デート・ア・ヴァルヴレイヴ   作:とりマヨつくね

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それは非道く歪な慈悲で

 

「……ッ、ここは?」

 

 意識が覚醒したハルトは周囲を見渡してみると、自分が<フラクシナス>の医務室のベットで寝ていることに気づいた。

 そこで気を失う前の記憶を思い出していく。

 

「そうだ……僕、また……」

 

 ヴァルヴレイヴに乗ると、大量にRUNEを消費する。

 そのため補充をするために、自我を失い、まるで獣のように誰かを襲う。

 前世にいた時は、エルエルフを『餌』としてRUNEを補充していたのだが。 

  

「十香を、やっぱり……怖いなーーーー」

 

 ハルトは震える手を必死に抑えながら、誰もいない医務室で何かを堪えるように小さな声で言った。

 

「まったくなんて声を出してんだろ」

 

 プシュっとスライド式の自動ドアが開く音とともに、懐かしい声が聞こえ、ハルトは目を見開いた。

 だってその声はここにも、()()()にもいるはずもない爽やかな声だった。

 

「キューマ……先輩?」

 

 声の方へと視線を向け、ハルトはその名を口にした。

 そこにいたのは、マギウスの戦いでハルト達を庇って死んでしまった犬塚キューマだった。

 

「おう。久しぶりだな」

 

「っ……あ、ああーー!」

 

 その時、頰に何かが暑いものを感じた。

 さっきまで必死に堪えていたものが、涙が溢れ出てきた。

 そばに寄ろうとして、ベットから降りようとしたが足に上手く力が入らず、こけてしまいそうになる。

 

「おっとと、おいおい、危ないじゃないか」

 

 

 キューマはハルトをうまく受け止めると、素直に心配する。

 だが今はそんなことはどうでもいい。

 

「ごめんなさい……あの時、僕が……僕がもっと強ければ……!」

 

 ハルトはキューマのワイシャツの強く掴みながら、嗚咽まじりに叫ぶように謝罪を繰り返す。

 その様子にキューマは、ふっと息を吐く。

 

「もう、もういいんだ。アレは俺がやらなかったら、連坊小路も、二宮も、指南も、みんな助けられなかった。それに……仇は取ってくれたんだろ? なら、もういいよ」

 

「先輩……」

 

「俺もいるぜェー!」

 

「え?」

 

 開けっ放しの扉から、明らかに不良みたいな少年が入ってきた。

 山田ライゾウ、キューマやハルトと同じあちらの世界で一緒に戦った神憑きの一人だ。

 

「山田……」

 

「サンダーだ!」

 

 ハルトがその名を呼ぶと、山田は急いで訂正を入れる。

 ライゾウはなぜだか本名で呼ぶと、いつもこんな感じで訂正を加える。

 

「君もこちらの世界にいるということは、あっちの世界で……」

 

 再び顔を曇らせそうになったハルトに、ライゾウはゲンコツをぶつける。

 

「いいか! 俺はお前のそういうところが嫌いなんだよ! あと、もう俺らは別の人生を歩んでんだ。グチグチ言っている暇があるなら、今を目一杯楽しく生きろ」

 

 ライゾウの言葉にハルトはハッとし、急いで涙を拭いた。

 

「うん……そうだね。ありがとう」

 

「へッ、わかればいいんだよ」

 

「サンダーの言う通りだ。そんなことよりもどっか上手い飯を食いに行こうぜ。あの黒髪の女の子も、それで機嫌を直してくればいいんだけど」

 

「黒髪の女の子……ってもしかして十香に何かあったの!?」

 

「ああ、実はなーー」

 

 それからキューマは事の顛末を話した。

 精霊が出現し士道がコンタクトを取りに行ったこと、十香のいつの間にか転送装置を使って士道が精霊と一緒にいることを見られた。

 対話は失敗し、おまけに十香が拗ねてしまったというわけだ。

 

「僕が寝ている間に、そんなことが……」

 

「俺たちも努力はしたんだがな。まさかあの娘があの場にいるとは、誰も思わなかっただろうな」

 

「それで今は十香はどんな状態?」

 

「部屋に立てこもっている」

 

                   ◇

 

「おーい、十香ぁ〜……」

 

 困惑に染まった声を発しながら、指導はコンコン、と扉をノックした。

 しかし……反応はない。

 

「十香……頼むよ。話を聞いてくれ……」

 

 もう一度、そう言いながら扉を叩く。

 だが来たのは返事ではなく、ドンッ! と凄まじい音がして、家全体がビリビリと震えた。

 

「……ふん、構うな。……とっととあっちへ行ってしまえばーかばーか」

 

 そしてそれきり、また何も反応がなくなる。完全に、拗ねてしまった。

 

「はあ……どうしろってんだよもう……」

 

 士道は途方に暮れ、額に手をあてながら陰鬱な調子で溜息を吐き出した。

 士道がいるのは、五河家二階の一番奥ーー下手くそな字で『十香』と書かれた紙が張っている扉の前だった。

 『よしのん』が消失(ロスト)してからおよそ五時間。

 <フラクシナス>回収してもらい、家に帰ってこられたのはいいのだが……家に入るなり、十香が部屋に籠って出てこなくなってしまったのである。

 

「五河士道、どんな感じだ」

 

 リビングで待機していたエルエルフが、二階に上がってきた矢先にそう聞いてきた。

 

「どうもこうも……さっきから呼びかけているんだが、全然ダメだ。話すら聞いてくれない」

 

「なるほど。数値を見るに、一時的に顕在化した力が経路(パス)を通して再封印されたようだがーー早めに機嫌を直してもらわないと困る」

 

「機嫌をって……どうやって」

 

「……仕方ない。ここは俺が受けよう」

 

「い、いいのか?」

 

「ああ、任せろ。潜入任務でこう行ったことに慣れている」

 

「そ、そうか」

 

 それは心強い。

 エルエルフが十香の部屋の前に立つと、先ほど同様、扉をノックをする。 

 

「誰だ?」

 

 警戒心を剥き出しな口調で、十香が問う。

 

「エルエルフだ。すまないが、少し話をーー」

 

「ハムエルフと話すことなんてない!」

 

「は、ハム……?」

 

 十香から発せられた単語に、エルエルフは軽く動揺する。

 しかしめげずに十香に話しかけようとしたところで、

 

『……シン、エルエルフ。もしよければ、その件は私に任せてくれないかな?』

 

 突如、右耳のインカムから令音の声が聞こえる。

 

「え……? それは構いませんけど、なんでまた」

 

「……こういうのは、当事者(シン)がいない方がいいのさ。女心の機微だ。覚えておきたまえ」

 

「は、はあ……」

 

「了解」

 

 士道は困惑気味に頰をかき、エルエルフは首を縦に振った




ああああーー! やばい自分で作っておいて泣けそう。
そして山田、お前そんな知能指数高かったけ、いや冷静に考えたらASTとの戦闘の時、殴ってばっかだったか。
そう考えると、山田は山田なりに殺さないように努力してるんだな〜偉いぞ!
あとやっと出せたハムエルフWW
さて、次回から物語が大分動きます。
期待してください。
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