ともう前書きのネタがなくなったので歌いました。
あっ、今回と次回はハルト君があまり出ません。
そしてこれからは尺の都合上、アニメの流れを使う場合があります。
それでは無理矢理ですが、第8話どうぞ
夕暮れ。
士道は避難する生徒の目をかいくぐり、上空の<フラクシナス>で回収された。
士道が艦橋に入ると、ある違和感に気がついた。
「あれ? ハルトはどこに行ったんだ? それにエルエルフもいないみたいだし」
「とある事情で、彼らは少し席を外している」
「そ、そうですか」
「それにしても士道、あなた運が良いわね」
「どうしてだ?」
士道が聞くと、琴里の代わりに令音が説明する。
「どうやら精霊は出現後、半壊した校舎に入り込んだようだ。CR-ユニットは屋内での戦闘には作られていない」
「つまりASTは迂闊に手を出せないってことよ。こんなこと滅多にないんだから」
「あ、ああ。だからって……」
士道の言葉を遮るように琴里は言う。
「士道にしかできないことよ。あなたは色々文句は言っていたけど、訓練からは逃げようとしなかった。ーーーー助けたいんでしょう? 精霊を」
士道は小さく頷く。
そうだ。もうこれ以上、あの少女にあんな顔はさせたくない。させちゃいけないんだ。
士道は心の中で、もう一度覚悟を決め直した。
「ーーーー琴里、俺になら出来るんだな」
「ええ、自信を持ちなさい。殲滅とは違う、精霊とのもう一つの対処法。すなわち」
「精霊と話をして、デートして、デレさせる」
「士道、安心しなさい。<フラクシナス>のクルーは優秀よ」
「そ、そうなのか」
士道は疑わしげな顔をしながら聞くと、琴里が上着をバサッと翻した。
「たとえば」
艦橋下段のクルーの一人を指差す。
「五度の結婚を経験した恋愛マスター、
「それって離婚を四回しているってことだよな!?」
「夜のお店のフィリピーナに絶大な人気を誇る、
「それ完全に金の魅力だよな」
「恋のライバルに次々と不幸が、
「絶対呪いかけてるだろ!」
「百人の嫁を持つ男、
「ちゃんとZ軸あるんだろうな」
「その愛の深さ故、今や法律で愛する彼の半径五百メートルに近づけなくなった女、
「どうしてそんな奴らしかいなんだよ!」
「皆んな、クルーとしては優秀なんだ」
艦橋下段で、令音が小さい声が聞こえた。
「心配しなくても大丈夫よ。士道なら一回死んでもニューゲームできるわ」
「ざっけんな。どこの配管工だ」
「そんなことはどうでもいいのよ。とにかく時間がないのよ。早く行きなさい」
「わかったよ」
士道はため息混じりに環境を出ようと一歩前を踏みしめる。
「グットラック」
「おう」
士道は短く答えると、転送装置へと足を運んだ。
◇
<フラクシナス>の格納庫にて、ハルトとエルエルフは歩いていた。
「ねえ、エルエルフ。こんなところに何があるんだよ?」
「お前の失われた記憶だ」
「ーーーーっ!?」
エルエルフから発せられた予想外の言葉に、ハルトは驚きを隠せなかった。
「時縞ハルト。前に俺と初めて会った気がしないと言ったな」
「そうだね。そして君はそれを否定した」
「ああ、だがそれは語弊があった。正確には記憶を失う前のお前のことは知っている」
「なら最初からそう言ってくれればーーーー」
「それはこれを見せてからだ」
エルエルフが足を止め、近くにあったレバーを下げる。すると周囲が点灯し、そこにはあるものがあった。
それは鎧。まるで炎のように真っ赤な機械の鎧だった。
「これはーーーーASTのスーツ?」
「いや、これの名はヴァルヴレイヴ。と言っても俺の知っているものとは、大きさがだいぶ違うが」
「これが僕の記憶にどう関わるって言うんだよ?」
「それは、このヴァルヴレイヴを身につければ、記憶を全て取り戻せるからだ」
「……! それは本当なのか!」
「だが、それには代償がいる。それはお前自身が、人間を辞めることを決意しなければならないことだ。過去のお前が嫌った呪いを被るんだ。それでも良いというのなら、これを身につけろ」
エルエルフはハルトに対して、最後の確認を取る。だがハルトの考えは、最初から決まっていた。
「確かに、記憶を失う前の僕はこれを恨んでいたのかもしれない。それでも、それでも、僕は僕を知りたい」
とエルエルフに告げると、ヴァルヴレイヴへと近づく。
ハルトが近づいたことを察知したのか、各部の装甲が展開する。
装備可能の状態になったヴァルヴレイヴに身を預けると、展開した装甲が元に戻り、首元に取り付けられた装置から注射器が彼の首刺さる。
その瞬間、自分の存在が書き換えられるような感覚に包まれると同時に、脳内に何かが流れていく。
それは記憶。ジオールのモジュール77の咲森学園での平穏な毎日、ドルシア軍の襲撃とヴァルヴレイヴとの出会い、そこから始まるドルシアとの戦争。
……そしてそれらを裏で操るマギウス達への革命。
「全部……思い出した」
やっとだ。やっと、話が本格的に進められる。
さあ、次回は士道君の初の精霊とのコンタクトとハルト君無双ですよ。
次回もお楽しみに。