東方剣神録   作:上田幻

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今朝の依頼状、
『昼、道場にて待ちます』
と出した人物とは……?


第八章「仕合うは白玉楼の庭師」

さて、あんな事件があった後ではあるが、寺子屋にて昼食(塩握り三つと水が入った竹筒)を摂った後、イオは母屋の方に一旦戻っていた。

 今まで腰に佩いていた蒼刀『白夜』を片付け、ある二振りの刀を取りに戻っていたのである。

 というのも、今朝確認していた依頼の中にあった、あの匿名の仕合を依頼した人物に対し、

(道場破りだったらどうしよう……)

という不安があったためであった。

 何しろ、凶暴な妖怪も存在しているこの幻想郷である。

 こういう流派の道場の看板を掲げた以上、

『生意気な奴め、ちっと自分の位置を確認させてやらねえとなあ』

などと考える者がいないとも限らないのだった。

 とはいえ、そこは十八歳に故郷クラム国をでて七年間各地を放浪してきたイオの事、そう言う輩とあった時の行動を間違えるはずもなかったが。

 

 自室に戻り箪笥の中を少し漁っていると、朱塗の鞘に納められた、二振りの刀が出てくる。これぞ、イオが生涯の相棒として定めた、双刀『朱煉』の銘を持つ刀たちであった。

 『白夜』の方を箪笥の中にいれ、二振りの刀を腰に括り付け直すと、母屋の自室を出たイオはまっすぐ道場の方に向かう。

 母屋の十二畳の二階建て2LDKの作りと異なり、道場は広さおよそ三十畳ほどの剣道場と玄関のほかは何もない、真新しい家屋である。

 足運びの鍛錬が出来るように、隅から隅までニスがたっぷりと塗られた、板張りのその床は、出来たころから一ヶ月経った今でも、艶々と鏡のように美しく映し出していた。

 また、道場の壁には、

『一意専心』、『一所懸命』

などと、黒の布地に白く鮮やかに彩られた垂れ幕が掛けられており、道場に通う武術者にとっての指標となっているという。

 

 さて、そんな道場の中央に、一人の人物が得物らしき長い刀と、通常の長さの刀の二振りを傍らに置き、静かに座し誰かを待っている姿があった。  

 緑色のワンピースに、銀髪で生真面目そうな顔だちをしている可愛らしい少女が、その周りにアストラル体(いわゆる幽霊の事)のように見える白い物体を漂わせ、見てみる限り件の依頼主であることをうかがわせている。

(……本格的に、道場破りの類かな)

じとり、と背中に冷たい汗が流れるのを感じながら、それでもイオは傍目には何でもないかのようにふるまい、彼女から少し離れた位置で正座をすると、

「……えーと……依頼人の方でいらっしゃる?」

「――はい。冥界は白玉楼、剣術指南役兼庭師を務めております、魂魄妖夢と申します。本日は今朝依頼した件でこうして参りました」

「ああ、これはどうもご丁寧に。一刀流『蒼龍炎舞流』、二刀流『龍王炎舞流』が開祖にして当主、イオ=カリストと申します」

思ったより剣呑な雰囲気ではなかったため、若干安心しつつも警戒は怠らなかった。

 なぜなら、依頼内容が仕合か死合かによって、変わってくるからである。

 深々と一礼してくる彼女につられてお辞儀を返しつつも、

「――で、今回はどうして道場の方へ?」

「ええ……この幻想郷にてごく一部の人々に配布されている新聞がありまして。その内容に此処の何でも屋と道場の事について触れられていたものですから」

「へえ……そんな物が。――あれ?でも、新聞記者の方の姿をお見かけした事がありませんね。……どうして、此処の事が?」

そんな内容が配られたにしては、記者の人物が此処に取材しに来た様子もなかったため、不思議に思ってそう尋ねると、

「何でも人里の守護者の、上白沢慧音殿に訊いたそうです。これから、貴方が何でも屋として活動していく上で、その一助にと思ってされた事のようですが」

思い出すようにして、何所か明後日の方角を見ながらそう告げた彼女に、イオはほっこりと穏やかな笑顔を浮かべると、

「……そう、ですか。慧音先生が……有り難いことですねえ。――っと、そう言えばその新聞。此処にも配ってもらえることはできそうですか?」

一応、何でも屋として営業していく以上、幻想郷の些細なことにも気を配らなければならない為、情報収集の一環として、新聞が配達されるのはイオにとってかなり助かるのであった。

 すると、その言葉を聞いてふっと彼女の雰囲気が和らぎ、

「ええ……その記者とは知己にあたりますので。もし、何処かで会えたらお伝えしておきます」

「有難うございます。ぜひ、お願い致しますね。……っと、いけないいけない。依頼でこられていたんでした。改めて、御話をお伺いしてよろしいですか?」

ポン、と両手を合わせつつ彼女に依頼内容を促すと、再び表情を引き締めた妖夢が静かにうなずき、

「――ええ、この道場の師範である貴方に、依頼として仕合って戴きたいのです。それも……真剣にて」

 

――――ぞわり。

 

 その一言が放たれたと同時に、強大な殺気が道場内を席巻する。

「……つまり、道場破りをされに来た……そうおっしゃる訳ですか?」

「っみょん!?い、いえあくまでも貴方の実力を知りたい為だけであって、道場破りをしに来たわけでは……!!」

慌てたようにそう告げた妖夢であったが、イオは先程までの穏やかな笑顔を一変させ、ひたすら無表情のまま、

「……どう聞いても、そう受け取らざるを得ないのですが。立ち合いと言うならば、木刀でも叶う事のようにお見受けしますし」

「そうではありません!あなたの実力は計り知れないものであることは、未熟者である私であっても分かりました!そんな方と戦う時が来た時、魂魄流の当主であった私の祖父が、

『真剣で以て、彼の者と相対すべし』

と言うように申しておりまして!その教えに従ったまでの事なんです……!」

もはや必死の表情になっている妖夢に、イオはようやくにして無表情を解除すると、深々と疲れたような溜息をついた後に、

「……なかなか、愉快な指導をされる方のようで。まあ……その気持ちも何となく分かる気はしますが……もう少し、言い方というものがありますでしょう?」

あきれた表情でそう告げたイオに、妖夢は恥入った表情で、

「も、申し訳ありません……未だ、未熟者で」

と小さく縮こまってしまった。

 そんな彼女に再び溜息をついた後、苦笑を洩らした彼は、

「――分かりました。仕方がありませんが……今回は、真剣にて立ち合いを致しましょう。あくまでも、これきりにしていただけますか?」

「っ!ええ、ぜひともお願い致します!」

恐縮しきりだった彼女であったが、イオのその言葉にきらきらと嬉しそうな表情になり、深々と一礼をしたのであった。

 

――――――――

 

――時は午後一時半ごろ。

 道場を出た二人は、もし万が一に道場が壊れてしまう様な事があってはならないと、イオの自宅から少し離れた所にある、それなりに広い人里の広場のような所に来ていた。

 普段、此処では祭りがあった時にいくつか屋台が立ち並ぶ場所でもあるそうだが、今のところ、円形に広がるその広場の周囲に幾つか店があること以外は、そんなに騒がしい場所でもない。むしろ、巻き込まれる人の心配をしなくていい分、彼らが戦うに値する場所にはなっていた。

 その縁系に広がる広場の中心。

 イオと妖夢はそれぞれの得物を構え、対峙していた。

 イオは、こちらに来てから購入した、夏最中に着るような、甚平と呼ばれる麻で編まれた半袖の上着とズボンを着用しており、特徴的な蒼紺色の髪と金色の眼が目立つものの、顔立ちが整っている事もあって、似合っていると言えなくもない。

 そんな彼が両手に握っているのは、先程母屋から持ってきた、イオが本気を出すに値する人物であると感じた際にふるわれる、とある二振りの刀だった。

 名を双刀『朱煉』と号するその刀たちは、薄い灰色の地肌に波打つような刃紋が目立っており、通常約六十~七十三㎝の刀と比べて、脇差と呼ばれる短い刀身の刀に分類されている。

 どちらも四十九㎝という短い刀身であり、二刀流を志す握り手にしては些か珍しい長さだと言えた。というのも、通常脇差というのは、妖夢の持つあの長い刀と短い刀の様に、自身の本来の得物とその補佐として利用するものが多く、彼の宮本武蔵の『二天一流』の理念に通ずるものがある。

 何しろ、鉄の塊である刀というのは実に重い。ぎっしりと高密度に鉄が打ち固められているわけであるから、当然のことながら重いのである。その重量故に攻撃力も高められ、切る為だけに作られたというのも頷ける話ではあった。

 

閑話休題。

 

 そう言う訳であるから、イオのような脇差二刀流というのは珍しい分類に値すると言っていいだろう。何しろ、短刀よりも長く重い刀が二振りあるわけであるから、やすやすと振るえている時点で彼が相当の膂力であることがうかがえた。元々の二刀流の意義である、大小二刀流が攻防一体であるのに対し、彼の剣術が殺しに特化しているというのも、実に推測できるものである。

 故に、打刀より短いとはいえ、妖夢にとっては油断ならない相手だった。しかも、彼女自身が告げたように、彼の件の実力が並々ならない事は妖夢にとって最悪の事実であるとさえ言えるくらいだ。何しろ、ある種の超越者(武道に励む者には『壁を超えた者』と評されるらしいが)は、『理』に至る事で、ある技術が使えるようになるという事実があったからだった。

 

――――いわゆる、斬撃が飛ぶというその事実。

 

「――推して参る……!!」

叫ぶような言葉と共に、イオは静止していた広場の地上を大きく踏み込み、妖夢に切りかかって行った。小手調べとも言えるその右手の振りおろしに、妖夢も刀を抜き放ち、

「はあっ!」

と応戦し、迎撃を開始していく。

 すさまじいまでのその剣戟音に、次第に広場に人が集まり行く中、ある一人の人物が空に浮かびながら観戦していた。

「……おやおや、これは凄い事になって来ましたねえ……」

高速を超え、もはや亜音速にまで高められたその剣戟を眺めつつ、正確にその動きを紅きその眼で追いながらつぶやいたその少女。

 ばさり、と白の半そでシャツの背中から生えた黒い翼を打ち鳴らし、悠々と空を飛ぶその人物は、黒髪ショートの頭の上に修験者の如き紅い帽子をかぶっており、黒の布地のスカートを風に揺らめかせていた。

 見るからに人外の存在であることを伺わせる彼女は、実のところ、妖夢をイオに引き合わせた張本人である。

「まさか、私の新聞を読んで何でも屋に仕合を挑む知り合いがいようとは思いもしませんでしたよ。しかも、ある意味流派同士の戦いとさえ言えるでしょうね。またまたスクープの先取りを狙えますよこれは」

にやにやと、何処か嬉しそうにも、悪戯を企んでいるようにも見える笑顔を浮かべ、手に取材メモと見える小さめの紙の束を持ち、くるくると万年筆らしきペンを回していた。

「――それにしても、イオさん速いですねえ。下手すれば、あの白黒魔法使いにも匹敵するくらいの速さですよ。……まあ私には、まだまだ届きそうには見えませんが」

笑いながらそう呟く彼女は、その言葉の通りに正確に彼と妖夢の姿を追えているようである。

 

「――一刀流二之型『緋炎』、奥義『爆裂』」

「くうっ!?獄界剣『二百由旬の一閃』!」

イオの下からの振り上げた一撃と妖夢の上からの一撃が激突し、ガッキィン!!と、特徴的な金属音が鳴り響いた。

 防がれたその一撃に、しかしイオはそこで止まることなく、更なる連撃を追加していく。

「二刀連撃、一刀流壱の型『颯天』参式『風塵』……!!」

二刀流のまま、イオは順次一刀流の技を繰り出した。

 各々が元は十連撃であるその技が、二刀流になる事によって二十連撃になり、次々に真空刃を纏いながら妖夢に襲い掛かって行く。

「え……わ、わぁ!?」

続けざまに近くを真空刃が通り過ぎていく事に恐怖を感じつつ、慌てて妖夢がギリギリのところで避けていくが、反撃できたのは僥倖としか言いようがなかった。

「っく……調子に、乗らないでいただきたい……!!」

高速で振りぬかれたその刀が、あわや技を出したばかりのイオに直撃するかに思えたその時。

 

――一瞬にして後退し、自然体で刀を構えるイオの姿があった。

 

「…………!!」

当たらなかったことを悟ったのか、妖夢が悔しそうに唇をかむと少し息を整えてから、

「――速い、ですねイオ殿。まさか、此処まであしらわれる事になるとは、思ってもいませんでした。これでも祖父からは、『すべての技術を教えた。あとは自分で昇華しろ』と言われているのですが」

「あはは……元の世界では、『疾風剣神』なんて呼ばれていた位ですからね。むしろ、これくらいで速いなんて言っていたら、もっと追いつかなくなると思いますよ?」

 

――何せ、僕はまだあと二回、覚醒を残していますからね。

 

「「「「――――!!!???」」」」

衝撃の言葉に、その時広場に集まっていた人々も、対峙している妖夢も、空を飛んでいる彼女も、驚愕の渦に包まれた。

 

 そんな彼らに構うことなく、イオは穏やかに笑うと、

「――では、一段階ギアを……上げるとしましょうか」

妖夢にとって最悪の言葉と共に、ふっとその姿をかき消してしまう。

 同時に、背中に多大な悪寒を感じ取った妖夢が、直感に従って大きく地面に身を投げ出すと、いつの間にか背後に立っていたイオが、片方の刀を振りぬいた状態で立っていた。

「……ありゃ、避けられちゃった」

なんとものんきそうにつぶやくその姿に、妖夢は今になってがくがくと体が震えるのを止められない。

(い、今の、峰でなかったら……!)

確実に死んでいた事は確かであろう。

 一方、空を飛ぶ彼女も、いまだに驚きの念が冷めやらずといった様子で、

(なに、あれ……!?)

と戦慄していた。

 その理由は、彼女の能力である、種族特性とも言える『風を操る程度の能力』にある。

 その能力は、彼女の職種にも関わるスキルも付随しているのであるが、一番の特徴としては、字のごとく風を操る事にあった。

 付け加えるならば、子の外見が年齢を表す事など人間以外では殆ど無い幻想郷においては、千年という歳月を経ている彼女ともなると、その速さは種族を超えて幻想郷最速と言っても過言ではない。

 その、アイデンティティとも言える力を、真っ向から対立しているのが、今、目の前で起きている現象なのだった。

 

 恐怖のあまり、青ざめている妖夢に、イオは困ったように頭を掻くと、

「んー……どうも、今のはまぐれみたいですね。貴方の様子からして、御自分でも悟っていらっしゃるようですし。それだけ、貴方が今まで鍛えてきたことがよく分かりますよ」

 

――でも、それだけでは、僕には決して届かない。

 

 傲慢とも取れるその発言はそれでいて絶対の確信も伴い、妖夢の心に突き刺さった。

 茫然としてイオを見つめる妖夢に、イオは穏やかな視線を向けると、

「……ここじゃ、命のやり取りをするという事はもう、殆ど無いんでしょうね。スペルカードルールにしても、はたまた今、僕が『宵闇の妖怪』たるルーミアと過ごせていることからも、平和な空気がよく伝わってきますよ。――それが、悪いことであるとは決して言いません。むしろ、命のやり取りを元の世界でやってきた分、そのことを推奨すらします。……でも、平和だからこその、鍛錬であると言えましょう」

備えあれば、憂いなしとも言いますしね。

 穏やかにありながら、ただ、アルティメシア世界で最強と謳われていたからこその言葉を、ただ紡ぐのみ。

 

 だが、そこでイオは自然体のままであった構えを解くと、

「……ま、蘊蓄はさておいて。これで一応僕の実力が分かったと思いますけど……どうですか?貴女の御眼鏡には叶いましたか?」

何てことなさそうに、腰に下げられた鞘に納刀し肩をすくめながらイオはそう告げた。

 すると、直前まで茫然とした様子だった妖夢は、はっと我に返った途端、

「――か、完敗です。本当に、申し訳ありませんでした……!」

ズザザッと正座するとともに、きれいな土下座を決める。

 その姿に慌てて、

「え、ちょ、そこで土下座しちゃ……!!?ああもう、立って下さいよ!服が汚れてしまいますから!」

と、妖夢に駆け寄り無理やり彼女を立たせた。

 

 直後、

「「「「おおおおお……!!!」」」」

「おわ!?――って、いつの間にみんな居たの!?」

どうやら、集まってきていた群衆の中に紛れ込んでいたと見えて、道場に通っている人々がいる事に、イオは驚愕の表情を浮かべる。

 すると、中から一人の男性が出てきて、

「――やっぱり、俺達の師匠は凄いねえ!!」

バシーッと、イオに近づきながら背中をどやしつけた。

 余りの痛みで眼を白黒とさせつつも、

「いたあ!?ちょ、優吾いたんだったら早く言ってくれよ!気不味くなっちゃうだろ!」

と、この幻想郷に来てから一番弟子である優吾に、ちょっぴり羞恥心で頬を赤らめながらイオが抗議する。

 だが、彼はどこか飄々として、

「いやあ、仕方ねえだろうこんな仕合見せられてよ。最高の戦いだったぜほんと。――とはいえ、全然見えなかったけどな!」

「おう、俺も見えなかったぜ!」

「俺も俺も!」

自慢するような言葉の応酬に、イオはぴきっとこめかみを引き攣らせると、

「ああもう!自慢するようなことじゃないだろ!ほら、さっさと道場に行けって!」

半ば怒鳴りつけるようにして自分の弟子たちを促していった。

 

 ――時間がたち、ようやく人がそれなりにはけた所で、やっと立ち直れたらしい妖夢が、戸惑いの表情を浮かべながら、

「ええと……あの、私はどうすれば……?」

「ん?あー……ま、お開きにしましょう。こんな状態だと、もう仕合も何もないですし」

困ったように苦笑しつつ、イオがそう提案すると、妖夢もちょっぴり苦笑して頷き、

「……それにしても、随分と人里の方から慕われていらっしゃるのですね」

「まあねぇ……そこら辺は頑張りましたよほんとに。なにせ、もう元の世界には帰れない訳ですから。自然と人間関係には気をつけるようになりますって」

「そう、みたいですね……いい、なあ……」

言いながらあの喧噪を思い出しているのか、やや羨望の声と思われるつぶやきを聞き、イオはふっと頬を緩めると、

「あはは、羨ましいんでしたら、これからもいらして構いませんよ。今回の依頼の報酬はそれという事で。貴女との戦いも結構楽しかったですから」

「ええ!?ほ、報酬は用意していますよ!其れをお渡しする心算だったんですが!?」

「ああいやいや、そんなの必要ないですよ。今のところ、農家の人たちからもらえる食糧とか、御金があるおかげでそれなりに生活が成り立てていますから。ま、これも今回だけという事で、ね?」

にっこりと笑いつつイオがそう告げると、妖夢は不承不承ながら、

「わ、分かりました……でも、ありがとうございます」

と、最後には笑って見せたのだった。

 そんな風にして、彼らが談笑をしていると、一陣の風が舞い降りる。

 

「――あややや、これはこれは。白玉楼の妖夢さんじゃないですかー!」

ばさり、と何かがはためく音共に、二人の仕合を見ていたあの少女が割り込んで来たのだった。

「あ、射命丸文じゃないですか。珍しいですねこんな所で」

突然現れた彼女に、しかし妖夢が別段気にした様子もなしにそう返すと、

「あやや!ひどい言われようですねー。私だって、此処の甘味処は好きですから来ますよー」

ま、たまにしか来ていませんけどね。

 そう言って、目の前にいる少女――射命丸文――は笑う。

 

――その背中にある、黒き両翼を、バサバサとはためかせながら。

 

 




前話から、一気に二倍近く増えた文字数。
だが、反省も後悔もしない!
ただ面白ければ良かろうなのだぁあああ!



……嘘です。なんでこんなに増えたのか自分でも(ry
ともかく、此処まで読んでいただきありがとうございました。
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