東方剣神録   作:上田幻

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第十九章「行き着くは人里の権力者」

――人里。

 あれからというもの、イオは来た道を飛んで戻りながら、時折妖精達を撃ち落としていきつつ人里に戻ってきていた。

 途中、道行く知人の顔を見つけては挨拶をしたり、世間話をしたりと時間を消費しつつ、寺子屋の所にまで歩いて行く。

 

――と、寺子屋まで来た時、イオは思わず足を止めてしまった。

 なぜなら、慧音がいつにないくらい満面の笑顔を浮かべながら腕を組み、仁王立ちしてこちらを見ていたからだ。

「……」

すぐさまUターンして、イオはその場を逃れようとした。

 

『あの笑顔はヤバい』

 

本能的にとも思えるくらいの直感が、イオを動かしたためである。

 

「――なぁ、イオ?なぜ逃げるのかな……?」

 

そして、この声が聞こえてきたと同時に、イオは大きく足を踏み込んで全速力で飛びだした。

(ヤバいヤバいヤバいーー!!?)

あんな笑顔の慧音、今までに授業の時にアホやらかした時しか見た覚えがない……!!

 だが、自分は何一つやらかした覚えは今回の依頼の中ではない筈!

(単に種をもらいに行って、そしたらどうしてか決闘の依頼を受けさせられる羽目になって、って、もしかしてこれかぁー!?)

あの時、本気を出して気符と魔眼の二つのスペルカードを開放した覚えがある。

 だが、そうでもしないと本当に命が危ない所だったのだ。どうしてその事で慧音が怒っているのだろうか?

「ちょ、慧音先生、なんでそう怒ってらっしゃる!?」

未だ笑顔のままイオを飛んで追いかけ続けている彼女に、イオが首だけ振り返りながらそう尋ねると、一瞬ぴくりとこめかみが引き攣った後で、

「……なぜ?なぜと言ったかイオ?それはお前も分かっているだろう……!!」

 

『あの魔力の波動!もう二度と出すなと言っただろうーー!!』

 

「ちょ、理不尽!?」

「何が理不尽か!もう、怒った。今日という今日は連続頭突きしてやる――!!」

「うひぃいい!!?」

必死になって戦ったのにこの仕打ち。まさしく無常を感じざるを得ない一幕であった。

 

――――――――

 

――慧音宅にて。

「……はぁ、痛かった……」

「す、すまなかった……まさか、幽香が襲いかかっていたとは……私の事をちゃんと言ったんだよな?」

「ええ、さっきからそう言ってます。全く、こっちは命の危険があったんですよ?なのに、こんな仕打ちされて……」

未だにひりひりと痛む頭をさすりながら、イオはジト眼で慧音をみやると、彼女はますます縮こまるようにして、

「ほ、本当にすまなかった。あとで、風見のにはちゃんと抗議をしておくから、それで手を打ってくれないか?」

「……はぁ、それでいいです。でもどうせ、幽香さんまた僕に決闘の依頼だしてくるでしょうから意味ないと思いますけどね」

もう何かに諦めたような表情で、イオがぶつぶつと言いつつもそう告げると、慧音は一瞬驚いたような表情になって、

「……また、そんな依頼を出すと言ったのか?」

「かもしれない、と言うだけですよ。どうも、僕と戦ったのがかなり楽しかったみたいで、すごくイイ笑顔で再戦したいなんて言ってましたから」

ごそごそとポケットを漁りつつそう告げ、ようやっとの所で幽香から手に入れてきた花の種を慧音に渡した。

「はい、慧音先生。これが依頼の種です。幽香さんの話だと、中の種、種類別に分けてあるからその通りにしてくれとの事でした。あと、説明書も在中です」

「あ、ああ……わかった。説明書の通りに育てる事になるわけだな?」

「みたいですね。僕も、幽香さんと戦った後、色々と野菜の種貰って来ましたし、それにも説明書は付いていましたから」

「ほう……珍しいな、あの大妖怪が種をくれるなど」

プライドの塊でしかないあの花妖怪は、人となれ合う事を特に嫌っていた筈だが。

 慧音が眼を丸くしてそう言うが、イオはそれに苦笑すると、

「いやいや、そう言う訳じゃないんですよ。元々、依頼は依頼である以上、この野菜の種を依頼の報酬にさせてほしいと頼んだんですから。おかげで、自給自足の生活ができそうです」

いやー儲かったなどとほっこりとした笑顔でそう告げるイオに、今度は慧音が苦笑して、

「全く、君はいつも突拍子もない事を平然とするな。……っと、そうだ。君があの太陽の畑に出かけている間に、一人君に客が来たんだ」

「およ?依頼の客ですか?」

「いや、恐らく別件だろう。というのも、『稗田』の者だったからな。多分、人里で活躍している君の事を聞きつけて、新たに『幻想郷縁起』に盛り込もうとしているんだろう。この人里の中ではトップクラスの権力者とはいえ、そんなにひどい事は言われないだろうから、会ってみたらどうかな?」

「『稗田』、ねぇ……先生、その当主の人、『幻想郷縁起』書いてる人……なんですよね?」

「ああ、阿求は私の生徒でもあるんだがな、元々の始まりを『稗田阿礼』という、この幻想郷の外に広がる世界、その国の一つの日本と言う所にいた人物なんだ。かつて、日本の歴史を編纂し、本にまとめ上げた傑物だよ。何でも、一度聞いた事をいつまでも忘れないでいる能力を持っていたらしい事は分かっている」

「……ふぅん、完全記憶能力、ということですか。でも、今代の人はその人の子孫になるんですかね?」

「いや、違う。そこが転生のからくりだ。――記憶を引き継いだまま、幻想郷の人妖達の全てを記述する為だけに、転生を許された人物なんだよ。とある神に取引を持ちかけて、そういうことになったらしい。今だと……そうだな、九代目に当たるのか。それくらい、年月と生命を犠牲にして、『幻想郷縁起』の編纂作業をしているんだ。ある意味、かなり長生きしている人間だと思ってくれていい」

(…………うん、ちょっと訳が分からない。何度聞いてもそうだけど)

たかが、人妖を記す為だけに、己が人生を犠牲にする。

 最初人里で住み始めたばかりの頃に聞かされたその話は、正直、イオにとって別次元の人物のように感じられたのだ。

 何せ、短い寿命の中において、それだけを人生の目標に定めている事自体が、あまりにもぶっ飛んだ考えの様にも思われた。

(……人間ってさ、結構わがままだから、楽しいことを追求したい気持ちだけで生きてるのかなと思ってたんだけどねえ)

どうにも、話が合うのかすら、不安に思えてくる。

 とはいえ、客を待たせてしまうのも何なので、慧音にイオは訊ねてみた。

「……今、その人はどちらに?」

「ああ、もうお帰りになったよ。とはいえ、時間があればおたずね下さいともいっていたし、私の紹介状と地図を渡しておくから」

「ええ、ありがとうございます。それじゃ、待ってますね」

イオはそう言って一礼すると、慧音宅から一旦出て、子供達が遊んでいる広場へと向かっていったのである。

 

―――――――

 

――イオが本気で子供達と遊んでいる頃。

 慧音はしずしずと筆を走らせ、彼の紹介状と稗田邸までの道程を記した地図を作成していた。

 かたり、と筆を硯の近くにおき、ふぅ……と、深く息をつく。

(ふむ、出来たな。……にしても、阿求が幻想郷縁起の為に会いたいと言っていたそうだが……本当に、それだけなのかな?どうにも、イオの事だからまた突拍子もないことが起きそうで怖いな)

そして脳裏に浮かぶは、かの『御阿礼の子』に対する不安であった。

 むろん、彼女が元々病弱の身であまりこちらに来ることはないとはいえ、普段から接しているために性格はそれなりに把握しているから大丈夫だと思うのだが……それを覆しそうなのが、あのイオだ。 

 なにせ、どうも厄介事がその身に付いて回っているようで、大体騒動が起きる所にイオがいる、そんな雰囲気に人里がなりつつあった。

「しかも、当の本人はこっちの気持ちも考えずにいろんなことをやらかすからな……」

あのトラブル体質はどうにかならないだろうか。

 正直、慧音は阿求に会わせる事を望んではいなかったが、それだとこの人里の中で権力者であるあの家の者からして、とんでもないことだと眉をひそめられる可能性があった。

 ただでさえ、異人の象徴たる蒼き髪と金色の眼を持っている上に、細く見える腕から想像もつかないほどに強烈な斬撃を繰り出すのだから、長老衆などは彼らに代わってこの人里を統率するつもりなのかと、戦々恐々している者もいる。

 実際の集まりの中でそう言った者はいなかったが、婉曲的に告げたものは少なくなかったと慧音は記憶していた。

(……むぅ、本当にままならないな。あいつはそんなやつではないと言うに)

そう、イオは単に力を持っているだけであって、そんな大それた事は絶対に考えていないのである。

(『権力?あはは、そんなのあった所で使う気もないですし、そもそも他所者ですし』……か。己の本分をわきまえているのだろうな)

あくまでも移り住んだ外来人というだけであって、イオは楽しく生きていきたいだけなのだろう。

 普段のイオの態度からしても、その思いが如実に表れている事は疑いない事実だった。

「……とはいえ、なぁ……もし、対応を間違えれば、彼の『御阿礼の子』の家からも敵対されるかもしれないだろうし」

書き終わった地図や、紹介状を眺めつつ、慧音はしばらく悩むのであった。

 

――――――――

 

 革ひもで編まれた球体を蹴り上げ、イオは思い切りゴールにたたきこむ。

「――さあとんでけシュート!!」

「ちょ!?イオ兄ずるい!!」

あまりにも素早いその動きに、ついていけない子供達が一斉にブーイングをした。

 ふふふ……と、それに何故かイオは悪だくみしているような笑い声をあげると、

「……なあみんな?世の中にはこういう格言がある。――勝てば官軍、負ければ賊軍ってね」

「大人げなさすぎるよイオ兄!!?」

イオの剣技を学んでいる子供の一人が、そう言ってぽかぽかとイオを叩く。

「あっはっは、いやー楽しい!」

「――あまり、慧音を怒らせない方がいいんじゃないの?」

笑い声をあげているイオに、ふと、そんな声がかかった。

「およ?アリスじゃないか。今日は人形劇かい?」

「ええそうよ。……でも貴女の方は珍しいわね。今日は別に授業でも何でもないでしょう?」

呆れたように手を振ってから、物珍しげに人形遣いの魔法使い――アリスが、そう尋ねると、

「ん、今まで慧音先生から依頼を受けててね。子供達の教育の為にって、風見幽香さんから花の種を貰ってきてほしいって頼まれてさ……死ぬかと思ったよあれは」

るー、と目幅涙をこぼしながら告げるイオに、アリスはかなり驚いた表情になると、

「あのフラワーマスターにですって?……よく死ななかったわね」

「魔法使って幻作ってから最終奥義で切り裂いたよ。……おかげで、勝つ事は出来てもまた闘わされる羽目になったし」

うふふ……と暗い笑みを浮かべているイオに、周りにいた子供達はどん引きである。

 とはいえ、アリスはそんな様子を、以前彼の歓迎会でもある宴会でも見たことがあったために、早々驚く事はなかった。

「……それで、何時になくぼろぼろに見えるわけね……そういえば、確かにちょっと前にあの蒼の魔力の波動は感じたわ……かなり本気出したのね」

人形劇やって―、とアリスの服を引っ張りながらせがんでいる子供達を制しながらアリスがそう訊くと、イオは同じように服を引っ張られながら、

「そうでもないと、本気で死にかねなかったからねえ。何なのあの人、ほんとに戦うことしか知らない感じしかしなかったよもう」

愚痴るような言葉を紡ぎながら、イオはアリスに近づいて、人形劇の準備を手伝おうとする。

 すると、彼女はイオの手を制し、

「大丈夫よ。それより……教えてくれないかしら?貴方のゴーレム技術」

「……へ?まだ諦めてなかったの?」

「当然よ。私の生涯の目的とも言えるわけだしね」

きらーん☆と眼を輝かせ、イオにずいっとアリスは詰め寄った。

 一気に近くなったその距離に、若干イオが慌てながら、

「ちょ、近い近い……ていうかさ、言ったと思うけど、僕の場合能力に完全に頼りきって作ったものだし、あまり参考にならないと思うよ?」

「馬鹿言いなさい。既存のゴーレム技術と全然違うじゃないの。少なくとも、貴方のように木を媒介にして球体状にしたコアなんて、見たことないわ。私の場合、宝石とか、金属などでコアを作ることが多いのに、どういう手順でそうなるのか、知りたいのよ」

逃がさない、とばかりにぎゅっと服をつかみ、爛々とした眼でアリスは問い詰めていく。 その様子に心底から困惑したように頭を掻きながら、

「……弱ったなぁもう。――って、あ、慧音先生」

「……お前たち、もしかして恋人なのか?」

困惑したようにそう尋ねるは、地図や紹介状と思しき紙を持った慧音。

 いつになく近いイオとアリスの距離に騒いでいる子供達を抑えつつも、

「別に、お前たちがそうなら祝福はするが……あまり、人前でいかがわしいまねはするなよ?」

「――な、なっ!何を言っているの慧音!!」

顔を真っ赤にしつつアリスが猛抗議をしていると、イオも疲れたような顔で、

「そうですよ慧音先生。いくらなんでもその勘違いはないです。……ていうか、アリスにはゴーレム技術を教えてくれと言われてただけで、そんな関係じゃないですよ」

と、かりかりと頭を掻きながら告げた。

 完全に、アリスの事をそう言う対象においていないことが丸わかりである。

「……そうばっさりと言うものでもないと思うが」

「甘いですよ慧音先生。そんな事を言ってたら――」

「イオさんとアリスさんが恋人関係だと聞いて!!」

「――こういう馬鹿が飛び出てくるんですから」

ひょこっと、いきなり現れた射命丸に気を込めた拳骨を全力で叩きこみつつ、イオは疲れたようにそう言った。

 頭を押さえ、ごろごろと悶絶している射命丸に戦きながらも、

「そ、そうか……それはすまなかった。っと、これが紹介状と稗田邸までの地図だ。なくさないようにしなさい」

「ありがとうございます。じゃ、行ってきますね」

「あ、ちょっとイオ!?後で覚悟しておきなさい!」

慧音に一礼を、アリスには手を振り、イオは一気に飛びあがる。

 瞬く間に消えていったその姿を見送った後、アリスは今もなお転げ回っている射命丸に体を向けると、

「……さて、射命丸?いつどこで私達が恋人だなんてうわさが出たのかしら?」

と、眼が笑っていない笑顔で、周りに彼女が作りし人形を展開しつつ、問い詰めていくのであった。

 

―――――――――

 

「んー……この地図だと、ここら辺になると思うけど……」

人通りがまばらな人里内の道を行きつつ、イオは地図と周りを見渡しながらぼやく。

左側にそれなりに大きな邸宅が広がり、右側には商店街のように家々が立ち並んでいた。 改めてよく見れば、簡易的な地図ではあるものの、左側に広がる邸宅が恐らく稗田邸になるのではないかとイオが考えた所で。

「……でかすぎない?いくらなんでも」

恐る恐るそちらの方向を見やり、イオは若干戦いた表情でその邸宅を見上げた。

 言うなればイオの知らない外の世界にあったという、貴族の邸宅にも見えるその家は、絢爛さを抑えつつも、権力者としての威容を誇っているようにさえ見える。

(……まさか、こんなとこにあるとは思わなかった)

幾らこの人里で権力者としてあるとはいえ、此処まで大きな邸宅を所有しているとは考えなかったイオが悪かったのだろうか。

 とはいえ、やはり動かなければならないわけであり、

(そうなると……やっぱり、入口を探さないとだよねえ……)

余りに大きすぎて、塀が視界の端から端まであるとなると、かなり探すのが面倒になりそうだった。

「でも、行かないとねえ……どうしたって長老衆とかに睨まれそうだし」

たまに依頼を受けている依頼の中には、長老衆と思われるものもあるのだが、そのどれもが一見まともそうに見えて、その実彼を見定めているようなそんな気配を感じる。

 むろん、最近来たばかりである上、通常の外来人とは遙かに容姿も異なっている事に対する警戒なのだろうとは思うが、イオは流石に疲れてもいたのだった。

(……いくらなんでも地雷臭がするようなのばかりさせないでほしいなほんと)

明らかに政略結婚めいたお見合い話だとか、わざわざ年頃の少女がいる家などを使って農家の仕事を手伝わせたりしてフラグ建築させるなど、もってのほかである。

(あ、思い出したらムカついてきた)

全く、あの人たちは人の事を何だと思っているのだろうか。

 自然と足早になっているのを自覚しつつも、イオはきょろきょろと入口を探していく。

――しばらくして、やっとそれらしい門が見えてきた。

 前を固めている二人の門番に対し、イオは渡されていた紹介状を見せながら、

「……あの、慧音先生に紹介されました、イオ=カリストと申します。本日、こちらの稗田阿礼さんにお招きをいただきまして、こうして参りました」

不動の姿勢で立っていた二人の門番のうち、一人がイオの差し出した書類を手にしてまじまじと眺めると、深々と一礼して、

「お待ちしておりました、何でも屋のイオ様。只今、中にご案内いたしますので少々お待ちして下さい」

と告げると、もう片方に向って「後は頼む」「わかった。任せておけ」などと会話した後、ぱたぱたと何所か慌ただしく中に入って行った。

 むろん、流石に案内の者が来るまではどうにもならないわけであり、イオは残っていた門番のものに話しかける。

「僕が呼ばれた理由……ご存知だったりします?」

「む……申し訳ござらん。それがしは特に何も。……とはいえ、この人里で住まわれるようになったのならば、我が主の事についても知っていそうなものだが?」

何処となく、武人めいた空気を放っているその門番は、そう言って不思議そうにこちらを見つめた。

「ええ、それはそうなんですが……それ以外で、何かありそうだと思ったもので」

例えば、依頼であるとか、ね。

 穏やかに微笑みつつそう告げたイオに、一瞬その門番は眼をみはった後、

「…………なるほど、そう言う事もあり得るか。されど、申し訳ない。それがしは本当に何も聞かされておらぬのでござる」

重ね重ねすまない、そう言って頭を下げる門番に、イオは少し慌てて、

「いやいや、別に構いませんよ!そもそも、単なる僕の興味だけでしたから」

そんなに気にされる事はありませんって。

 そう言って、彼に頭を上げるように言っていると、もう一人の方が中から誰かと共に戻ってくる。

 気配に気づきそちらを見やったイオは、傍らに大きな花飾りの様なアクセサリーを頭に着けた、古風の着物少女を連れ立ってきた門番に、穏やかに微笑むと、

「おや、そちらの方が案内の方でいらっしゃる?」

「む?……ある「こほん!」……あい分かった。門番の仕事に戻るでござる」

一瞬、武人めいた雰囲気を持つ門番が、少女の方を向いて何かを言いかけたのに、いきなりもう一人の門番が咳払いをしてとどめた。

 なにやら、様子がおかしい事にイオは気づいたものの、すぐに彼女が一礼をして、

「では、奥の方にご案内させて頂きます」

という言葉に気を取られ、すぐに我に返ると、

「え、ええ。宜しくお願いします」

言いながら、イオは彼女の後を付いて行くのであった。

 

「――なぁ、雅氏殿。なぜ、主がわざわざ……?」

「さあな。多分、好奇心からじゃないか?あの外来人、かなり変人みたいだしな」

妖怪と共に住むあの青年を思いつつ、もう一人の粗野な雰囲気を持つ門番はそう言うしかなかったのであった。

 

 

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