綾小路清隆の妹として、全力で支えます 作:ぐれーぷ
0限目〜この世界は平等じゃないよ〜
「──すまぬ、手違いで命を奪ってしまった」
第一声。私の目の前にいるジジイはそう言いやがった。
よう実の最新刊、待ちに待った『高度育成高等学校』による文化祭。最高だった。個人的には今までの中で1位2位を争う展開で、とてもとても満足した。やっぱり佐枝ちゃんは最高に可愛いかった……じゃなくてやっぱり綾小路は最強だった。
そんな感無量な私は突然目の前が真っ暗になって、気がつくとこの真っ白な空間におじいちゃんと2人っきり。しかも私は何故か魂だけ。そして冒頭に至る。
「そこでなんじゃが別の世界に転生を「よう実」……む?」
「よう実。ようこそ実力至上主義の教室へ、の世界に転生させてください!!」
「お、おお。目をキラキラさせおって、わしが言うのもなんじゃが、お主理不尽に死んだのじゃぞ?」
本当だよ。笑い事じゃないよ。でも全てを許す。よう実の世界に転生させてくれたらね?
でもこんな私が転生しても正直あの世界、学校で生き残れる自信はないなぁ。
「大丈夫じゃ。特典を3つ程与えるつもりじゃ。もちろんこの中からお主が選んで良いぞ」
異世界転生のテンプレ来たぁ……。ここはありがたく選ばさせて貰おう。ご親切に検索機能みたいなのがあるや。
あ、そうだ。特典を選ぶ前に幾つか確認しなくちゃ。
よう実の世界で私はどんな生い立ちなのか。ようはスタート時点を知りたい。それによって選ぶ特典も変わってくる。
下手したらよう実の世界に転生するだけで、『高度育成高等学校』に進学できないパターンもある。それだけは避けたい。
「特に考えておらんかった。せっかくじゃ、特別に希望があれば叶えよう……?」
「ほんと!? あ、私が持っているよう実全巻ちょっとここに出せたりする?」
「勿論じゃ」
目の前によう実の全巻が現れた。魂だけだからページは捲れないけど、本に触れたら内容が読める。なんか地味に便利だね。
「さてと、じゃあ遠慮なく言うね、おじいちゃん。『高度育成高等学校』に進学できるのは勿論のこと、ホワイトルーム生、それも綾小路清隆の義理の妹か、双子の妹として転生させて」
「それぐらいお安いご要望、任せるがよい「そっか、ありがとう! それと──」それと!?」
「綾小路パパを私が綾小路清隆の右腕……まぁ要は支え役みたいな存在に育てるようにして。あと短時間で深い睡眠ができる様に」
「よ、よかろう。もうダメじゃぞ!」
十分。これだけ叶えて貰えれば後はどうにでもなれる。早速特典を選んで行く。実はもう最初の要望が通った時点で目星はついていた。
〜1つは、傾城傾国。絶世の美女にして貰う。元々整っていた方だとは思うけど、アニメの世界と比べれば月とスッポン。話にならない。異世界に行くんだから絶世の美女になりたい。
次に、強靭な精神力。強靭な精神力は強靭な肉体に宿る。強靭な精神力を持つ者が、強靭な肉体を手に入れられる、とも捉えられる。何事もメンタルは大事だ。ましてやホワイトルーム生になる予定なんだから、生半可な精神力じゃすぐに壊れるのは目に見えている。ならやっぱり何事にも動じない精神力が欲しい。
そして最後に、完全記憶能力。覚えるのって意外と大変だよね。正直他2つを捨ててでも、これを取るつもりでいた。それぐらいこの特典が私には必要だった。〜
特典も選び終えた所で、私は目の前のおじいちゃんに話しかけた。
転生する前にこの特典を持った、16歳の私を体現して欲しい、経験してみたいと。
「魂だけが流れついた状態じゃ。問題ないぞ。そ〜れ」
おじいちゃんが手に持つ杖を振ると、魂だけだった私の肉体が出来上がっていく。
「ほれ、鏡じゃ」
目の前に作られた鏡を見る。そこには文字通り絶世の美少女がいた。何年に1度なんてレベルじゃない。まず間違いなく私の生きてた世界じゃ、産まれてくることはないだろうというレベルの美少女だった。
純粋無垢な顔つきに、首元まで伸びた砂金の如く薄い金髪に青の目。笑顔を作ってみる。あ、だめだ。これ多分戦争起きるわ。保護欲が駆られる。何しても涙目で謝ったら許されそう。そんなレベルだった。容姿的に双子じゃなくて義妹かな。全然似てないし。
「さて、満足したかの?」
「うん、ありがとうおじいちゃん。あ、最後にもう一つだけいい?」
「ま、まだあるのか!? もう何もこれ以上は与えぬぞ!?」
「大丈夫だよ。これ以上何か貰うことはないから。その代わりと言っちゃなんだけど」
早速特典の1つ、瞬間記憶能力が役に立つ時が来た。私はその場に座り、先程出して貰ったよう実の第1巻を手に持ち、おじいちゃんを見上げる。
「
「────」
おじいちゃんが声にならない悲鳴を上げていた。
瞬間記憶能力のおかげで、読まなくてもページを捲るだけで覚えられ、イラストも全部ちゃんと数時間をかけて覚え、私は遂によう実の世界へと転生した。
ふらふらと舞い散る桜。転生してから10年の月日が経った。今日私、『綾小路
「随分と楽しそうだな愛歌」
「当たり前じゃん。だって清にぃ私達はもう自由なんだから」
「そうか」
会話が終わった。私はともかく清にぃはややコミュニケーションを苦手としている。正確に言えば、意味のない会話をしようとしない、と言うべきかな。
「愛歌」
「ん?」
「突然だが、オレの出す問題を真剣に聞いて、答えを考えてみて欲しい」
「いいよ。模範解答してあげる」
「ああ、頼む。それじゃあ、人は平等であるか否か」
「不平等。こんなこと聞いて……どうしたの今更?」
「即答だな」
当たり前じゃん。生まれ育った環境は勿論のこと、感情がある限り人は千差万別だ。
体に恵まれた者が居れば、当然その逆も存在するのだから。
「確かにな。だがその代わり別の才能を与えられたやつもいる」
「確かにね。でもそれが本人の望んだ才能だとは限らないよ」
野球選手を目指している子が、サッカー選手としての才能を持っていても嬉しくないだろう。もっと分かりやすく例えるなら、ゲームのキャラで10回狙って当てる人もいれば、たった1回で当たる人もいる。宝くじを100枚買って10万を当てる人もいれば、たった1枚で10万を当てる人だっている。結果的に同じでも過程が違う。不平等だ。
「そもそも平等だの、不平等だの言っている時点でこの世界は平等じゃないよ」
「もし仮に、本当に平等な世界ならそもそもこんな話にならない……からか。真剣に答えてくれてありがとうな」
「いえいえ。私はお兄ちゃんの妹なので」
すると向こうから目的のバスが来るのが見えた。ようやくですか。私は今帽子を深く被り、サングラスをしてマスクもしている。理由は特典の傾城傾国のせいだ。前に一度外へ散歩しに出た時、周りの人達から一斉に見られ嫌な思いをした。すぐに慣れたのはそれも特典の強靭なメンタルのおかげだろう。でも疲れるものはやっぱり疲れる。なるべくこうして素顔は見えない様にしている。
バスが止まった。幸い清にぃと2人で座るスペースが空いている。私達は勿論隣同士で座った。
腰を下ろし顔を見上げると見たことある女子生徒が歩いてくる。
(おお、堀北鈴音ちゃん。かわいい)
原作のヒロインが登場した事で久しぶりに興奮した。勿論に表には出さない。ただの不審者だ。
その後、席譲りなさいよOLさんイベントと遭遇して、高円寺六助や櫛田桔梗の2人なんかも目にし、特に何事もなく目的地へと着いた。
勿論、堀北鈴音と清にぃ2人のイベントもちゃんと見たよ。
「兄妹揃ってDクラスか」
「やったね清にぃ。一緒にクラスを掌握しよう」
「冗談だよな?」
「私が冗談言ったことある?」
「おいおい……」
「あはは、冗談だよ!」
「物騒なことは言わないでくれ!」
お、清にぃキャラ作りに入った。叫ぶ所なんて初めて見た。何かしっくりこないのか、口を動かして繰り返している。自然体でいればいいのに。
「ほら、清にぃ行こ!」
「あ、おい! 引っ張るな!」
私は清にぃの手を引いてDクラスへと向かった。
オリ主の容姿は成長した、沙条愛歌、をイメージしてください