デート・ア・ヴァルヴレイヴ   作:とりマヨつくね

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皆さーん、お久しぶりございます。
GWはどのようにお過ごしになったでしょうか?
え、作者は一体何をしていたのかって?
ふふ、それはヒ・ミ・ツって、え、えええ、エルエルフ!?
ちょ、ちょっと待て! は、話せばわかる。だから、その銀色に輝くナイフをってうわあああああ!


揺らぎ、それを乗り越えた先

「あー」

 

 

 士道達を見送った真那は、くしゃくしゃと掻きむしった。

 本当なら士道を拘束し、忘却処理をしなければならないはずだ。

 それなのに自分はまだ出会っても間もない人間、それも敵であるはずのヴァルヴイレヴの適合者に預けてしまった。 

 

 

「これじゃ、鳶一一曹のこと言えないですね……おや?」

 

 

 自分の愚かな行動に呆れていると、木陰から猫が「みゃー」と可愛らしい鳴き声を出しながら現れた。

 

「うふふ、こんなところで何をしているんですか。もしかして迷子に……ん?」

 

 そこで猫が何かを咥えていることに気づいた。

 手を差し出すと、猫はものを素直に渡してくれた。

 

「インカム?」

 

 何やら誰かの声が聞こえる。

 恐る恐る耳へ近づけると、真那は目を限界まで見開いた。

 

「なるほど……そう言うことでやがりますか」

 

 

 

 

「どうして、どうしてなんだ……狂三」

 

 士道は自室のベットに糸が切れたマリオネットのように寝転びながら、気力なく呟いた。

 今、彼には迷いがあった。

 自分が何のために、何が正しいと思っていたのか、それが自分でもわからなくなってしまった。

 自分の意思に関係なく空間震を起こしてしまう存在が、理不尽に襲われることに耐えられなくて<ラタトスク>に協力していた。

 なのに……

 

 

 ─────ダァン!

 

 

 何も躊躇もなく人を殺し、親友のハルトをいたずらに傷つけた狂三。

 

 

 ─────私の両親は精霊に殺された

 

 

 精霊に目の前で両親を殺されてしまった折紙。

 

 

 ─────また、会いましょう。今度は、もっと時間に余裕を持って

 

 

 無限に狂三を殺し続けることを定められた真那。

 

 

「こんなんじゃ、誰も救えないじゃないか……」

 

 割れるのではないかと思わせるほどの力で歯を食いしばって、渇きに渇きまくった喉で絞り出すように言った。

 無論、答えは出ている。士道が狂三をデレさせて、キスをして、霊力を封印する。

 そうすれば、全て解決される。

 狂三が人を殺すこともないし、真那も狂三を殺す必要もなくなる。

 だけれど。

 

「俺は……」

 

 と─────そこで扉をコンコンとノックする音が聞こえた。

 

「その……入っていいか?」

「十香? お、おう……入っていいぞ」

 

 扉が開き、十香がおずおずと顔を出した。

 そして士道の姿を捉えると、リビングに入り士道の方に走り寄る。

 

「シドー。……身体に触っても大丈夫か?」

「あ……ああ、大丈夫だよ」

  

 士道が答えると、十香は士道の隣に腰を下ろした。

 

 

「何してんだ?」

「……いいからじっとしていろ」

 

 

 十香はそう言って、士道の身体に手を回し、後方からぎゅうー、と抱きしめてきた。

 背中に柔らかい感触を覚えて、士道は困惑するしかなかった。 

 

 

「と、十香? い、一体何を……」

「ん。寂しい時や怖い時は、こうするのがいいとテレビで言っていた。……『おかあさまといっしょ』……という番組だったかな」

「…………」

 

 

 比類なきまでに幼児番組だった。思わず苦笑する。

 だけど、その言は正しいようだ。確かに、少し落ち着いた気がする。

 

「令音にな、話を聞いた」

「話って?」

「狂三と……真那についてだ。シドーの様子がおかしいと訊いたら────話してくれた」

「……っ、そ、うか……」

 

 士道は唾液をゴクリと飲み下し、その言葉を吐いた。

 令音、いや<ラタトスク>関係者はあまり十香に精霊やASTについて教えたがらないが、今回は教えないと十香自身の精神が乱れると踏んだのだろう。

 

 

「シドー。私がこの家に厄介になっていたとき言った事を覚えているか?」

「え……?」

 

 

 思わず訊き返すが、十香は続ける。

 

 

「【私と同じような精霊が現れたら……きっと救ってやって欲しい】」

「ああ……」

 

 

 士道は小さく頷く。その言葉は良く覚えている。士道のその言葉に応えた。その気持ちに嘘はないし、その決意も変わらない。

 

「でも狂三は」

「変わらない。私と」

「え?」

 

 十香は士道の背中に顔を押し付け、十香の腕に力が入る。

 

「……私には、シドーがいてくれた。シドーだけじゃない、ハルトもいた。琴里も、エルエルフも、令音やキューマ、山田達がいた。苦しくて辛い時にはみんなが側に居てくれた。だから私は世界を、人に絶望しなくて済んだ。だからきっと狂三もきっと同じだ。だから……シドー、もう一度狂三のことを見てやってくれ。そして狂三にもう人殺しをさせないであげてくれ。これ以上、心を擦り減らさせないでくれ……」

「……っ!」

 

 

 ようやく理解できた。士道は狂三が人を殺すのが堪らなく嫌だった。

 真那が狂三を殺すのが絶対に嫌だった。

 この輪廻を終わらせる為に、“狂三を止める事”だと決意したが、重要なピースが欠けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう……十香」

「む? 何故だ?  私は礼を言われるような事は何もしていないぞ?」

「いや、お前のお陰だ」

 

 そう。狂三にキスをして力を封印せればならないのに、考えていたのは“狂三に殺される人”や、“真那の事”ばかりだった。

 狂三を救う、あまりに許容から逸脱したものを見たから、頭から抜け落ちていた当たり前の事。

 何人もの人間を殺してきた精霊。どんなに償っても許されない事をしてきた。

 しかし、十香の力を封印する時、士道は十香を救いたいと心から思った。

 理不尽に殺意を向けられる少女を助けたいと願った。

 四糸乃の力を封印する時、士道は四糸乃を救いたいと心から思った。

 敵意を向けられてなお相手を慮る少女が、報われないのは嘘だと思った。

 だからAST達から精霊を守った。

 確かに士道には人智を超えた回復力と、精霊の力を封印する力が存在する。

 狂三を、救う。そして、真那も。

 殺しの連鎖と輪廻に囚われた少女を、救う。

 自分の妹だと言うあの少女にも、もう狂三は殺させない。あれ以上、自分と同じ魔法の力で、心を摩滅させたりしない。

 妄想でも空想でもいい。それができると信じなければ、士道が手を伸ばす事など不可能だ。

 

「────十香。もう、大丈夫だ」

「もう、寂しくないか?」

「ああ」

「もう、怖くないか?」

「……それはちょっとまあ、怖いけども、……でも、大丈夫だ」

「ん……そうか」

「なあ……十香、少し出かけてくる」

「どこに行くのだ?」

 

 

 ベットから立ち上がった士道を、十香は心配そうに見上げる。

 それを見て、士道は微笑んで十香の頭の上に手を乗せて優しく撫でながら言った。

 

 

「大丈夫、少しハルトの様子を見に行ってくるだけだ。すぐに戻ってくる。家に帰ってきたら、うまい飯を作ってやるからさ」

「そうか……うむ、そうだな! それがいい! なんだったら、ハルトも呼んでくるといい!!」

「それはどうかわからないけど……まあ、聞いてみるよ。行ってきます」

「おお、行ってらっしゃいなのだ!」

 

 

 十香に見送られて士道は家を出て、ポケットにしまっていた電話を取り出し琴里に電話をかけるのであった。

 




エ「ボコボコした」
ハ「ほどほどにしろよ……」
作(魂)「あははは! 水星が見える……!」
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