東方剣神録   作:上田幻

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第三十三章「共に遊ぶは人妖混じりし子等」

――壱夜明けた翌日。

 朝早くからイオは色々と台所で仕込んでいた。

「……うん、これならみんなも喜ぶかな?――ルーミア!こっちにきて味を確かめてくれる!?」

――無論、近く行われる秋祭りの屋台の準備である。

 居間にいたルーミアが、ととと……と台所に駆け込みながら、

「待ってた!この時を待ってたよ……!」

とえらく興奮したような表情で、イオの近くにある竈まで近づくと、ひょこっと鍋を覗きこんでみた。

 すると、そこには湯気ほのかに立ち上る、お湯に入った茶色い物体。

 何やら、肉のような香りもするし、はてこれはいったいなんだろうと目を丸くしたルーミアが、

「……イオ。これ、茹でたお肉の匂いがするけど、いったい何なの?」

「ありゃ。こういうのってまだ知られてなかったか……フランクフルトって言うんだよ。豚肉を腸詰にしたお肉なんだけどね、これにマスタードやら、トマトのケチャップやらかけて食べるんだ。前に、マスタードとケチャップについては教えたでしょ?」

「うん……てことは、美味しい?」

きらきらと期待しているかのような眼でイオを見つめる彼女に、イオはにっこりと笑うと、

「もちろんさ、僕も結構これは好きだったねぇ。ま、万が一これがだめだった場合も想定して、切り分けて焼きそばとかに混ぜて食べる事も考えてるけどね」

「おおぉ……」

じゅるり、とよだれを垂らしているルーミアに、イオは苦笑すると、頭を撫でてあげながら、

「ま、とりあえず一本食べてみなよ。全部臭みとかはないように抜いてあるからさ」

「うん!いっただきまーす!」

恐るべきスピードでぱぱっと鍋の中から箸でフランクフルトをつまみ取り、大きな口を開けて一気に頬張る。

 ぱり、ぱり、と口の中で皮の部分が避けていくのを感じ取りながら、ルーミアがしっかりと味を確認した。

 と、いきなり眼を見開き、イオの方へばばっと顔を向けると、

「……イオ、これ……すっごく美味しい!」

もはや輝く笑顔になっている彼女の様子に、イオは安心したように溜息をつくと、

「――良かったぁ。毎度のことながら、結構不安になるんだよね」

ニコニコとしてそんな事を云うと、ルーミアはきょとんとして、

「いつもイオの料理は美味しいよ?皆、絶対食べてくれると思うんだけど」

「ん~……ま、色々とあるから」

純粋で優しい彼女の言葉に、イオはある事を思いながらもそっと彼女の頭を撫でてあげた。

 くすぐったそうに笑う彼女を見つつも、イオはそっと内心で思い浮かべる。

(……さて、長老衆たちはどう出てくるかな……)

恐怖の対象としてしか、イオを見てくれない彼らは今回の出場にどういいだすのか。

 阿求にきちんと要請された事であるとはいえ、やはり、長老衆がこの事に関して色々と言ってくるだろうことは間違いなかった。

(面倒な事だよねぇほんと。でも、人里で生きていく以上、どうしたって長老衆とのかかわりは避けて通れないし)

やれやれ本当に困ったものだ、とイオが内心溜息をついていると、がらがらと玄関の方から誰かが入ってくる音が響く。

 およ?とイオが不思議に思って台所へ続く暖簾を押しのけて玄関へ行ってみれば、そこにはとある人物が手持無沙汰に立っていた。

 一瞬イオは眼を丸くしたものの、すぐに立ち直って、

「……ありゃ、なんで君がいるのさチルノ。どうしたんだい?」

道中では襲い掛かってきた事もあった彼女に、イオはそれでも穏やかにそう尋ねた。

 すると、ばばっと彼女が顔を上げ、

「る、ルーミアがいるって聞いたんだよ!何か悪い事でもある!?」

「なんだ……そうならそうと言えばいいだけだろ?全く、ルーミア?友達きてるぞー」

「え、誰誰――――って、チルノ!おはよー!」

ばたばたと台所から玄関へとやってきたルーミアが、勢いのままにチルノへと抱きつく。

「ちょ!ルーミア冷えちゃうって!あたいの体のこと、知ってるだろ!」

「ええー、そんなの闇で全部吸い取っちゃえばいいだけだよー」

通常考えもつかないような事を言い出したルーミアに、イオは当初出会ったころと比べてみて、

「……なんか、最近とみにルーミアが賢くなってる気がするなー……気のせいかなぁ」

首をかしげてイオがそう呟くと、その声にルーミアがびくっとなってイオを見て、慌ててチルノの傍を離れて敬礼しながら、

「い、イオが留守の間勉強してました、サー!」

「いや、だから僕は将軍でないと言うに。……勉強?もしかして……慧音先生のとこでかい?」

「う、うん!妖怪の子供達にやってる授業があるの!ね、チルノそうでしょ!」

「お、おお?そうだぞうん!」

慌てているルーミアにつられるようにして頷いているチルノに、イオは深くため息をついてから、台所の方へと体を向け、

 

「――ルーミア。隠し事ある事は別に何も言わないけれど……どんなルーミアだって、ちゃんと僕は受け入れるからね?」

 

明らかに、何かに感づいているとしか思えないその一言と共に、彼は台所へと引っ込んで行った。

 思わぬ一言でルーミアが凍りつくのを見ながらも、チルノはキョトンとして彼女に、

「……イオ、行っちゃったぞー?いいのかルーミア?」

と声をかける。

 その声で我に返ったルーミアは、少しぎごちないながらもチルノへと笑顔を向けて、

「そ、そうだね……多分、大丈夫だと思う。大ちゃんいるんでしょ?さっさと行こう?」

そう告げると、彼女たちは楽しそうに何をして遊ぶかを言い合いながらカリスト宅を出て行ったのであった。

 騒がしい声が遠ざかるのを聞きながら、

「……全く。僕も結構甘いなぁホント。ま、ちょっと考えてみれば分かることだったよね」

――ルーミアが、一番僕の料理を食べているんだから。

 ちょっと、さびしそうな笑顔を浮かべながらも、イオは近日に迫る秋祭りの為に色々と仕込んで行くのであった。

 

―――――――

 

――さて、こちらはルーミア達一行。

 彼女たちが集まる機会は、実のところかなりあった。

――例えば、慧音が行う人妖の為の授業の時。

――例えば、チルノがいつもいる霧の湖にて。

――例えば、リグルがいる竹林の広場であったり。

 集まる場所も時間もバラバラではあるものの、一貫して彼女たちは共に遊びたいがために集まっている。

 ここ最近の異変が重なる事もあり、その度に彼女たちの仲間に誰かが加わって行くのが常であった。

「――ねぇねぇ、チルノちゃん。人里に行った時に噂を聞かなかった?何日か後に、人里で秋祭りやるって」

チルノの一番の親友を自他ともに認める、大妖精と呼ばれる妖精がチルノに向ってそう訊くと、

「う~ん……アタイは聞かなかったけどなぁ……ルーミアは?」

「私は聞いたよー?丁度、イオもそれで料理を作ってる最中だし」

のほほん、と幻想郷にあるどこでもない森林の切り株の上で、足をぶらぶらとしながらルーミアがそう告げる。

 何処か、近日に行われる秋祭りで食べまくることを想像しているのか、かなりよだれを垂らしていた。

「……ルーミア。すごくよだれ垂れてるよ?拭かなきゃ」

何時も常備しているのか、ハンカチを差し出しながら『昆虫王子』と仲間内であだ名されている妖怪――リグル=ナイトバグが苦笑している。

 その横で夜雀の妖怪であるミスティア=ローレライが、

「……むぅ、ルーミア。何でも屋ってそんなに料理が得意なわけ?結構プライド刺激されるんだけどなぁ」

等と言いながら、妙にイオに対して敵意を抱いているようだった。

 まぁ、それもむべなるかな。

 彼女はいつも幻想郷のどこかで屋台を引きながら、自慢の歌を歌いつつヤツメウナギの蒲焼を提供している人妖なのである。料理人としてのプライドは、当然のことながらかなり持っていると言って過言ではないだろう。

 そんな彼女にルーミアがふふん、と何故か不敵に笑い、

「そんなに気になるんだったら、一度イオの家来て一緒に食べてみようよ♪絶対、唸ること間違いなし!」

と、料理を作っている訳でもないのに胸を張っていた。

 くぅっ!とそれに何故かミスティアも便乗して、

「だったら、行かせてもらうよ!あたしゃ、料理に関して負けるつもりなんか全然無いんだからね!?」

等と、瞳に焔を宿らせ気炎を上げる。

 その瞬間、何処かで龍の青年がくしゃみするような気配がしたようにルーミアは感じたが、気のせいと思うことにした。

 

――そう言う感じで、この五人(?)の人妖がいつも集まるメンバーなのである。

 さて、今日の彼女たちの活動はと言うと……

「――よぉっし!じゃ、今日こそはあの真っ赤な御屋敷の方行って、中を探検するんだ!」

チルノがそう言ってルーミアの近くにあった別の切り株の上に乗り、そう宣言した。

 直後、

「えぇー……大丈夫なの?あそこ、吸血鬼の館だって言うじゃない」

ミスティアが不安そうにそう言い、

「チルノちゃん……美鈴さんに迷惑掛かっちゃうよ?」

大妖精がチルノを思いとどまらせようとして、いつも遊んでくれる門番の名前を出し、

「……僕、あそこには行きたくないんだけど。あの吸血鬼、僕の仲間をいじめてきたし」

リグルが、狂気に染まりかけていた偽月異変の最中の薄らとした記憶を引っ張り出しながら、文句たっぷりに言い、

「う~ん……イオに、あんまり危険な事はしないようにって、言われてるしねぇ」

と、ルーミアが大事な“家族”であるイオからの言いつけを守ろうとしてそう呟く。

 口々に危機や不安を隠しきれない彼女たちに、チルノはなぜか胸を張って、

 

「大丈夫!美鈴に言えば何とかなる……筈!」

 

ずここっと面白いぐらいにその場にいた全員がずっこけた。

「チ、チルノちゃん……流石に、美鈴さんでも無理があると思うよ?なんて言ったって、私達侵入者になっちゃうし」

「へ?しんにゅうしゃ?」

言葉の意味が捉えられなかったのか、大妖精の言葉にキョトンとするチルノに、大妖精があっと表情を変えてから、

「うん、私達が勝手に入っちゃ、怒られちゃうしか思えないってことだよ。ただでさえ、美鈴さんがあのメイド長さんにナイフで刺されてばかりなのに」

「私は、あの頃イオがいたから、お見舞いと言う事で入る事が出来たけどねぇ。そうじゃなかったら、普通は入れないと思うよ?」

最近、智慧をつけ始めてきたルーミアと、元より妖精達の中では断トツの頭脳を持つ大妖精の二人によって否定され、チルノはうぐぐ……と唸ってから、

「じゃ、じゃあどうすればいいのよ!?あたい、絶対あの屋敷に入りたいんだい!」

「……そう言われてもねぇ……ルーミアちゃん、何か考え持ってない?」

「…………そう、だねぇ。ん~……あの屋敷にいる、妹の方の吸血鬼と仲良くなりたいって言ったら、怒られるかな?」

考えに考えたルーミアの一言に、一斉にその場にいる人妖達が息をのんだ。

「……あの、狂気にまみれた、妹の方の吸血鬼と?ルーミア、それ一番危険だって分かってる?」

忌避感も露わに、リグルが苛々としてそう言うが、ルーミアには確固たる持論があるようで……

「う~ん……イオが言ってたんだけど、いつもその妹の方の吸血鬼と弾幕ごっこやって行くうちに、どんどん普通の女の子になって行ったんだって。だから、ちょっと怖いけど話す価値はあるかもしれないよ?イオも、男が相手するより女の子が相手している方が本当はいいかもしれないって言ってたし」

「……ルーミア。どんだけその何でも屋を信じてるのさ。そいつ、人間だろ?」

「ううん、正確には人間じゃないんだって。亜人種って言って、動物的な部分を持ってる種族で、本当の人間じゃないそうだよ?実際、私もイオの体から、なんか不思議な気配を感じた事があるもの。それに、多分刀を使うだけなら最強だし」

リグルの不審そうな声に、しかしルーミアはけして戸惑うことなくリグルの言葉を否定する。

 とはいえ、リグルもそんな些細な事はどうでもいいようで、

「そんな細かい事は知らないけどさ、でもあいつ人間の味方してるんだろ?だったら、信じる必要もないんじゃない?」

「あ、リグルそれは違うよ?イオの立場って何でも屋だから、妖怪も人間も何もかも同じように接するんだ。だから、どちらかと言えば霊夢に近いかもね」

「……あの、傍若無人な巫女とぉ?なんか、いまいち信じられないなぁ……」

不信たっぷりなリグルに、大妖精がそこでまぁまぁ、と宥めるようにして、

「と、とにかくルーミアの作戦でやってみようよ。もしかすると、私達に仲間が増えるかもしれないし!」

「……狂気たっぷりな妹吸血鬼が、仲間、ねぇ。ある意味、箔が付きそうではあるよね」

ミスティアがやや苦笑めいたものを浮かべながら、チルノに向ってそう呟くと、

「でも、やる価値はある!絶対、成功させるんだ……!いくよ、皆!」

チルノの号令と共に、本日のチルノたちの活動は始まったのであった。

 

―――――――

 

「――え?妹様と仲良くなりたい……ですか?」

ぱちくり。

 そう形容するしかない表情で、美鈴が彼女たちに向ってそう尋ねると、代表である大妖精が頷いて、

「ええ、噂で、此処の吸血鬼の人には、妹さんがいると伺ったんです。みんなと話し合って、もしかしたら友達になれるかも知れないって思ってここに来ました」

大妖精らしく丁寧な物言いで、彼女は美鈴に向って訴えかけた。

 しかし、美鈴はちょっと困ったように頭をかくと、

「……う~ん……ちょっと、私の一存では答えきれませんねぇ……分かりました。ちょっと咲夜さんを呼んで「――呼んだかしら、美鈴」……っと、もう来られましたか」

昼日中に突如として現れた咲夜に、思わず美鈴が驚きながらもそう呟く。

 すると、メイド長はじろり、といつも突貫してやって来る彼女たちを見やって、

「なぁに、また貴女達この屋敷を探検しに来たの?何度も言うけど――」

「いや、それが今日に限って違うみたいですよ。何だか、妹様と仲良くなりたいんだとか」

彼女の言葉を遮り、美鈴が困ったように笑いながらそう告げると、咲夜は驚いたように目を見張った後、

「……普段から馬鹿だと思っていたけれど……やっぱり、貴女達は馬鹿だったのね」

「な、何を言うんだ!あたい達の何処が馬鹿なんだよ!?」

ぷんぷんと余りの言われようにチルノが怒ったが、彼女は溜息をついた後、

「噂で聞いているのなら、当然妹様の様子についても知っているわけでしょう?馬鹿としか言いようがないわよ」

ま、ここ最近はイオのお陰で普通になってくれているけれどね。

 ぽつりと付け加えられたその一言に、大妖精ががばっとうつむいていた顔を上げ、

「だ、だから来たんです!ルーミアが、イオと弾幕ごっこやっている間に、普通の女の子に変わって行った事を教えてもらえたって言っていましたから!」

「……その言葉、本当なのかしら?」

再び驚いた様子でルーミアを見つめる咲夜に、ルーミアはしっかりと頷いて、

「そうだよ~?イオ、いつも此処の図書館に行って妹の吸血鬼と遊んでるって言ってたから~」

「……もう。イオ、もう少し考えて話しなさいよね……」

何時の間にか漏れていた屋敷の内情に、思わず咲夜が頭に手をやりつつ呆れていると。

 

『――構わないわ、咲夜。その子たちを中に入れてあげなさい』

 

突如として、本来吸血鬼として寝ている筈のレミリアの声が、宙に響き渡った。

「お、お嬢様!?まだ、起きられていたのですか!?」

恐らくは念話であろう彼女の魔法に、思わず咲夜がそう叫ぶと、

『ウフフ……運命を覗いてみたら、何だか面白いことになっているからね。妹の友達になってくれると言うんだ……言葉通りにしてあげた方が、フランの為にもなる』

「か、かしこまりました……」

気配が消え去ると同時に、咲夜はやや面持ちを不審な物に変えつつ、チルノたちに向って、

「……仕方ないから、中に入れてあげるわ」

「やった!」

「ただし!!」

歓声を上げる彼女たちに、しかし咲夜は厳しい声音で、

「一回でも屋敷内で暴れたら……その時は、覚悟しておきなさい!」

「うん、分かった!早く中に入れさせて!」

本当に分かっているのか、若干浮かれているようなチルノの言葉に、何やら咲夜が言いたそうな表情だったが、主に言われた以上は職務を全うするのみと意識を変え、

「ほら、さっさとついて来なさい。言っておくけれど私からはぐれたら、即迷子になるから」

「「「「「はーい」」」」」

仲良く手を挙げ返事する五人組に、思わず美鈴が笑ってしまい咲夜に睨まれるのであった。

 

――――――

 

「――うわ~……真っ暗だねぇルーミア」

「相変わらずとも言えるけどね~。ねね、メイド長……イオ、普段は此処で何をしてるの?」

大妖精の言葉に頷きつつ、ルーミアは同居人の動向が気になるのか、咲夜に向ってそう問うた。

 すると、日中であるために窓を閉めているメイド長が、

「メイド長言わない。……そうね、いつもイオはあの白黒の撃退をしてもらっているけれど、その他にもパチュリ―様に魔法の事で訊いていたり、妹様と弾幕ごっこで遊んでいたりしているわね。まぁ、騒がしいのはほぼいつもどおりだけれど……特に、妹様と弾幕ごっこで遊んでいるときが、一番騒がしいかしら」

と、意外にも丁寧に答える。

 その事実に目を丸くしつつも、ルーミアはあえてその事には触れずに、

「そうなのか~……妙に、イオがすすけた状態になって帰って来る日があったけど、そう言う理由からだったのか~」

と、納得の声を上げた。

「……何で、煤けるんだよ?」

そう尋ねたのは、リグル。

 彼女の方はどうやら、普段やっている弾幕ごっこでどうしてその状態になるのかが気になっているようで。

 その言葉に咲夜が一瞬言い惑いかけるが、

「……ま、端的に言って弾幕ごっこの範疇に収まっていないからでしょうね。私も、偶にあの状態の妹様と戦った事はあったけれど、そう言うときは大体威力の事なんか頭にはない状態になっていらっしゃるから」

「……ルーミア。やっぱりやめておいた方が良かったんじゃない?結構怖くなってきたんだけど僕」

青ざめた表情でルーミアに提言するリグルだったが、ルーミアはそれに頓着せず、

「大丈夫だよ~。――多分」

「その一言で台無しだよ……!!」

がくり、と膝をつくリグルに、しかし味方は居らずどんどん先へと進んで行く一行。

 仕方なしに後を追ったリグルであったが、そこでチルノが、

「大丈夫!もし弾幕ごっこになったとしても、あたい達なら何とかなる!」

「どっから出て来たのさその自信!?」

すぱーん!といい音と共に、何処からともなく出したハリセンでリグルが突っ込んだ。

「あ、あはは……ミスティア。ちょっと面白くなって来たね」

「どこがなのよ……あたしゃ、まだ死にたくないし。はぁ……ま、覚悟決めるしかないかね」

苦笑している大妖精と深いため息をつくミスティア。

 どうにも、彼女たちの役割と言うのはわりと決まっていることらしかった。

 

 そうして歩いて行くうちに、イオがこの館に来て最初に訪れた館主室までやってきた一行。

 ドアにつけられたプレートの文字が読めないチルノに、大妖精が、あれは館主室と読むのだと教えていると、咲夜がドアをノックして、

「……お嬢様。五人組を連れて参りましたが」

と声をかけた。

『――入りなさい』

その声が返ってくると同時に咲夜がそっとドアを開くと、後ろに向って、

「……貴女達、お嬢様に失礼のないようにね……特に、蟲と氷妖精は」

「分かってる!おとなしくしてるもん!」

「……言われずとも。あの晩に既に負けを認めてるし意味ないしね」

それぞれが咲夜の警告にそう返すと、その様子に大丈夫だろうかと思いつつ咲夜が中へと招き入れる。

 

「――ようこそ、吸血鬼の館へ。ま、ちょっと予想外ではあったわね……特に、そこの蟲妖怪は」

艶然と笑い、リグルを見やる机上のレミリアに、リグルはふんと鼻を鳴らし、

「別に……チルノの無茶ぶりに付き合っているだけだ。本当だったら、僕はこんなとこには来てないよ」

やや苦々しげな表情でそう言い放った。

 その様子に思わずといったようにレミリアが笑い、

「あはは!確かにそうかも知れないわねぇ……ま、あの晩の事は異変の事もあったし、少々急いでいたからね。酷な話だろうが……運が悪かったとしか言いようがないわ」

「……ふん、もういいよ。誰だったか、偽月異変の所為で妹の方に影響出るからと、姉が頑張っていたらしい位の事は聞いた。蟲達の事は結構恨んでるけど、どう考えても邪魔だっただろうし、何も言うつもりはない」

そっぽを向くようにしてレミリアにそう告げると、リグルはすっかり黙り込んでしまう。

 と、そこへ慌てて大妖精が声を上げた。

「あ、あの!今日ここに来たのは……此処の妹さんと仲良くなりたいと思ってきたんです!ルーミアがイオさんから聞いたところによれば、妹さん此処に来る魔理沙さんやイオさんと弾幕ごっこはするけれど、紅魔館以外にいる人たちとは何も接点がないんだって教えてもらいました。だから、良ければですけど……」

言葉の途中でレミリアが先程の笑みを消し、真剣な眼差しになっていることに気づきどんどん尻すぼみに言葉が消えていく。

 やや緊張したような面持ちの大妖精に、レミリアはふぅ……と息をはくと、

「……正直に言うわ。あの子が今、狂気に彩られることなく普通の吸血鬼として在り続けていられるのは、そこの宵闇が言ったように、イオとそしてあの白黒がよく弾幕ごっこをしてくれていたおかげなのよ。特に、イオはあの子の能力が発現する直前をよく見計らって手首をうまく斬り飛ばしてくれているから、紅魔館にあまり被害が行っていない。しかも、弾幕ごっこの途中でもフランに対して兄が妹に接するような態度でい続けてくれたから、そうなったの」

「……お嬢様。そこまで仰って宜しいのですか?」

やや、眉根を寄せるような表情になった咲夜が、そう主に問いを発するが、レミリアは首を振って、

「幾らなんでも、事実を曲げるような事は言うつもりはないわ。ましてや、うちの妹と仲良くなりたいと言ってくれているような者ならば特にね。――まぁ、そう言う訳だから、イオとも話していたのよ。特定の人物だけに留まらず、他の人妖達ともうまく付き合えるかどうか、ね」

妹の為に、ただレミリアは誠意を以て話し続けた。

 その様子に初めの予想では騒ぎそうだったチルノがすっかり押し黙り、他の人妖達もなかなかに真剣な眼差しになっている。

 そんな中、チルノたちの間でブレーン役を担っている大妖精が再び声を上げた。

「えと、だったら私達がその、妹さんと仲良くなりたいと言ったのは……」

「ええ、端的に言えば渡りに船、と言えるわ。私達にとってはね」

「(だ、大ちゃん……渡りに舟って?)」

思わずチルノがこっそりと大妖精に小声をかけると、

「(うん、都合が良かったってことだよ、チルノちゃん)……でしたら、妹さんと会わせて戴いてもよろしいですか?」

同じように小声で返した彼女は、しっかりとした眼差しでレミリアを直視しつつ、問いを発する。

 その大妖精の様子、そして他の四人も思い思いにしっかりとした眼で見つめてくるその様に、レミリアは瞑目をすると、

「ええ……紅魔館の主として要請をするわ。是非とも、妹のフランドールと仲良くなって頂戴ね?」

「……正直、今日は御屋敷の中を探検する心算だったけど、でも、あたい決めたよ!アンタの言うとおりにする!」

きっぱり。

 妖精らしく純粋に、フランと友とならんがためにチルノは宣誓するのであった。

 

――――――

 

「……ようやく、ここまで来れたわね……」

咲夜に連れられて退室していった五人組を見送ってから、レミリアは深い吐息と共にそう呟いた。

 そして、ややぐぐっと背伸びをするとそのまま館長室から出て、自室へと戻っていく。

 その道中、レミリアはある事を思っていた。

(……フランには、本当に悪い事をしたからね……幾ら、狂気の所為でとはいえ、家族を閉じ込めるだなんて……どうにかしていたとしか言いようがないわ)

かつて、自身が最愛で最後の家族の一人である妹を忌避し、毛嫌いし、恐怖の感情で以て見ていた過去。

 あの時の自分を思い出せば思い出すほどに、レミリアは自身が憎く感じられてならなかった。

(望まぬ能力も、狂気に彩られてしまった精神も、何もかもあの子の責任じゃあないのに……責任であると勘違いしたのが、私の一番の、罪)

しかも、閉じ込める事が最善なのだと、最も勘違いしていた想いは、フランにとってはどうしようもないほどに最悪の選択だったのだ。

 その故なのか……フランは、自室から出る事を許された今でさえ、大図書館や、イオの来た時は厨房に行くこと以外では、自室に閉じこもるばかりだった。

――すべては、『家族に迷惑をかけてはいけない』という思いから。

「……はぁ、駄目ね。もう、フランはあの頃とは違う。イオもいるし、あの白黒もいる。咲夜も、パチェもこぁもいるんだ。その上、噂を聞いても友になりたいと言ってくれる者まで現れた。……これ以上は、望めないほどに最高の結果だ」

首を振りながら、レミリアはそう呟くと自室に戻る足を速めるのであった。

――赤の絨毯が色濃く燭台の光に照らされる廊下を、鈍い靴音が響いて行く――

 

――――――

 

「――ね、ねぇメイド長。此処が、さっき姉の方の吸血鬼が言ってた、フランドールって子がよく来る場所なの?」

――さて、こちらはチルノたち+α一行。

 目の前に広がる大図書館の蔵書の数々に、思わずといったようにリグルが呟いた。

 目を完全に丸くしているルーミア以外の面々に、咲夜は深くため息をついて、

「だから、メイド長と呼ばないで頂戴。――ええ、此処がヴワル大図書館よ。イオも、妹様もいつも此処で読書をしたり、魔法の勉強をされていたりしているわ」

ちらり、と文句を言いつつもリグルに向ってそう答える。

 そして、再び館主室の前で見せた真面目な表情になると、

「お願いだから、妹様に悪影響になるようなものはやめてね?イオのお陰で穏やかになりつつあるけれど、やっぱり不安だから」

「……大丈夫だよ。私、イオからおやつにって渡されたお菓子とかもあるし、遊んだ後で一緒に食べる事も出来るし!」

楽しそうに笑いながらルーミアが胸を張ってそう告げると、咲夜はそれでもやや不安そうな表情で、

「……そう、だったら後で紅茶も持ってくるけれど……」

と言いつつ、五人組をいつもパチュリ―が座るテーブルの近くに案内すると、

「それじゃ、頼んだわよ?パチュリ―様、今日は少し騒がしくなるかもしれませんが、申し訳ありません」

「……ま、何となく話の流れは分かっているから、構わないわ。成功したら、ちょっとお祝い事になりそうな感じだしね」

ぺらり、ぺらり、と頁をめくりながら、『動かない大図書館』はそう言って薄らと優しく微笑む。

「それに、いつもこちらの方で魔理沙が侵入してきた場合に備えているから、イオを呼び出す事も出来るし」

「ん~?あれ、今日はイオ、秋祭りの仕込みに掛かっている筈じゃ?」

家を出る前のイオの行動を思い返しながら、ルーミアがキョトンとしてそう尋ねると、パチュリーは苦笑して、

「何でか知らないけれどね……イオ、どんな用事があったとしても、すぐにこちらに駆けつけてくれるのよ。おかげで、結構助かっているわ」

「ふ~ん……そうなんだ~」

何となくではあるが、イオがあの時かなりの大けがを負って養生していた事を思い返してみると、パチュリ―に返しきれないほどに恩があると感じているのではないだろうか。

 ルーミアは最近よく回るようになった頭でそう考えながらも、

「……じゃ、チルノ。妹の吸血鬼の方、もしかすると今はまだ眠たい時間かも知れないし、のんびりと待っていよう?パチュリーに訊きたい事があれば、大体の事って分かる事が多いから、勉強にもなるだろうし」

「え!?いきなり此処で待つの!?」

ぎょっとしたようにリグルがルーミアを見て叫ぶが、ルーミアは動じることなく、

「だって、さっきも有ったでしょ?姉の方の吸血鬼がこの朝の時間に起きてることに、メイド長さんが驚いてたの。う~んと確かね、慧音先生が吸血鬼は元々夜が行動する時間帯だって言っていたし、結構明るい頃にいるってことがあり得なかったんだと思う。そうなると、妹の方も当然吸血鬼だから……」

「……うん、そうだね。まだこの時間帯は寝ているかも」

「……なんだよ、だったら夜にこればよかったじゃないか。緊張してて損した」

むっすぅ、とすねた表情でそう呟くリグルに、大妖精は苦笑して、

「仕方がないと思うよ……なるべく早くに、ふらんどーるだったっけ?その子と会って話できる時間を確保しておかなきゃ」

「そうだ!なるようになる!」

「それで死んだら元も子もないからね!?」

スパーン!とハリセンでチルノの頭を引っ叩きながら叫ぶリグル。

 そのまま、チルノを正座させて説教を始めてしまった。

「……ありゃりゃ。どうやらリグル、結構ストレスため込んでいたみたいだねぇ……」

「あわわ……チルノちゃんが大変な事に」

苦笑するミスティアとおろおろしている大妖精。

 そんなカオスな状況の四人を放り、ルーミアはパチュリ―に向ってある事を訊ねていた。

 

「……何ですって?闇を用いた魔法?」

「うん。どうせだったら、今のうちに習えるようなものあるかなって思ったんだ」

「貴女……それを習ってどうするつもり?場合によっては、拒否させてもらうけど?」

何処か、心の奥深くまで見透かすような、そんな視線と共にパチュリ―に言われ、ルーミアは迷いながらもその一言を告げる。

 

「――イオの、お手伝いをしたいんだ」

 

「……ふぅん。それはまたどうして?」

ぺらり、ぺらり、と常人では計り知れないほどに速読を行いながらも、パチュリーは訊ねた。

 その視線は、時折魔導書の方を見ていながらも、しっかりとルーミアも見ている。

「……えっと、笑わないでほしいんだけれど……やっぱり、美味しい料理をいつも作ってくれるから、かな」

普通であれば、それは幼き少女の余りにも純粋な思いの塊。

――だがしかし、

「……ん?……――!?貴女、もしかして……!」

その一言だけで、パチュリーが何かに弾かれるような勢いでルーミアを見やった。

(まずっ!バレた!)

まさか、自分のこの一言だけで気づかれると思わなかったルーミアは、慌てて手を振りながら、

「や、やっぱりいい!妹さん、探してくる!」

そう叫ぶと一目散に走り出す。

 あとから、

「こぁ、その子を捕まえなさい!」

「ふぇ!?わ、分かりました!」

何時にない召喚主の鋭い声にビクンと反応し、慌てたように小悪魔が一直線にルーミアに迫った。

「な、何でもないのに何で追っかけてくるの!?」

「馬鹿を言いなさい!貴女、自分の力が前よりも増している事に気づいているのでしょう!?」

ルーミアの叫び声に、パチュリ―が相も変わらず鋭い声でそう叫ぶ。

 すると、次第にその騒ぎを聞きつけたのか、ばたばたと言う音と共にチルノ達がやってきて、追いかけられているルーミアを発見すると、口々に驚いたような声を上げた。

「る、ルーミア!?どうしたんだよ!」

「ちょ、パチュリーさん!どうしてルーミアを追っかけているんですか!?」

「とんでもないことに今気づいたからよ……!」

空を駆けつつ追いかけるパチュリ―が、何時にないほどに真剣な表情と声で叫び返す。

「と、とんでもないことって一体何なんです!?ルーミア、私達の友達なんですよ!?」

たまらず大妖精が声を張り上げるが、図書館の賢人たる七耀の魔女は苦笑めいた表情と共に、推測を述べた。

 

「……全く、どうして今日まで気づかなかったのかしら。貴女元々……大妖怪の一角だった存在なんでしょう!?」

 

その言葉に、ルーミアは体を強張らせて動きを止める。

「あ!や、やっと捕まえられましたぁ……」

そのすきを逃さず、小悪魔が身を躍らせて彼女を抱き締め、ようやくにして突発的な追いかけっこは終了したのであった。

 黙り込んだままのルーミアに、チルノは近づきながら不安そうに彼女を見つつ、声をかける。

「……ルーミア、大丈夫?」

「……パチュリ―。どうして、そう思ったの?」

だが、ルーミアはチルノに言葉を返すことなく、小悪魔に抱えられたまま俯いた状態でパチュリ―に問うた。

 その様子に、小悪魔の前にまでやってきていたパチュリ―が溜息をつき、

「イオの料理を一度でも食べたものであるならば、彼の料理が持つ力は当然のこと身に覚えがあるわ。かくいう私も、そしてこの紅魔館に住む者であれば、一度は必ず食べた事があるからね。だからこそ、力がわき出てくるような感覚を、忘れたりはしない」

だったら、毎日のように食べ続けていた貴女は?

 鋭く、確信もった問いをパチュリーは発する。

「なんで、バレたかなぁ……イオにも、此処に来る前に明らかに分かっているような発言もらったし。私、隠しきれていると思ってたのに」

「……実際、貴女の隠蔽は素晴らしいものだったのは確かね。私達があの紅霧異変を起こした際に、霊夢と戦った様子を水晶球で眺めていたけれど、そんなに妖力を持っているようには感じられなかったし、こうしている今も、貴女はうまい具合に隠しきれている」

だけど、そもそもどうして力を隠していたのか、それが気になるわね。

 油断なく普段使用している魔導書を抱えながら、パチュリ―がそう尋ねると、ルーミアは自嘲気味に笑って、

 

「あはは……ねぇ、私が元々封印されていた存在だったと知ったら、皆はどう思う?」

 

「……どういう意味、それは?」

流石のパチュリ―も、その言葉に不審を覚えたのか、いぶかしげな表情になってそう問うと、ルーミアはなおも笑って、

「言葉どおりだよ。だって私、『幻想郷にとって危険な存在』と言う理由で、封印されたんだから。チルノたちは覚えていないかなぁ……私が、リボンを付けていたの」

そう言って彼女は何もないショートボブの金髪を揺ら揺らと揺らす。

 その言葉で、大妖精がある事を思い出したのか、はっと表情を変えて、

「あ、そう言えば……ルーミア、前に御札のような模様がついたリボンつけてた……」

「!?……誰に、封印されたの?」

その言葉に、パチュリーが語気荒くルーミアに詰問した。

そして、彼女が答えたその言葉に驚愕することになる。

 

「……う~ん……そうだね。数え切れないほど昔だったけど……幻想郷の、始まりの巫女……かな」

 

「待ちなさい……貴女、本気で言っているの……?」

愕然とした様子でパチュリーがそう尋ねるが、彼女はいつの間にか顔を上げた状態で、さびしそうに笑うのみで、何も話さなかった。

 その事が、どうしようもなく事実であると賢者に悟らせる。

――だが、賢者は直ぐに我に返った。

「ふぅ……後、もう一つだけ訊くわね?ルーミア……貴女は、力を取り戻してどうするつもりなの?」

もし、幻想郷に復讐を企んでいるのなら……親友とその妹の為にも、大いに力を振るうつもりでパチュリーは問う。

 ピリピリとしたその空気に当てられ、チルノたちも思い思いに構えた。

 そして、彼女の答えを待ち――

 

「――え?別にどうもしないよ?」

 

――聞こえてきた言葉に、皆揃ってずっこける。

「……本気で言っているのかしら?」

流石のパチュリ―でさえずっこけ、思わず苛々とした調子でそう尋ねた。

 すると、ルーミアは苦笑して、

「だってねぇ……幻想郷を滅ぼすなんてことしたら、イオに大目玉食らっちゃうもの」

美味しい料理も食べられなくなっちゃう。

 いかにもルーミアらしいその言葉に、だぁああ!とリグルが喚き、

「君、もうちょっとシリアスな発言とかできないの!?言うに事欠いて料理優先とか、あり得ないでしょ!!?」

すぱぱーん!

 音高くハリセンでルーミアを引っ叩き、眼を吊り上げて叫ぶリグルに、あははっと楽しそうに笑い、

「いや~そう言われても、イオの料理本気で美味しいんだから。仕方ないでしょ~?」

「ええい!その呑気な面が妬ましい……!」

本気で焦っていたと思しきリグルが、ぷんぷんと怒りながら何故かチルノまで一緒に正座させて説教を始めてしまう。

 その様子に、今度こそ安心をしたのか、ミスティア、小悪魔、そして大妖精がホッと安堵の溜息を洩らした。

「……まさか、身近な所で地雷があったとは思わなかった……」

「ほんとだよねぇ……ったく、ルーミアに何があったのか知んないけどさ、ちゃーんと、私達受け入れるつもりなのに……全く、ホントに人騒がせな」

「私、凄く近くにいましたし……死ぬかと」

思い思いに愚痴を言い合いながら、日中は過ぎていくのであった。

 

 

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