綾小路清隆の妹として、全力で支えます   作:ぐれーぷ

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空@12さん、まかろにさらださん、Relikeさん、時雨。さん、好評価ありがとうございました。

また、沢山のお気に入り登録、感想、誤字脱字報告、ありがとうございました。

これにて暴力事件編は完結です。少し長くなってしまっております。

次回から無人島編です。よろしくお願いします

追記

読み直したつもりでしたが、誤字脱字のオンパレードになっております。急いで修正、誤字脱字報告を適用しています。ご迷惑をおかけします汗


4限目〜誇りに思うよ〜

 

 

 部屋がノックされる。隣に座っていた堀北生徒会長が生徒会室に入るよう声を掛けた。扉が開かれ佐枝先生がまず姿を見せ、私と目が合うと一瞬驚きすぐ顔を逸らされた。多分今日ここに生徒会として居るとは思わなかったのだろう。

 佐枝先生に続いて、鈴音ちゃん、須藤くん、最後に清にぃが入って来た。

 

「なっ!? 綾小路!?」

 

「……綾小路さん」

 

 須藤くんと鈴音ちゃんも私が居ることに驚いていた。うん。まあ、そうなるよね。清にぃはやっぱり私が今日、生徒会として居るとは言わなかったみたい。

 生徒会室には長机が並べられており、ぐるりと長方形の形に置かれていた。既にCクラスの生徒3人と、Cクラス担任の坂上先生が着席している。

 鈴音ちゃんが堀北生徒会長の方をずっと見るけれど、鈴音ちゃんの方を一切見ようとしない。寂しそうな表情を一瞬だけ浮かべ、Cクラスと対面するように着席する。

 このシスコン生徒会長もそれなりに面倒くさい人だよ。鈴音ちゃんと和解した時は1発蹴りを入れようと誓った。

 そして全員が揃い、予定時刻を迎える。

 

「時間です。これより先日に起こった暴力事件について、生徒会及び事件の関係者、担任の先生を交え審議を執り行いたいと思います。進行は私、生徒会書記の橘が務めます。そして……」

 

 橘先輩が私の方へと視線を向ける。

 

「本日の審議を生徒会書記、綾小路愛歌が記録させていただきます」

 

 よろしくお願いします。そう口にして橘先輩と一緒に軽く会釈した。

 

「1年Dクラスである綾小路くんが、今日の審議を記録ですか」

 

 坂上先生が少し小馬鹿にするような目で私のことを見てくる。他の男子生徒と同じ、まるで品定めするかのような目。容姿は優れているが所詮はDクラス、みたいなことを考えているんでしょう。

 Cクラスからして見れば、今まさに揉めているDクラスの生徒が記録するわけだから、不満があるのは当然だ。Dクラスの都合のように記録されたら堪ったものじゃない。

 

「ご心配なく坂上先生。生徒会は1クラスを、当然自身のクラスを特別扱いするようなことはしません。もしそうなった場合は、綾小路書記を生徒会から除名させていただきます。綾小路書記もそれでいいな……?」

 

「問題ありません。入ったばかりとは言え、生徒会に身を置いている以上、特定のクラスを優遇するなんてことはしません。勿論、その逆も」

 

「それでいい。異論はありますか? 坂上先生」

 

「進行役を綾小路くんが務め、記録を橘くんがすればいいでしょう……は、流石に生徒会に入ったばかりの綾小路さんには酷ですね。いいでしょう、異論はありません」

 

 進行役でも記録でも大して変わらない。堀北生徒会長がいる以上、最終的に決断を下すのは堀北生徒会長だ。この記録だって終わった後に、纏めてから記録する。

 それを堀北生徒会長も確認する訳で、もし私が片方のクラスだけを良く悪く書けば書き直され、今ここで明言した以上、公平的に書かなければ生徒会から本当に外されるだろう。

 

 両クラスから他には特に何も言われなかったので、橘先輩がことの発端を話していく。

 Cクラス側の言い分を聞くのは、なんだかんだでこれが初だ。

 内容は須藤くんとは真逆、特別棟に呼び出され一方的に殴られたとのこと。何をしたところで結果は変わらないが、1つ私から嘘をつく時の助言をしよう。嘘の中に真実を混ぜ、真実の中に嘘を混ぜるのだ。全て嘘を塗り固めたら、必ずボロは出る。

 

「──Cクラスの皆さん、違う点、説明不足はありますか? 無いですね。それでは続いてはDクラスの主張を話させていただきます」

 

 Cクラスが訴えた内容を言い終えた所で、橘先輩は次にDクラスの主張を話す。

 鈴音ちゃんの方を見ると、兄である堀北生徒会長が居るせいで、下を向いて緊張の余り固まっていた。思ったより重症だな鈴音ちゃん。

 

「──Dクラスの皆さん、違う点、説明不足はありますか? 無いですね。しかし双方の主張は真逆です。つまりどちらかのクラスが虚偽の申告をしていることになります」

 

「俺は嘘を吐いてねぇ。嘘を吐いてるのは小宮たちCクラスだ」

 

「いいえ。僕たちが本当の事を延べ、Dクラスが嘘をついています。あの日、僕たちは須藤くんに特別棟へ呼び出され、一方的に暴力を振るわれました」

 

「両方そこまで。須藤くん落ち着いてください、小宮くんもお静かに。両クラスで主張が違う以上、意見を順番に聞きます」

 

 注意され2人は静かになる。このまま本人たちに好き放題話させてたら、いつまで経っても終わらないからね。

 取り敢えず纏めよう。DクラスとCクラスの意見は真逆で、お互いに呼び出されたと主張している。

 ただ2つの主張の共通点として、バスケ部の須藤くんと小宮くんに近藤くん、この3人の間で何かしらの揉めごとがあったこと。まずはお互いに相手から呼び出されたと言っている以上、その動機、理由、思い当たる節を聞かなければならない。

 

「須藤くんは僕たちにマウントを取りたいんです。僕たちよりもバスケが上手いからと、彼は僕と近藤くんのことをバカにしてきます。僕たちも人である以上、バカにされたら気分が悪くなるので……度々、部活内で衝突していました」

 

 それはない。須藤くんはバスケを何よりも愛している。そしてバスケを頑張る人をバカにすることもないし、自分が上手いからと上から目線で接してくることもない。須藤くんはバスケに対して、どこまでも真摯なのだから。

 もし仮に小宮くんの話が本当なら、私に見る目がなかったのだろう。橘先輩が須藤くんへ尋ねた。

 

「これは本当ですか須藤くん?」

 

「コイツの話は全部嘘だ。そいつらは俺の才能に嫉妬して、部活の間、ずっと邪魔してくるんだよ。そもそも俺は真剣に練習している。コイツらと喧嘩してる余裕なんてねぇよ」

 

「聞きましたか? この通り須藤くんは嘘しかつきません。またチームメイトだと言うのに、僕たちの努力も認めてくれません」

 

 分かっていたけれど、当然こうなる。結局、どちらかが相手が嘘をついている証拠を掴まない限り、今ある証拠で判断するしかない。そしてそうなれば怪我を負っているCクラスが圧倒的に有利だ。須藤くんは怪我を負っていない上に自分で殴ったことを認めている以上、Cクラスが一方的にやられたと判断するのは当たり前だ。

 堀北生徒会長と橘先輩も私と同じ答えに至ったようで、Dクラスから新たな証言がなければ、この議論はCクラスの主張が真実で、Dクラスが虚偽の申告をしていたとして終わらせるつもりだ。

 

「──ひゃっ!?」

 

 鈴音ちゃんからとてもとても可愛らしい、女の子の声が上がる。清にぃが鈴音ちゃんの脇腹を掴んで解していた。いいなぁ、私も鈴音ちゃんの脇腹をもみもみしたい。因みに鈴音ちゃんの声に誰よりも先に反応したのは、堀北生徒会長だ。ひの時点で振り向いたのを私は見逃さなかった。記録に確り書いておこう。堀北学、議論中に妹の堀北鈴音の可愛らしい声に真っ先に反応する。

 んん! 清にぃのおかげで意識を覚醒させた鈴音ちゃん。口にはできないけど、応援してるよ鈴音ちゃん。

 

「……失礼しました。生徒会長、私から1つCクラスへ質問させて貰ってもいいでしょうか?」

 

「許可する。だが、次からはもっと早く答えるように……っ!」

 

「……? それでは質問させていただきます」

 

 取り敢えず何事もないように堀北生徒会長の足を踏んづけた。優しく接してあげてと日頃から口酸っぱく言ってるのに……この人はこれだから。

 

「先程、Cクラスは須藤くんに呼び出され特別棟に行ったと言いましたが、もう一度お伺いします。いったい誰がどんな理由で、誰を何処に呼び出したのですか? 答えてください」

 

「ですから、須藤くんが俺と近藤に顔を貸せって呼び出したんですよ! 部活が終わった後、特別棟に来いって。きっと俺たちが気に食わないからじゃないですか?」

 

「分かりました。では須藤くんに呼び出された小宮くんと近藤くんは、部活が終わり次第、2人で特別棟へ向かったと。須藤くんからは部活が終わって直ぐのことだったと聞いております。それに関しては間違いはないですか?」

 

「はい。部活が終わってすぐに来いと呼び出され向かった結果がこれです」

 

 流石は鈴音ちゃん。上手く誘導したね。

 この時点で、須藤くんと小宮くんと近藤くんは、この暴力事件は部活後すぐに起きたと認めたことになる。

 ならここで疑問が1つ浮かび上がる。それは石崎くんの存在だ。

 

「おかしいですね。ならどうして石崎くんも特別棟に居たのでしょうか? 彼はバスケット部員ではない、その場に居たのは不自然です」

 

「何を言うかと思えば……Dクラスはもっと須藤くんのことを知るべきです。彼は暴力的だ。だから用心のために、頼れる友達の石崎くんを呼んだんですよ。いけませんか?」

 

「どうやら私の言ったことが上手く伝わっていなかったみたいですね。私が言いたいのは、部活が終わってすぐに特別棟へ向かったのにも関わらず、呼び出されてもいない石崎(・・)くん(・・)が特別棟に居たのかです」

 

「そ、それは偶然、石崎くんが帰る途中だったので呼び止めて連れて行ったからです」

 

「分かりました。生徒会長、綾小路さんへの質問をよろしいでしょうか?」

 

 鈴音ちゃんがCクラスから視線を外すと、今度は私たちの方を向いて質問をした。何を考えているんだろう? 鈴音ちゃんがどう盤面を運ぶのか楽しみだ。

 

「許可する。但しこの議論に関係のないこと、また綾小路書記に対して、Dクラスの生徒としての発言を促すことは禁止とする」

 

「ありがとうございます。綾小路さんに質問があります。この議論の最中で、今までのCクラスの発言は記録されていますか?」

 

「はい。DクラスとCクラス両方の主張を、一言一句違わずに記録しております」

 

「分かりました。それでは橘先輩、私たちDクラスが本当のことを述べ、Cクラスが嘘を語っていると証明すべく、証人を連れて来ております」

 

「伺っております。それではその証人を入室させて下さい」

 

 清にぃが部屋を出ると見覚えのある生徒が入って来た。予想外の生徒の登場に、須藤くんや小宮くんと近藤くんたちバスケ部員は、驚いた表情を浮かべた。

 

「3年Aクラス、そしてバスケ部の部長を務めさせて頂いている高橋です。堀北、最初から俺も呼べよ」

 

「高橋、今は3年Aクラスの堀北ではなく、生徒会長の堀北だ。私語は禁止だ」

 

 そう、鈴音ちゃんが呼んだのはバスケ部の部長だ。堀北生徒会長と橘先輩のクラスメイトでもあり、私も部活の見学で何度か会話をしたこともある。

 高橋先輩は堀北生徒会長に苦笑いを浮かべた後、真剣な顔になって知っていることを話した。

 

「まず俺、いや私の知っていることをお話しさせていただきます──」

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 ──数日前

 

 

 

「──愛里ちゃんには申し訳ないけど、私が須藤くんを助けることは無いよ」

 

「そ、そんなぁ……」

 

 ──ピロン

 

 端末に届いたメールを確認する。メールの送り主は鈴音ちゃんだった。内容はバスケ部に行って事件当日、部活で須藤くんや小宮くんと近藤くんたちに何か変わったこと、揉めごとなどなかったか、確認して来て欲しいとのことだ。

 勿論、須藤くんに協力しないと決めた以上、それをやるつもりは無い。断ろうとメールを返そうとしたら、追撃でメールが送られてくる。

 

『話を聞くことぐらいならするよ、須藤くんに私が協力することはないかな、そう綾小路さんは言ったわよね? じゃあ綾小路さん、須藤くんではなく私に協力して。今からあなたにはバスケ部に行って話を聞いて来て貰いたいの。それに前に言ってたわよね? もっと私を頼ってと。ええ、頼らせて貰うわ。有力な情報があったら連絡して。綾小路くんと一緒に向かうわ』

 

 絶対に清にぃが誘導したな。全部、間違いなく私が言った言葉だ。そう言った手前、断りづらい……その上、今も愛里ちゃんが心配そうに私を見ている。本当に何もしないの? って。

 

「私は協力しない……つもりだったんだけどなぁ」

 

「……!! じゃあ!」

 

「うん。愛里ちゃんと大切な友達のために、少しだけ協力するよ」

 

「綾小路さん! ありがとう」

 

 そうと決まれば急ごう。ひとまず愛里ちゃんとは別れ、そのまま私はバスケ部へと向かう。事件当事者であるバスケ部3人は、部活の参加を禁止にされているので、聞くなら絶好チャンスだ。

 バスケ部が使っている体育館に到着すると、あと少しで練習が終わる頃だった。

 

「よーし、終了! 片付け始めるぞー! ……お? 愛歌ちゃん! 今日は遅かったな」

 

「高橋先輩お疲れ様です。今お時間いいですか?」

 

「あー、片付け終わってからでもいいか?」

 

「はい。大丈夫です」

 

 片付けが終わり折角なので着替えるまで待つ。

 着替え終えた高橋先輩が出て来たので、早速私は話を伺った。

 須藤くんの普段の部活に対する姿勢、小宮くんと近藤くんとの関係性、そして今回の事件の知っていること。高橋先輩も事件を詳しく知りたいようだったので、私も知っていることを話す。

 

「なるほどなぁ。実際どっちが呼び出したか分からねぇな」

 

「……高橋先輩、1つお願いがあります」

 

「どうした……?」

 

「これから私たち1年Dクラスの鈴音ちゃんと、私の兄がやって来ます。きっと証人として先輩に協力を申し出るはずです。須藤くんが呼び出されているところを見た……と証人になっていただけませんか?」

 

「おいおい、本気で言ってるのかそれ?」

 

「冗談でこんなこと言いません。それに高橋先輩は、普段から真剣に練習を取り込む須藤くんと、須藤くんへ懲りずにちょっかいを出している2人、どっちが特別棟へ呼び出したと思ってますか?」

 

「それは──」

 

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 

「──須藤は部活中は真剣に練習を取り組んでおり、そんな須藤に小宮と近藤が多々ちょっかいを出す所を目撃しております。それを知っている他の部員も多いです」

 

 Cクラス側の顔色が悪くなる。勿論、そんな彼らの気持ちなど一切考慮せず、話は続く。

 

「また事件当日、私は、須藤を特別棟へ小宮と近藤が呼び出すところを目撃(・・)しております。更に何故か体育館の外、少し離れた場所に、そちらの石崎くんが立っておりました。恐らくその後、特別棟へ移動し事件が起きたのだと思われます。私の証言は以上です」

 

「ご苦労。それでは退出を願おう」

 

「ったく、相変わらず生徒会長の時は冷たいな。おい小宮、近藤、今の内に本当のこと話しとけよ。それと須藤も何かあったらすぐ相談しろ」

 

「高橋」

 

「分かった分かった。それでは失礼しました」

 

 高橋先輩は退出前に須藤くんの頭を乱暴に掻き混ぜてから、生徒会室から出て行った。出て行く一瞬、私と目が合う。

 

『これでいいか?』

 

 はい。ありがとうございました。部長としてチームの為にご決断なさったこと感謝します。

 こうして高橋先輩の協力もあり、Cクラスの生徒たちは勿論、先程まで笑みを浮かべていた坂上先生も、苦虫を噛み潰したような表情をしている。

 

「綾小路さん、お手数をおかけしますが、先程、Cクラスが発言したことをお話し願えますか?」

 

 念のために堀北生徒会長に確認する。頷いてくれた。私はノートを手に取り、先程のCクラスの発言を一言一句違わずに話した。

 

「綾小路さんありがとうございます。以上のことを踏まえ、私たちDクラスはCクラスへ、なぜ須藤くんへ呼び出されたと嘘をついたのか、そして改めて須藤くんを特別棟へ呼び出した理由の、説明を求めます」

 

「それではCクラスの方は、弁明をお願いします」

 

 橘先輩はCクラスへ考える隙を与えない。

 Cクラスの生徒3人は目に見えるぐらい焦っており、生徒会室の中は少し寒いぐらいなのに、汗を流していた。冷や汗、ってやつかな。

 何も発言できずにいると、何故か生徒ではなく坂上先生が発言した。

 

「どうやら私たちの生徒が嘘をついていたようです。それは認めましょう。しかし、正直なところそれは些細な問題でしょう。本題は須藤くんが一方的に彼らを、暴力で傷を負わせたことです。須藤くん自身が殴ったと認めている以上、その事実は変わりません」

 

 なるほど、そう来たか。些細な問題かどうかはさておき、確かに傷だらけのCクラスと無傷な須藤くん。事件の発端をCクラスの生徒が嘘をついていた事は証明されたが、傷を見る限り須藤くんが一方的に殴ったのは明らかだ。

 現状はまだ暴力を起こした須藤くん、Dクラスが不利なのは変わりない。

 

「では更にここで、特別棟で起きた事件の目撃者を呼ばせてください」

 

 鈴音ちゃんが間髪入れず答える。橘先輩は目撃者である愛里ちゃんの入室を認めた。

 

「1年Dクラスの佐倉愛里……です」

 

 たじたじな愛里ちゃんを見て坂上先生は再び笑みを浮かべる。この人の笑みは何故こんなにも気持ち悪いんだろう。

 

「佐倉くん、私は君を疑っているわけではない。だが1つ言わせて貰いたい。どうして今になって出て来たのかな? 本当に見たならもっと早くに名乗り出るべきだった」

 

「ま、巻き込まれるのが嫌だったんです。でも同じクラスの仲間のためにも私は……私の見たことを証言するべきだと考えを改めました」

 

「立派な心掛けだ。だが無理をしているのだろう? 嘘をつくことを強いられたと言ったところか。嘘は感心しないな佐倉くん」

 

 坂上先生ご立派ですね。是非とも隣に座っている自身の生徒たちにも言ってあげて欲しい。

 

「嘘ではありません! 証拠ならあります」

 

「だからそんな嘘をなぜつく? 証拠があるならもっと早くに──」

 

「──これがその証拠です!」

 

 愛里ちゃんが証拠として出したのは数枚の写真だった。その写真には須藤くんが石崎くんを殴る瞬間が写されていた。これで愛里ちゃんがその日、特別棟にいたことが証明される。坂上先生は再び焦りを見せたが、ある提案をして来た。

 

「し、しかしこれでは最初からその場に居たとは言えません。それにこの写真を見る限り、やはり仕掛けたのは須藤くんです。ですが……茶柱先生、どうでしょう? 落とし所を模索しませんか?」

 

「……と言いますと?」

 

「私は須藤くんが一方的に殴ったと確信しておりますし、佐倉くんがこのような写真を持っていたせいで、クラスメイトから強要されて証言していると思っています。そうですね、暴力を振るった須藤くん2週間、そして些細なことではありますが嘘をついたこの3人には1週間、停学にする……でどうでしょうか? やはり暴力を振るった須藤くんの方が罪は重いと思いますのでね」

 

 佐枝先生が私を見てきた。あれ? おかしいな、私の知ってる佐枝先生はこの提案を受け入れようとするはず。なんで何も言わないで私のことを見ているんだろう? 

 

「……折角のご提案ですが坂上先生、私はDクラス生徒を信じます(・・・・)。私がその提案を受け入れることはありません」

 

「なっ!?」

 

「もちろん、堀北や須藤と綾小路に佐倉、この4人がその提案を受け入れると答えるのであれば、私もそれに従うまでです」

 

 これは驚いた。まさか佐枝先生がこんなことを言うなんて。いったいどんな心境の変化があったんだろう? 少なくとも今この時期に、佐枝先生が自分の生徒を信じるなんて言う事はない。

 これには私たちDクラスも驚いてしまった。

 

「堀北、どうする? Cクラスの提案を受け入れるか?」

 

「……私も茶柱先生と同じです。私は須藤くんを、そして佐倉さんを信じます。提案を受け入れません」

 

「ならばどうする?」

 

 堀北生徒会長が鈴音ちゃんに対してそう問いかけた。その鋭い眼光が鈴音ちゃんのことを睨みつけるが、それに臆することなく鈴音ちゃんは言い切った。

 

「私たちは須藤くんの完全無罪を主張します。これはCクラスが意図的に起こした事件です。なら須藤くんに対してどんな処罰も認めることはありません」

 

「冗談をやめてください。見ての通り須藤くんは私の大切な生徒に暴力を振るった。どうやら生徒会長の妹は不出来と言わざる得ませんね」

 

「高橋先輩や佐倉さんの証言通り、嘘をついているのはCクラスです。それを踏まえた上で、どうか正しい判断をお願いします」

 

 Cクラスの生徒たちが鈴音ちゃんに抗議する。そしてそれを更に須藤くんが抗議をする。何の意味も無い時間だ。そんなことをしたって解決することは何もない。

 堀北生徒会長もそう思ったようで、そこまでにするように注意した。DクラスとCクラスへ嘘はないか確認する。Dクラスは最初から変わらずこの一件は仕組まれたもので、仕掛けてきたのは向こうだと。そしてCクラスの主張は須藤くんに一方的にやられたと。

 

 その結果、明日の午後4時にもう1度だけ再審を行うことになった。そこでも決着がつかないようならば、出ている証拠で判断を下す事になった。最悪の場合、退学という重い罰が下されることが告げられる。

 鈴音ちゃんがもう少し期間を空けれないか確認したが、佐枝先生がこれでも十分な猶予を与えたと答えた。ひとまず今日はこれでお終いかな? なら私も確認したいことを確認しよう。

 

「生徒会長。皆さんが退出する前に、記録するに当たって、状況と証拠整理のために幾つか、確認をさせてください」

 

「許可する。確認するがいい」

 

「ありがとうございます。ではCクラスからです。まず1つ当初、Cクラスは須藤くんに呼び出されたと主張していましたがこれは嘘だった、虚偽の申告だったと判断していいんですね?」

 

「そ、それは記録する必要はあるのかな? 今、大事なのは須藤くんが一方的に殴ったかどうかであって、そこに至るまでは過程は些細な──」

 

「──審議であったこと、全てを記録するのが書記の役目です。生徒の態度から、服装、あらゆることを記録して貰います」

 

 坂上先生が悔しそうにしていた。私のことを睨みつける。もちろんそんなの相手にしない。私は生徒会の書記として、記録するべきことを記録する。

 

「また当事者の生徒と担任の教師が口裏を合わせていたのか、途中から何故か坂上先生が当事者の生徒に代わって発言をしていたこと。1年Dクラスの堀北鈴音さんに対して、そして教師という立場にありながら、当校の生徒を不出来だと例えたこと。佐倉愛里さんを精神的に追い詰めたこと。これらも記録しますか?」

 

「な、な! 生徒会という立場にありながら自分のクラスを贔屓するのか!?」

 

 坂上先生が怒鳴る。全て事実だ。贔屓でも何でもなく、実際に起きた話でそれを記録するかどうか確認しているだけ。怒鳴る理由は分からない。

 

「坂上先生、落ち着いてください。私がどこを贔屓したのか言ってください。今、私が言ったことに間違いはありましたか?」

 

「全てだろ! 君が記録しようとしているものは全て、君の私情だ!」

 

「お言葉ですが坂上先生、綾小路書記は事実を述べたまでです。私も注意はしませんでしたが、途中からCクラスの生徒ではなく坂上先生が話を進めていたこと。そして生徒を不出来と発言する教師にあるまじき行為、どう説明しますか?」

 

「そ、それは……」

 

「認めますね? 綾小路書記、佐倉愛里を精神的に追い詰めたこと以外は、全て記録して構わない」

 

「分かりました」

 

 坂上先生には後で何かしらの処罰が下されるだろう。幾ら自分のクラスのためにとは言え、教師が自身の学校に通う生徒に対して不出来などと発言したのだから。

 それこそ佐枝先生もDクラスの生徒を不良品呼ばわりしていたのだから、誰かに訴えられてもおかしくはない。いい生徒たちに恵まれたね。

 

「続いてはDクラスです。最初の方になりますが、堀北鈴音さんが奇声を上げたこと。須藤健くんの先生に対しての言動が、褒められたものではなかったこと。こちらも記録していいですね?」

 

「なっ!?」「嘘だろ!?」

 

「当然だ。質問は以上か? それでは今度こそ解散だ」

 

「はい。では後で記録し纏めたものを提出させて頂きます」

 

 鈴音ちゃんと須藤くんには悪いけど、本当に記録させて貰うからね。須藤くんは先生に対して敬語を使えるようにならないと。

 Cクラスの生徒たちが急いで生徒会室から出て行き、坂上先生は出て行く前に愛里ちゃんに近づいた。

 

「君の身勝手な──」

 

「坂上先生。この生徒会室を出るまで、私が発言や行動を記録していることをお忘れなく」

 

「っ……! ふん!」

 

 乱暴に扉を開け坂上先生も生徒会室から出て行った。残ったのは私たち生徒会とDクラスだけだ。

 もう審議は終わった。なら生徒会としての役目はひとまず終わったので、涙を堪えようとしている愛里ちゃんに近づく。

 

「愛里ちゃんよく頑張った。私は仲間のために行動した愛里ちゃんを誇りに思うよ」

 

「綾小路さん……私がもっと早くに名乗り出ていれば……」

 

「ううん。結果は変わらなかったと思うよ。Cクラスは自分たちが正しいと言い張ってるからね。清にぃ、愛里ちゃんをお願い。私まだ片付けあるから」

 

「分かった。佐倉、立てるか?」

 

 鈴音ちゃんや須藤くんが私に何か言いたそうにしていたけど、佐枝先生に連れられ生徒会室から出て行った。程なくして清にぃと愛里ちゃんも出て行く。

 生徒会室には私たち生徒会3人が後片付けで残った。

 

「お前の兄は何を企んでいる?」

 

「企んでいるなんて物騒な。別に何も企んでいませんよ」

 

「彼が愛歌さんのお兄さんでしたか。似てませんね」

 

「義兄妹ですからね。父親も母親も違います。清にぃはどこかのお兄さんとは違って、妹に優しいですからね」

 

「片付けは終わりだ。俺たちも部屋を出るぞ」

 

 そんな堀北生徒会長に橘先輩と私は苦笑いを浮かべた。生徒会室から出ると外に清にぃと愛里ちゃんがまだ居た。

 清にぃと堀北生徒会長が会話を交えている間に、部屋の鍵を取り出し戸締りする。確り閉まっているか確認して鍵を仕舞った。

 

「お前に証明できるのか? 佐倉の言ったことが嘘ではないと」

 

「それを証明するのはオレじゃなく、あんたの妹ですよ。きっと堀北鈴音が佐倉が嘘つきじゃなかったと、明日証明することでしょう」

 

「鈴音には無理だ。明日を楽しみにしているぞ綾小路。行くぞ2人とも」

 

「はい。それでは失礼します。明日頑張ってくださいね」

 

「清にぃ、愛里ちゃんまたね」

 

 私は生徒会の2人に付いていく。生徒会室の鍵を職員室へ返しに来た。鍵を返したことで、私たちも解散した。2人は先に帰り、私は残る。佐枝先生に聞きたいことがあった。

 

「待たせたな綾小路。私に何か用か?」

 

「さっきのDクラスを信じると言った佐枝先生に驚いたので。どんな心境の変化があったのかと」

 

「ふっ、意外か?」

 

「はい。とても」

 

「担任として受け持つクラスの生徒を信じるのは当然だろう?」

 

「……今の所はそういうことにしておきますよ。それじゃあ佐枝先生また明日です」

 

「ああ。気をつけて帰れよ、綾小路」

 

 佐枝先生に答える気がないと分かったので、私ももう帰ろう。

 帰るため玄関に向かうと清にぃと鈴音ちゃん、そして帆波ちゃんと神崎くんの姿があった。

 

「あれ? 愛歌ちゃん? 愛歌ちゃんも審議に参加したの?」

 

「いいえ。一之瀬さん、彼女は生徒会の書記として記録をするために参加したわ」

 

「えっ、愛歌ちゃん生徒会に入れたの!?」

 

「皆お疲れ様。うん、つい最近ね」

 

「いいなぁ。私も入ろうとしたんだけど、生徒会長のお眼鏡に叶わなかったんだよね」

 

 帆波ちゃんが私にどうやって堀北生徒会長に認められたのか、教えて欲しいと言ってきた。そろそろ噂を広げたいと思っていたので、帆波ちゃんにも少し教えようと思う。

 

「ごめん。それはまだ言えない」

 

「ほう、まだ、か」

 

 神崎くんが先に反応した。やはり私が堀北生徒会長に認められ生徒会に入ったせいか、鈴音ちゃんも気にしているようだった。ここのメンバーなら他言はしないと思うけれど、その時が来るまで話すつもりはない。

 

「うん。まだ、ね。8月に生徒会からとある発表があるから。それを見たら私が生徒会に入れた理由を、皆なら分かるんじゃないかな?」

 

「その『発表』が愛歌ちゃんの功績……ってことなんだね?」

 

「そう。だからその時まで待ってて。それはそうと皆なんの話をしてたの?」

 

「綾小路さん丁度よかったわ。あなたにも協力して欲しいことがあるの」

 

「それじゃあ私から説明させて貰うね。この後なんだけど──」

 

 ダミーの監視カメラを複数用意して特別棟に設置し、Cクラスを呼び出して監視カメラの存在を認めさせることだった。そしてCクラスに訴えを取り下げさせる。

 その為に必要なポイントを貸して欲しいみたい。そして監視カメラの設置の手伝いだ。

 

「ダミーじゃなくて本物の監視カメラが買えればいいんだけどね。そしたら明日、特別棟でCクラスを自白させるように誘導して、カメラで撮れるのに」

 

「Bクラスには協力して貰う代わりに、そのダミーの監視カメラを全て渡すことしたわ。これが報酬になるとは思えないのだけれどね」

 

「堀北さんたちはダミーだと分かっているから、今後使う場面があった場合のことを考えるとだよね? でもDクラス以外には使える手だから、他のクラスには他言無用でお願いね」

 

「ええ、もちろんよ」

 

 清にぃは私が監視カメラを持っていることを指摘しないので、私もこの場にそれは言わない。あれを一台作るのにカメラも買うので、今から新たに作るとなるとポイントの消費が激しい。既に持っている物を使ったとしても、Bクラスに回収されるのは困る。

 こうして方針は決まったので、私は先に帆波ちゃんに1万ポイントを譲渡した。

 早速私たちはダミーの監視カメラを買い、設置すべく特別棟へと向かった。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 今日が最後の審議、十分前。

 私は須藤くんと共に生徒会室にやって来た。生徒会室の中には綾小路さんと橘さんしかおらず、兄さんとCクラスがまだ来ていなかった。

 

「緊張してきた……堀北、本当に助かった。ありがとう」

 

「それは全てが無事終わってから言って須藤くん」

 

 咄嗟に思いついたことだ。上手く行くか分からない。でももう私たちが勝つにはこれしか残されていない……大丈夫、綾小路くんなら上手くやってくれる。彼に頼りたくない、彼を信じない、そう口にする私だが、結局最後まで彼に頼ってしまった事実が悔しい。

 認めるべきね。茶柱先生の言う通り綾小路くん、そして綾小路さんは実力を隠している。Aクラスに上がるために、この2人が必要だ。

 そして遂に兄さんが姿を現す。続いて茶柱先生と坂上先生が姿を見せた。

 

「おや、昨日の男子生徒は今日は不参加ですか?」

 

「堀北、綾小路はどうした?」

 

「どうせ居ても彼は何もしませんので置いてきました」

 

「そうか……お前がそう判断したならそれでいい」

 

 これで残るはCクラスの生徒だけ。時間ギリギリになってもやって来ない自身の生徒たちに、坂上先生は焦りを感じ始めていた。そして審議が行われる予定の16時ピッタリに、急いで来たのか汗だくになったCクラスの生徒たちが姿を現した。ちゃんと時間通りに来たことでほっとする坂上先生。けれどそれも束の間。Cクラスの生徒たちは訴えを取り下げると口にした。

 

「な、何を言っているんだ君たちは!? う、訴えを取り下げるだと!? ……っ! 茶柱先生、何がそんなにおかしいのですか?」

 

「これは失礼。昨日までと言っていることが違ったので」

 

 無理もない。昨日までは徹底して自分達は悪くないと、須藤くんが一方的に悪いと口にして居たのに、今日は訴えを取り下げると言っている。茶番だ。呆れて笑いたくなる気持ちも分かる。きっと事情を知らなければ私も心の中で笑っていた。

 坂上先生が必死になるが、Cクラスの生徒たちは頑なに訴えを取り下げると、兄さんに進言していた。どうやら作戦は上手く行ったようね。

 Cクラスの生徒は審議取り下げに必要なポイントを払い、こうして須藤くんの暴力事件は終わりを迎えた。

 

「それではCクラスが訴えを取り下げたことで、審議を終わりにさせて貰う」

 

 納得がいかない様子で坂上先生が出て行き、それに続いてCクラスの生徒たちも出て行く。

 

「茶柱先生、Cクラスが訴えを取り下げたことで、須藤くんは今日から部活の参加を認めてもらえますね?」

 

「訴えが取り下げられたことで、須藤が謹慎する理由はなくなった。部活に参加しても問題ないだろう」

 

「だそうよ須藤くん。よかったわね」

 

「堀北!! マジでありがとう! またお前に助けられちまった。今度お礼させてくれ」

 

「結構よ。その代わり2度と問題を起こさないよう心がけて。そして部活で活躍しなさい」

 

「へへ、素直じゃねぇな。おう! んじゃ綾小路と佐倉にもありがとうって伝えておいてくれ! またな」

 

 須藤くんはそう言い残し部屋を出て行った。私も帰りましょう。ここ数日まともに勉強が出来なかったけれど、これでやっと身に入りそうね。

 

「待て堀北、少し話がある。お前たちはもう帰っていいぞ。綾小路もだ。戸締りは私がしておこう」

 

 茶柱先生は私を生徒会室へ残し、兄さんたち生徒会役員を帰らさせた。

 

「どんな手を使った?」

 

「何のことでしょう?」

 

「答える気はないようだな。なら堀北、今お前の中で綾小路兄妹の評価はどうだ?」

 

 茶柱先生はどうして、こんなにもあの兄妹のことを気にするのかしら? いいえ、その理由を私も分かり始めている。

 

「……茶柱先生の仰る通り、DクラスがAクラスへ上がるためには、あの兄妹2人の協力が必要不可欠です」

 

「ほう。堀北、お前が認めるか。やはり作戦を思い付いたのは綾小路か。或いは堀北、お前がこの作戦を思い付くように、綾小路が誘導した。違うか?」

 

 この作戦を考えたのは私だ。だけど特別棟へ私を連れて行ったのも、そこに監視カメラがないことを指摘したのも、綾小路さんの協力を得るために助言をくれたのも、全部綾小路くんだ。

 もし仮に彼がDクラスじゃ無かったら? きっと中間テストの時点で赤点の生徒を多く出した。仮にそれを何とか乗り切ったとしても、今回の一件で須藤くんは最悪の場合、退学措置を下されたかも知れない。

 

「堀北お前は自分の欠点、Dクラスに配属された理由に気づいているか?」

 

「それを認めたつもりはありませんが……はい」

 

「ならあの兄妹の欠点はなんだ?」

 

 綾小路くんと綾小路さんの欠点……幾つかは思い浮かぶけれども、私の中でそれらの理由は納得に至らない。違和感を感じる。

 あの兄妹はどうしてテストを50点で揃えたのか? 綾小路くんはなぜ『事なかれ主義』を謳いながら、静観せずDクラスのために行動するのか? 幾ら考えても答えは出なかった。

 

「堀北お前に助言をしよう。今の内にあの兄妹を把握しておけ。Dクラスで最も不良品なのは綾小路兄だ。高性能すぎるが故に、誰にも扱うことができない」

 

「……なら綾小路さんは?」

 

「兄同様に綾小路妹も誰にも扱えないだろう。あいつを例えるなら自然だ。自然は恵みをもたらす……だが、時には牙を向く」

 

 綾小路さんが私たちの敵になる……と言うこと? そんなの想像出来ない。彼女はこの一件に協力しないと言いながら、結局須藤くんを助けるために行動した。そんな彼女がDクラスの敵になる? 

 

「当然これも私の見解だが……綾小路妹はこれまでたったの1度もクラスのために、行動したことはない。そして誰にもあいつの行動は読めないだろう」

 

「それはどう言う意味ですか?」

 

 そう言う茶柱先生は含みのある笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 佐枝先生に生徒会室から出て行くように言われ、私たち生徒会も部屋を出た。戸締りもしてくれるみたい。

 廊下を歩いていると向こうから清にぃがやって来た。愛里ちゃんやっぱりあの店員さんと会っていたようで、無事に終わったようだ。よかった。

 

「綾小路……これが佐倉を嘘つきでは無いと証明する、お前の出した答えか。訴えを取り下げたCクラス、その噂は直ぐに広がるだろう。嘘をついていたのはCクラスの方だったと。見事だ」

 

「それを実現させるのは簡単なようで難しい。どんな手を使ったかは分かりませんが、流石は愛歌さんのお兄さんですね」

 

「何のことかさっぱり。話を聞く限り、堀北が上手くやったみたいですね」

 

「まだ白を切るか。橘、会計の席がまだ空いていたな?」

 

「はい。この間、1年Aクラスの生徒を一次審査で落としましたので……まさか生徒会長彼を生徒会に入れるつもりですか?」

 

「そうだ。兄妹揃って俺の下に来い」

 

「断ります」

 

 即答で断った清にぃに橘先輩が信じられないと叫ぶ。生徒会に入りたくても入れないのが現状、そんな生徒会への誘い、歴代最高と呼ばれる堀北生徒会長からの切符を、迷いもせず捨てたと考えれば無理もないね。

 そんな清にぃを見て堀北生徒会長は楽しそうにしていた。

 

「それでは堀北生徒会長、私は清にぃと鈴音ちゃんを待ちます。記録したものは明日、生徒会室に置いておきますね」

 

「分かった。ご苦労だったな」

 

「愛歌さんお疲れ様でした。またね」

 

 2人が去って行くと背後から扉の開く音がする。振り返ると鈴音ちゃんが立っていた。それも私たち兄妹を睨むように。

 

「上手く行ったみたいだな。流石は堀北だ」

 

「……あなた達、私のことを手のひらの上で転がしたわね」

 

 突然そんなことを言い出した鈴音ちゃん。どうやら佐枝先生が何か吹き込んだみたい。

 清にぃは知らないふりをする。望む答えが返って来なかった鈴音ちゃんは、更に鋭く清にぃのことを睨んだ。

 すると背後から足音が聞こえて来た。振り返るとそこには龍園くんの姿があった。

 

「よう、綾小路。監視カメラを仕掛けるなんて、面白えことをしてくれたな」

 

「久しぶりだね龍園くん。今回私は生徒会として参加して何もしてないよ。なるほど、監視カメラか。だからCクラスは訴えを下げたんだ?」

 

「ほざいてろ。前回はただの箱入り娘だと思ったがそこそこやるようだな。幼稚だが、悪くない手だ」

 

「私じゃなくて鈴音ちゃんだよ。堀北鈴音ちゃん」

 

「堀北? 生徒会長様の妹か。クク、Aクラスしか潰し甲斐がないと思ったら……いいぜ、Dクラス。次は俺が直々に相手をしてやる。楽しみにしてろ」

 

 龍園くんはそう言い残して何処かへ行った。

 

「鈴音ちゃん、彼がCクラスのリーダー龍園くんだよ。この事件の黒幕、帆波ちゃんと神崎くんはそう言ってた」

 

「綾小路さんあなた面識があるようだけど……まさか彼ともデートしたのかしら?」

 

「ううん。まだ(・・)してないよ。一回も誘われてないからね」

 

 私から誰かを誘うことはない。龍園くんとは前にBクラスが揉めた時に、仲裁役として話したことがある。あの時は学校全体を巻き込むような規模じゃなかったけど、解決するまでにかなり面倒くさかった。

 龍園くんの姿が消えたのを確認して、鈴音ちゃんは再び清にぃと向き合った。

 

「綾小路くん、あなたは何故『事なかれ主義』を掲げながら、私に協力してくれるの? 何を考えているのあなたは……」

 

「半ば強制的だろ。ただ普通に学校生活を送りたい。それだけだぞ。それに須藤は大切な友達だからな」

 

 清にぃもこれ以上は話すことがないのか、帰ろうと足を踏み出す。そんな清にぃの腕を掴もうとした鈴音ちゃんの右手を、私は掴んで止めた。

 

「綾小路さん……!? 待って綾小路くん! あなたは、あなたたち兄妹は何者なの?」

 

「堀北、Aクラスへ上がるための手助けはする。オレができる範囲の限定だが……ただ、オレたちの詮索はするな」

 

「っ……!」

 

 鈴音ちゃんの呼び止め声に、清にぃは足を止め振り返らずそう言った。返事を聞かず清にぃは再び歩き出す。鈴音ちゃんの手首を離して私は清にぃの隣に並んだ。

 

「鈴音ちゃん、またね」

 

「……ええ、また」

 

 こうして須藤くんとCクラスとの暴力事件は幕を閉じた。

 

 

 





最後まで読んでくださりありがとうございました。

最後の方はやはり駆け足…でもこれでやっと無人島編に入れます。

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