デート・ア・ヴァルヴレイヴ   作:とりマヨつくね

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投稿。


一つ屋根の下

 

 雨に当たりながら数分、二人はなんとか自宅に辿り着いた。 

 

「「ただいま」」

 

 返答はない。

 ただしテレビの音が聞こえるため、おそらく琴里はリビングにいるだろう。

 

「風呂、先に使っていいよ」

 

「ああ、そうさせてもらうよ」 

 

 雨でぐっしょりとした靴と靴下を脱ぎ、ペタペタと音を立てながら廊下を歩く。

 そして脱衣場の扉を慣れた調子で開ける。

 

「ーーーーッ!?」

 

 瞬間、士道は身を凍らせた。

 ーー脱衣所に、ここにいるはずがない少女がいたからである。

 

「と、十香……?」

 

 呆然と呟く。

 そこでようやく、十香が肩をビクッと震わせ、顔をこちらを向ける。

 

「なッ……し、シドー……!」

 

「! あ、ち、違うんだ……これはーーーー」

 

「いっ、いいから出て行け!」

 

「ぐぇふぅ!」

 

 見事なストレートを叩き込まれ、後方によろめき倒れる。

 間髪入れずに、ぴしゃんと脱衣所の扉を閉める。

 

「けほっ、けほっ、あんにゃろ、本気で殴りやがって……」

 

「あの士道? 十香が本気で殴ったら、それどころじゃないと思うよ」

 

 はたからその様子を見ていたハルトが、半眼を士道に向けながら言う。

 確かに言われてみれば、いくら力を封印されているとはいえ、精霊の十香が本気で殴ったら今士道は上下が着脱式になっているだろう。

 と、脱衣所の扉が少し開かれ、頰を真っ赤にした十香が顔を覗かせていた。

 

「……見たのか、シドー」

 

 ジトーと見てくる十香に対して、士道はブンブンと首を横に振る。

 一応はそれで納得したのか、十香は「むう」と唸りながら扉を開ける。

 流石に服は着ていた。

 

「なんで十香がいるの?」

 

「そ、そうだよ。<フラクシナス>にいるんじゃ」

 

 ハルトと士道の反応に、十香は眉を顰める。

 

「なに? 妹から聞いていないのか? なにやら訓練だとかで、しばらくここに厄介に慣れと言われたのだ」

 

「「ーーーー!?」」

 

 二人は驚き、急いでリビングの方に向かう。

 

「琴里ィ!」

 

「これは一体どういうこと!?」

 

 まるで打ち合わせたかのように、二人は叫ぶ。

 

「おー? おにーちゃん、おかえりー」

 

「おう、ただいまじゃなくて! なんで十香がいるんだよ」

 

 思わず普通に返答してしまうが、士道は首を横に往復をする。

 

「お前が十香に連れてきたのか……!?」

 

「落ち着け、五河士道。コーヒーでも飲め」

 

「お、おう、ありがとう……もう少し砂糖を入れてくれないかーーーーってエルエルフ!? それに令音さんも……」

 

 そこにはコーヒーを差し出すエルエルフと大量の砂糖を入れる令音

 

「……すまない。砂糖を使いすぎたかね……」

 

「ああ、大丈夫ですよ。まだ棚にスペアがあったと思うので、後で僕は詰めときます」

 

「いや、そうじゃなくて!」

 

 たまらず叫んだ。

 

 

                 ◇

 

「で? 一体どういうことった?」

 

 部屋着に着替えた士道は、テーブルの向かいに座る令音、琴里、エルエルフに視線を向ける。

 今四人が居るのは、琴里の部屋だ。

 ちなみに十香は今、アニメの再放送に夢中になっている。その際にハルトを生贄に捧げたのでしばらくは大丈夫だろう。

 

「んーとね。今日からしばらくの間、十香がうちに住むことになったのだ」

 

「だから、なんでそうなったんだって聞いているんだあぁぁぁぁぁ!」

 

「落ち着け、五河士道。ちゃんと説明する。だから落ち着け……わかったか」

 

「お、おお」

 

 エルエルフのなんともいえない威圧感に気圧されてしまう。

 エルエルフが目配せをすると、令音が頷き口を開いた。

 

「理由は大きく二つある。……一つは十香のアフターケアのためだ」

 

「アフターケア?」

 

「彼女は君との口づけによって精霊としての力は封印された。……今、シンと十香の間には、目に見えない経路つまりパスのようなものが通っている状態なんだ」

 

「パス?」

 

「……簡単に言うと、十香の精神状態が不安定になると、君の身体に封印してある力が、逆流してしまう恐れがあるということさ」

 

「なッ……」

 

 封印された十香の力が逆流した場合それはつまりあの強大なる力をまた彼女が有してしまうということだろう。

 

「……つまり夜刀神十香はお前といるときが最も数値が安定している」

 

「は、はあ……」

 

「……と、いうわけで、精霊用の特殊住宅ができるまでの間、十香をこの家に住まわせることになったんだ」

 

「二つ目の理由だけど、これはあんたたち二人の訓練でもあるわ」

 

 リボンを白から黒に変えた琴里が発する。

 

「待ってくれ、訓練ってまだやんのか? 十香の力は士道が封印して……」

 

「精霊が一人だと、誰が言った」

 

 エルエルフの言葉に士道は思考が一瞬固まる。

 

「……エルエルフの言う通り。空間震を起こす特殊災害指定生物ーー通称・精霊は、十香だけではない。十香の他に数種が確認されている」 

 

「なっーー!?」

 

 士道は心臓が引き絞られるのを感じた。

 

「……シン、君には今後も精霊との会話役を任せたい」

 

「……っ、そんなの嫌に決まっているだろ」

 

「ふうん? 嫌なの?ハルトは戦うみたいだけどね」

 

「は? それはどう言うーー」

 

「実はね、ハルトにこの事を話しているのよ。それで快く了承したわ。『僕に手伝わせてくれ』ってね。もし士道が嫌だと言うのなら止めないわ。だけどその場合、空間震によって世界がボロボロになっていくのを黙って眺めるかーーそれとも、精霊がASTに殺されるのを待つか。はたまたハルトにずっと頼り切るか。どれになるでしょうかね」

 

「……ッ!」

 

 別に失念したわけではない。

 だが改めてその事実を言われると、心が痛む。

 士道だって中身は普通の高校生だ。もうあんな思いはしたくない。

 だけれどその心の中には、精霊を救いたいと思っている自分もいることも気づいている。

 

「ーー琴里。もう少しだけ時間をくれないか」

 

「ま、今はそれでいいわ。それじゃ令音、一応訓練は進めてーーーー」

 

 琴里が令音に指示を出そうとした時、

 

 ーーブーブー! 

 

 とサイレンのような音が、士道以外の全員のスマホから一斉に鳴る。

 

「なっ、なにがーーーー」

 

 士道が言い切る前にエルエルフは、部屋を出てリビングに向かう。

 士道達もエルエルフの後に続くように、リビングに入ろうとした時、

 

「おい! ハルト、どうかしたのか! どこか痛いのか……返事をしろ!」

 

 と十香の声が聞こえ、士道はリビングに入る。

 

「グッ……」

 

 そこには苦しそうに呻くハルトの姿があった。

 

「し、シドー。ハルトが急に苦しそうにしてーー」

 

 士道の存在に気づいた十香が助けを求めるが、士道にも何が起こっているのかわからず立ち尽くしかなかった。

 

「夜刀神十香。今すぐに離れろ……!」

 

 珍しくエルエルフが焦りを見せた瞬間。

 

「ぐああああああああ!!」

 

 一際、苦しそうな声をあげ、顔面に赤黒いX印が出現する。

 

「な……どうしたのだ。ーーーーハルト?」

 

 十香が恐る恐る話しかけると、ハルトは荒い息をあげながら視線を向ける。

 

「ああ……ああああああああーーーーーーーーガッ!」

 

 まるで獣ような雄叫びをあげて十香に襲おうとするが、先に回り込んだエルエルフのみぞおちに鉄拳をお見舞いする。

 かなりの衝撃だったのか、そこでハルトは意識を失った。

 

「一体……どういうことだ……?」

 

 

 

 




ハルト君……ついに起きちまったか……。
十香ちゃん、怖い思いをさせてすまない。
そして真実を知ることになる士道は、何を思い、何を為すのか……。
次回もお楽しみに!
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