デート・ア・ヴァルヴレイヴ   作:とりマヨつくね

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今回で終わらせるつもりだったのに……長くし過ぎた。
あと、期末考査が眼前に見えてきたので今話で、一旦休憩させてもらいます。
それでは本編へ。


切り開く光、溶かす心②

 ーーーー十五分前。

 

『ーーB分隊、先行しなさい。<ハーミット>を追い込むわよ。C分隊とD分隊はヴァルヴレイヴを抑えなさい』

『了解!』

 

 通信機から、燎子と、それに応じるAST隊員たちの声が聞こえる。

 折紙は、AST隊員二名とともに、微妙に進行方向を変えて、〈ハーミット〉を追う本隊から離脱した。

 目標地点は、およそ一キロメートル先の交差点。

 通常であれば目を開けてすらいられないような風圧や、意識が朦朧としてしまうほどのGをテリトリーで中和しながら、目標地点に到達する。

 

「……っ」

 

 そして空を蹴るような感覚でブレーキをかけ、方向転換し、視界には、こちらに進んでくる〈ハーミット〉と人形の姿が見て取れた。B分隊三名はそれを確認すると同時に左右に展開、脳内に指示を出し、スラスターの脇に装備された二本のアンカーユニットを、地面に向かって射出した。

 合計六本のアンカーユニットから光の糸が伸び、互いに絡みあって広大な網の形作る。

 

「レイザーウェブ展開完了、β機、γ機と結合を確認」

『よし、追い込むわよ!』

 

 折紙が言うと、〈ハーミット〉を追っていた燎子の叫び声が通信機越しに響いた。

 

「……っ!?」

 

 そこにきてようやく〈ハーミット〉が待ち伏せに気づいたらしい。

 だがーーーーもう遅い。

 前方、そして左右には網の目状に編まれた魔力の光が。

 後方には燎子たちA分隊の追撃が。

 そして上方には、レイザーウェブを張り終えた折紙たちB分隊が浮遊している。

 

「ぁーーーあ、あ、ぁぁ……ッーーーー」

 

 人形の背に張り付いた〈ハーミット〉が、目を見開き絶望に染まった声をだす。

 

『総員ーーーー攻撃!』

 

 しかし、ASTに精霊に対する同情や慈悲などはなかった。

 号令とともに、AST隊員全員が、標準装備である近接専用レイザーブレードを抜き、〈ハーミット〉に襲いかかった。

 ーーだが。 

 

「ぅ……ぁ、ぁ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーッ」

 

 <ハーミット>が叫ぶと同時、その周囲に、凄まじい風が巻き起こった。

 あたりに降り注いでいた雨粒が雹のように凍りつき、<ハーミット>を覆うように渦を巻いて、吹雪のドームを形作った。

 

 

 

 ーーーー現在。

 

「ーーあれはなんだ、シドー!?」

 

 凍った地面をスノーボートのように滑る鏖殺公の上に、十香に支えられながら辛うじて乗っていた士道は、十香のそんな言葉に顔を上げた。

 

「なっ……」

 

 なんとも奇妙な光景だった。

 地面に吹雪が渦巻き、綺麗な半球形を作っておりーーその周囲にASTが仰々しい武器を構えていた。

 その様子に驚いていると、進行方向に二つの影が視界に入った。

 

「十香、止まってくれ」

 

「う、うむ」

 

 十香が返事をすると、鏖殺公は徐々にスピードを落とし、最終的に影の前で止まった。

 そしてその姿を見て、士道と十香は目を丸くした。 

 そこには四糸乃と初めて会話を交わした時に現れた、青と黄のヴァルヴレイヴが並んでいた。

 

「お前達は……あの時の……!」

「よ、二日ぶりだな、色男。待ってたぜ」

「ったく……遅すぎだってんだよ」

 

 青いヴァルヴイレヴが軽く茶化まじりに、黄色いヴァルヴレイヴが少し苛立った様子で言う。

 

「先輩、山田、無事でよかった……!」

「サンダーだ!」

 

 ハルトが二人の身が案じた言葉を掛けると、黄色のヴァルヴレイヴこと、山田が修正を入れる。

 そこでインカムから琴里の声が聞こえる。

 

『どうやら全員が揃ったみたいね。十香は思わぬ戦力だけど、今は都合は良いわ。令音、説明お願い』

『……分かった。解析の結果、あの氷の結界は霊力や魔力を探知すると、その防性を強化され、一瞬で凍結されてしまう。仮に凍結されなかったとしても、吹雪の中で生成された氷柱

が散弾銃のように降り注ぐ。ふむ……良く出来ている』

『困ったことになったわね。あれじゃあ誰も四糸乃に近づけないわ』

「……近づくにしても、士道じゃないと意味ないし、どうするか」

「そうとも限らないかもしれない」

 

 打つ手なしかと思っていたが、エルエルフが小さく言葉を発する。

 

『なんですって?』

「何か思いついたのか?」

『ああ……作戦……と大袈裟のものではないが方法はある。無論、博打が過ぎるがな」

 

 それを聞いた士道は十香に目を向ける。

 

「十香……ごめん。お前にまた辛い思いをさせるかもしれない」

 

 そう士道が言った瞬間、傍らに立っていた十香が言葉を発する。

 

「シドーは、四糸乃とやらをなんとかする方法に心辺りがあるのだな?」

「……っ、や、その……可能かどうかはーー」

『可能だ』

 

 そこまで言った士道だったが、エルエルフがはっきりと言い切る。

 それを聞いた士道は、決意の表情を浮かべて言葉を紡ぐ。

 

「いや、ある。絶対に……なんとかしてみせる」

「そうか」

 

 そう言った十香は唇の端を上げる。

 

「十香……?」

「そちらはシドーに任せる。ASTとやらの方は私に任せろ。絶対に、シドーの邪魔はさせん……それと、その土台は士道の意思で自由に動かせるようになっている。自由に使ってくれ」

 

 十香はそう言うと、静止している鏖殺公の先端から一振りの剣を取り出す。

 

「安心しろ、五河士道。この作戦で必要なのは、お前と時縞ハルトだけだ。そのため夜刀神十香の護衛に犬塚キューマと山田ライゾウをつかせる」

「……わかった。十香、お前だけだと何かあった時に心配だから、この二人も連れて行ってやってくれ。きっと力になってくれる」

「……わかった。そことそこの貴様、私が先陣を切るから援護を頼む」

「はいはい、人使いが荒いお姫様で……あと、俺の名前はキューマだ。んで、そこの黄色の奴が山田だ……覚えておいてくれ」

「サンダーだ! おい、そこの女! 間違えるんじゃねぇぞ」

「うむ! ではキューマ、山田、行くぞ!」

「人の話を聞きやがれ!」

 

 十香が背もたれを蹴って折紙の方まで飛翔し、キューマと山田がその後を追って飛んで行った。

 

「なっーーあいつ……ッ!」

「士道、今は四糸乃の事に集中しよう」

「……あぁ、わかってる」

 

 しかし士道の中には本当にこれで良かったのだろうか、という不安がぬぐいきれられなかった。

 

「心配しないでよ。エルエルフの予測が外れたことなんて一度もない。だから、士道は士道のやるべきことを全力でやればいい」

 

 その心の中を察知されたのか、ハルトが言う。

 

「……信用しているんだな。エルエルフのこと」

「そう言う契約だからね」

「そうか」

 

 士道は軽く息を吐いて緊張がほぐすと、作戦の通りに行動を開始した。

 

 

 

 

 

 




次回・『切り開く光、溶かす心③』
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