綾小路清隆の妹として、全力で支えます   作:ぐれーぷ

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とはるみなさん、chocoiceさん、志方疎さん、ゆゆぬぬさん、yuuzuさん、egurumanieさん、パラートゥスさん、白ノ宮さん、ケチャップの伝道師さん、好評価ありがとうございます。

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モチベーションが高いので、高い内にどんどん投稿します。今回も短いです


暴力事件編/2巻
1限目〜普段は私が管理してるの〜


 

「──こんな所に呼び出して何のようだ。小宮、近藤……あとテメェは石崎つったか?」

 

 部活の練習後、俺は3人に呼ばれて特別棟に来ていた。既に体はくたくたで、帰ってシャワーを浴びて寝たいぐらいだ。いや、勉強も少しはやらないとな。それを考えるだけでも正直気が滅入るのに、ここ特別棟は蒸し暑く余計にイライラさせる。早く済ませて帰ろう。

 

「Dクラスの猿の癖に人の名前をよく覚えられてんな。中間テストが終わって猿からチンパンジーになったか?」

 

 その後も3人が挑発を繰り返してくる。少し前の俺ならきっと今頃怒って、怒鳴り返していたに違いない。けれどスポーツマンとしてそんなことは絶対に俺はしないとアイツに誓った。立派になって見せると。

 きっと小宮と近藤は1年でレギュラー入りをした俺のことが気に食わないから、こうして石崎を呼んで喧嘩を売っているんだろう。流石に俺でも数の多い相手は厄介だ。

 3人からレギュラーを辞退しろと言われた。まだ俺には早いと、Dクラスの癖にふざけるなと。くだらねぇ。俺はそれを無視して帰ろうとした。だけど小宮と近藤に腕を掴まれて、石崎が殴りかかってくる。人を怒らさせるような殴りだ。

 

「ってぇな」

 

「はっ、須藤やられっぱなしか? それともビビったのか? かかってこいよ」

 

 人をバカにするように煽ってくる。きっとこいつらは俺をキレさせたいんだろう。俺は小宮と近藤の2人の拘束を振り解く。石崎が身構えるのが分かった。安心しろ、殴んねぇよ。

 

「気は済んだか? この後、帰って勉強しないといけねぇんだよ」

 

「おいおい、お前みたいな脳無しが勉強すんのかよ?」

 

「こいつは傑作だな! 猿が勉強だってよ!」

 

「ああ。だから勉強するんだろ。俺はバカだからな。幸いDクラスには頭のいいやつもいるんだよ。そんな皆に教えて貰えてんだ。無駄にできねんだわ」

 

 俺はバックを取って帰る。こいつらを相手にするだけ時間の無駄。帰ってちゃんと勉強しねぇと──

 

「──ちっ、つまんねぇな。予定変更だ。バスケ部にたまに顔出してるあのクソビッチ、名前なんて言ったか? ……ああ、綾小路(・・・)だ」

 

「おい、綾小路は関係ねぇだろ」

 

「……へぇ。そう言えば須藤お前、何回か綾小路と一緒にバスケやってたな。あと勉強会にいた堀北だったか? 2人を俺らに貸してくれよ? 俺もそろそろ運動しねぇとな。最も、お前と違って俺はベットの上で──」

 

 ──気がつくと俺の右手は一直線に振り抜かれていた。

 

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 

 6月1日。今日は各クラスのCPの発表だった。各クラスも確りとCPを伸ばしていて、私たちDクラスのCPは87だった。しかしまだポイントの振り込みは行われていない。真っ先に不満を上げたのは池くんだ。毎月1日に振り込まれる筈のポイントが先月に続き振り込まれていない。今月のCPは87、つまり8700のPPが手に入る筈だ。先月の支給額が0PPだった私たちからしてみれば、今すぐにでも欲しいぐらいなわけで、それが振り込まれていない……しかもトラブルで遅れているとなれば、不満の1つや2つぐらい出るだろう。

 

「トラブルが解決次第ポイントは支給されるはずだ。もっとも……ポイントが残っていれば、の話だがな」

 

 やっぱり須藤くんはダメだったか。私はちらっと彼の方を見る。少し申し訳なさそうにしているけれど、そう簡単に人は変わる事はできない。そしてそのトラブルが須藤くん絡みだと言う事を、クラスの皆が知るのは少し先のはな──

 

「──皆、すまねえ! 多分、いいや絶対俺のせいだ」

 

 いきなり須藤くんが立ち上がり頭を深く下げて謝った。突然のことにクラスの皆も驚いてる。あの須藤くんがいきなり頭を下げるなんて、まず考えられない。これはちょっと予想外。

 

「この間、Cクラスの石崎と小宮に近藤、この3人に特別棟に呼び出されて揉めたんだ」

 

 事件の発端と内容を須藤くんなりに説明してくれる。バスケ部のレギュラー入りが決まった須藤くんを妬んで、3人にちょっかいを出されて、それに我慢が出来ずに自身も殴り返してしまったとのことだ。どこまでが本当で嘘から分からない。嘘は吐いているようには見えないけど、愛里ちゃんの反応を見る限りだと何か隠しているような気がする。何を隠しているかは分からないけど、自分から打ち明けた須藤くんには素直に感心した。あの鈴音ちゃんも驚いていたのだから。

 けれどもそんな須藤くんの成長を皆が感じ取れるはずもなく、また成長したとは言え問題を起こしていることに変わりは無いので、クラスの皆から少しばかり怒りを買った。こればっかりは仕方ないよ。

 

「驚いたな」

 

 背後から清にぃに声をかけられる。

 

「うん。私も驚いた」

 

「やっぱりあなた達もそう思う? 彼、先月までの須藤くんならクラスメイトの前であんな風に打ち明けたりしていない」

 

「同感だ。須藤の言っていたことが本当なら、仕掛けて来たのはCクラスってことか」

 

「そこはまだ分からないわ。仮にCクラスから仕掛けて来たとしても、根本的な問題は彼にあるもの」

 

「普段の生活だね。須藤くんは標的にされやすい。変わって来たと思ったけど、やっぱり流しきれなかったみたいだね」

 

 この展開と今後のことも考えて、何を言われても無視しなって口酸っぱく教えたつもりだったけど、無駄な努力で終わった。徒労ってやつだ。やっぱり特別棟にも設置して置くべきだったかな。

 クラスの皆が不満を一頻り須藤くんへぶつけた辺りで、平田くんと櫛田さんの仲裁が入った。不満を何1つ言わせないで我慢させたら、それはそれで良くない。もし我慢させたら見えない所で、何をしでかすか分からないのだから。それならある程度こうして、不満を言わせた方がお互いのためになる。やっぱり平田くんと櫛田さんの2人は、このクラスに必要なのかも知れないね。

 

「それにまだ須藤くんのせいだと決まったわけじゃないんだ。皆クラスメイト、仲間同士なんだから信じてあげよう」

 

 平田くんイケメン。でも残念、今回のトラブルは須藤くんの原因で合ってます。

 こうして朝のホームルームから早々、慌ただしい1日が始まった訳だが、今はもうお昼の時間。今日は久しぶりに千秋ちゃんと、2人で一緒にご飯を食べる約束をしていた。

 

「愛歌とご飯なんて、本当に久しぶりだね。4月以来じゃない?」

 

「そうだね。しかも千秋ちゃんと2人で食べるのはこれが初めて」

 

「確かに。ずっと色んな人に誘われて大変そうだったもんね。でもよかったの? 私と2人で。清にぃと食べなくていいの?」

 

 千秋ちゃんは私を揶揄(からか)って来た。流石に友達に私が普段の生活で、呼んでいる兄の呼称をされるのは恥ずかしい。しかもこんな学校中の生徒が集まる中で言わないで欲しいな。

 私は少し顔を伏せ、やや上目遣いになり、千秋ちゃんの袖を摘み立ち止まる。

 

「だって……千秋ちゃんと食べたかったんだもん。だから千秋ちゃんのお弁当も作って来ちゃった」

 

「っ……!! も、もーぉ! それ反則っ!」

 

 千秋ちゃんに思いっきり抱きつかれた。なるほど、これは確かに使える。気分がいい。櫛田さんの気持ちが少しだけ分かったような気がした。

 早速席に座り弁当を拡げる。

 中身はツナ、昆布、鮭のおにぎりの3つ。唐揚げとカボチャのサラダ。デザートにクッキーを焼いて来た。

 

「え、綾小路くんって毎日お弁当だけど……もしかして愛歌ちゃんが作ってるの?」

 

「うん。そうだよ。今日のおにぎりは清にぃが全部握ってくれたんだけどね。普段は私が管理してるの」

 

「管理って……このブラコンめ」

 

「えー、照れるな。そんなバレバレだった?」

 

「うん。そんなバレバレ。少し時間ができると綾小路くんの方に行っちゃうから、声もかけれないよ。皆話したがってたよ?」

 

「んー、じゃあ控えてみる。こうやって千秋ちゃんとの時間が増えるなら嬉しいし」

 

「私、決めた。綾小路くんから愛歌ちゃん貰う」

 

「まじ? なら今の内に秋ねぇって呼ぶ練習しとこっかな?」

 

「皆見て! この子が私の自慢の妹、松下愛歌です!」

 

 千秋ちゃんのノリが好きだ。話してて楽しい。自然と笑顔になるし私のことをいつも笑わせてくれる。まだ軽井沢さんとは関わりが少ないから、千秋ちゃんを通じて少しづつ関係を持ちたい。私多分だけど……いや絶対軽井沢さんに警戒されてるんだよね。嫌われてる訳じゃないと思う。

 

「それで? 運命の王子様探しは終わったの?」

 

「だから違うってば。ただ交友を広げてただけだよ」

 

「絶対嘘。ただ交友を広げるだけにそこまでする?」

 

「するする。私さ、箱入り娘で中学は女子しかいなかったから、男性との関わりなんておにぃとだけだよ。はしたないかも知れないけど、男性と触れ合う機会が多くて……そのつい」

 

「え!? まさか最後まで行ったの!?」

 

「行ってないよ!! 何言ってるの!?」

 

 なぜその発想になる。危うくお弁当を落とす所だった。

 

「でも箱入り娘にしたくなる理由も分かるなあ。こんなに綺麗で可愛い子なんて見たことないよ」

 

「ありがとう。千秋ちゃんにそう言われると自信を持てるよ」

 

 その後も私たちは雑談を交え、今度遊ぶ約束もした。6月の日程がキツキツになって来た。清にぃにスケジュールを送っておかないと。

 昼も終わり放課後を迎える。須藤くんは佐枝先生に呼ばれて、連れて行かれた。事前に須藤くんから話を聞いていたので、クラス皆の反応は落ち着いていた。

 本来なら退学していた方がよかった、そう誰かに呟かれていた。けれど今はこうして『大丈夫かな?』と心配されている。私が介入したせいだ。

 

「愛歌。オレはもう帰るが、お前はどうする?」

 

「ごめんね清にぃ。放課後に遊び行く約束してるの」

 

「そうか。愛歌はオレと違って友達が多いから仕方ないさ。謝る必要はないぞ。なあ堀北、俺と」

 

「いや。私は1人で帰るわ。また明日綾小路くん、綾小路さん」

 

 鈴音ちゃんは清にぃが言い終える前に、そう言い残して教室から出て行った。流石は私たちの堀北さんだ。

 私も教室を出て約束した場所に向かう。その場所は人があまり来ない公園だ。お洒落なことに森の中にある公園で、入学当初は話題になったものの、学校からも寮からも遠い場所で、高校生にもなって遊具で遊ぶこともそうそう無く、その結果ここの公園には人が寄り付かなくなってしまった。だからこそのいい場所でもある。

 

「遅れちゃった。ごめんね?」

 

「う、ううん。私も今来た所だから……そ、その、大丈夫だよ綾小路さん」

 

 私が約束していた人物、同じクラスの佐倉愛里ちゃんだ。彼女とこうして話すようになったきっかけは、前にここでお昼寝をしていた時に起こして貰ったことがある。いや、あれは起こされたと言うべきなのかな? 人の気配を感じると目覚めちゃうんだよね。背中がゾワゾワってなる。あの時、愛里ちゃんをびっくりさせちゃったのはいい思い出だ。

 実は言うと愛里ちゃんとどうやって仲良くなろうか悩んでいたので、こうして友達になれたのはラッキーだった。きっと私の方から話しかけに行ってたら、引かれて友達になるには少し時間が必要になったと思う。

 パシャッ。そんな聴き心地の良い機械音が鳴り意識が引き戻される。愛里ちゃんの手にはカメラが握られていて、きっと撮ってくれたのだろう。

 愛里ちゃんには一々私に許可を取らずに撮っていいと言ってある。その代わり可愛く撮らないと拗ねることも言った。

 

「凄い綺麗に撮れたよ! 見て綾小路さん!」

 

 そよ風に髪を靡かせる横顔。何処か遠くを見ているその青い瞳はとても幻想的で、木々の間から差す木漏れ日に照らされ、まるでドラマのワンシーンの様な美しい一枚絵になっていた。

 

「綾小路さんは本当に綺麗だなぁ……羨ましい」

 

「愛里ちゃんは私よりも可愛いよ。それにこれは撮る側のスキルあってこそだよ?ほら今度は私が撮ってあげるから。何処から撮ればいいかな?」

 

「そ、そんな。私なんかはいいよ! 綾小路さんのこともっと撮らせて」

 

「愛里ちゃん、私の前では自分のことをなんか呼ばわりしないって約束したよね?」

 

「うっ。ご、ごめんなさい」

 

「謝るのはだめ。今のはそう、次から気をつけるね、こんなのでいいの」

 

「わかり、ました……」

 

 ちょっとガツガツ行き過ぎたかな? シュン、としてしまっている。落ち込んで欲しい訳では無いので元気を出して貰おう。

 

「それはそうと、約束破った罰は必要だよね」

 

「え……え、ま、待って綾小路さん。なんかその手の動きとても怖いよ!?」

 

 私は問答無用で愛里ちゃんの脇腹をくすぐった。身を捩り手を使い抵抗するけれども、当然愛里ちゃんが私を振り解くことは出来ず、涙が出るまで笑わせてやった。どさくさに胸を触ったのは内緒だよ……でかい。ぐすん。

 

「あはは、ちょっと座ろっか」

 

「はぁはぁ……ねぇ、綾小路さん」

 

「ん? なーに?」

 

「す、須藤くんのことどう思う?」

 

 まさか愛里ちゃんから須藤くんの話に触れてくるなんて。最近予想外のことが多くて少し心配になる。もっと人を観察して掌握しなければならないと思った。

 

「遅かれ早かれこうなってただろうから、今の内に痛い思いして、性格が治るといいんじゃないかな?」

 

「でも須藤くんって初めて会った時よりも変わったと思う……それに今回だって綾小路さんや堀北さんのために

 

 愛里ちゃんが最後の方、なんて言っているのか聞き取れなかった。人によってはそれが何なのか聞いて欲しい人と、出来ればスルーして欲しい人がいる。愛里ちゃんは後者だ。なので彼女が最後なんて言っていたのか、私は気にかけないようにし聞かなかった。

 

「須藤くんは確かに変わったね。でも愛里ちゃんも変わったと思うよ」

 

「わ、私が?」

 

「うん。だって自分から誘えるようになったんだから。いつも私からだったでしょ?」

 

「……そうかも。め、迷惑でした?」

 

「まさか。凄く嬉しかった。また誘ってね愛里ちゃん」

 

 私はそのまま愛里ちゃんの肩に頭を乗せた。少し照れながらも愛里ちゃんは小さく頷いて『はい』としっかり答えてくれた。

 





最後まで読んでくださりありがとございました。

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