綾小路清隆の妹として、全力で支えます 作:ぐれーぷ
Aoi_Tomoeさん、名無しの葦名衆さん、一般人Aさん、えだこたさん、好評価ありがとうございました。
また感想、お気に入り登録、誤字脱字報告ありがとうございます。
須藤くんとCクラス喧嘩編?は次回でおしまいです。駆け足になってますが、ご了承ください。
早く無人島編を書きたい。
須藤くんとCクラスの3人が特別棟で揉めた時に居た目撃者は、愛里ちゃんだったと、鈴音ちゃんから昨日連絡が来た。私はこの1件に関わるつもりが無いので、別に連絡して来なくてもいいんだけどなぁ。清にぃにも当然その情報は共有されていて、今日の放課後に櫛田さんが愛里ちゃんへ話しかけるみたいだ。
「おはよう、綾小路くん。それに綾小路さんも」
「平田か。おはよう」
「平田くんもおはよー。今日もお外は暑いね」
教室に入るなり平田くんから声をかけられた。扉の近くに居たから私たちを待っていたのかな? もしそうなら嬉しい。これでも女の子だから、イケメンに待たれてた事実にニヤけそう。
どうやら櫛田さんは平田くんに目撃者が愛里ちゃんだったことを、教えていたようだ。
「2人は佐倉さんとは話してたりする?」
「オレは見た通りだ。たまに挨拶するぐらいか」
「私も関わりは無いかな」
「……」
そんな目で見ないで清にぃ。私はまた息を吐くように嘘をついた。ここでもし友達だよ! って答えたらまず間違いなく、愛里ちゃんに話を聞いて来てと頼まれる。話を聞いてくるだけなら私は構わないけれど、愛里ちゃんが話したく無いなら聞こうとは思わない。
私になら恐らく話してくれるかも知れない……だけど佐枝先生がホームルームで目撃者の話をした時、愛里ちゃんは話さなかった。なら本人が話したくなるまで私は待つ。あの子は臆病なだけで勇気のある女の子。自分から打ち明けようとする時まで待ちたい。それが彼女にとっての第一歩になるのだから。
「平田はどうなんだ? 佐倉と話したりするのか?」
「僕も挨拶する程度かな。佐倉さんはいつもクラスで1人だから何とかしてあげたいんだけどね。軽井沢さんに頼む訳にも行かないしね」
軽井沢さんが行ったら、圧をかけられて余計に萎縮して悪化しそうだ。まず無いだろうけれどそんな時は流石に助けに入ろう。今後のことを考えると愛里ちゃんとの付き合いはまだ必要だ。
そして放課後。
予定通り櫛田さんが愛里ちゃんに話を聞きに行った。
愛里ちゃんは少し慌てた。普段話しかけて来ない人が、突然こうして話しかけて来たりしたら、愛里ちゃんみたいに会話を苦手とする人は当然驚く。それがクラスの人気者なら尚更だよね。
「須藤くんのことで聞きたいことがあるの……須藤くんが特別棟で喧嘩した日、佐倉さん近くにいたんじゃないかなって。話を聞きたいんだけど、少しだけ時間を作って欲しいな。ダメ、かな?」
「え、えっとその……堀北さんにも聞かれたけど私本当に何も知りませんから」
愛里ちゃんがチラッと私の方を見た。助けて欲しいんだよね。分かってる。でも愛里ちゃん、ここで私が助けたらずっとそのままだよ。だからごめんね。私が愛里ちゃんを助けることはない。
私の隣には清にぃと鈴音ちゃんが居る。きっと他の人は愛里ちゃんが、鈴音ちゃんのことを見たと勘違いしただろう。
「彼女、櫛田さんが相手でも無理だとしたら、諦めるしかないわね」
「櫛田でもダメなら他の人でも無理だろうからな」
「まだ私が居るよ。任せて聞き出して見せる」
「綾小路さん協力しないんじゃ無かったの?」
「話を聞くことぐらいならするよ。へいへーい! ちゃん佐倉! 須藤くんがレッツファイトしてる所を見たんでしょー? 正直にゲロっちまいなよ! うぇい! って感じで」
「却下よ」「却下だな」
こんな大事な時にごめんなさい。ちょっと悪ふざけしたくなりました。
すると愛里ちゃんは居た堪れなくなったみたいで、逃げようとしていた。ただ走り出した時に本堂くんとぶつかって、その拍子にデジカメを落としてしまい、故障させてしまった。つくづく運がない。
「さ、佐倉さんごめんなさい! 私が話しかけたせいで……」
「それは違います……私が不注意だったのがいけないので。あ、あの私この後、用事があるので……さようなら」
そのまま愛里ちゃんは何処かへ行ってしまった。
やっぱり無理かあ。それじゃあ私も用事を済ませに行こうかな。荷物を手に取り立ち上がる。教室を出ようとする私に鈴音ちゃんが声をかけて来た。
「ちょっと待って綾小路さん。本当に須藤くんのこと見捨てるつもり?」
「うん。これが退学まで行くなら勿論助ける。ただそうじゃないなら一回ここで痛い思いをすることも必要だと思うんだ。だから今回の件で、須藤くんに私が協力することはないかな」
「……そう、分かった。また後で連絡するわ」
「うん、待ってるね。それじゃあ清にぃもまた後で」
「ああ。気をつけて帰れよ」
鈴音ちゃんとの会話が終わったので、今度こそ私はクラスを後にした。
今頃、愛里ちゃんは特別棟に居るのかな。清にぃと鈴音ちゃんもこの後、2人で特別棟に向かうはず。あそこ凄い暑いから行きたくないんだよね。
目的地に着いた私は扉を数度ノックした。中から入室の許可が出た。
「来たか綾小路」
「堀北生徒会長お疲れ様です。この空欄を全部、埋めればいいんですね?」
「そうだ。それらの空欄を埋め提出すれば、正式に生徒会の一員として認められる」
「それじゃあ早速っと。筆記用具お借りします」
渡された紙の記入欄を埋めて行く。記入すること以外にも、生徒会としての仕事内容や、注意点なども書かれていて、私は当然それを読んだ上で最後にサインをして堀北生徒会長へ紙を渡した。書き漏らしがないか確認してもらう。
「そう言えばCクラスと揉めているそうだな」
視線は用紙へ固定したままそう聞いて来た。
「そうですね。きっと鈴音ちゃんが解決してくれますよ」
「鈴音が、か。まるで他人事だな? 綾小路、お前はこの一件に関わるつもりはないのか?」
「今のところはそうですね。これが退学ってなると流石に協力しますけど、停学ぐらいで済むなら何もしないつもりです。人は痛い思いをして成長する生き物ですから」
「それがお前の出した答えか……書き漏らしはないな。確認した。これは俺から茶柱先生に渡しておこう」
「お言葉に甘えます。それではこれで失礼します」
「ああ。ご苦労だったな綾小路。期待しているぞ」
一礼をして生徒会室を出た。
端末に一通のメールが届く。愛里ちゃんからだった。メールの内容はこの後、あのいつもの公園で会いたいとのこと。もう清にぃや鈴音ちゃんとは会ったのかな。
公園に着いたけど愛里ちゃんの姿は無かった。来るまで何をしよう? そう悩むこと十数分後、息の上がった愛里ちゃんがやって来た。急いで来たんだね。
水筒から紙コップに水を注いで渡す。
「あ、ありがとう綾小路さん」
「いいえ〜。またここで撮るの?」
「え……あ、違くて。そ、その私……」
「別に無理して話さなくてもいいんだよ。愛里ちゃんが目撃者だったとしてもそれを名乗り出る義務はないし、嫌なことを無理してやる必要はないから」
すると愛里ちゃんが笑みを浮かべた。
「綾小路さん、お兄ちゃんと同じこと言ってる」
「清にぃと同じこと?」
「うん。目撃者として名乗り出る義務はないってさっき言われたの。怖い人に強要されそうになったら相談してって」
確かにそんなこと言ってたね。なら帆波ちゃんとも会ってそろそろ帰る頃か。後で清にぃに帆波ちゃんに関して纏めた情報、生徒のプロフィールを渡さないと。
「綾小路さんも須藤くんのために動いてるんだよね?」
「ううん。今回私が須藤くんに対して協力することはないよ」
「やっぱりそうだよね。なら私も……ん? え、しないのぉぉ!?」
珍しく大声で叫ぶ愛里ちゃん。どうやら愛里ちゃんの中で私が協力するのは当たり前だったみたい。まあ、気持ちは分かる。
どうして協力しないのか聞かれたので、愛里ちゃんにも堀北生徒会長の時と同じように教えてあげた。
人は失敗をする生き物だ。同じ失敗をすることもある。ただ何度も同じことを失敗するのは愚か者のすること……須藤くんには痛い思いをして、もう二度とこんなことが起きないようになって貰う。バカは死なないと治らない、そう言われているぐらいだからね。
「理由は分かったけど……で、でも! そうだとしても綾小路さんは須藤くんを助けるべきだよ!」
あの愛里ちゃんが正面から反対して来た。
「なんで? どうしてそう思うのか聞かせてくれる?」
「っ……! え、えっと実は……そ、その」
愛里ちゃんは私の突然の変化に怖がっている。先程まで合っていた目は下に逸らされ、両手を胸の前で握りしめ身体はやや丸くなり、膝は少し震えている様にすら見えた。
私は待つ。このまま愛里ちゃんが逃げるのか、それとも自分の気持ちをちゃんと言葉にするのか。逃げたらきっと愛里ちゃんは自分に対してまた自信を無くす。けれどもここでちゃんと言葉に出来れば、それは本人が気付かない間に自信となり成長をもたらすだろう。
「頑張れ私……頑張れっ……じ、実は私、須藤くんがCクラスの人と揉めた日に特別棟にいたの! 須藤くんはCクラスの人に馬鹿にされて、それでもそれを流して大人の対応をしてて帰ろうとしたの。そしたらCクラスの人が綾小路さんと堀北さんを襲うって言って、2人を侮辱したCクラスの生徒を殴ってしまった……綾小路さんのために須藤くんは怒ったんだよ! だから綾小路さんは須藤くんを助けるべきだよ!」
「……そっか。頑張ったね、須藤くんも愛里ちゃんも」
目端に涙を浮かべている愛里ちゃんをそっと抱きしめた。少しやり過ぎちゃったかも……だけどちゃんと言葉にできた。愛里ちゃんなら出来ると私は信じていたよ。
それとやっぱり須藤くんが殴った理由はそれかぁ。私や鈴音ちゃんのために怒ってくれるのは嬉しいけど、だからと言って手を出すのはダメだ。せめて手を出すなら、相手が逆らう気すら起きないように心を完全に潰さないと。折る程度じゃダメだ。
「ごめんね愛里ちゃん。怖かったよね」
「凄く怖かったよぉぉ。綾小路さんのばかぁ」
「あはは、ごめんごめん。本当は怒ってないからね?」
「余計タチが悪い!」
ヘナヘナとその場で崩れ落ちそうになるので支える。やっぱり流石にやりすぎちゃったね。本当に申し訳ない。
「あ、綾小路さん……須藤くんのこと助けてあげれないかな」
「愛里ちゃんには申し訳ないけど、私が須藤くんを助けることは無いよ」
「そ、そんなぁ……」
──ピロン
端末に届いたメールを確認する。
私は協力しない……つもりだったんだけどなぁ。
須藤くんとCクラスの話し合いまで残り1日。この数日間で色々あった。昨日の日曜には、櫛田さんと愛里ちゃんと例の家電店へ行き、カメラを修理に出した。私も誘われたが用事があったため断った。
それをキッカケに仲良くなった清にぃたちは、愛里ちゃんから自分が目撃者であると教えて貰えることに。
「遂に明日だね。上手く行くといいね〜」
「どうだろうな。愛歌が最初から協力してくれたら確実だったんだが」
「なら言えばよかったじゃん」
「オレが言って行動しちゃ意味ないだろ。Dクラスのためにもならないしな」
「私もそうだよ。この先、鈴音ちゃんがAクラスを目指すなら、これぐらいは自分の力だけで何とかして欲しかったんだけどね」
「今の堀北には無理だ。Cクラスのやり方は堀北とは相性が悪い」
確かに龍園くんみたいな搦め手を得意とする相手を、正面から当たって解決して行くタイプの鈴音ちゃんじゃまだ無理だね。
清にぃと登校すると下駄箱の先にある、階段の踊り場の掲示板に、須藤くんとCクラスに関する情報を募集していると、書かれた張り紙を見つけた。有力な情報提供者にはポイントを振り込むことも書かれている。流石はBクラス、中々の行動力だ。
「あ! 綾小路くんと愛歌ちゃんおはよー! 兄妹仲良く登校ですね?」
「帆波ちゃんおはよっ。今日も輝いてるね」
「にゃはは、それ愛歌ちゃんが言う?」
いや本当に。帆波ちゃんの容姿なら、それで食べて行けるよ。モデルになってもおかしくない。
「おはよう。もしかしてこの張り紙は一之瀬か?」
「んにゃ? ほうほう、確かにこの手もありだね。多分神崎くんじゃないかな?」
「神崎……?」
「清にぃほら、丁度来たみたいだよ」
神崎くんが私たちの方へと歩いてくる。相変わらずカッコいいな。今度帆波ちゃんにお願いして、3人でご飯食べに行きたいな。帆波ちゃんに私たちの紹介をして貰う。出来る女のオーラを出しておこ。清にぃなに? 言いたいことがあるなら言ってよ。そんな憐れむような目で見ないで。
この張り紙は神崎くんが貼ってくれた物で、まだ有力な情報は集まってないらしい。帆波ちゃんも学校のHPの掲示板で情報提供者を募集してたようで、2通のメールが来ていた。
石崎くんが地元でそれなりに悪さをしていた不良だという情報だ。そんな石崎くんが居た上で、3人が一方的にやられるのはおかしい。帆波ちゃんと神崎くんは、Cクラスが須藤くんを罠に嵌めたと結論を出した。
「どうやってポイントを譲渡すればいいんだろ?」
「オレで良ければ教えるぞ」
「綾小路くん分かるの?」
「いろいろ携帯操作をしていたら覚えた。相手のメールアドレスは分かるか?」
「うん! 分かるよ! 綾小路くん教えて教えて!」
帆波ちゃんが清にぃに急接近した。遠くから見たら密着しているように見えるぐらい。どうしてだろ、櫛田さんがやるとあざといのに、帆波ちゃんがやると天然ちゃんだなって思う。
2人がやり取りしている間、私は神崎くんと改めて自己紹介でもしよう。
「神崎くんも色々とありがとうね」
「気にしなくていい。龍園は危険だからな」
「そう言ってくれると助かるよ。改めて私の名前は綾小路愛歌、清にぃと苗字が一緒だから、気軽に愛歌って呼んで」
「神崎隆二だ。それは助かる。ならお言葉に甘えて、兄妹2人でいる時は下の名前で呼ばせて貰う」
清にぃが居なくても下の名前で呼んで欲しかったけど残念。もう少し仲良くなってからだね。
どうやら丁度いいタイミングで、帆波ちゃんと清にぃの方も無事済んだようだ。清にぃから少し慌てるように帆波ちゃんが離れる。またお互いに何か情報が手に入ったら連絡すると約束し別れた。
「どうかした清にぃ……?」
「愛歌、今ポイントどれぐらい持っている?」
「私? 今は6万ぐらいしかないよ」
「……一瞬のことだったから見間違いかも知らないが、一之瀬は200万近いポイントを持っていた。可能なのか?」
「それは……流石に無理かも。本当にそんなにあったの?」
「断言はできないな。もし見間違いじゃなければ、考えられるとしたら一之瀬がクラス全員のPPを管理しているのかもな」
ちょっと鋭すぎません? 清にぃを相手にする龍園くんが少し可哀想に思えた。
その日の夜、櫛田さんに招集され清にぃの部屋に集まっていた。山内くんと池くんも居て、この機会に2人から勝手に作った合鍵を回収した。
清にぃの部屋には私の私物とかも置いてあるから、2人に盗まれたりしたら困る。それにその合鍵を誰かに盗まれたりしたら……そもそも普通に犯罪だから。
櫛田さんが私たちを集めた理由は、愛里ちゃんがグラビアアイドルだと教えるためだった。やっぱりバレちゃったか。
3人が帰った後、清にぃと愛里ちゃんのグラビアアイドル雫のブログを見てみる。
「これだ。やっぱりあったな」
「例の危ない店員さん?」
「ああ。相当気持ち悪いぞこれ」
確かに読んでて気分は良くない。愛里ちゃんからして見れば恐怖以外のなにものでもないだろう。
「須藤の無実を証明するにはあのデジカメが必要だ。目撃者として証言すると言った以上、買い変えることは出来ない。愛歌、念のために佐倉のこと気にかけておいてくれ」
「もちろんだよ。ただ清にぃ、Cクラスと話し合いをしている時は無理かも」
「参加するのか? ならオレが代わりに様子を見ておく」
「ううん。Dクラスとしてじゃなくて……生徒会の
「……そう言うことか」
私もずっと愛里ちゃんを守るつもりで居たから、予想外の事態に少し困っていた。ほぼ間違いなく私が愛里ちゃんを助けに行くことは叶わないと思う。
堀北生徒会長は相談すれば理解してくれるだろうけど、他の生徒会メンバーはそうは行かない。生徒会初の仕事を拒否する、他の生徒会メンバーからして見れば悪印象だ。今はまだ生徒会メンバーから悪い印象を持たれる訳にはいかない。しかも書記としても学年としても先輩である、橘先輩の代わりに記録するのだから責任は重大だ。明日は進行役で参加するらしい。
ひとまず2人で愛里ちゃんを気にかけて、万が一の時はその時に行動できる方が、愛里ちゃんを助けることにした。
──そして遂に、鈴音ちゃんたちDクラスとCクラスとの対談を迎える。
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