東方剣神録   作:上田幻

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さて、龍人の身体的な能力とは……?


第二十四章「――顕れたるは龍に連なる一族の青年」

 

「……いったい、何をしたらそんな姿になるんだよイオ」

恐怖だろうか、顔をこわばらせた状態のまま、魔理沙がそう尋ねると、

「いやあ、ちょっと裏技使える人に出会ってねえ。助かったよ、これで……僕が僕であると信じられる」

くすくす、とイオは何がおかしいのか、笑い声を洩らしながらそう告げた。

 そのまま、霊夢達の方へ改めて体を向くと、穏やかに今の心境を語り始める。

「……正直、来たばかりの頃はどうしようもなく恨んだりしてたよ。いきなりこんな所に連れて来られるしさ。だけど、此処に住んでいる人たちはここが現実であり、けして幻想何かじゃないってこと、見せつけられてね。おかげで、笑う事も出来るようになったよ」

――まぁその代り、人里の皆と最期まで付き合っていきたいと思えるようになってね。

「……あれか、お前……私と霊夢が死ぬのを見送るつもりか?」

「だって、僕にとってこの世界で友人と言える人間って、稀なんだよ?人里の皆は大抵僕の力を畏れて崇めたり、忌み嫌ったりして来てさ。一緒にいて思い切り笑い合える人間って……道場に通ってくる人とか、寺子屋の子供達以外でほとんどいなかったんだよね」

さびしそうな笑顔と共に言われ、魔理沙は思わず息を詰まらせた。

 苦しそうにイオを見つめる彼女に、イオは一瞬目を閉じると、

「だから、僕はこの世界でいらない存在なのかなぁとか、思っちゃった時もあるわけ」

 

「――何をばかなことを言っているのやら」

 

突如、イオの言葉を紫色の魔法使いがさえぎって言い放つ。

 ふわり、と宙を浮かぶようにしてやってきた彼女は、いつものように魔導書らしき書物を手にしながら此方に近づくと、

「貴方が来てから、格段に私の苦労は減ったわ。その上、貴方が知っている範囲において貴方の世界にある魔法の事についても教えてもらったしね。おかげで、また興味深い研究対象が増えてこちらとしては嬉しい位なのよ?」

淡々として、だが事実は事実と言わんばかりに告げるパチュリ―に、イオは思わず顔を綻ばせて、

「あは、パチェさんはそうだろねえ……正直、あの時ほどパチェさんが怖いと思った事はなかったよ?凄く僕の目の前まで近づいて来て訊いてきたときには、ね」

あれにはぎょっとしたなあ。

 あの時の無表情でありながら眼が爛々と光り輝いていた事は、もはや驚き通り越して恐怖そのものであったとイオは思い返していた。

「……なぁ、イオ。私らの最期まで見届けるって、それってその姿でないと、その体でないと、いけないことなのか?」

そこへ、如何しても納得がいかないのか、魔理沙が苦しそうに尋ねてきた。

 普段、ガサツな振りして実は優しい事を知っているイオは、その姿に苦笑しつつ、

「うん……まぁね。だって、そうだろ?この『龍人』と言う種族は、ほぼ不老不死に近い種族だなんて古文書にあったんだから。丁度、この種族にすることが出来る人と会って話した後、そのこと思い出してさ、僕思ったんだよ」

 

――――ああ、これで誰も悲しませずに生きられるって、ね。

 

「……この世界の人妖たち、本当に優しすぎるんだよ。見た目も何もかも、イレギュラーすぎる僕が、まさか、受け入れられるとは思わなかった」

だから、恩返しの代わりに少なくとも皆より先には死なないようにしようって、考えたんだ。

 龍の因子持つ青年は、そう言って笑った。

 

――だが、そんな事は、彼女にとって知った事ではない。

 

「……で?イオ……あんた結局、この宴会が続く原因、知ってるんでしょう?ついさっきまで気づかなかったけど……今、この場に薄くではあるけど何でか妖力がひろがって来てるし……アンタ、もしかしなくともグルになったのね?」

「ひどいなぁその言い方。依頼されたからここにいるのに」

完全に険悪な顔つきの霊夢に、イオはそう言って苦笑した。

「せめて、依頼人の要請にこたえたって言ってよ。僕、何でも屋なんだからさ」

「うっさい。私にとって重要なのは、あんたが異変の片棒担いでるってことだけよ。ほら、とっとと私に倒されなさい」

 臨戦態勢で以て死刑宣告してくる彼女に、イオはあちゃぁ……と頭を掻きながらつぶやき、

「……あの、霊夢さんや?やっぱり、怒ってる?」

「はあ?何言ってんのよ。今の私見てどうしてその台詞が出てくるわけ?」

「いや、霊夢。普通その状態の事、人は怒ってるって言うからな?」

意味が分かんないと言わんばかりの霊夢に、思わず魔理沙がそう突っ込むが、霊夢はそれに頓着することなく瞬時に御札を構えて見せ、

「んなこと知ったこっちゃないわ。ほら三人とも……本気でかかりなさい。でないとすぐに倒されるわよ」

「ひどいなあもう。そんなに僕が暴れん坊のように見えるの?」

 

――そりゃ、今回ばかりは本気でかかるけどさ。

 

 その言葉と共に、イオは空高く舞い上がった。

「……さあみんな。――踊ろう?」

 

新生弐刀流『龍皇炎舞流』――新生壱式『天剣絶刀』。

 

 スペルらしき言葉が紡がれたと同時に……天より刀の雨が、降り注がれる。

「っく、マジかよ!!?」

全くもって自然体のまま放たれたそのスペルに、魔理沙は驚愕しつつも動き出した。

 同時に、そばにいたアリスやパチュリ―も各々宙に浮かび、降り注いで来る刀から一人は悠々と、もう一人は見る事もなく避けていく。

 やはり、流石に先達と言える実力者であるせいか、今のスペルに対して簡単に対応できたようであった。

「……あー、うん。やっぱり、剣術とスペルカードごっこ……合わないのかなぁ……ま、いいか。僕にはまだこれがあるし」

恐ろしい一言を最後に漏らしたイオは、静かに目を閉じ……直後、カッと眼を見開いて叫ぶ。

 

――神眼『黄金律眼(アルスマグナ=アイ)』――

 

……その宣言がなされた時、それは、あまりに静かすぎた。

 スペル宣言がされた割には、特に何も起こっていない様子に、魔理沙が困惑した顔で、

「はぁ?何も起こってないじゃ――「逃げなさい魔理沙!!」っ!!?」

困惑する魔理沙に、アリスが突然真剣味が増した声で叫ぶ。

 直後、魔理沙に大量の魔法弾が襲い掛かった。

 泡食って逃げだす魔理沙をよそに、アリスはイオの方をにらみ続け……そのまま、ある事に気づいてしまう。

 

「なんて、こと……その魔眼……進化させたの!!?」

 

「――だいせいかーい。すごいやアリス、すぐにばれると思わなかった」

戦くアリスに、イオはそう言って六芒星に変化した、彼の蒼の魔力が籠りし魔眼を彼女たちに目を剥くようにして見せつけた。

「……うん。正直魔力が漏れてばれるかなあと思ってたけど……これは良い方に予想外だった。いやあ、儲けた儲けた」

くすくすと、何がおかしいのか笑っているイオの姿に、魔理沙がちょっぴりいらっとした表情で、

「おい、だからよ……何が起こってるんだ?正直、よくわかんないんだが」

「絶対、うかつに近づかないで魔理沙!イオ……今、以前とは違う魔眼を覚醒させたのよ!恐らく、前の魔眼と比べてはるかに危険性が高いし……潜在魔力も大幅に増えてる!」

その眼でイオの体をサーチしているのであろうか、色が変化したアリスの眼に、魔理沙は驚かされたが、すぐに我に返ると、

「アリス、イオの体どんなふうになってる?すぐに対策練らないとやばそうか?」

ようやく、アリスの言葉を聞く気になったか、若干冷や汗を流しながらアリスを促すと、彼女は唸るような声を出してから、

「――不味い。どうしようもなく不味いわ魔理沙。イオ、多分だけど……全属性を使えるようになってるかも知れない」

「……何それ怖い」

戦いた表情で魔理沙がそう呟いた時であった。

「だいにだーん。いっくよー!!」

 

――蒼炎白華『アビスインフェルノ』――

 

突如として、夜空に炎の大輪が咲き誇る。

 人里で言う所の花火のごとく爆発しては、次々に生み出されていく弾幕に、アリスと魔理沙は同時に顔を引き攣らせた。

「ヤバい、ヤバいって何なんだよこれ!!?」

次から次へと襲ってくる火属性の魔法弾に、魔理沙が驚きの声をあげながらもよけ続ける。アリスに至ってはかなり真剣な眼差しで、タイミングを見計らって避けるありさまだった。

 それだけ、イオの弾幕が恐ろしい事になっているのだろう。

 だが、そんな弾幕でさえ霊夢の敵ではないようで、ひらりひらりと風に舞うタンポポの綿毛のごとくよけ続ける姿を、魔理沙とアリスは見ていた。

「――ったく、あれ絶対初見殺しだよな?何で避けられるんだよ霊夢は」

こっちは必死になって避けてるのによ。

 思わずといったように魔理沙が愚痴っていると、アリスは同じように避けながらも苦笑して、

「仕方ないでしょうに。それが博麗の巫女でしょう?とにかく、よけ続けるわよ。イオがスペルカードルールに準拠してくれているのなら、すぐにこのスペルはブレイクされるはず」

アリスがその言葉を言い終わるか終らないかくらいに、言葉どおりに二つ目のスペルカードがブレイクされる。

 あー!?と、何処か物悲しそうな声を上げるイオに、霊夢が容赦なく襲いかかった。

「おわ!!?ちょ、いきなりぃ!!?」

「ほら、とっとと落ちなさい!こんなことしてくれたし……アンタで思い切りうさ晴らしてやる!」

「いっそ清々しいくらいの八つ当たりだね霊夢!?」

追尾性能がつけられた御札を、うまいこと誘導して打ち落としながらイオがそう叫ぶが、

霊夢にとって知ったことではない。

「はん、悔しかったら私を倒してみなさいよ!」

御札を何枚も繰り出しながら霊夢がそう叫ぶが、イオはそれに当たらないように投擲術である『魔弾』と呼ばれる技を用いながら、

「好き勝手言ってくれるよねぇ霊夢!ちょっとは努力している人を見習いなよ!」

ほら、三つ目だよ!

叫ぶ声と共に、再びスペルカードが宣言される。

 

――流星金槍『メタリックメテオ』――

 

銀色の流星群が、あたりに降り注がれていくのをパチュリーは眺めながら、ぽつりと呟いた。

「……むぅ。これはまずいわね」

まさか、単にかなりの腕を持つ剣士だと思っていたら、魔法も同時に扱えたなんてね。 言い合いながら弾幕を撃ちまくっている霊夢とイオをさておき、パチュリーは近年にないほどに焦っていた。

 とはいえ、その表情は無表情のままであり、大して何かが起きたようには見えない。

「全く、イオは……使うにしても、もう少し何かあるものでしょうに。あの魔眼、正直必要魔力量が多すぎて、イオの潜在魔力量であっても使えないと思ってたのだけど……まさか、あんな方法でやるとは思わなかったわ」

種族自体を変えるという手法は、実のところパチュリ―やアリスが至った魔法使いという種族にあるように存在しているのだが、そもそもイオ自身が剣士であるがために、その方法を伝えることなく使用する事をあきらめるか、それとも以前のように欠陥を持つ魔眼を使用し続けるのかをパチュリーは示したつもりだった。

 所が、蓋を開けてみればイオは斜め上の予想外な方法をとっていたのである。

「……あれか?パチェ達が使ってる捨虫・捨食の魔法とは完全に別物だってことなのか?」

「いえ、そもそもあれは……魔法なんかじゃ、決してない」

「…………はぁ?」

訳の分からない事を言い出した魔法使いに、魔理沙があきれたように視線を向けるが彼女はそれに頓着することなく魔理沙に尋ねる。

「魔理沙?そもそも、人間とはどうやって発生したか……貴女は知っているかしら?」

「おいおい……いきなり話題が飛び過ぎてないか?」

本当にいきなりなその言葉に、魔理沙が苦笑しながらイオに向っていくつか星きらめく弾幕を撃っていると、パチュリーは相も変わらず静かな眼で、

「いいから。答えてくれる?」

「……そういや、慧音に昔聞いたな。猿という動物から人間が生まれたってよ」

少し考えるようなそぶりを見せつつ、魔理沙がそう答えるとパチュリーは深く頷き、

「そう――――それが、今のイオに対する答えになるわ。隔世遺伝というのを知っているかしら……自分の二代前の祖父、或いは祖母から受け継いだ特徴の事を云うのだけどね、まあ、はっきり言ってしまえば先祖がえりと同じということよ。昔の外の世界だと、生まれ変わりだ何だと騒がれたりもしていたわね」

「……おい、だとしたら……あいつの先祖って」

弾幕を張ったり、或いはイオからの魔法弾をよけたりしつつ、魔理沙がちょっと信じられなさそうな表情で言葉を告げようとするが、それを遮ってパチュリーは、

「……そうね。間違いなく、彼はその血の中に龍の因子を持っていたんでしょう。それに、この世界に来る前に、自分の素性を探るために旅に出たと確かイオがレミィに話しているのを聞いたわ」

「……くそっ。聞けば聞くほど、ヤバいだろいくらなんでも」

そう言って魔理沙は焦燥を浮かべた表情で、いまなお霊夢と戦っているイオを見つめながら、後方より援護していると、

 

「――二人とも、何話してるのー?」

 

「「っ!!?」」

何時の間にか……そう、本当にいつの間にかとしか言いようが無いほどに、イオが彼女たちの背後に浮かんでいた。

「…………おいおい、笑えないぜ。いつの間に後ろに立ってやがったんだ?」

「んー……一言でいえば……今霊夢と戦ってるの、あれは分身だよ?」

「――は?」

とてつもなく驚愕の言葉を放ってきたイオに、思わず魔理沙の眼が点になる。

 と、そこへ、

「――こらー!!イオ!何処に行ったの!!?」

どなり声をあげてイオを探す霊夢の姿を発見した。

「まじ、か……イオ、お前どんだけ反則なんだよ」

もはや驚きつかれたと言わんばかりに脱力している魔理沙に、イオはからからと龍の特徴を持った顔で笑うと、

「いやーだってさ、いまだにまともに一撃はいらないんだもの。しかも、そうやって霊夢と戦っているのにあの子の後ろの方から次々に弾幕が飛んでくるし。仕方ないからこっち先につぶしに来ました♪」

「笑って言う事じゃねえだろ!!?」

えへへ、と笑っているイオに、魔理沙が渾身の突っ込みをかました。

 まあ、それも無理ないだろう。

 なにせ、下手すればこの幻想郷においてもトップクラスの実力を持っているのであり、その人物に狙われるとあってはかなり心臓にきそうなくらいだった。

「くっ……どうするパチェ。あいつ、完全に臨戦態勢だぞ」

「むしろ、声をかけてきている時点で負けたと思った方がいいわね……何せあの速さよ?普通だったら声もかけずに倒すところなのに、ああしている事で余裕を見せつけているとみていいわ。正直、いらっとさせられはするけど……多分、私の詠唱速度とイオの剣速だと後者の方が速いのは確実だから」

あくまでも、正々堂々で対応する気なんでしょうね。

 ざっと魔導書を開きながらそう告げるパチュリーは、既に自身が出せる最高の魔法を出せる状態にまで何とか出せているようだ。

 その様子に魔理沙も腹をくくったのか、きっとイオを睨みつけると、

「だったら、のっけから力押しで行かせてもらうまでだぜ!!」

 

――恋符「マスタースパーク」――

 

開口一番、どでかいレーザーを撃ちだした。

「――おおっと……いきなりかい、もう。君がそうするつもりなら、僕も容赦しないよ?」

 

――光刃一閃『オーバーレイ』――

 

続けざまにイオが、そうして光属性の魔法を封じたスペルで応戦すると、瞬く間にぶつかり、あたりに魔力の残滓をまき散らしながら相殺される。

「……ふむ、やっぱり魔理沙のと僕のは大体同じ位の威力なのかな。どうにも撃ち合う度に消えてばかりな気がする」

「はっ……全くもって同感だ。つーかお前……手加減してねえか?」

「いやいや……普通するでしょう?ルーミアから、元々そう言う仕組みだって教えてもらったよ?」

すねたようにしている魔理沙に、イオはそう言って苦笑した。

「だとしてもだ……もうちょっと力入れても罰当たんないんじゃないか?どーも、必要以上に力を抑えてる気がするぜ?」

「まっさかー。これでも精一杯だよ?なにせ、他の三人とも闘わなきゃいけないんだし」

「――ふーん、で?放って置かれたこっちは、どういう対応が正しいのかしら?」

直後、イオは音たてて凍りつく。

 ぎ、ぎ、ぎ……と軋むような動きで背後を見やれば、そこにはどす黒いオーラを纏った霊夢が空に浮かんでこちらをにらみつけていた。

「あ、あはは……い、いやだなぁ霊夢。普通に接してくれていいよ?」

「それこそ嫌よ。なに、私の相手は面倒だって言いたいわけ?」

キキキィン、と音高く霊力を御札に収束させながら、尚も険悪な表情で訊いてくる彼女に、今度こそイオは表情を引き攣らせる。

「ちょ、ちょっと霊夢怒りすぎじゃない?何そんなに青筋立ててるの?」

「はん、そんなの自分の胸に訊きなさいよ。とにかく、アンタ倒してとっとと異変を終わらせるつもりなんだから倒れなさい!!」

「ちょ、僕を倒した所で異変は終わらな……って、危な!!?」

大量にやってきた御札の数々に、イオが慌てて遠ざかって行くのをほっとして魔理沙が眺めていた、その直後だった。

「ああもう!もうちょっと霊夢は落ち着きなって!!」

 

――世界神樹『イグドラシエル』――

 

かのフラワーマスターに使用した、あの巨木のスペルを撃ちだす。

ッドン!と現れたそれは、幽香に使用した時とは異なり、境内にその身を顕現させると一斉に枝や葉を震わし、弾幕を張り出した。

 緑や、黄色に輝く葉っぱを模したようなその弾幕は、ヒラリヒラリと風に舞うがごとくに舞い踊り、次々に霊夢やパチュリー、魔理沙、そしてアリスへと襲いかかって行く。

 その動きに最初に泡を食ったように動きだしたのはアリスだった。

「くっ!もうちょっと時間が稼げるかと思ったのに!」

どうやら、イオを倒さんとするがために色々と策を練っていたようで、かなり悔しそうな顔になりながら、襲ってくる緑黄色の弾幕を避けつつ、イオに向っていくつか人形を飛ばしてくる。

「あはは、そうそう策は練らせないよアリス。何せ、僕が一番警戒しているのは君なんだから」

人形たちが傍に着て爆発するのをよけつつ、イオはそう言って笑いながらどんどん弾幕を張って行った。

 その様子にますます悔しそうに顔をしかめながらも、

「お褒めにあずかり、光栄だとでもいえばいいのかしら?いくらなんでも今の貴方にだけは言われたくない言葉ね」

「ふふ、ごめんごめん。だって楽しいんだもの――こうして、遊べるってことがさ。ちょーっとね、最近は色々と人里の長老衆が僕を取り込もうとでもしてるのか、やたらとお見合いばかりさせられてて結構ストレスに来てたんだよねぇ。全く、僕はそんなつもりないし、こうして人間だけど人間じゃない亜人種になったから、そう言うのも無くなってくれてると嬉しいなあほんと」

「……おいおい、マジで霊夢の言うとおりだったか」

暗い顔になってふふふと笑うイオが告げたその言葉に、魔理沙がちょっと引き攣った表情になって呟く。

 まあ、取り込みたいという長老衆の思惑はさておき、よくよく考えてみると、イオは黙っていれば結構映える、顔だちも特徴も持ち合わせてはいた。

 その分、どうにも子供のような精神が目につきはするが。

(……まあ、多分記憶喪失の関係で、十二年分ぐらいの精神構造しか持っていないんだろうな)

何となく、魔理沙がそう考えながら魔法弾を撃っていると、それまでパチュリ―達の弾幕をよけていたイオが、ここにきていきなり刀を抜き放つ。

「っ!!?おい、いきなり何を――」

「せやあ!!」

驚いて制止の声をあげかける魔理沙だったが、イオはそれに止まることなく大きく朱煉を振り払った。

 すると一斉に斬撃が発生し、イオに襲い掛かっていた弾幕達がすべて取り払われ、

「――まったくもー……面倒くさくなっちゃったから、本気、行くよ?」

とんでもないことを平然とやってのけた当の本人は、そのまま朱煉を静かに鞘に戻すと、

 

――新生ラストスペル『終焉:龍皇炎舞』――

 

この世界に来て編み出した、最後で最高の剣技を以て撃ちだす。

 

 




さぁさぁ、盛り上がってきましたよー?

『――てめぇら、祭りの準備はできているか?』
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