デート・ア・ヴァルヴレイヴ   作:とりマヨつくね

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もう少しで狂三編が終わる……人気キャラのエピソードを考えるって難しいのね。
あ、あと今回から神憑きの表記を正しい『カミツキ』に変えております

※六月一日に内容を一部変更済み


銃声は鳴り止まない

 二つの光が衝突した。

 パリン! とガラスが砕けたような音が聞こえ、ハルトと狂三は仮面越しから見つめ合う。

 二人の表情は正確には伺えないが、ハルトは苦悶を浮かべ、狂三は不敵な笑みを浮かべていることだろう。なぜならハルトが狂三に明確な反撃を行えてないことを見れば、明白であろう。

 現在、<火人>のゲージはプールによって50/100 まで減っているものの、再び熱が上昇を始めている。

 距離をとって体制を整えたいが、狂三にもそれは分かっているので距離を詰めて手刀を向ける。

 ハルトは咄嗟に腕を腕を掴み、ギシギシと金属が軋む音を響かせる。

 

 

 

「あらあら、なぜ逃げようとしているのですか? せっかくお互いに『同類』なんですから関わり合いませんこと?」

「じゃあ……一つ、聞きたいのだけれど、その機体をどうやって手に入れた?」

「ああ……そのことですか。それは私の影の中で、色々お話したはずですわよね」

「確かに聞いた。『七年前』、君とエルエルフが当時開発中だったヴァルヴレイヴを全て強奪したことを。でも君がなんで二号機を持っているんだ!? エルエルフの話じゃ、二号機はなかったはずだ」

 

 

 だが現に、その二号機<鉄火>は完璧な状態で対峙している。そのことがどうしても気がかりだった。

 

 

「なるほど……そうですわね────!?」

 

 ハルトの問いに答えようとした狂三は、上空を仰いだ。

 ハルトも見上げると、紫色の結界が元の青空に戻ろうとしていた。

 それを見た狂三は明らかに不機嫌であったが、すぐに平静を装う。

 

「しくじりましたか……全く仕方がない子ですね。私のゲージもかなり溜まってしまっていますし……ハルトさん、どうやらここまでのようです。また後ほど」

 

 そう言って、狂三は手を振りながら影の中に潜って消滅した。

 一体、どうして結界が解除されたかは分からないが、おかげで軽くなった。

 そう思っていた矢先に、令音から連絡が入る。

 

『ハルト、聞こえるか。残念ながら、キューマとライゾウが戦闘不能になってしまった。ここから先はさらに辛くなるぞ』

「了解しました。と言っても……僕もなかなかキツイですけどね」

 

 ゲージも63/100。飛行なんてしようものなら、この後の戦闘に耐えられない。

 それにあの狂三のことだ。飛行対策を取っていないはずがない。

 それは令音もわかっている。だから。

 

「すまない……だが、今シンを助けられるのは君だけなんだ。頼む」

「……任せてください。必ず士道も、時崎さんも真那ちゃんも助けます」

 

 ハルトは令音に短く答え、士道達がいる屋上へと向かうのであった。 

 

 

 フェンスから飛び降りた士道だったが、不思議と恐怖感はない。

 

「────っ!」

『……シン!?』

 

 狂三が息を詰まらせる音と、令音の声が聞こえてくる。

 ふわっという浮遊感と共に、士道の身体は凄まじいスピードで地面に落下していった。

 

「──っ」

 

 意識が飛びそうになった瞬間、士道の身体は何者かに支えられ、ガクンと揺れる。士道の事をキャッチしたのは校舎の壁に這った影から現れた狂三だった、彼女はそのまま校舎の壁を垂直に登って屋上まで戻ると、乱暴に士道の身体を放る。

 

「あー……死ぬかと思った」

「あっ……たり前ですわ……ッ!」

 

 士道が大きく息を吐くと、狂三が興奮した様子で声を荒げてきた。

 

「信じられませんわ! 何を考えていますの!? 何を考えていますの!? わたくしがいなかったら本当に死んでいましたわよ!?」

「あー……その、なんだ……ありがとう」

「命を何だと思ってますの!?」

「いや、おまえが言っちゃ駄目だろそれ……」

 

 士道がそう言うと、狂三はハッとした顔を作り、頭をわしわしとかいた。

 

「あぁぁぁぁぁ、もうッ! 馬ッ──鹿じゃりませんの……ッ!」

 

 狂三の声を聞いた士道は、その場に立ち上がると狂三に向かって声を上げる。

 

「狂三。おまえ、なんで俺を助けてくれたんだ?」

「……っ、それは──あなたに死なれると、わたくしの目的が達せなくなるから……」

「そうか。じゃあやっぱり、俺には人質の価値があるんだな?」

 

 士道はそう言うと狂三に指を突き付けた。

 

「さぁ、じゃあ空間震を止めてもらおうか! ついでにこの結界も消してもらう! さもないと舌を噛んで死ぬぞ!」

「そ、そんな脅し──」

「脅しだと思うか?」

「ぐっ……」

 

 狂三一瞬悔しそうな顔を作った後、指をパチンと鳴らした。

 すると、周囲に響いていた耳鳴りのような音が止み、次いで、周りを覆っていた重い空気も消えていた。

 

 結界を解き、空間震を消した狂三は、自分に言い聞かせるように叫ぶ。

 

「ま──まぁ、構いませんわ。どうせもともと、わたくしの狙いは士道さんだけですもの。何も問題ありませんわ。何も問題ありませんわ!」

「じゃあもう一つ──聞いてもらおうか」

 

 黙って食われるわけにもいかない士道がそう言うと、狂三は困惑したように言う。

 

「ま、まだありますの……っ!?」

「あぁ、一度でいい。──狂三。おまえに一度だけ、やり直す機会を与えさせてくれないか」

「え……?」

 

 狂三は驚いたように目を見開き、すぐに眉をひそめる。

 

「……まだそれを言いますの? いい加減にしてくださいまし。ありがた迷惑でしてよ。私は、殺すのも、殺されるのも、大ッ好きですの! あなたにとやかく言われる筋合いなんてどこにもありませんわ!」

 

 士道を拒絶するように、狂三が叫ぶ。その声には、今までのような底知れぬ恐ろしさはなく、何かに怯えているようにさえ聞こえた。

 

「狂三。おまえ……誰も殺さず、命を狙われずに生活したことって……あるか?」

「それは……」

「わかんねぇじゃねぇか。殺し、殺される毎日の方がいいだなんて。もしかしたら──そんな穏やかな生活を、お前も好きになるかも知れねぇじゃねぇかッ!」

「でも。そんなこと──」

「できるんだよ! 俺になら!」

 

 士道が叫ぶと、狂三は気圧されたように息を詰まらせた。

 

「おまえのやってきたことは許されることじゃねぇよ。一生かけて償わなきゃならねぇ! でも……ッ! おまえがどんなに間違っていようが、狂三! 俺がおまえを救っちゃいけない理由にはならない……ッ!」

 

 狂三は、数歩あとずさった。士道はそれを追うように一歩踏み出す。

 

「わ、わたくし……わたくしは──」

 

 狂三が混乱したように目を泳がせ、声を発する。

 

「士道さん、わたくしは……本当に……っ──」

「駄ァ目、ですわよ。そんな言葉に惑わされちゃあ」

 

 狂三が何か言おうとした瞬間、どこからともなくそんな声が響く。その声を聞いた士道は訝しげに眉をひそめた、何故なら士道の聞いたその声は。

 

「ぎ……ッ!?」

 

 士道の思考を遮るように、前に立っていた狂三が、奇妙な声をのどからもらした。

 

「狂三……?」

「ぃ、あ、ぁ……」

 

 士道はそちらに目をやり、凍り付いた。

 眼前の狂三は、眼球を飛び出さんばかりに目を見開き、苦し気な声を響かせる。そして、士道が視線を下に向けると彼女の胸から、一本の赤い手が生えてきた。

 

「え……」

「わ、たく、し、は」

 

 そこで、士道はようやく状況を理解する。

 いつの間にか何者かが狂三の後方に現れ──彼女の胸を貫いたのだ。

 

「はいはい、わかりましたわ。ですから──もう、お休みなさい」

「……ぃぐッ」

 

 小さな断末魔だけを残し、狂三は糸の切れた人形のように崩れ落ち、一度だけ身体を痙攣させ──完全に動かなくなった。

 

「な……」

「あら、あら。いかがいたしましたの、士道さん? 顔色が優れないようですけれど」

 

 士道は、動くことができなかった、突然すぎる事態に思考が追い付いていないから

 何故なら、そこに立っていたのは──間違いなく、時崎狂三だったのだから。

 

「く、るみ……? は? なんで……」

「まったく、この子にも困ったものですわね」

 

 狂三は血に濡れた本を持っていた右手をビッ、と払う。すると影から無数の手が生え、狂三の死体を、影の中に引きずり込んでいった。

 

「あんな狼狽えて。──まだ、このころのわたくしは若すぎたかもしれませんわね」

「な──」

「あぁ、でも、でも。士道さんのお言葉は素敵でしたわよ?」

 

 冗談めかすように身をくねらせた狂三は笑う。

 

「何、が……」

「さぁ、さぁ。もう間怠っこしいのはやめにしましょう」

 

 

 




『七年前』のことはいつかやります! 
これだけは約束する。だから待って!
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