響き渡ったのであった。
――――――――――
「――ふぅ」
汗をぬぐい、いい仕事したと言わんばかりに輝いているイオ。
そんな彼に、ようやく体調が戻ったのか図書館に入ってきたパチュリ―が声をかけた。
「…………えげつないことするのね」
視線の先でびくびくとけいれんしている魔理沙を見つめながらそう告げると、
「え、だってただでさえ犯罪行為してる上に、弾幕ごっこで打ち負かして落ちそうになったのを助けたのに、変態扱いされたんですもの」
――少しくらい、罰があったっていいですよね?
かなりのイイ笑顔なイオに、パチュリ―と傍について来ていた小悪魔の表情がひきつる。
中でも、小悪魔の方は痙攣している魔理沙が気になるようで、
「うわ……パチュリ―様、あれ、元に戻るのに結構時間かかりますよ?」
「でしょうね。……はあ、しょうがない。――こぁ?治しておいて」
どうしてこうなったとばかりに溜息をついたパチュリ―は、そう言ってこぁを促した。
彼女の意向を受け、一礼して魔理沙を運んで行く彼女を見送ってから、
「……まあ、依頼通りに止めてくれたのは助かったのだけど……他に、方法はなかったのかしら?あれでは、あの子のトラウマになってしまうわ」
ちょっぴりジト眼でそう告げ、こちらを見てくるパチュリ―に、イオは静かに笑うと、
「――逆に考えるんです。トラウマ植え付けて、そうそう盗もうとする気持ちを起こさせないようにすればいいんだと」
開き直ったような彼の言葉に、パチュリーは益々溜息をついて、
「そういう問題じゃないでしょうに……はあ、ま、いいわ。困るのはあの子だし、依頼を受けさせたこちらが文句を言うのはあり得ないわね」
やや仕方ない、といった表情を浮かべてから、すぐに真剣な眼差しになって、
「――さて、依頼である侵入者撃退をしてくれたからには、私の裁量の範囲で出来るだけの事はしてあげるけれど……何がいいかしら?」
フッと微笑みながらそう言われ、イオは考えるような表情になると、
「うーん……そう、ですねえ……。――あ、そうだ」
悩むような顔だったイオが、ふと、何かを思いついたような表情を浮かべる。
そんな彼に、一瞬首を傾げたもののすぐに、
「……なにかしら」
「ええ……あのですね。今、僕はある魔眼を有しているんですけど――」
イオとパチュリ―、そして戻ってきた小悪魔の三人でそう談笑していた頃、魔理沙の方はどうだったのかというと。
「――も、もうゆるしてくれぇ……!!」
とある一室にて、イオに操られた木の蔦に永遠にくすぐられると言う悪夢を見ていたのであった。
――合掌(ちーん)。