綾小路清隆の妹として、全力で支えます   作:ぐれーぷ

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4限目〜可愛いでしょ〜

 

 

 ──無人島での『特別試験』2日目。

 オレはテントの外で誰かの気配を感じ目が覚めた。ベタつく暑さと男性特有の汗臭さに見舞われ意識が完全に覚醒する。

 まだ5時過ぎ。こんな朝早くから誰だ? テントの外に出て確認すると気配の主は愛歌で、大量の食材を運んでいた。

 

「お。清にぃおはよ。結局テント買ったんだね」

 

「おはよう。愛歌が寝てる内に話し合いで決まった」

 

 要らないとか言ってのに、と女子が男子たちを批判したが、平田が地面で寝るのは抵抗があるという名目で買った。分かってたことだが、平田の女子への人気は凄い。少し羨ましい。愛歌が持っている鞄を手に取ると「ありがとう」とお礼を言われた。兄としてこれが普通だろう。

 

「それよりも大量だな。昨日の探索の時か?」

 

「そっ。まだ結構残ってるけど、多分他のクラスに盗られると思う」

 

「いや十分だ。これだけでも1日3食の2日分はある。ポイントを節約できるな」

 

 簡易トイレが支給された時、ビニールは無制限に貰えると言われた。スイカや桃なんかはそのビニールに入れて、流されない様に川の中に入れておけば冷えて美味しいはずだ。

 食料と飲料水はクラス単位で1食6ポイントで、セットで買えば10ポイントになる。1日を2食で済ませる場合20ポイント。愛歌の持ってきた食材を1日2食で抑えれば3日間もの間、食料に対してポイントを使わずに済む。3×6で18ポイント、飲料水も賄えれば30ポイントだ。

 

「高円寺くんのおかげだね。彼の進んだ道の先々にあったよ」

 

 高円寺か。てっきりオレは初日の時点でリタイアすると思っていたが……上手く説得したようだな。あのじゃじゃ馬を一時的にとは言え、手綱を握れたことは素直に凄いと思った。改めて愛歌が使えると再認識した。

 

「櫛田さんたちも果物見つけて来たみたいだね」

 

「ああ。クラス分裂の恐れがまだ拭えた訳じゃないが、これなら上々のスタートと言ってもいいだろう」

 

 すると愛歌が胸元に飛び込んで来た。背中に腕を回され抱きつかれる。そして小さな声で囁く様に呟いた。

 

「──わたし、使える子? ちゃんと清にぃの役に立ててる?」

 

「……」

 

 一度周りを見て誰もいないことを確認し、愛歌の耳元に顔を近づける。

 

「勘違いするな。クラスの役に立っただけでオレの役に立ったわけじゃない」

 

「っ……そうだね。じゃあもっと頑張らないと」

 

 一瞬ビクっと震えた愛歌だったが、穏やかな笑みを浮かべながらそう言った。オレから離れいつもの愛歌に戻る。

 

「よし、釣りしてみようかな。折角なら魚食べたいね!」

 

「……そうだな。でもその前に」

 

「ん、……? ッ……!!」

 

 愛歌の頭に手を置く。花を愛でる様に頭を撫でた。

 

「お前はオレの自慢(1番)(道具)だ。それだけは忘れるな」

 

「……え、えへへ。うん……うんうん! 忘れない。絶対に」

 

「そうか。ならいい」

 

 愛歌は嬉しそうに川へと向かって行った。この学校に来てから時折、情緒が不安定になっている。不具合が確認された以上、帰ったら1度調整する必要があるな。

 

 愛歌が釣りに行っている間に、オレは伊吹の手荷物を調べた。タオルや代えの服に下着、他の生徒たちと同じ物が入っていた。しかしこのデジカメだけは違うが。

 デジカメで使える用途は基本的に写真を撮ること……使える用途は限られる。そして伊吹が風景を写真に残すような性格には見えない……断言するには早いか。まだ出会って1日だ。時間に換算すれば1日すら経っていない。もしかしたら本当に写真を撮るのが趣味な可能性も十分にある。今はまだ泳がせて置くべきだろう。

 

「おはよう。綾小路くん起きるの早いね」

 

 1度テントに戻ると平田が目を覚ました。オレのせいで起こしたのかと思ったが、どうやらこの蒸す様な暑さで目が覚めたようだ。

 平田から一緒に洗顔しに行こうと誘われる。オレも起きたばっかりで何もしてないのでその誘いは有難い。

 

 案の定平田も愛歌が持ってきた食料に驚いていた。驚くなと言う方が無理がある。

 川の水で顔を洗うのは気持ちよかった。こんな暑い中で冷えた水を浴びるのは気持ちいい。水着に着替えて飛び込みたいぐらいだ。けれどそんなことをすれば余計、この川の水を飲む事への抵抗感が増しそうだ。特に女子が。

 

「どうだ愛歌、釣れたか?」

 

「まだだよ。もっと簡単に釣れると私も思ったけどダメだね」

 

「綾小路さん、皆の為にありがとう。でもそろそろ休みなよ。起きてからずっと働きっぱなしでしょ?」

 

「大丈夫大丈夫。こうして座ってるだけだからさ。それよりも客人みたいだよ?」

 

 愛歌がオレと平田の背後にいる誰かに手を振っていた。オレたちが振り返るとそこにはBクラスの生徒が2人、1人は須藤の暴力事件で世話になった神崎だった。

 

「やっほー神崎くん。どうしたの〜?」

 

「あや……愛歌も元気そうだな。誤魔化しても仕方ない、様子を見に来た。俗に言う偵察だ。綾小路と平田もおはよう。Dクラスはいい場所を見つけたな」

 

「ああ。運良くな。Bクラスはどこでキャンプしてるんだ?」

 

 神崎が今Bクラスがどこでキャンプをしているか教えてくれた。必要ならば来るように伝えて欲しいと頼まれる。伝えて欲しい相手は堀北のことだろう。

 平田は何のことか分かっていなかった。無理もない。平田はまだ須藤の暴力事件を堀北が解決したことは知ってても、Bクラスと協力し解決したとことを知らない。タイミングを見て平田にも知って貰おう。

 

 偵察を終えた神崎たちが帰り、程なくしてDクラス皆が目を覚ましていく。案の定、愛歌が持ってきた大量の食料に驚いていた。残念ながら魚を釣ることは叶わなかった。相当悔しそうにしているな。

 

「銛を作る。絶対捕まえる」

 

「どんだけムキになってるんだ。池と協力して網で捕まえたらどうだ?」

 

「それは他の人に任せるよ。その内、海でも捕まえてきたいし練習させて」

 

「……」

 

「どうしたの清にぃ?」

 

「いいや、なんでもない。そろそろ点呼の時間だな」

 

 驚いたことに高円寺の姿もあった。リタイアせずちゃんと点呼にも参加してくれている。きっと気紛れだろうがクラスの皆はそれが続くことを祈るばかりだ。

 

 点呼が終えると自由行動の時間となる。平田たちはポイントの節約に関して話し合い、オレや堀北といった1人が好きな生徒は文字通り自由行動だ。

 ただ何もしないというのは申し訳ない。何かオレにでもやれることが無いか考えていると、Cクラスの生徒がやって来た。その2人にも見覚えがある。暴力事件の時に議論の場に居た小宮と近藤だ。

 

「おいおい、Dクラスどんだけ悲しいバカンスを過ごしてんだよ」

 

「やめてやれよ。Dクラスのリーダーは龍園さんと違って自分のクラスメイトに我慢を強いるんだよ。ポイント使えばポテチだって食えんのにな」

 

 2人の手にはスナック菓子と炭酸飲料が握られている。Dクラスからして見ればそんな物にポイントを使っているのが信じられなかった。いやDクラスだけじゃない、どのクラスも1ポイントでも多く残すために工夫し節約するのが当たり前……しかしCクラスは違うようだ。

 

「朝は何を食ったんだ? 虫とか葉っぱか?」

 

「うげぇ、そんなの食ってるのか? Dクラスは。気持ち悪りぃ」

 

「そんな可哀想なDクラスにポテチを恵んでやるよ。ほら食え」

 

 ポテチ袋が投げられる。池や須藤は表情に怒りを浮かべさせているが、言い返さず我慢していた。よく我慢している。池も成長しているな。

 見下すように笑っていた小宮と近藤だったが、突然笑うのをやめて何かに見とれていた。池や須藤は勿論、気になった他の生徒たちも2人の視線を追う。

 

「ヒュ〜。実に美しいねぇ。惚れ惚れするよ」

 

 木の上に座る高円寺が口笛と共に拍手をした。あの高円寺がこの様な賛美を送る相手をオレは1人しか知らない──愛歌だ。

 水色のビキニに着替えており、真っ白な肌が露わになる。赤ちゃんのように艶のある肌、そして女優顔負けの輝きとこの場を支配する存在感。まさに美の化身がそこに居た。

 

 ──綺麗。

 

 皆の想いを代表して誰かがそう呟く。いつもの微笑みは浮かべておらず、その瞳はまるで遠くの世界を見つめるように、その横顔は幻想的で、悠然と歩くその姿は一国の姫のようだ。魔性の美、視線が吸い寄せられる。殆どの生徒が愛歌から視線を外すことができなかった。

 愛歌はCクラスの2人の前で歩みを止める。

 

「小宮くん、近藤くん。そこまでだよ。それ以上は君たちの評判も悪くなるからね?」

 

「うっ」「くっ」

 

「龍園くんの指示なのは分かるよ。仕方ないよね。でも自分をもっと大切にして。ね?」

 

「……龍園さんが夏休みを満喫したかったら浜辺に来いってよ」

 

 申し訳なさそうにそう言い残して2人は浜辺の方へと帰って行った。いつもよりも輝いている愛歌に優しく諭されればこうなるのは当然だな。特に男なら。それも女子に対して免疫のない男子となれば尚更だ。

 

 Cクラスの2人が居なくなると皆が知るいつもの愛歌に戻る。笑顔を浮かべながら駆け足でオレの方へとやって来た。目立つが愛歌が既にブラザーコンプレックスなのは周知の事実、ここでオレにアピールしないのは不自然か。

 

「清にぃどう? 私のビキニ、可愛いでしょ」

 

「おまえ、どうやって水着を持ち込んだんだ? まさかポイントを使ったのか?」

 

「船で不運にも下着がダメになったので、代わりに水着を持ち込みますって。数が少ないから」

 

「……なるほど。堀北はテントの中か?」

 

「うん。朝食食べ終わってずっと休んでるよ。行くの?」

 

 それにオレは頷いた。予定通り愛歌は着いて来させない。堀北には悪いが体調を崩して貰う必要があるため体力を使って貰う。

 オレは早速行動を開始した。

 

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 

 清にぃと鈴音ちゃんは予定通り2人で他クラスの偵察に行った。清にぃに昨日、今日の偵察に私は付いてくるなと言われていたのでそれに従った。

 

 さて、折角水着に着替えたから泳ぎたい。水浴びが出来そうな場所に移動しよっかな。平田くんに水浴びをして来ると伝え森の中に入って行くと、千秋ちゃん()私の方へと駆け寄って来た。

 

「愛歌! 待って!」

 

「千秋ちゃん? どうしたの」

 

「私も一緒に水浴びしようと思ってさ」

 

「それはいいけど……水着は?」

 

「ふふふ、じゃーん」

 

 右手で体育着のシャツを胸まで捲り、左手でズボンをずらして左側の股座が露出する。千秋ちゃんはちゃんと水着を身につけていた。

 

「おおお! どうやって持ち込んだの?」

 

「最初から着て無人島に降りた」

 

 やっるー。流石は千秋ちゃんだ。てかさ──

 

「──千秋ちゃんその姿めっちゃえろい」

 

「でしょ?」

 

「何そのキメ顔、やばいって」

 

「あはは、流石に恥ずかしいや」

 

 体操服を脱ぎカバンにしまう千秋ちゃん。美女の水着姿はやっぱりいいね。

 再び私たちは歩き出す。それはそうと伊吹さんもう少し隠す努力しようよ。2日目からは流石に怪しいって。離れた場所から伊吹さんが私たちの尾行している。木の裏に隠れているし、気配もちゃんと消せてる。でも……チラッと見える髪、いやぁ、帽子とかなんか隠せなかったの? 髪色がもうバレバレだよ。

 

「愛歌、さっきも思ったんだけどさ……その腹筋やばくない?」

 

「そう? 毎日寝る前に少し腹筋してるからかな」

 

「いやいや少しなんてレベルじゃないでしょ。どうやったらそんなバキバキに、シックスパックになるのよ」

 

「腹直筋は直ぐに割れるよ。問題はインナーマッスルの方。表面上は割れてても大したことない人もいれば、表面上は凄くないけどとてつもない腹筋の持ち主だっているから」

 

 清にぃがそうだ。薄っすら割れてはいるけれど、筋肉の密度が違い過ぎる。高円寺くんなんかは見た目も中もとても鍛えられていて、恐らく筋肉の密度で言えば清にぃよりも上だ。単純な力比べで勝負したら勝てないと思う。負けもしないと思うけどね。

 

「愛歌ってもしかして実力隠してる?」

 

 お、ここで聞いて来ますか。その内聞いてくるとは思っていたけど。

 

「隠してるよ」

 

「えっ……あ、うん。やっぱりそうなんだ。まさか認めるとは思わなかった」

 

「って言うと実力者っぽくていいよね」

 

「っておい。どっちなの?」

 

「教えなーい。だって違うって言っても疑われてる時点で認めないでしょ?」

 

 千秋ちゃんは苦笑いを浮かべた。人は一度疑われた時点でどんなに否定しても信じて貰えない。絶対的な証拠を見せて貰うまでね。

 人は自分の都合の良い様に考える生き物だ。私はそう思っている。だからこそここでどんなに否定しても千秋ちゃんの疑いは晴れない。

 よく言うよね。白に他の色が混ざると、どんなに白を付け足しても、もう純白に戻る事は無いって。白寄りのグレーってね。

 

「それにさ、隠してたとしてもそれが千秋ちゃんの期待より下かもよ?」

 

「どうかな? 私は愛歌のことを、Dクラスでトップ3には入る実力者だと思ってるよ」

 

「えー、ないない。鈴音ちゃん、平田くん、櫛田さん、高円寺くん、幸村くん、須藤くん。私より秀でた生徒は多いよ?」

 

「少なくとも今名前を挙げた、高円寺くんと堀北さんを除いては上だと思ってるよ。櫛田さんに関しては可哀相になるレベルだね」

 

「評価が高くて困るなぁ。でもとりあえず今は実力どうのこうのはやめようよ。折角の無人島なんだから楽しも?」

 

「そうだね。うん、それじゃあこの話はまたの機会に」

 

「もうしないことを祈るよ」

 

「やっぱり隠してるでしょ?」

 

「ご想像にお任せしまーす! おっ先ー!」

 

「あ! 待って! 私も!」

 

 目的の場所に到着したので荷物を放っぽって飛び込んだ。千秋ちゃんも飛び込む。水飛沫が高く上がった。私たちは笑顔を浮かべる。

 

「いったーい! 勢いつけすぎた」

 

「愛歌に連られて私も痛い目にあったよ。ヒリヒリする」

 

 千秋ちゃんはお尻を摩りながらそう言った。いやぁ、私もまさかこんなに痛いとは思わなかった。

 

 けど痛みなんて一瞬でお互いに水をかけあったり、川の中で泳いでポーズを取ったりしてみる。やっぱり真夏は水遊びに限るね! さてと。そろそろいいかな? 

 

「千秋ちゃんもう少し向こうに行こう」

 

「いいよ! 深そうだね。愛歌大丈夫?」

 

「平気平気。千秋ちゃんの方こそ大丈夫?」

 

「うん。元々泳ぐの苦手じゃ無いから大丈夫だよ」

 

 ならよかった。早速泳ぎながら移動すると、案の定伊吹さんは私たちの荷物を漁り始めた。キーカードを探していて私たちがリーダーかどうか確認している。

 

「愛歌? どうかしたの? 誰かいた?」

 

「ううん。ネズミさんが居ただけだよ。そんなことより、千秋ちゃんどっちが先に魚捕まえられるか勝負しようよ」

 

「別にいいよ。負けた方はどうする?」

 

「そうだね、勝った方に500ppを払う……で、どうかな?」

 

「乗った。負けないよ?」

 

「返り討ちにしてやらぁ!」

 

 千秋ちゃんには悪いけど本気で行かせて貰うよ。ホワイトルームNo.2兼、綾小路清隆の露払いの実力見せてやる! 

 

「返り討ちも何も勝負を持ちかけたのは愛歌だけどね?」

 

 ……いい雰囲気だったんだから揚げ足取らないでよ。

 因みに、何故か魚に好かれ秒で千秋ちゃんが捕まえて無事負けました。私が1匹捕まえる頃には3匹も捕まえてた。悔じぃ。

 

 





最後まで読んでくださりありがとうございました。

更新が遅れてしまい申し訳ございません汗
言い訳をするならfgoでアルク実装したり、プーリン実装したり、忙しかったのです!アルク宝具5するの…沼りました。アルジュナとアナスタシアとアキレウス、ア違いが見事に3回すり抜け…辛かったです。

アニメのリレーのシーンと有栖ちゃんとの絡みのシーンが無くて残念でした…でも面白かったですね!

感想、お気に入り登録、よろしくお願いします!

追記

次回は5日目からになります。飛びます。


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