綾小路清隆の妹として、全力で支えます 作:ぐれーぷ
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オレと愛歌が戻ると今度はテントで揉めていた。女子はテントを増やすためにポイントを使うべきだと主張し、男子は無駄遣いをやめろと主張している。
テントは1クラスに2つ与えられた。男子と女子でテントを1つづつ分け、男子は男子で女子は女子たちのテントで、全員が入って寝なければならない。テントの大きさからしてそれだと窮屈だろう。しかもこの暑さだ……寝る時、テントの中はサウナみたいな状態になりそうだな。
「おにぃ楽しいね。無人島生活って」
「すまん。いったいどこに楽しい要素があった?」
「んー、森の中を散歩したこと」
「それは別に無人島じゃなくてもできるぞ」
「じゃあ、海を間近で見れたこと」
「それも別に無人島じゃなくてもできるな」
今のところ無人島の楽しさを分かっていないことが分かった。まだ初日だ。あと6日もあるんだからその内に知れるだろう。
結局、テントは2つとも女子が使うことで決まった。つまり男子は無人島サバイバルらしく野宿を強いられる。石の上で寝ろと? それは正直困るんだが。蚊が厄介だ。寝ている時に耳元であの
「清にぃ今時間ある?」
平田とテントを張っていた愛歌がやって来た。皆が見ている前で声をかけたという事は、周りに聞かれてもいい内容か。
「あるぞ。どうした?」
「平田くんが、焚き火に使う枝を拾って来て欲しいってさ。一緒に行かない?」
「確かに懐中電灯だけじゃ心許ないな。オレも手伝おう」
「ありがとう。愛里ちゃんはどうする?」
愛歌の背後でこっそり会話を盗み聞きしていた、佐倉が声をあげて驚く。気づかれているとは思わなかったのだろう。
申し訳なさそうに近づいてくる。少し恥ずかしそうにしていた。愛歌が誘うと佐倉は嬉しそうな表情を浮かべ、手伝ってくれると承諾してくれた。
早速3人で森へ行こうとしたら、山内が急ぐように走って来る。何かあったのか?
「はぁはぁ、っ、3人でどこに行くんだ?」
「愛歌が平田に焚き火に使う枝を集めて欲しいと頼まれたみたいでな。その手伝いだ」
「お、俺も行ってやるよ! 綾小路なんかと女子2人だけじゃ大変だろ?」
上から目線だな。愛歌と佐倉にいい所を見せたいんだろう。ただな山内、オレたち兄妹に限らず、妹の前で兄をなんか呼ばわりしてたら好印象は持たれないぞ。寧ろ逆、余程仲の悪い兄妹じゃない限り印象が悪くなる。
勿論それは第三者から見たとしてもだ。現に佐倉の山内を見る目に嫌悪感が含まれている。
「いいよ。丁度もう1人居たらいいなって思ってたから」
「愛歌ちゃんだろ? 俺見た通り女の子の気持ちを察するのは得意なんだ」
早速オレたちは森の中へと入って行く。
けれど人手が増えるのはありがたい。きっと2人にいい所を見せようと、沢山の薪を集める筈だ。オレが少しサボってもその分、山内が頑張るだろう。頼りにしているぞ山内。
「なあ二手に分かれないか?」
「またか」
「なんか言ったか綾小路?」
「いいやなんでもない」
探索の時の高円寺の時といい今といい、今日はよく分かれるな。
「山内くん分かってるじゃん。流石」
「だろ? 愛歌ちゃん俺にもっと頼っていいんだぜ」
「そう? じゃあ早速頼っちゃおかな」
山内のことを煽てる。何をする気だ? このままだとオレと佐倉、山内と愛歌で分かれそうなんだが……もしかしてオレと山内で分かれる気か? そうなったら色々と面倒なんだが。
しかしその心配も杞憂で終わった。
「じゃあ佐倉と綾小路、俺と──」
「──3人は焚き火に使う枝集めしてて。私は高円寺くん探してくるから」
「……は? えっ!? ちょっとそれはダメだって愛歌ちゃん!」
「どうして?」
「どうしてって……だって、平田から枝を集めるように言われたんだろ? なら薪になる枝を集めないと」
「言われたよ。次いでに高円寺くんのことも探して欲しいってね」
言われてみれば高円寺の姿がずっと見えなかったな。まさか仮病を使ってリタイアしたか? 高円寺なら全然あり得る。
山内は愛歌と2人っきりになるのが目的だったようで、それが叶わないと知り焦っていた。
「じゃ、じゃあ綾小路に行って貰おうぜ! 俺と愛歌ちゃんと佐倉で枝を拾えばいいじゃんか」
「でも山内くんが言った通り男子が枝を集めた方がいいと思うんだ。それに高円寺くんを探すならやっぱり私だよ。クラスの皆よりは関わりがあるからね」
「うっ……」
残念だったな山内。愛歌の言う通り高円寺を連れて来るなら愛歌にしかできない。もし愛歌でもダメだったら、少なくともDクラスの誰が言った所で聞き入れてくれないだろう。
明らかにテンションが下がった山内。さっきから小さい枝ばかりを拾っていた。オレと佐倉は太い枝を中心に集めていた。
去年の夏に愛歌と焚き火をした時に、湿っていない燃えやすく小さな細い枝や葉っぱを、最初に燃やしてからじゃないと太い枝は燃えなかったのを覚えている。少なからず小さな枝も必要だ。
突然愛歌が
「なあ、綾小路」
枝を集めていると山内に声をかけられた。話す時間があるなら枝を集めて欲しいんだが。
「もし俺が愛歌ちゃんと付き合うって言ったらどうする? 反対するか?」
「それは2人の問題だろ。オレに聞くな」
「いやいや、だって妹の彼氏だぜ? 普通に気になるだろ」
確かに普通は気になるものかも知れないな。兄として妹の彼氏を気にするのは普通、当たり前か。だがいくら兄とは言え妹の交際相手に口出しするのはどうなんだ? 恋愛は自由と聞いている。ならやはり本人たちの気持ちが優先で、オレには関係ない。
これが結婚となればまた変わってくるが、ただの高校生の交際だ。やっぱり普通は気にしないだろう。逆に妹の愛歌は、もし兄のオレに恋人ができたら気にするのだろうか? 今度聞いてみよう。
「気になんないな。2人にその気があればいいと思うぞ」
「うぉ! マジか! じゃあ綾小路手伝ってくれよ! 俺と愛歌ちゃんが付き合えるようにさ!」
「オレのことは巻き込むな。自分でなんとかしてくれ」
「頼むよー! おにぃ!」
「次オレのことを兄と呼んだら、愛歌にお前が普段どんな会話をしているか教えるからな」
「わ、悪かったって。お、俺あっちで枝でも集めて来るわ!」
山内はそう言い残して離れて行った。
産まれて初めて知った感覚だ。確かこの現象を鳥肌が立つ……と言ったか? 蜘蛛の巣に引っかかったような感じがする。山内のおにぃ呼びには寒気を感じた。
「あ、綾小路くんいいの? 山内くんと愛歌ちゃんが付き合うことになっても」
「誰を好きになるのは自由だからな。オレがとやかく言うことじゃない」
「確かにそうだね。綾小路くんは愛歌ちゃんを信じてるんだ。愛歌ちゃんは本当にいいお兄ちゃんを持ったなぁ」
「やめてくれ。兄としてそれが普通だろ。それに、言っちゃなんだが……愛歌が山内を彼氏に選ぶことはないだろうからな」
「っ……!」
佐倉が少し吹き出していた。可哀想だな山内。普段から教室であれだけ騒いでいれば当然か。
するとそんな山内の、オレと佐倉を呼ぶ声が聞こえて来た。枝拾いは中断して声のした方へ向かうと、そこに他クラスの女子生徒が居た。
確かCクラスの生徒で、名前は──伊吹澪だったか。
「ほっといてって言ったでしょ。なに、人を呼んで……私を見せ物にしたいわけ?」
「だから
「あんたには関係ない」
どうやらCクラスで揉めたようだな。顔の腫れ方からして誰かに殴られた痕だ。佐倉も心配そうにしている。自分に関わるなと雰囲気から伝わってくるが、山内はそれにお構いなく伊吹に話しかけた。
「クラスに行かなくていいのかよ?」
「……誰があんなクラスに」
「な、何かあったんですか?」
「……アンタたちには関係ない。これは私たちのクラスの問題。だからほっといて」
「なあ、俺たちのクラスに来いよ」
山内の提案に全員が驚く。それはそうだ。他クラスの生徒を招くのは色々と問題がある……が、あの汚れた手と頭上の枝に結ばれたハンカチ。少し気になるな。
「……いいの? 私を、余所者をクラスに招いて」
「そこは大丈夫だろう。平田や櫛田と言ったお人好しがDクラスには多い。それにこんな所に女の子を1人で放置して帰ったと知ったら、オレたちがクラスの皆に怒られるだろうからな」
「綾小路の言う通りだぜ。俺は山内春樹だ。んでこっちが」
「わ、私は佐倉愛里です」
3人の視線がオレに集まる。自己紹介か、
「綾小路清隆だ。よろしくな」
「……Cクラスの伊吹澪。よろしく」
オレたちは伊吹をDクラスへと連れ帰ることにした。愛歌も高円寺に会えて合流できていればいいんだが。
ふぅ。山内くん思いっきり好きバレしてるの気づいてないのかな? あんなに必死だと流石に怖いね。
さて、高円寺くんが何処にいるかだけど……知らん。うん、分かるはずが無い。記憶では海で泳いでる筈だけど、正直居るとは思っていない。あの高円寺くんが同じ場所に長時間留まるイメージがないからね。
「まあ、高円寺くんを探すのも次いでの次いでなんだけどね。っしょ」
取り敢えず木の上に登ってみた。次に近くの木に飛び移る。
「思ったより行けそう。ただこれを高速で行うのはまだ無理かな」
今私がやっているのは木から木へと飛び移る動き。ターザンみたいに森の中を飛び回る動き、と言えば伝わるかな? それを練習している。ただ飛び移った際に手が枝によって切れて痛い。
あ、分かった。飛び移る前に次の木の枝の形を
「できた。これなら行ける。後はこれを高速で繰り返せるようにしないと」
ホワイトルームで与えられた能力と、この記憶力を合わせれば余裕だった。自分で言うのもなんだけど空間認識力が凄い。楽しくなって来た。
取り敢えず今日はこれに慣れよう。まだ6日もあるから素早く飛び移る練習は明日以降でいい。今はこの動きに慣れること優先だ。今の内に慣れておけば、来年は有利に動ける。
「面白いことをしているねぇ。マイプリンセス」
この特徴的な声といい話し方は紛れもなく高円寺くんで、声のした頭上へ顔を向ける。木の天辺付近に高円寺が座っていた。
「あ、高円寺くん見つけた。拠点が決まったよ! 帰ろう」
「見ていたから知っているとも。非常に申し訳ないが私は一緒には行けない。ああ、心配せずとも点呼の時は顔を出そう」
「そっ。ならいいよ。またね」
さて、練習しながら帰ろう。と思ったらその矢先、私が飛び移ろうとした枝に高円寺くんが飛び降りて来た。普通に危ないからやめてよ。
「危ないじゃん。いきなり何?」
「解せないねぇ。私を連れ戻しに来たのだろう?」
「ああ、そういうこと。私があっさり引いたことが意外?」
高円寺くんから返事は無いけど、どうやら正解みたいだ。確かに高円寺くんを連れ戻そうと思えば連れ戻せる。だけどそれで機嫌を悪くしてリタイアされたら最悪だ。
例えばそう、ストレスで精神状態が不安定になってリタイア、全然あり得る。自分の存在は完璧だと豪語した事を揚げ足に取っても、上手く言いくるめて逃げられるだろうし。完璧だからこそ、より悪化する前にメンタルケアをするべくリタイアした……とかね。
「高円寺くんに精神的な負荷をかけて、リタイアされても困るからね。点呼に参加してくれるなら文句は無いよ」
「私の心身が健康である限り、ポイントがマイナスになることは無い。それは約束しよう」
「うん。ならいいよ。じゃあまた明日」
「待ちたまえ。私が1つレクチャーしてあげよう。マイプリンセスなら見るだけでも十分だろう?」
すると高円寺くんが私の返事も聞かず、いきなり木々を飛び移り始めた。そう言えばあなたもそんな事できてたね。悔しいなあの動きはまだ再現できない。楽しそうだ。
一先ず感動は後にして今はこれを記憶して、後で脳内再生を繰り返しこの動きを覚えよう。
それにしても早い。あれだけ早く動いたら体力の消費も激しくなる。やっぱり慣れなのかな?
「マイプリンセス、速さじゃあない。無駄の無さ、だよ」
「あー、基礎を忘れてた。ありがとう高円寺くん」
「グゥッド。分かっているならノープロブレム。頑張りたまえよマドモアゼル。私はこれで失礼するよダスヴィダーニャ」
高円寺くんのおかげで完璧に習得できそうだ。それはそうと──高円寺くん、日本語なのか英語なのかフランス語なのかロシア語なのかハッキリして欲しいかも。
クラスに戻るとCクラスの伊吹澪が居た。やっぱりスパイとして来たか。今彼女と話すことは特にないので、挨拶だけ済ませた。
平田くんに高円寺くんのことを伝える。少し困ったような表情を浮かべたけれど、平田くんも高円寺くんがリタイアするかもと予想していたので、残ってくれるだけ有難いと納得して貰った。これで明日の点呼に来なければ−60になる前にリタイアして貰おう。
「平田くん1つお願いがあるんだけどいいかな」
「綾小路さんが? 珍しいね。いいよ。僕ができることなら力を貸すよ」
「ありがとう。私、テントの中で皆と寝るのに抵抗があるから外で寝かせて。それと毎晩、懐中電灯を1つ貸して欲しいの」
「それは……夜中1人で寝るのも出歩くのも危ないよ綾小路さん」
「大丈夫。皆の近くで寝るし、夜中なら静かに釣りもできるだろうから。そこの川でするよ」
「それでも女の子が外で寝るのは危ない……この無人島の間だけ我慢して欲しい。だめかな?」
優しいね。ここまで平田くんが引き下がらないとは思わなかった。でも丁度いいや。
平田くんの耳元に顔を近づける。突然私の顔が近づいたことで後ろに下がろうとするけれど、服を掴んで後ろには引かせない。頬と頬が触れる程の距離。顔を少し赤くしている平田くんに囁く様に言った。
「じゃあ、無人島にいる間は……平田くん一緒に寝よ。私を守って……? 」
「ッ……! こ、降参。降参だよ綾小路さん」
「あはは! 平田くん顔真っ赤だよ? ちょっとやり過ぎたかな、ごめんね?」
「いやいいんだ。あまり皆から離れて寝ちゃダメだよ?」
「はぁーい。でも、もし寂しかったら言ってね? 平田くんなら膝枕ぐらいならしてあげるよ」
「恐ろしいことを言わないでよ綾小路さん」
苦笑いをしながら両手を上げる平田くん。もしそんな所を男子たちに見られたら大変だもんね。
思ったよりも平田くんが女の子慣れしてなくて、ピュアな一面を見れて楽しかったな。
時刻は午後8時。手荷物を抱きしめて背中を木に預ける。女子たちが使うテントによって私の姿は隠れてるし、女子の区画に男子は入って来ないから大丈夫だろう。もし来たとしても勝手に目が覚めるから問題ない。私は夜に備えて仮眠を取った。
目を覚ましたのは日が跨ぐ直前。思ったよりも眠ってしまった。辺りを見渡すと特に変わった様子は無い。皆疲れているのか眠っていた。女子全員が寝ているのを見て、意外だなと思った。もっと遅くまで起きると思ってたから。
いや朝早くにバスに乗って寝かせて貰えず、豪華客船では名の通りあまりにも豪華過ぎて興奮して、昼には無人島で各々が仕事をこなした。疲れが溜まっててすぐ寝ても不思議じゃ無い。
「んー。よし、早速取りに行こう」
昼間に見つけたトウモロコシと果物を回収しに行く。他のクラスが既に持って行った可能性も危惧したけれど、幸いなことに殆どが残っていた。
手間だけど空にして来た鞄に詰めて持って帰る。当然全部は持って帰れないし食べ切れないので、必要な分だけ回収する。干しても食べれる物は全部持って帰ろう。スイカとかも川に入れておけば、冷えて美味しいだろうなぁ。
何度も往復すること数時間、太陽が登り始める。
翌朝。置かれている大量の食材にクラスの皆が驚いた。
因みに釣りで魚は1匹も釣れなかった……
最後まで読んでくださりありがとうございました。
最近疲れてて上手く書けてない気がします。無人島、5日目6日目辺りから1万文字ぐらいで書き上げたい。
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