綾小路清隆の妹として、全力で支えます 作:ぐれーぷ
ヤコウさん、M Nさん、さんすいさん、箱箱さん、好評価ありがとうございます。
kamikouさん、誤字報告ありがとうございます。
M Nさん、感想ありがとうございます。
お気に入り登録皆様ありがとうございました
1限目〜使えるモノは使わないとね〜
「新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐枝だ」
佐枝ちゃん先生!! 今からメイド服着てください!! と声高らかに叫びたい気持ちを、グッとグッとグーーーッと、私は抑えた。早く2年生にならねぇかな!
思わず興奮してしまった私は心を落ち着かせる。おかしいな、ホワイトルームに居た時はこんな事なかったのに。
こんな情緒不安定な私を時間は待ってくれない。この学校のシステムについて説明がされる。
「本校には独自のルールが存在する。今から配る学生証カード。それを使い、敷地内にある全ての施設を利用したり、売店などで商品を購入することが出来るようになっている」
学生証カード。やっぱりこれカードじゃなくてスマホじゃん。ポイントは……うん、10万ポイント入っている。Sシステム。これがこの『高度育成高等学校』の特殊なルール。クラスポイントとプライベートポイント。クラス全体を評価したのがクラスポイントで、そのクラスポイントを×100したポイントがプライベートポイント。
プライベートポイントは『1ポイント=1円』としての価値がある。
「──ポイントは毎月1日に自動的に全生徒へ振り込まれることになっている。お前たち全員、平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ」
教室の中がざわついた。後ろにいる清にぃの方をチラッと見ると、案の定無表情だった。残念。
「支給額に驚いたか? この学校は実力で生徒を測る。入学を果たした時点で、お前たちにはそれだけの価値と可能性がある。それはお前たちに対する評価と思っていい。好きに使うといい」
興奮のあまり誰も先生の話をちゃんと聞いていない。仕方ないよね、10万円が手元にはあるようなものだから。
ただ注意点として、このポイントは卒業後には全て学校側が回収するようになっている。
なので現金化は出来ない。更にポイントは誰かに譲渡することも出来る。
ただまぁ、無理矢理ポイントを譲渡させるような真似は気をつけないとね。
「以上の説明を聞いて質問がある者は?」
ここでSシステムの事を質問する事はできるけど……まぁ、聞かないかな。なるべく原作を再現したい。この目で清にぃが活躍するところを。
質問する生徒が居ない事を確認して先生は教室を出て行った。
「緩いわね。この学校」
「……清にぃ」
「ん? ああ、確かにな。10万も生徒に与えるなんて。毎月お金が貰えて、進学率、就活率がほぼ100%だ」
「うんうん。優遇され過ぎて少し怖いぐらいだね。鈴音ちゃんもそう思わない?」
「……はぁ。ええ、そうね。拍子抜けしたわ」
実はDクラスに入った時、鈴音ちゃんと清にぃと私の3人は軽い自己紹介をしており、お友達になったのだ。尚、私達兄妹だけがそう思っている可能性が大。下手したら清にぃも思ってないかも知れない。なにそれ、ぴえん。
「綾小路さん」
「「うん?」」
「……綾小路くん、あなたは日本語も理解できないのかしら?」
「失礼だな! こうしてちゃんと会話ができているだろう。それに人によっては男性でもさん付けで呼ぶ人は一定数いるだろう。鈴音ちゃ──いってぇ!?」
清にぃがその場で飛び跳ねた。クラスのみんなが清にぃへ振り向く。清にぃが言い終える前に鈴音ちゃんがコンパスの針を、脇腹へと刺したからだった。普通に危ないからやめてあげて?
「話を戻すわ」
「まだ何も話して……ごめんなさいなんでもないです。続けてください。無言でコンパス向けるのやめてくれ……」
んー、これは清にぃも悪いかな?
でもアレだね、見た目麗しい人が
「綾小路さん、あなたいつまで帽子を外さないつもりなのかしら? マスクはまだわかるのだけれど」
「できればずっと……あ、しまった」
「どうした愛歌?」
「ううん、大した事じゃないからいいよ」
これもしかして減点対象になるのかな? 帽子しながら話聞くって割とやばいよね? もしそうだったらクラスの皆んなごめん。どうせポイント全部吐き出すだろうから反省はしないけど。
「皆少しいいかな? 今日から僕達は3年間苦楽を共にする仲間だ。入学式までまだ時間はあるようだし、ここはどうだろう? 今から自己紹介を行って、1日でも早く皆が友達になれたならと思う」
そうクラスの前に立って提案したのは平田洋介。爽やかイケメンだ。てか本当にDクラス凄くない? 美女多すぎ。平田洋介も普通にイケメンだ。
どんどん自己紹介が始まっていく。あ、みーちゃん。連絡先後で教えて貰わないと。裁縫や編み物を教えて欲しい。
そして大本命、山内春樹。小学校では卓球で全国、中学では野球部エースの4番バッターな上に、インターハイで怪我をしたらしい。高校大会に中学生が極秘に助っ人で呼ばれるぐらいの実力者。恐ろしい人だ、彼が退学になる確率は100%……こほっこほっ、0%に違いない!
次に今度こそ大本命、黒田桔恐さん……じゃなくて櫛田桔梗。冗談でもこんな事言ったら目の敵にされそう。
みんなと友達になりたいんだって。やだなぁ、関わりたくないな。めんどくさそうだよ。
櫛田桔梗の自己紹介が終わったタイミングで、鈴音ちゃんや須藤健と言った数名がクラスを出ていく。自己紹介はやっぱりしたくないみたい。鈴音ちゃんが出ていく前にちらっと私達の方を見たので小さく手を振った。勿論無視された。つらたにえん。
「すごーい。池くんかっこいー!」
1人の女子生徒が無感情に棒読みでそう煽てる。私もなんとなく便乗した。
「イケメン! モテそー!」
「え!? マジで? いやぁ〜俺も自分で悪くないとは思ってたんだよな! んなわけでイケメン、池寛治! 彼女募集中!」
みんな笑っていた。可哀想に、本人はからかわれている事に気づいていない。
そして次はDクラスの、いや学年1の問題児、高円寺六助の自己紹介だった。
唯我独尊の体現者。癖の強すぎる自己紹介だった。あの平田洋介ですら引いていた。是非もないね。
「え、えっとじゃあ……そこの君、お願いしてもいい?」
遂に来た。私の番だ。見てて清にぃ。私の非の打ち所がない自己紹介をッ!
オレには同い年の義理の妹がいる。神は二物を与えず。今オレの目の前で自己紹介をしようと立ち上がった妹を見て心底思う。
マスクを外し帽子も取る。さらりと降りる薄い砂金の様な髪は首元まで伸びていた。クラス全体の空気が変わる。静寂がクラスを包み、オレを除いた全ての生徒が息を呑んだ。
顔を振って髪を整えると、周りの反応を見て一度首を傾げる。そしてオレの妹は、天使の様な微笑みを浮かべ言の葉を紡いだ。
「綾小路愛歌です。趣味はピアノかな。そうなると特技もやっぱりピアノ。楽譜あればなんでも弾くよ。散歩やお出かけが好きだから気軽に誘って欲しいです。質問ある方はどうぞ」
一瞬の間を後に、大勢が愛歌へと詰め寄ってきた。まるでそれは通勤ラッシュの様な勢いだ。
「はいはい! 彼氏いるの!?」
「ううん、いないよ! あ、そうだ。彼氏も募集中です」
愛歌が満面の笑顔でそう言えば男性諸君は顔を赤くして、中には胸を押さえるものも。女子達はあまりの可愛さに保護欲が駆り立てられたのか、バリケードを作っていた。
「かわいぃぃぃぃぃ!!」
「うぉぉぉぁぉぉ!」
「俺、このクラスで本当に良かった」
「愛歌ちゃん愛歌ちゃん! どんな男性がタイプ!?」
まるで
愛歌は首を傾げる、指を顎に当て考える素振りをした。
「異性を好きになった事がなくて……勿論誰とも付き合ったことないから分からないかも。好きになった人がタイプ、なのかな?」
「じゃ、じゃあ! 俺と今度デートしようよ!」
すると先程からかわれていた池が手を上げて、愛歌に提案した。みんなの心が一つになった。『コイツ、まじか』と。残念だったな池。流石に無理に決まって──
「うん、いいよ。後で連絡先交換しよっか」
行けんのかよ。本気か妹よ。池がガッツポーズを決め叫んでいた。まるでメジャーリーガーのピッチャーのようだった。
「まじ!? よっしゃぁぁぁ!」
「え、えぇ! 愛歌ちゃん俺も俺も!」
「俺もダメ!? 俺もぜひ!」
池に続いてどんどん男子達が申し込んで行く。そんな鬱陶しい男子達を嫌な顔せず愛歌は対応する。
「ストップストップ! ちゃんと後でみんなと話すから! まだ自己紹介してない人がいるでしょ」
愛歌にそう言われ全員が思い出した様にオレの方を見た。この状況でオレに自己紹介しろと? 愛歌がサムズアップしている。
仕方ない。妹があそこまで完璧な自己紹介をしたんだ。兄は常に妹の前に立つべし。ちょっと気張って自己紹介してやるか。
静かに立ち上がった愛歌とは対照的に、勢いよくオレは立ち上がる。
「えー、えっと、綾小路清隆です。その、えっと、得意なことは特にありません。まぁ、その、皆と仲良くなれるよう頑張ります。あとは、その……よろしくお願いします」
ふっ……完全にやらかした。愛歌が苦笑いを浮かべて拍手している。それにつられてみんなも拍手をしてくれた。すると誰かがぽつり、と呟く。
「あれ、綾小路って……まさか」
「うん、そうだよ。私のお兄ちゃん。クラスの皆様、私達兄妹のことよろしくお願いします」
スカートの両端をつまみ軽くお辞儀する愛歌。本当に絵になるな。
「綾小路よろしくな! 仲良くしようぜ!」
「綾小路くんよろしく! 私──」
「な! 綾小路! ちょっと相談事が──」
オレは人の醜さを垣間見た気がした。入学式の時間に近づいた為、移動を始める。平田がクラスの皆を上手く誘導していた。呆然としているオレに愛歌がもたれかかる。
「ドンマイ、アニ」
「……何が」
「マナカを知ると世界が平和に。マナカ──はぅん」
それ以上いけないと思い頭に手刀を落とした。少しだけ涙目にして頭を摩りながら愛歌が見上げてくる。
「いたた……お疲れ様、清にぃ」
「おまえの方が大変だったろ?」
「そんな事ないよ。頑張った清にぃと比べたら全然」
できた妹だった。オレの妹が女神な件について、これでアニメを作れば刺さる層には刺さりそうだ。立てば美女、座れば淑女、話す姿は女神。まるで愛歌の為に存在しているかの様だ。
「それよりもいいのか? 男子達とのデート」
「いいよ。来月ポイントが幾ら貰えるか分からない以上、デートの時に男子達に必要な物買ってもらうつもり。おにぃも必要な物があったら言ってね」
前言撤回。オレの妹には人の心がなかった。
立てば悪女、座れば悪魔、話す姿は女王。いったいどこで間違えたんだ。お兄ちゃんは悲しいぞ。
「使えるモノは使わないとね」
そう呟く愛歌の表情には感情が無く、先程まで笑っていたとは到底思えないほどだ。別人のようにさえ感じる。そんな愛歌がオレの方を見ると、再び笑みを浮かべた。
「綾小路くん、綾小路さん、もう皆は移動し始めてるよ。僕達も移動しよう」
いつまでも来ないオレ達を心配してか、平田が帰って来た。
「それじゃあ私達も移動しよっか」
「ああ、そうだな」
入学式か、早く終わるといいな。
茶柱先生のメイド姿めっちゃかわゆす