東方剣神録   作:上田幻

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ーーさぁ、ここで原作との乖離が始まりますよぉー♪


第三十章「永久に願うは共生の生涯」

「――どうしたのかしら。あの子たちからの通信が途絶えているなんて……」

永遠亭のとある一室。

 至高の月の賢者たる八意永琳は通信の為の機械を目の前に据え置きながら、ある時点から動く気配がなくなったそれを見つつ呟いていた。

 偽月の夜を進行させるための術式を編み続けながら、同時に展開するという作業は実のところ賢者である彼女にとってさえも難航するものであったために、鈴仙やてゐがこの現地における住民たちとの衝突したことなど知るはずもない。

 増してや、ただでさえ彼女自身ともう一人、そして永琳ともう一人が真に仕えている人物を守るために強力な結界も合わせて展開していたとなるとなおさらだった。

 そのまま彼女がどのような作戦に移行しようかと思案していると、

 

「――永琳、大丈夫?何だか顔色が優れないみたいだけれど」

 

フッと静かな気配と共に声が永琳にかけられる。

 僅かな驚愕と共にそちらの方を見やれば、そこには薄桃色のワンピースを着た、腰まであるような黒髪の持ち主の少女が立っていた。

 物憂げなその表情は、どうやら今現在この永遠亭が置かれている状況を察してくれているらしく、彼女の召使たる永琳を心から思ってくれているのだろう。

「……なんだか、本当にごめんね?私があの薬を飲んだばかりに……」

「――姫様」

何処か、悔やむような表情を浮かべている永琳の主に、永琳は眼を閉じ微笑みを浮かべながら遮った。

「元々、私の大切な教え子なんですもの。私は全力で守りに入るだけです。そもそも、私もあの月から放逐された身なのですから、これくらいは当然のことでしょう」

「――ま、そんなに気にするようなことでもないと思うぜ?何せ、この俺が付いているんだからよ」

永琳の言葉に被せるようにして、すぐ傍の襖の向こうから若い青年の声が響き渡った。

 同時に、すらりと開かれた襖から一人の人影が静かに出現し、隙のない動きで彼女達の前に立つ。

 その人物に向い、永琳は穏やかに微笑むと、

「……何処に行っていたのかと思ったら。吃驚したわ」

「すまんな。ちょいとこの永遠亭にかかってる結界をいじりに行ってた。少なくとも、これでかなり侵入者がはじき出される筈だぜ」

何かの動物からとったと思われる皮製の上品なローブを着たその人物は、深々とフードをかぶった状態のまま真剣な声で語った。

「このピリピリとした空気……どうにも気になって仕方がなかったもんでな。事後報告になっちまったが」

「構わないわ。異世界の「賢人」と呼ばれる程の人物が掛けてくれた結界ならば、私としても文句はないし、闘うにしたって敵が少ない方がまだやり易いしね」

「……はっ。至って同感だ。――ところで、何だがよ……さっき話が聞こえてきたが、あの兎達と連絡が取れていないんだってな?」

腕を組み、不思議そうにローブ姿の人物がそう尋ねると、

「ええ……何か、想定外の事でも起きたのかしら」

「……いや、むしろ……もうとっくに侵入されているかもしれねぇな」

この緊迫した空気……あの若き剣神と戦った時の事を容易に思い出させる。

「――俺が出よう。二人は此処で警戒していてくれ」

「……大丈夫なの?」

「っは、誰だと思ってんだ……此処にいるのはクラム国随一の魔法使いだぜ?」

ローブのフードを強引に撥ね除け、銅色の髪を持つ青年――ラルロスは、無詠唱で炎を手の平の上に発現させながら傲岸不遜に笑った。

 そのまま炎を消し去ると、侵入者が入ってきた方向へと向かっていく彼を見送りながら、永琳は静かに自身の得物である弓を確認し始める。

……どうやら、彼女も侵入者の可能性を考えていたようだった。

「……姫様、奥の方へ。すぐに此処は戦場となります故」

「ええ……分かっているわ。――でも、いくら私達が蓬莱人であるとはいえ、危険な事はなるべく避けてね?」

「大丈夫ですよ……私に、倒れるつもりなど毛頭ございませんから」

物憂げな表情のままだった主――輝夜に、永琳はそう言って安心させるように微笑んだ。

 

 かつてないほどに、穏やかなこの空気――されど、戦場はすぐそこにまで迫っていた。

 

――――――

 

静かなる竹林の中。

一人、偽月の下を走り抜ける小さな影があった。

「――はぁ、はぁ。早く、お師匠様に言わなければ……!」

霊夢達と共に在る鈴仙と異なったルートを辿りながら、てゐは兎ならではの俊足で竹林を駆け抜けていく。

 その表情は、

『何としてでも、永琳達に会わなければ……!』

という思いではちきれんばかりであり、あの恐ろしき亡霊との戦い、そして彼女がこっそりと覗いたイオとの戦いによって、益々その思いが増していた。

 とはいえ、幾らてゐが兎から成った妖怪である事や、この迷いの竹林に対する知識が豊富であるとはいえ、足で駆け抜けるが故にかかる時間が大きいことに加え、てゐ自身が仕掛けた侵入者対策の為の罠を避けていく事も重なり、かなり時間をロスしていた事は否めない。

 

――故に、既に永遠亭の玄関先とも言える場所で、戦いが始まっている事など思いもよらなかったのであった。

 

――――――――

 

 

「……おっと。こっから先は通行止めだ。通るんだったら通行料……払ってもらうぜ?」

 

そんな言葉を掛けられたのは、イオたちと別れている七人の人妖達であった。

 突然現れたとしか思えない不審なローブ姿の人物に、思い思いに彼女たちが警戒をしていると、そのローブ姿の人物は広げていた両手を下ろした後に頭を掻きながら、

「おいおい。そこは山賊かよって突っ込むところだろうに。全く、ジョークすら分かってもらえないなんてな」

と、溜息をつきながらぼやく。

 その言葉に、驚きで凍りついていた鈴仙が元に戻り、

「あ、貴方、お師匠様達は!?」

「……ん、まぁいまんとこは大丈夫だ。で、何でお前さんがその人たちと一緒にいるのか聞かせてもらいたんだが?」

じろり、とフードを下ろしながら、銅色に輝く髪を持つその男がジト眼で鈴仙を問い詰めた。

 思った以上にきついその視線に、鈴仙が思わずたじろぎながら、

「そ、その事なんだけどね……私達、こんなことをする必要なかったんだって言われたのよ」

「あぁ?んだそりゃ。その根拠はいったいなんだってんだよ」

ガシガシ、と乱暴に頭を掻きながらローブの人物がそう訊くと、そこで黙っていた紫がすっと前に進み出て、

「今晩は。その理由を聞いてもらう前に、貴方の名前を聞かせてもらえるかしら?」

と、いつにない緊張したような表情で目の前の男に誰何する。

 すると、面倒くさそうな表情になった後に、

「あいよ。――ラルロス=クロム・フォン・ルーベンスだ。一応、この世界ではない異世界で、貴族の次期当主になることが決まってる人間だよ。で、差支えなきゃ、あんたたちの名前も聞いておきたいところなんだが?」

 

「――ラルロス?」

 

名乗り上げられたその名前に、魔理沙が思わずといったように口を開いた。

 すぐさま、ばっと口元を手で覆った彼女に、ラルロスが一瞬目を見張ったものの、すぐに細く眇めて、

 

「……あの馬鹿、この世界に来てたか」

 

明らかにイオがいると確信したような表情で、そう呟く。

「……貴方、どうやって幻想郷に?私、貴方のような人間を招待した覚えも、感知した覚えもないのだけど?」

扇子を口元へとやり、警戒を最大にまで高めた状態で紫が尋ねると、ラルロスはあ?と不機嫌そうな声を上げ、

「んなの簡単だろうがよ。アイツが消えたところ探ってたら、どうにも空間をいじられたような感覚がしたもんでな。ちょいと突いてみりゃ、いきなりこの竹林の中に飛ばされたんだよ……流石に吃驚したっての」

はぁ……と疲れたような表情で溜息をついた。

 

――だが、そんな事はあり得ない筈なのだ。

 

「……待ちなさい。空間を弄るだなんて……しかも、世界間の壁さえ越える魔法なんて、イオの口から聞いた覚えがないわよ?」

アリスが人形たちを臨戦態勢にさせながらラルロスにそう問うが、彼はそんなこと知ったことではないとばかりに明後日の方を向き、

「新しく作っただけに決まってるだろうが。アイツから俺のこと、何も聞いていないのかよ?」

「……イオの一番の、自慢の親友だってこと以外は特に何も聞いていないぜ?」

恐る恐るながら魔理沙がそう答えると、ラルロスが思わず眼を見張った後に、

「マジかよ。……ってことは、この世界に来た時点でアイツ諦めてたな?」

忌々しいとばかりに不機嫌な表情で呟く。

 だが、いきなりそんな結論に至ったラルロスに魔理沙が驚きを隠せずに、

「な、何でそう決めつけるんだ!?アイツ、どうしようもなくてこの世界にい続けてるのに!」

「はっ、決まってる。大方そこの紫色のアンタがやらかしたことなんだろう?なぁ……どういうつもりだ、そこの胡散臭い奴」

 

――イオから、何故帰りたいと思う気持ちを奪いやがった?

 

 その言葉と共に、イオが本気で神眼を開放した時と同量の魔力が、辺りにまき散らされた。

「「なっ!?」」

驚く魔理沙と鈴仙を余所に、レミリアは興味深そうに、咲夜は瞑目したまま、アリスは警戒を伴って、霊夢は面倒くさそうな表情で、紫は無表情のままで、ラルロスを見やる。

 慌てたように鈴仙が彼を止めようとして、

「ちょ、ラルロス待って!此処で戦っちゃあ……!」

 

『黙れ』

 

怒りと共に吐き出されたラルロスの言葉で、あっけなく口を閉じてしまった。

「……なぁ。答えてくれんだろう?」

「…………はぁ。まず、先程の名前に関して言っておくわね。私の名は八雲紫。この幻想郷の管理者にして妖怪の賢者と呼ばれている者よ。それで、貴方の疑惑に関してだけど……彼が、この世界に必要な存在だから、としか言いようがないわね」

「な、待てよ紫!その言い分だと、お前がイオを引きとめてる原因だってことか!?」

怒りの表情を浮かべた魔理沙が紫にそう食ってかかるが、彼女はそちらをちらりと一瞥してから、

「ま、そうなるわね。言っておくけれど、今回のイオの事は私にとってもイレギュラーではあったのよ?ただ、そこからイオが元の世界に帰ろうとするのを止めることだけはしたけれど、ね」

相変わらず扇子で口元を覆いながら告げたその言葉に、ラルロスがけっと吐き捨てるように呟くと、

「はん、どうせアイツが持っている力を必要とでもしてるんだろう?向こうにいたときからアイツは利用されやすい部分がいくらでもあったしな。で?そんだけか?」

「ええ、後はそうね……あの子が、この世界の神になれる素質があることもかしらね?」

紫が告げたその一言に思い当たる節があったのか、魔理沙がはっとした表情になると、

「……な、なぁそれって……アイツが『龍人』であることと何か関係があるのか?」

血の気が下がったのか、幾分か冷静な表情で彼女が紫に尋ねると、その言葉にラルロスが反応する。

「……『龍人』、だと?おい、そこの紫さんよ、あいつの素性が此処で分かったってのか?」

「正確には、もともとの種族が、と言う所でしょうね。相変わらず記憶の方はどうにもならなかったわ。私の能力であっても、記憶を操り別のもののように仕立てる事は出来ても、基が完全に消えているようなのは管轄外だもの」

「ふん。かなりあいまいなものに対してしか、効果がおよばねぇって事か……それが、アンタの力……大方、『境界を操る程度の能力』と言ったところか?」

察したように呟くラルロスに、魔理沙はもちろん、その場にいた霊夢と紫以外の全員があれだけのやり取りで紫の能力を察した事に驚いた。

 その言葉に紫は眼を眇めると、

「貴方の世界に、能力の概念はなかったはずだけど……どうしてわかったのかしら?」

「たとえその概念がなかろうとも、それに至る素地と言うのはこっちの世界でも資料として散見出来たからな。ま、大抵は魔力を介さない、言わばいきなり発生する現象としてだけどよ」

そう、これは幻想郷の外に広がる外の世界においても、幾らか知られた事実でもある。

 たとえば、『パイロキネシス』。

 人体から発現する、意のままに炎を操る能力の事であるが、これと似たような事件が過去において発生していた。

 いわゆる、『人体自然発火事件』という名で。

 どんな科学的な根拠を探っていても、一瞬にして足首以外の肉体が焼失した上に、辺りに災害を巻き散らかさなかったこの事件の真相を暴くことが叶わなかったように、ラルロスとイオの世界においても、魔法や化学という根拠で現されなかった事件と言うのは存在した。

 あるいは、『恐怖の海域』。

 バミューダ・トライアングルと呼ばれる魔の海域が存在しており、そこへ到る船や飛行機が軒並み沈められているという恐怖の海域。

 これも、見方を変えれば一種の『海底に転移する程度の能力』であるともとらえられた。

 あるいは、『セントエルモの火』。

 これは、現在においてはその原理が解明されてはいる物の、それでも不気味な火として扱われているものである。

 どのミステリーも大抵ホラーものとして扱われているのは共通だったが。

 怒りの表情を浮かべたまま、ラルロスがフッと息をはくと、

「ま、人間どんな状況でも適応する動物だしな。ただでさえ、脳の事を分かっている奴なんて全然いないしよ。しかも、まだまだ潜在能力が隠されてるとあっちゃな」

「……貴方達の世界、どこまで医学が進んでいるのやら」

幻想郷の外の世界へと時たまに入り込み、数多くの知識を有する賢者故に、イオ達の学問の進みようが気になったのか、相変わらず緊張したような雰囲気と共に紫が訊ねた。

「馬鹿言え。回復魔法をかけるにしても、体の構造知っていればそれに沿って動かせるだろうがよ?回復魔法なんぞ、もともとが体に負担をかけるようなものだから自然とそういう知識が生まれたってだけだ。……で、話がだいぶそれちまったが……ちょいとここらで聞いておこうか」

 

――イオはどこだ?

 

その言葉に、魔理沙が身を強張らせる。

 表情が変わった彼女に、ラルロスはちらりと彼女の方を見やると、

「――どうやら、此処にやってくることだけは間違いないみたいだな」

「な、なんでだぜ!?私は何も……!」

「あのな……表情をそんなに変えてる時点で、答えを言っているようなもんだろが。アイツが今のお前さんを見たら、呆れたように首を振る筈だぜ?」

もしくは、引きつったような笑顔を浮かべているか、だな。

 イオの性格を知り尽くしたが故のその発言の後、意外な人物が声を上げた。

 霊夢がラルロスを見やりながら、

「――ラルロスとか言ったっけね。アンタ……今回の事が終ったあと、イオを連れて帰るつもりかしら?」

「ああそりゃな。イオを利用しつくそうとしか考えてないような奴がいる世界なんぞ、アイツには毒でしかない。わりぃが……諦めてもらうぜ?」

その言葉と同時に、ラルロスがまき散らした魔力が一斉に彼の元へと集う。

 一気に凝縮されたその魔力に魔理沙は息を飲んだ後八卦炉を構え、アリスは警戒を怠らず人形たちを集めて障壁の準備を始め、霊夢はジャッと両手の指の間に御札と針を挟みながら身構え、咲夜は銀のナイフを多数手に挟み持つようにして構える。

 

――そして、戦いへの火蓋が切って落とされた。

 

―――――――

 

「……よいしょっと。じゃ、幽々子さん。参りましょうか」

気絶している妖夢を背負い上げ、イオは彼女の主に顔を向けるとそう告げた。

 主――幽々子はその様子を見つつニコニコとした表情でイオを見ると、

「ええ。帰りの道まで宜しくねぇ~イオ。妖夢、一度眠っちゃうとなかなか起きないから、悪戯しても大丈夫よ?」

「誰がしますか、誰が」

ジト眼になってイオが幽々子に突っ込みを入れたが、彼女は我関せずとばかりに明後日の方角を見ている。

 その様子に、心底から溜息をついた後、

「全く、本当だったら起こした方が安全なんですからね?唯でさえ、こんな夜なんですから」

道中に出てくる妖精達が弱くなければ、一目散に里にいる慧音先生に渡してたところですよ。

愚痴るようにそう言いながらも、イオはしっかりと自身の体に妖夢の体を括りつけ、動きに支障が出ないか確かめてから、何時ものように足場を造ると同時に大きく踏み込んだ。

 ふよふよとあたりを漂うようにして妖夢の主が、

「あら、結構役得だとは思わないの?そんなにしっかりと体括りつけてちゃ、分かりやすいと思うけれど?」

「……セクハラで訴えていいですか?」

完全にジト眼になったイオがじろりと彼女をねめつけ、そのまま先程逃げた兎が行った方向を見ると、そのまま飛び立っていった。

「あらあら……嫌われちゃったかしらねぇ……でも、仕方ないことなのよね」

どうしたって今、本当に婿に出来ると思える男の子なんて、そうそうないもの。

ぽつり、と幽々子が何処か寂しそうな笑顔と共に呟き、彼の後を追うのであった。

 

――しばらくの間、そうして三人が竹林の中を飛んでいると、ふと、イオが顔を上げ、

「――何か、戦いの音がしませんか?」

と、鱗が目立つその顔を不思議そうにしながら、傍らを飛ぶ幽々子にそう尋ねる。

 その問いに何処からともなく扇子を取り出した彼女は、静かな目つきで前方を見やると、

「……そうねぇ……もしかすると、また勘違いをされちゃっているかも知れないわね」

「考えたくないですねぇその思考は……」

心底から嫌そうな息をついたイオは、そのまま戦いの場へと向かい……そして、絶句した。

 

「――な、んで……ラル、ロス……?」

 

其れも無理ないだろう。

 なぜなら彼の視線の先にあったのは、ボロボロになりながらもイオと共にやってきた人妖達全てを相手にしている親友の姿があったのだから。

 

――此処に、再び剣神と賢人は邂逅した。

 

―――――――

 

「――へっ。やべぇな……流石に此処までとは思わなかったぜ」

傍らに幾つもの魔法陣を展開しつつ、ラルロスがボロボロのままそれでも不敵に笑う。

 今だにその眼に活気ある光を認め、紫は静かに息をつくと、

「……なぜ、そこまでしてイオを連れて帰ろうとするのかしら?」

と、近くにイオがいる事を感じ取りながらも、そう尋ねた。

 その言葉に、ラルロスははっと笑うと、

「そんなん、当たり前だろうがよ。いきなり親友が消えて……探さない奴なんざいねぇ。殊に……俺達の世界においては最強の剣術を持つ奴が消えたとなればな。おそらく、各国でもかなりしのぎを削ったんじゃねぇか?――アイツを捕まえてねぇか、をよ」

少しずつ魔力を魔法陣に溜めていきながら、尚もラルロスは動く。

「――さあて、まだまだ行くぜ?」

 

「――燃えよ。燃えて全てを飲み尽くせ。大地のうちに太古よりあり続ける焔の力、今此処に顕れん……!」

 

――焔華地溶『マグマインフェルノ』――

 

詠唱文と共に吐き出されたその魔法は、大地より溶岩を噴出させた。

「っくぅ!?アチッ、アチィ!!?」

「魔理沙!?」

運悪く、近くに立っていた魔理沙が悲鳴を上げ、慌ててアリスが引っ張り上げる事で何とかそれを回避する。

 そのまま、次から次へと吹き出る溶岩の柱をよけながら、魔理沙が毒づくようにして、

「……くそ、なんてやつだぜ。これがあいつと同力量だと?」

そう言葉を漏らすと、地獄耳宜しく聞いていたラルロスが、

「あくまでも、総合力を比べればの話だけどな。俺達の故郷じゃ、アイツと俺とで『剣の神』と『魔の神』と呼ばれたくらいだ」

そうそう、魔法じゃ劣るつもりは毛頭ないぜ?

 同じ魔法使いであると感じられた二人の少女に、ラルロスは怒りの色濃き笑顔を浮かべた。

 

――だが、イオはその笑顔を認める事ができない。

 

「何で……何で皆が争ってるのさ……ねぇ、止めてくれよ……」

苦しそうな表情で、イオはただ届かぬ声を漏らした。

「……イオ。さっき妖夢押しつけちゃったけれど……止めたいんでしょう?」

しかし、届かぬ声を聞いていたのは彼一人だけではない。

 白玉楼の主は穏やかに笑いながら、彼の体に括りつけられていた紐を外すと、妖夢をよっと言いながら抱っこをしつつ、イオを見つめた。

 その気遣いに、イオは心から感謝しつつも、

「ええ、止めてきます。とっとと、この異変を終わらせるんだ――!!」

決意と共に……龍人は立ち上がる。

 

――彼にとって大切な……友たちを救うために。

 

 

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