「ヴァルヴレイヴ……!?」
誰かが、いや、もしかしたら自分が気づかないうちに口にしていたのかもしれない。
突如上空から飛来してきた存在に驚愕せざるを得なかった。
そこには黒と赤を基調とした機械の甲冑……ヴァルヴレイヴ。
ヴァルヴレイヴ。自分が所属するDEM社が長年研究し、そしてある人物に持ち出された対精霊の最終兵器となるはずだった兵器。
真那自身、データの中でしか見たことがなく、先日の戦闘映像を見るまでは存在していることすら疑っていたのだが。
まさか、この土壇場で現れるとは……。
「このっ……!」
その姿を見たAST隊員の一人がライフルを構えるが、再び上空からビームが放たれる。
「なにが……!?」
上を見上げると、青色を基調としたカラーリングと肩に接続された盾が特徴的なヴァルヴレイヴが、両前腕部装備されたボウガンのような武器を向けていた。
(もう一機……!)
情報は聞いていたが、正直これは予想外である。
どうしたものかと考えていると、青色のヴァルヴレイヴに爆発が起きる。それと同時にAST隊隊長の燎子から連絡が入る。
『私達は、五号機をやるわ。真那は一号機と<ナイトメア>を!』
そこで通信は切れ、燎子を含めたAST隊員達は五号機に突撃していった。
「仕方がないでやがりますね……!」
真那は小さく息をつくと、即座に駆け出し距離を縮める。
そして右手に握られた剣を大きく振りかぶり、そのまま力一杯に振り下ろす。
対してヴァルヴレイヴは腰に懸下した刀状の武器、ジー・エッジを鞘から引き抜き、紅い光を帯びさせながら相対する。
交差する光と光。その衝撃は凄まじく、二人を中心に地面がひび割れ、隆起する。
このままでは押し負けると判断した真那は、距離を取る。しかしヴァルヴレイヴはそんなことを許すまいと、間髪入れずにもう一本の刀を抜いて接近する。
その速度は予想を遥かに超え、赤い軌跡を描く。
「……っ!」
あまりの速度に真那は息を詰まらせるが、すぐに冷静さを取り戻して剣を投擲する。
真那の突然に行動に、ヴァルヴレイヴは咄嗟に投擲された剣を弾く。
それをチャンスだと判断した真那は、地面を強く踏みしめて前に出る。
この距離では回避することはできないだろう。
真那は勝利を確信し、もう一本の剣を横薙ぎに振るった瞬間、彼女の中から違和感が湧いてきた。
それは達人クラスまで経験を積んだ人間が極限状態に達した際に起きる、所謂『ゾーン』と呼ばれるものだ。
視界がスローモーションになり、全てが見える。
久しく感じていなかった感覚だが、一体なぜ─────────────────
そんな思考をしていると、ヴァルヴレイヴがアクションを起こす。
ジー・エッジを手放し、なぞるように腕を交差させる。
その動きに追随するかのように腕から光が発生させながら、頭の上に振り下ろされた剣を両手の平で合わせるように挟んで受け止める。
「真剣白刃取り!? そんな馬鹿な!」
格殺だったはずのエネルギーブレードの一撃を防がれた直後、硬化していた光が砕け散り体勢が崩れる。すると今度は、ヴァルヴレイヴが即胸部に収納されていた小鎌状のフォルド・シックスを展開する。
「しまった!」
懐に入られて回避不可能だと理解した真那は、随意結界を一極集中させようとするが、それよりもヴァルヴレイヴの攻撃が微かに速い。
フォルド・シックスの切っ先が随意結界を切り裂き、彼女のワイヤリングスーツに接触する直前。
「きひひ、ダメですわよ。私を無視しては」
そんな、気色の悪い笑い声と共に銃声が鳴り響いた。
ヴァルヴレイヴが攻撃の手を止め、即座にその場を離れて後方に飛ぶ。
「……なんの真似ですか」
弾丸を放った人物……狂三に真那が問う。対する狂三は表情をピクリとも変えず、飄々とした口調で言う。
「いえ……知り合い同士の殺し合いを見せられるのが、とても耐えられなかっただけですわ」
「それにしては胸のど真ん中に、弾丸をねじ込んだようでやがりますが……」
「この程度でこの方が死なないのは、知人から聞いているので問題ありませんわ」
「……? それはどういう──────」
「あなたが知る必要はありませわ」
そういって狂三は指をパチンッ! と鳴らすと、彼女とヴァルヴレイヴの足元に影が広がり、飲み込んでいく。
「!?」
自分を襲う感覚に、ヴァルヴレイヴは困惑するような反応を見せる。
「それではわたくし達は、ここでお暇させていただきますわ」
「……っ! 待て!」
「きひひ、それではまたお会いできることを」
その言葉を最後にヴァルヴブレイヴと狂三の姿は、影の中に沈み込んで消えた。
一人残された真那が呆然と立ち尽くしていると、もう一機のヴァルヴレイヴと戦闘していた燎子から連絡を入れてきた。
『さっき、五号機が撤退していったわ。そっちの状況は?』
「……<ナイトメア>は一号機と共に消失……帰投します」
<おまけ>
作者「……」
琴里「……」
作者「……あの、なんでそんな怖い顔をしているのでしょうか」
琴里「あら、投稿間隔が空けて、なんとか書いたのはいいものの、展開に納得がいかなくて勝手にスランプになって、挙げ句の果てにいつもの半分の量しか書けなかったブタに何か言うことがあるとでも?」
作者「ハイ、スイマセン」
琴里「全くよ、前回の次回予告で色々期待させておいて結局がこれなんだから世話ないわ」
作者「ハイ、モウシワケゴザイマセン。イゴ、キヲツケマス」
琴里「さて、誰得な容の茶番はここまでにして、早く次回予告しなさい」
作者「へい、合点承知の助! 次回はあの無理難題デートの回です。早く投稿できるように努力します」