今回も頑張ったよ。
楽しんでねー!!
※コーヒーで決まっているだけなので、心配しないください
「……はあー……」
士道は大きなため息をつきながら、おじいちゃんのような足取りで進んでいく。
顔には疲労に染まり、目にかかるぐらいの髪にもこころなしか艶がない。
「……はぁ」
溜息をもう一つ。
「最近、溜息が多いね。アイスでも奢ろうか」
「いや、いいよ……気にするな」
そこで隣のハルトが、士道のことを心配する。
だがそれは無理もないだろう。
十香と折紙はあの後も喧嘩をし、それを見つけた士道が止めに入るというのを何度もしていたのである。
しかも、そんなバトルは今日に始まった話ではない。
先月十香が、士道の通う学校に転入してきてからというもの、毎日のように二人の小競り合いは続いていたのだ。
ーーだが、それがただの口喧嘩であれば、士道は止めやしないだろう。
「……」
士道は先月目にした十香と折紙の姿を思い起こす。
片や、世界を殺す災厄と呼ばれる『精霊』。
片や、陸上自衛隊・対精霊部隊の魔術師とかいうわからない集団。
そんな二人の間に、一々割って入る自分の気にもなって欲しい所だ。
「……ったく、あの二人、もう少し仲良くできねえのかよ」
言ってから、士道は後頭部をかいた。
だが……流石にこれが続くようでは士道の体力が保たない。
士道は今まで一番大きな溜息を吐こうとしーー。
「ん?」
不意に顔を上げた。
突然、ポツン、と首筋に冷たいものが垂れてきたのような気がしたのだ。
「うわ……雨かよ。おいおい、天気予報では晴れって言ってたじゃねえか」
「本当にね。とにかく急ごう」
二人は、最近的中率の低い気象予報に恨み言を呟く。
慌てて、小走りで家へと急ぐ。
しかし、雨はみるみるうちに激しさを増していった。
「おいおい、マジか……」
士道にとっては、服が貼りついて気持ち悪いとか、風を引いたら嫌だなという思考より先に制服が明日まで乾くかという思考のほうが先に来た。
できるだけ濡れぬように、無駄な努力をしながら、自宅への道を走る。
だが、丁字路を右に曲がったところで。
「あ……?」「え……?」
ふと、前方より気になるものが現れた。
「女ーーの子……?」
士道の唇は、そんな言葉を紡いでいた。
そう、それは少女だった。
目の前に現れたのは可愛らしい意匠の施された外套に身を包んだ、小柄な影。
顔は窺えない。というのも、ウサギの耳のような飾りのついた大きなフードが、顔をすっぽりと覆い隠していたからだ。
そしてもっとも特徴的なのは、その左手だ。
いやにコミカルなウサギ形のパペットが装着されていた。
そんな少女が、楽しげにぴょんぴょんと飛び跳ね回っていた。
「…………」
士道は眉をひそめて、その少女を凝視した。
頭の中を、疑問符が通り抜ける。
なぜ傘をささずに、雨の中を跳ねているのかとか、ちゃちなものではない。
それよりも自分はなぜーーーーあの女の子に目を奪われるのだろうか。
不思議な感覚。前にも、しかもつい最近どこかで感じたことがある気がしてならない。
「ねえ、士道」
「なんだ……?」
ハルトは逡巡の迷いの後、恐る恐る言った。
「あの娘……僕には普通の女の子には見えないんだけど……こう、雰囲気が十香に似ているというか……」
「……!?」
ハルトの言葉に士道は息を詰まらせ、改めて少女に視線を向ける。
確かに……この感覚はハルトの言う通り十香ーーーーつまり精霊に似ている。
だが精霊の力は士道が封印したはずーーーー。
もう雨の冷たさも、濡れた衣服のことも気にならなくなっていた。
ただ、冷たい雨垂れのカーテンの中、軽やかに踊る少女に目を釘付けにされーーーー。
ーーーーずるべったぁぁぁぁぁぁぁんッ!
「「……は?」」
一瞬、何が起きたかわからなかった。
だが脳が徐々に理解をした。
……盛大にこけた。
「……お、おい!」
士道は慌てて駆け寄ると、その小さな身体を抱き抱えるように仰向けにしてやった。
「だ、大丈夫か、おいーー」
そこで初めて少女の貌かおを見取ることができた。年の頃は士道たちの妹・琴里と同じくらいだろうか。ふわふわの髪は海のような青。柔らかそうな唇は桜色。まるでフランス人形のように綺麗な少女だった。
と、そこで少女が蒼玉サファイアのような瞳を見開く。
「あぁ……よかった。ーー怪我はないか?」
士道が少女に問うと、彼女は顔を真っ青に染めて目の焦点をぐらぐら揺らし、士道の手から逃れるようにぴょんと跳び上がった。そして距離を取ると、全身を小刻みに震わせ、士道を怖がるような視線を送ってくる。
「……ええと、そ、そのだな。俺はーーーー」
「……! こ、ない、で、……ください……っ」
「え?」
「いたく、しないで……ください……」
少女は怯えた様子で言ってくる。士道が自分に危害を加えるように見えるのだろうか、その様は、まるで震える小動物のようだった。
「ええと……」
士道は対応に困っていると、視界の端に何かの影が映る。
瞳を動かすと、ハルトがパペットを持っていた。
先程、少女の手から抜け落ちてしまったのだろう。
「これ、君のでしょ」
ハルトは優しく話しかけながら、パペットを少女に差し出す。
「……!」
少女は目を大きく見開き、少し近づくのを躊躇うが、士道に近づき、パペットを奪い取り、それを左手に装着する。
すると突如、少女はパペットの口をパクパクと動かした。
『やっはー、悪いねおにーさん達。たーすかったよ』
腹話術だろうか、ウサギは妙に甲高い声を発していく。
そしてハルトの方へと向けると、ウサギのパペットが言葉を続ける。
『ーーんで、そっち茶髪のおにーさんさ、起こしたときに、よしのんのいろんなトコ触ってくれちゃったみたいだけど、どーだったん? 正直、どーだったん?』
「えぇ……?」
パペットの言っている意味が分からずハルトはそう呟くが、そのパペットは笑いを表現するかのようにカラカラと身体を揺らした。
『またまたぁー、とぼけちゃってこのラッキースケベぇ。……まぁ、一応は助け起こしてくれたわけだし、特別にサービスしといてア・ゲ・ルんっ』
「は、はあ……」
「あ、ああ、そう」
ハルトは苦笑しながら、パペットが言ってくるのに返す。
『ぅんじゃねえ。名前も知らないお二人さん』
「あーーおい」
士道は声をかけるも、少女は反応を示さず、そのまま曲がり角を曲がり姿が見えなくなってしまった。
「なんだったんだ……アイツ」
「ねえ……士道。アレってセクハラに入るのかな?」
「……違うんじゃないかな」
はい。第二話です。
少しグダリましたね。すいません。
でも精霊との出会いはしっかり書きたいんですよね〜。
だから次回からは、もう少しサクサク進められればいいですね〜。