デート・ア・ヴァルヴレイヴ   作:とりマヨつくね

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はいはーい、投稿ですよ〜。
ささっと本編行きますよ〜。




妹VS妹(シスターズ・ウォー)

「おお、ここが兄様の今の家でいやがりますかっ!」

 

 五河家の前にたどり着くなり、少女が髪をブンブンと振り回しながら、敬語になっているのかよくわからない言葉を弾ませた。

 その様子はどこか大型犬を思わせる。

 自称・士道の妹。名前は崇宮真那というらしい。

 なんとも胡散臭いことこの上ない少女であったが……路上で突然士道に抱きついたあと、その場にへたり込み、目に涙を浮かべながら、自分がどれだけ士道に会いたかったかを切々と語りだしたため、仕方なくここに連れてきたのである。

 無論、琴里にも許可はとってある。というか───真那を五河家に連れてこいと言ったのは、他ならぬ琴里なのだ。

 

「む、しかし驚いたぞ。シドーにもう一人妹がいるとは……」

 

 と、十香が、真那をまじまじと見つめながら言ってくる。

 

「いや……そんな記憶はないのはずだけど……」

「そうなのか? シドーによく似ていると思うのだが……」

「当然です! 妹でいやがりますから」

 

 十香が言うのに、真那が自信満々といった様子で腕組みする。

 だが真那はすぐにハッとした顔を作ると、複雑そうな表情で十香と士道を見てくる。

 

「……しかし兄様。真那はあまり感心しねーです」

「は? 何がだ……?」

「決まっていやがります! 鳶一───じゃなくて、ええと、ね、義姉様というものがありながら、他の女性とも関係を持つなどと……」

 

 真那がこほんと咳を入れながら、頰を染めながら言った。

 

「は───はあ!?」

 

 士道は目を向いて叫びをあげた。

 

「? どうかしやがりましたか」

 

 真那の言葉に士道は言った。

 

「つっこみどころが多すぎるわ! まず何だって? お前、折紙と知り合いなのか?」

「ええ……ひょんなことから……」

 

 誤魔化すように目を泳がせる真那。まあ、どこで知り合ったかは非常に気になるところではあるが、今はもっと気に留めなければいけないことがあった。

 

「色々と聞きたい事はあるんだけど、その義姉様ってのは何?」

「いや、私もその呼び方に抵抗がなくはねーのですが、将来的にそうなるからと……」

「そんな予定はないぞ!?」

「そ、そうなんですか」

 

 若干、困惑気味に真那が言う。

 折紙……一体、何を吹き込んだのか、考えるのも怖いが少し気になる。

 

「しかし、そうだとしても兄様の二股疑惑は……」

「ふたまた。なんだそれは?」

 

 十香が首を傾げる。また、面倒な言葉に食いついてくれたものだ。

 しかし士道が言う前に、真那が十香に向かって声を発した。

 

「単刀直入に聞きます。十香さんでしたね。貴方は兄様とお付き合いしていやがられるのですか?」

「な…………っ!」

「な、何を言っているんだよ!」

  

 士道は顔を赤くして二人の間に割って入るが、真那は完全に無視して十香に質問する。

 

「……十香さん? 兄様とデートなどしやがったことは?」

「おお、あるぞ!」

 

 十香の何の悪気もない爆弾発言に、士道は頭を抱える。

 

「…………」

 

 そんな士道の様子に、真那はじーっと睨んでくる。

 

「い、いや、そのだな……」

 

 嘘でない分、否定しずらい。士道は顔中に脂汗を浮かべて後ずさった。

 と、真那が頰を染めながら、恐る恐ると言った調子で十香に再度質問する。

 

「十香さん。もしかして、そ、その、き、キスも───」

「おお、したぞ」

「──っ!」

 

 十香があっけらかんと答えると、真那が目がくわっと見開いた。

 

「ふ、不潔ですっ! まさか兄様がこんなジゴロになっていようとは……! 真那は悲しいです。矯正です! 矯正が必要です!」

「お、落ち着けって……」

「シドー、ジゴロとはなんだ」

「十香は、これ以上話をややこしくしないでくれ」

 

 最早、話が収拾がつかなくなりかけ、涙が出てきそうになる頃。

 ガチャリ、とリビングの扉が開く音がし、その場にいた全員がその一局に集中する。

 そこに立っていたのは、もう一人の家族にして親友のハルトだった。 

 

「ただいま〜ってあれ? お客さん? あれ、じゃあ、お茶とお菓子を買っておいたほうが良かった。ちょっと待てて、近くのコンビニで買い出しに行ってくる。せっかくだから四糸乃ちゃんも呼んでくるね」

「ちょ、ちょっと待てくれ! お菓子もお茶もあるからわざわざ買ってくる必要はないぞ。それに今、帰ってきたところだろ? 四糸乃は琴里が連れてきてくれるみたいだしさ、ゆっくりしてけよ」

 

 現在、我が家が修羅場になっていることを知らないだろう。いつものように気の利くことをしよとするハルトを士道は懇願するように引き止める。

 ここでハルトを引き止めなかったら、一体何されるか分かったものではないからだ。

 そんな士道の気迫に押されたのか、ハルトは「そ、そう?」と言って引き返す。

 これで首の皮一枚つながったと思い、士道は胸をなで下ろす。

 

「兄様、このお方は……」

「ああ、コイツの名前は時縞ハルト。うちの同居人」

「まさか……兄様、そっちのほうにも────」

「んなわけあるか! 俺は至って普通な男子高校生だ!」

 

 士道の抗議に対して、真那は未だ懐疑的だ。

 

「えっ……と、一体何の話をしてるのかな……?」

 

 ハルトは戸惑いながら、聞いた。

 

 

「はい、こんなものしか出せないけど……」

 

 ハルトは真那に麦茶を差し出すと、真那が「ありがとうございます」と言ってお茶に口をつける。

 どうやら、何とかほとぼりを冷ましてもらったようだ。だが、次なる問題が発生した。

 士道は視線を右にスライドさせる。

 そこではつい先ほど合流した琴里が、真那を睨んでいるのだ。

 いや、それが普通なのだ。その場に流されそうになるが、今分かっている真那の情報は自称妹を脱却していない。だから怪しむのも仕方がないだろう。

 何かしなければ、いつまで経っても現状は変わらない。

 士道は覚悟を決め、真那の方へと向く。

 

「なあ……ちょっと質問してもいいか?」

 

「はい! 何でしょう、兄様」

 

 士道が声をかけると、真那は心底嬉しそうに、跳び上がらんばかりの勢いで答えた。琴里はなぜか不機嫌そうに、フンと鼻を鳴らす。

 

「その……すまん、俺は君のことを覚えてないんだが……」

「無理もねーです」

 

 真那は腕組みをし、うんうんとうなずく。

 

「一つ、訊きたいんだが……君のお母さんって……今は」

 

 そう。

 もし本当に、この目の前の少女が士道の実の妹なら───それを知っているはずである。

 士道を捨てた、本当の母────その居場所。

 士道はそう聞くと、予想外の言葉が返ってきた。

 

「さあ?」

 

 真那は首を傾げると、あっけからんとした調子でそう言った。

 

「え……?」  

 

 士道は眉根を寄せる。────まさか、真那も自分と同じように捨てられたと言うのだろうか。

 そんな士道の思考を読み取ったのか、真那が士道に首を振った。

 

「あ、ちげーますちげーます。そういうことじゃなく───」

 

 真那は恥ずかしそうに苦笑すると、手元に置かれた紅茶を一口飲んでから言葉を続けた。

 

「私───実は昔の記憶がすぱっとねーんです」

「なっ……!」

「……なんですって?」

 

 その言葉に、隣に座っていたハルトが驚き、不審そうな色を濃くしたのは琴里である。軽く姿勢を直して真那に向かい、再び唇を開く。 

 

「昔のって、一体どれくらい?」

「そうですね、ここニ、三年のことは覚えてやがるんですが、それ以前はちょっと」

「二、三年って……じゃあなんで士道が自分の兄だなんてわかるのよ」

 

 琴里が問うと、真那が胸元から銀色のロケットを取り出し、中に収められていた、やたらと色あせた写真を見せてくる。士道達は覗き込むように見ると、そこには、幼い士道と真那の姿があった。

 

「これ……俺か?」

 

 士道は少しだけ驚くような声をあげる。しかし────琴里は怪訝そうな顔を作った。

 

「ちょっと待ってよ。これ、士道十歳くらいじゃない? その頃にはもう、うちに来てたはずでしょ?」

「そうだったか?」

 

 士道はそう言って写真を見直すが、この写真の人物が今の自分にしか見えないのもまた、事実だった。

 

「そうなのですか? 不思議なこともあるものですねぇ」

 

 士道と真那はこういった細かい事を気にしない所が似ている…………気がしないでもないが、琴里は真那に言った。

 

「不思議って……他人の空似なんじゃないの? 確かに……かなり似てはいるけども」

「いえ、間違いねーです。兄様は兄様です」

「……なんでそう言い切れるのよ」

 

 琴里が問うと、真那は自信満々に胸をドンと叩いた。

 

「そこはそれ、兄妹の絆で!」

「「「……」」」

「……そうなのか?」

 

 

 琴里は話にならないといった調子で肩をすくめ、はふぅと吐息した。……少しだけ、安堵しているようにも見える。

 ハルトは、なんとも反応に困っている様子。十香に関しては士道と真那に首を振りながらそう呟く。

 そんな四人に真那は、感慨深げに目を伏せて言葉を続けた。

 

「いや、自分でも驚いていやがるのです。本当にびっくりしました。兄様を見たとき、こう、ビビッときたのです」

「何それ。安い一目惚れじゃあるまいし」

「はっ、これは一目惚れでしたか。───琴里さん、お兄さんを私にください」

「やるかッ!」

 

 琴里は反射的に叫んだあと、ハッとした様子でわざとらしく咳払いをする。

 

「とにかく、よ。そんな薄弱な理由で妹だなんて言われても困るわ。第一、士道はもううちの家族なの。それを今さら連れていこうだなんて────」

「そんなつもりはねーですよ?」

「え?」

 

 あっけらかんと答えた真那に、琴里が目を丸くする。

 

「兄様が家族として受け入れてくれやがったこの家の方々には、感謝の言葉しかねーです。兄様が幸せに暮らしているのなら、それだけで真那は満足です」

 

 言って、真那がテーブルを越えて、再び琴里の手を取る。

 

「む……」

 

 琴里が、ばつが悪そうに口をへの字に結ぶ。

 

「ふん……何よ、一応分かってはいるみたいじゃない」

 

「ええ。───ぼんやりとした記憶ではありますが、兄様がどこかへ行ってしまったことだけは覚えています。確かに寂しかったですが、それ以上に、兄様がちゃんと元気でいるかどうかが不安でした。───だから、今兄様がきちんと生活できていることがわかってとても嬉しいです。こんなに可愛らしい義妹さんもいやがるようですし」

 

 言って、真那がにっと笑う。琴里は頬を染め、居心地が悪そうに目を逸らした。

 士道は琴里達をもう大丈夫だと判断した矢先。

 

「まあ、もちろん。“実の妹には敵わねーですけども“」

 

 

 瞬間。ぴきッ、と、空気にヒビが入るような音が聞こえた気がした。

 士道はこれから発生するであろう。

 大戦に巻き込まれるように台所へ向かおうとするが、先にハルトに取られていた。

 無言の空間の中、琴里はピクピクとやたら引きつった笑みを浮かべている。

 

「へぇ……そうかしら?」

「いや、そりゃそーでしょう。血に勝る縁はねーですから」

「でも、士道が言ったように遠い親戚より近くの他人とも言うわよね」

 

 琴里が言った瞬間、今度は終始にこやかだった真那のこめかみがぴくりと動いた。 

 そして一拍おいたあと、真那が琴里の手を放し、テーブルに手を突く。

 

「いやっはっはっは……でもまあほら? やっぱり最後は、血を分けた妹に落ち着きやがるというか。三つ子の魂百までって言いやがりますし」

「……ぐ。ふ、ふん。でもあれよね、義理であろうと、なんだかんだで一緒の時間を過ごしているのって大きいわよね」

「いやいや、でも結局他人は他人ですし。その点実妹は血縁ですからね。血を分けてますからね! まず妹指数の基準が段違いですからね!」

 

 真那が高らかに叫ぶ。妹指数。聞いたことのない単語だった。しかし、琴里は差し挟むふうもなく言葉を返す。

 

「血縁血縁って、他に言うことないの? 義理だろうが何だろうが、こっちは十年以上妹やってんのよ!」

「笑止! 幼い頃に引き裂かれた兄妹が、時を超えて再会する! 感動的じゃねーですか!」

「うっさい!」

 

 琴里はそう言って、近くにあったクッションを真那に投げつけるが、真那はそれを咄嗟の瞬間で躱す。

 しかしクッションは突き進んで行き、空中で止まった。

 ───────まるで何かに当たったように。

 数秒後。クッションは床に落ち、そこから現れたのは銀髪の髪に、紫紺の瞳が特徴的な少年──────エルエルフが立っていた。

 

「「あ」」

 

 琴里と真那はそう呟いて動きを止める。

 表情は変わらない。いつものような仏頂面。でも分かる。真紅に燃え盛る憤怒のオーラを。

 それをキャッチした十香はソファに隠れ、先ほどまで喧嘩していた琴里と真那が手を繋いでガクガクと震えていた。

 エルエルフは床に落ちたクッションを拾うと、二人に向けて言った。

 

「何があったかは知らないが、とにかくそこの二名は正座をしろ。今、すぐにだ」

「「は、はい」」

  

 

 

 

 




次回『謎』
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