デート・ア・ヴァルヴレイヴ   作:とりマヨつくね

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今回特に言うこなし


暴虐の王……そして

 

「シドー?」

 

 名を呼ぶが返事はない。

 それもそうだ。士道の胸には、巨大な風穴が空いていたのだ。

 

「シー、ドー」

 

 十香は膝を折り、士道の頰をつつくが反応がない。

 

「ぅ、ぁ、あ、あーーーー」

 

 数秒の後、理解が追いつく。

 この焦げ臭い匂いには覚えがあった。いつも十香を殺そうとしてきたASTのものだ。

 

「ーーーーやはりダメだった」

 

 十香は、この世界で生きられるかもしれないと思った。

 もしかしたら士道が居てくれれば、とても難しいかもしれないが、なんとかなるかもしれない。

 そう思っていた。

 だがーーーーやはりダメだった。

 世界はーーーー十香を否定した。それも最も最悪な方法で。

 

<神威霊装・十番>(アドナイ・メレク)!」

 

 瞬間。世界が悲鳴をあげた。

 世界が歪み、十香の体に絡みつき、荘厳なる鎧の形となる。

 

「ああ」

 

 喉を震わせる。

 

「ああああああああーー!」

 

 十香は叫んだ。天が響くように、地を轟かせるように。

 

「よくも……よくもよくも、よくもよくもよくもよくもよくもよくも!!」

 

 瞬きほどの間もおかず、十香は今しがた見ていた高台を移動していた。

 目前には無味な表情をした少女ーーーー折紙がいる。

 その顔を見ると、できるだけ抑えていた感情を溢れ出し、吠えた。

 

<鏖殺公>(サンダルフォン)ーー最後の剣(ハルヴァンへレヴ)!」

 

 それは巨大な剣だった。十メートルを軽く超えている巨大な剣だった。

 

「ーー嗚呼、嗚呼。貴様だな、我が友を、我が親友を、シドーを殺したのはお前だな」

 

 十香は淀んだ瞳で少女を見下ろしながら、()()に狂う。

 

「殺して(ころ)して(ころ)し尽くす……! 死んで()んで()に尽くせ」

 

 

                ◇

 

「司令……ッ!」

 

「分かってるわよ。ハルト、出番よーー」

 

「ね、ねえ、琴里」

 

「何かしら」

 

 琴里は呆然とした様子で、視線をハルトに向ける。

 モニタには胸がポッカリと風穴が空いた士道と、激怒した十香が暴れまわっていた。

 

「今……士道は……撃たれたんだよね?」

 

「そうね。ま、ちょっと優雅さが足りないけど、騎士(ナイト)としては及第点かしらね。今のでお姫様がやられてたら目も当てられなかったわ」

 

 

 琴里のさほど深刻でない調子の言葉にハルトは怒りを露わにする。

 

「なにを……なにを言っているんだよ!?」

 

 ハルトは琴里の元へと歩み寄り、抗議する。

 

「何が優雅さがないだよ。何が騎士(ナイト)としては及第点なんだよ。義理とはいえ、大切な家族だろう!?」

 

「ハルトくんッ!」

 

 神無月は声を上げて、ハルトを制止する。

 

「司令だって、士道くんを失って悲しくないわけーーーーオッフ!」

 

 神無月は擁護している途中で、その本人に弁慶の泣き所を蹴られた。

 そして今の今まで黙っていた琴里は、ハルトを制するように言う。

 

「落ち着きなさい。あんたの言い分もわかるけど、士道はこれで終わりなわけがないでしょう」

「え?」

「しッ、司令!あれは.......!」

 

 と、艦橋下段の部下が、画面左側にあるーーーー公園が映っているものをみながら、驚愕に満ちた声を発してきた。

 

「ーー来たわね」

「なっ……!?」 

 

 画面に映っているものに、ハルトは驚愕を露わにする。

 先ほどまで、なんともなかった士道の体から炎が発生し、胸の風穴を埋めてゆく。

 数秒のうちに炎が消滅し、士道の人差し指がピクリと動いた。

 

『ぶぁっちっ!? ってあれ?』

 

 と画面の士道がガバッと跳ね起き、少しだけ残った炎を慌てて払い消した。

 

「一体……どう言うことだ?」

「言ったでしょ。士道は一回ぐらい死んだって、すぐにニューゲームできるって……事情は今度説明してあげるから、あなたはお姫様を少しの間、エスコートしてきなさい」

「わ、わかった」

 

 まだ半分も状況を理解できていない様子だったが、急いで艦橋を出る。

  

「急いで士道を回収しなさい。彼女を止められるのはーーーー士道だけよ」

 

 

「死ねぇ! 死ねぇ! 死ねぇ死ねぇ死ねぇ!」

 

 十香は折紙に向けて斬撃を放ち、その度に凄まじい爆音と衝撃波を撒き散らしていた。

 

「よくもよくもよくもよくもーーーー!」

 

 彼女は目にいっぱいの涙をため、目の前にいる怨敵(折紙)をだけを殺すためにがむしゃらに振るった。

 折紙は随意領域(テリトリー)を展開していたが、十香にとっては些細なことだ。

 十香の一薙ぎでついに随意領域は破壊され、折紙の体は大きく吹き飛ばされた。

 そして十香はゆっくりと剣を振り上げ、 

 

「ーーーー終われ」

 

 冷たく言うと大剣を振るった。

 だが、その渾身の一撃は折紙に当たることはなかった。

 なぜなら二人の間に割って入った存在ーーーー紅蓮の鎧が右手から赤い残光発生させ、十香の一撃を弾いたからだ。

 

「ッーーお前は誰だ!」

「……僕だよ、十香」

 

 十香の問いかけに答えた紅蓮の鎧から発せられたのは、聞いたことある声だったからだ。

 

「その声……ハルト……ハルトなのか!?」

「ああ、そうだよ。十香、こんなことはやめてくれ。士道だってこんなこと求めてない」

「そうかもしれない……だけど、だけどだ。その女はシドーを……このまま私の前に立つなら、お前であっても容赦はーーーー」

「本当にそう思っているのか!」

 

 十香の言葉を遮り、ハルトは言う。

 

「どういうことだ?」

「どんなに非力だったとしても、一生懸命、君を救おうとした男があんな簡単に死ぬもんか!」

 

 十香には意味が分からなかった。

 十香はあの時、確かに士道が死んだことを見た。

 なのにハルトは、()()()()()()()()()()()ようなことを言っているのだろう。

 

「だが現に士道は……」

「アイツはまだーーーー諦めていない」

 

 その時。

 

「十ぉぉぉぉぉぉぉ香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「シードー……?」

 

 十香はあまりの出来事に、理解できていない様子で答えた。

 そして空に立つ十香の助力を得るような格好で、その場にとどまる。

 

「よ、よう……十香」

「シドー……ほ、本物なのか」

「ああ、多分」

 

 士道が言うと、十香は唇を震わせた。

 

「シドー、シドー、シドー……ッ」

 

 感動の再会。

 その様子を少し下で見ていたハルトだったが、すぐに異変に気付いた。

 十香の振りかぶったままの大剣が、まばゆい光を放ち始めたのだ。

 

「なーーなんだこりゃ……!」

 

 やっと異変に気付いた士道は言う。

 

「……しまった! 最後の剣(ハルヴァンへレヴ)の制御を誤った。どこかに放出するしかない……!」

「どこって、どこに……!」

 

 士道の問いに、十香は黙って下を見た。

 

「十香、それだけはダメだ」

「で、ではどうしろと言うのだ。もう臨界状態なのだぞ」

「……っ、それは……」

 

 士道が代案を考えていると、上昇してきたハルトが話しかける。

 

「士道、琴里から教えられた方法をやるんだ!」

「……ッ!」

「士道、時間がないんだ。やり方はわからないけど、急がないとまずいことになる」

 

 ハルトが急かされ、士道は腹を決めた。

 

「十香! 俺と……キスをしよう!」

「何ーー!?」

「い、いいや、忘れてくれ。他の方法をーーーー」

「キスとはなんだ!?」

「は……!?」

「早く教えろ!」

「そ、それは……唇と唇を合わせーーーー」

 

 と、士道の言葉の途中で。

 十香が何の躊躇いもなく、桜色の唇を、士道の唇に押し付けてきた。

 

「ーーーーーーーーー!?」

 

 力一杯に目を見開き、声にならない声を上げる。だって十香の唇が、柔らかくてしっとりとしてて十香が昼間に食べていたパフェの味がした。

 すると、十香が纏っていたドレスのインナーやスカートを構成する光の膜が、弾けるように消失した。

 そして緩やかに落ちていった。

 

「ぷは……!」

 

 息継ぎをするように、十香との唇を離した。慌てて胸元を起こす。

 

「ち、ちちちち違うんだ十香、俺はーーーー」

「み、見るな、馬鹿者ーーーー!」

「す、すまん……!」

 

 裸になった十香がぴたりと、身体を触れあわせている。

 

「……これで見えまい」

「っ、あ、ああ……」

 

 本当にこれでいいのだろうか、と思ったが、身動きを取れず、そのまま固まる。

 

「……シドー」

 

 十香は消え入りそうな声を発してきた。

 

「また、デェトに誘ってくれるか……?」

「そんなもん、いつだって連れていってやる」

 

 士道は強く首肯した。

 そして少し離れた所でハルトは、静かにヴァルヴレイヴを解除しその場を去った。

 

 

 

 

  

 

 

 

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