綾小路清隆の妹として、全力で支えます 作:ぐれーぷ
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ドラマCD編はこれでおしまい、次回から船上試験、干支試験編へ入ります
一年生との交流と称した『特別試験』宝探しが始まった。各クラスの代表者である四人の生徒たちは、茜さんから渡された二つのヒントを手に、堀北生徒会長のハンカチを探しに向かった。
そして取り残された私たちは何をしているかと言うと、8月31日に行われるイベントの最終確認を行っていた。
「──坂柳理事長から頂いた契約書は以上だ。綾小路妹、内容に問題なければここにサインをしろ」
「私はこの内容で構わないのですが……真嶋先生、これは学校サイドとして大丈夫なのでしょうか?」
「あの理事長が決めたことだ。問題はなかろう。そして知っての通り高育は実力がものを言う。これがおまえにとってどれ程の利益を産むかは、綾小路、おまえの実力次第だ」
なら特に問題は無いと私は判断し、契約書にサインをした。
時刻は午後12時を回り、もうすぐで午後1時に差し掛かろうとしている。そろそろお腹が空いて来たので、堀北生徒会長と茜さんの三人で昼食を食べにレストランフロアへと向かう。因みに真嶋先生はここで別行動となった。先生たちは忙しいね。
「愛歌ちゃんはどのクラスが見つけてくると思う? やっぱり自分のクラス?」
生徒会役員として話す時は口調が丁寧になる茜さん。こうしてリラックスしてる時は年相応な話し方に戻る。かわいい。
「それは勿論、自分のクラスです。でも純粋に楽しんでいる、帆波ちゃんたちBクラスが見つけそうな気もします」
「一之瀬さんたちね。無人島での試験も楽しめたみたいだね。学くんはどのクラスだと思う?」
「今回宝探しは全クラスが協力しなければ見つからない様にしてある。一つのクラスが勝つと言う事態にはならないだろう」
「失礼します。こちらご注文のお品です」
すると丁度いいタイミングで料理が運ばれて来た。
私が注文したのはハンバーガーセット。ホワイトルームでの食生活でジャンクフードなんてまず出ない。それの反動のせいかこうしてジャンクフードばかり私の食欲がそそる。気をつけないとね。
「時に綾小路妹、鈴音に何かあったのか?」
ちゃんと妹の変化を感じ取ったみたい。
棘が抜けた感じがするよね。寄せ付けないオーラがなくなったと言うか、雰囲気が柔らかくなったと言うか。
「何か、ありましたね」
「やはりそうか。それについて聞かせて貰おう」
「教えませんよ。気になるなら自分で鈴音ちゃん本人に聞いてください」
「ま、愛歌ちゃん!?」
茜さんは私が拒否するとは思わなかったのだろう。
堀北学が妹のことを考えてやっていることは分かってる。でも私はもっと歩み寄れると信じているから、二人にはギクシャクした関係を構築して欲しくなかった。
「答える気がないのなら構わない。さして重要な事でもないからな」
「この頑固者め。後悔してからじゃ遅いですよ」
「丁度いい機会だな。綾小路妹、おまえはどうして俺たち兄妹の仲を縮めようとする?」
「私が妹だからですよ。兄の存在が妹にとってどんな存在なのか知ってるからです」
「どうだかな……俺には他の目論見がある様に感じ取れるぞ」
……どうしてバレたの? そんなに私は分かり易かった?
私の動揺は表情にも出ていた様で、堀北生徒会長に指摘されてしまった。
「ほう、初めて動揺した所を見た。図星か。綾小路妹、聞かせて貰おうか……おまえは俺や鈴音を使って何をするつもりだ?」
圧を感じた。横にいる茜先輩も固唾を飲んで見守るしかできない。今の堀北生徒会長はただならぬ気配を纏い、返答によってはただじゃ置かないと、その目が訴えていた。
ここで変に誤魔化すことは悪手だ……もう正直に話すしかないかな。
「どうやら答える気になったようだな。聞かせて貰おうかおまえが何を企んでいるのか」
「……たい……です」
「……なんだと?」
「私たち兄妹と堀北兄妹で、W兄妹デートがしたいですっ!」
「……」
「……ふぇ!?」
あれ? 堀北生徒会長のメガネが突然曇った。気のせいか今一瞬、レンズにヒビが入った様な……?
それはそうと茜先輩今の声可愛かったです。どうして頬を赤くしているのだろう?
「……二人とも食事は済ませたな? 戻るぞ」
「あ、うん。んんっ、行きましょうか生徒会長」
「……え? えっ、無視?」
私は一人、レストランフロアへ取り残されてしまった。
カフェの一角へ私たちは戻って来た。
宝探しが始まって2時間弱。まだどのクラスも見つけられずにいた。
因みにここだけの話、このちょっとした『特別試験』、実は最初から計画されていたものだった。その事を茜先輩から聞いた時は驚いた。
さて、そろそろ私も未来で待っている『特別試験』の仕込みを始めよう。
「そう言えば、堀北生徒会長に確認したいことがありました」
「なんだ?」
「明日、私たちが行われた『特別試験』の無人島とは別の無人島に行くんですよね?」
「そうだ。それがどうかしたか?」
私はレストランフロアから戻る前に準備した用紙へ、
記憶にある地図と見比べても遜色ないものが完成した。ホワイトルームでの教育は改めて凄まじいものだったと感心する……ただその成果のために消えていった犠牲者たちを忘れてはならない。
「……上から見た島の地図か。これがどうかしたか?」
「堀北生徒会長がこれから向かう無人島ってここですよね?」
「何だと? 仮にそれが本当だったとして、どうしてその地図をおまえが知っている?」
反応を見る限り初めて目にした様に見える……演技? それとも本当に見たことがないのか?
もう少し探りを入れてみよう。
「そうなんですね。偶然学校で見てしまって。私たちが行われた『特別試験』の島とは違ったみたいなので、もしかしたら堀北生徒会長が行く島の物だったのかと」
「そうか。悪いが初めて目にする」
「ただいま戻りました。コチラ会長のコーヒーと……って、え、何でその地図がここに? ってあれ? 会長? ……もしかして私、失敗しました?」
「いいえ、茜先輩ナイスです。やっぱり私は茜先輩を生徒会長に推します」
このメガネ兄貴が。すぐそうやって人を試そうとするんだから。なんなの? 含みのあるいい方とか、匂わせとか、一々強キャラ感出さないと死ぬの?
茜先輩のおかげで言葉遊びは早々に終わった。
「……それで、何が聞きたい?」
「……まぁ、いいですけど。1つ頼み事があります、もちろんタダじゃないですよ。代わりに私が知る限りで鈴音ちゃんに何があったのか全部お話しします」
「そうか……いいだろう。その代わりに先に話せ」
このシスコンめ、尊敬するぜ。清にぃもこれぐらいシスコンになったら最高なのに。
本人のご所望通り私はこの9日間の間、鈴音ちゃんと何があったのか全て話した。
ただ例外として、無人島で2人で話した兄についてのことは内緒で。話してる最中に気づいたけど、もしかしなくても鈴音ちゃんが変わったきっかけが、私とのあの会話だったのかも知れない。
もしそうなら今後の鈴音ちゃんのことも考え、これは言わないでおくべきだ。
「──そして今朝に至る、です」
「そうか……長々と話させてしまったな。次はおまえの番だ。俺への頼み事だったな? 状況を察するに明日向かう離島についてなのだろう?」
「察してくれて助かります。この地図で見た時、私の指定する場所にある物を隠しておいて欲しいんです。勿論、目印もお願いします」
「ふむ。隠す物にもよるが……目印は何にする? エリアを指定するとは言え、探すのは困難だぞ」
「このエリアの中で一番高い木に隠し、その木の枝にこれを巻いておいてください」
堀北生徒会長は茶色のハンカチを受け取る。勿論、ごく普通の市販されているハンカチ。目立つ色の方がいいだろうけど、それに教師が気づいて回収されても困る。なるべく自然な色にした方がいい。
「目印はそれでいいとして……愛歌さん、肝心の隠す物はなんでしょう?」
「それは今から持って来ます。少し待ってて下さい」
私は席を立ち一度会釈をしたあと、自分の部屋へと向かった。
一年生との交流と称した『特別試験』の宝探しが始まって既に数時間が経過した。
オレたちDクラスは与えられた二つのヒント、『伊吹澪が見ていたもの』・『蜂2F』から『B2階』に宝があることが分かった。
そして先ほど一之瀬との会話で、同様にBクラスも与えられたヒントを解いたことが分かり、断定は出来ないが宝は入れ物に隠されていると分かった。
次にレストランフロアにてAクラスの姿が確認できた。状況から察するにレストランフロアで何かを探している様だ。
「凄い! さすが綾小路くんだね!」
「それは堀北に言ってくれ。全部さっき堀北から聞かされたことだからな」
「あはは、綾小路くんって素直だよね。黙ってればいいのに」
「すぐバレる嘘をついても仕方ないだろ? 後で痛い目に合うのはオレ自身だからな」
「綾小路くんは立派だね! 見習わなくちゃ!」
誰が見習うべきか言わない辺り櫛田らしいと感じる。いつもなら私もと付け足されていた筈だ。察するに池や山内と言ったところか。
ふと気になることが思い浮かぶ。それは櫛田に本音で話す事を勧めること。今この場にはオレと櫛田の二人っきり、周りに人の影はない。嫌な予感の方が勝るが、オレは好奇心に負けてしまった。
「それ、疲れるんだろ? 周りに誰もいないし、オレと二人っきりの時ぐらい素で話したらどうだ?」
「いやだなぁ、これが素だよ? 仮に素じゃないとして、周りに誰もいなくてもどこで聴かれてるか分からないしね?」
端末をひらひらと見せながら断れてしまった。
ようはオレが盗聴、或いは通話の状態にし弱みを握られることを警戒しているのだろう。
今回に限ってそういった意図があった訳ではないが、櫛田の弱みを握るのは思ったより簡単ではなさそうだ。
ここで勘違いされたくもないので、オレは自分の端末をポケットから取り出して櫛田に渡した。
「何か勘違いさせたみたいで悪かったな。櫛田のことを思って言ったんだが、余計な気遣いだったみたいだ。すまん」
「……ううん、ありがとう綾小路くん。それじゃあ私は引き続き他のクラスの様子を見てくるね」
「ああ。悪いな。これも櫛田にしか出来ない。少なくともオレには無理だ」
「ふふ、綾小路くんって本当に素直だね。それじゃまたね!」
恐らく徒労に終わるだろうが何か掴めることを祈ろう。
時間を確認する。現在時刻、午後の16時00分。宝探しの終了時間まで残り三時間だ。
一之瀬からは17時になってもお互いに進展がなかった場合、協力しようと提案されている。その事を含め一度堀北と会って話すべきだろう。
「あれ、清にぃじゃん。まだ宝見つかってないんだ」
「愛歌か。そうだな、何とか堀北に見つけて欲しいところだ」
「折角だし清にぃも楽しみなよ」
「楽しむも何も、もう答えは分かったからな」
「え、そうだったの? 流石は清にぃだね」
「どうだろうな、これが流石なのかイマイチ分からない」
「でも必要な物は分かったんでしょ?」
纏めるとこうだ。レストランフロアで鍵を持つ誰か、そしてその鍵は、地下二階にあるロッカーを開ける為に使う。その中に宝物が入っていると言った所だろう。
ここまで答えが揃えば、後はもう地下二階にあるロッカーを全て壊してでも無理矢理に開けてしまえばいい……だがその方法で開けた場合、間違いなくCPが減点される。
10万PPとCP、どちらを選ぶかなんて悩むまでもないだろう。
「それはそうと愛歌は何をしてるんだ?」
「あー、堀北生徒会長へちょっと頼み事があって。色々とやる事が多くてね」
「忙しそうだな。ああ、そう言えば愛歌に聞きたいことがあった」
首を傾げ「私に?」と返事を返す。櫛田をあざといと前に言っていたが、愛歌も十分あざとい。
「今朝、真嶋先生が例の島、と言っていたよな」
「言ってたね」
「茶柱先生に聞いたんだが「
「それが残念、生徒会の私にも教えて貰えなかったよ」
「そうか。また何か分かったら教えてくれ」
「了解。それじゃあ宝探し頑張ってね」
愛歌はそう言い残し去って行った。
生徒会の私にも教えてもらえなかった……か。知らないとは答えていなかったな。
文脈に不自然な所は無かった。流石に考えすぎだろう。
「今のおまえたちには……か」
堀北学に直接聞いてみるか。放っておいてもいいだろうが、茶柱先生の言った通り一度疑問に思った以上、聞いておいて損はない筈だ。
「──もしもし、オレだ。堀北少し話がある」
そうと決まればこの宝探しを終わらせるとしよう。
午後18時30分。
試験終了30分前になって、ようやく宝物を鈴音ちゃんたちは見つけてきた。
最終的に全クラスで協力しポイントを分ける事にしたらしい。手に入らない10万PPより手に入る2万5千PPを鈴音ちゃんたちは選んだのだ。
「どうあれ結果的に今宝を手にしているのはDクラスだ。Dクラス以外の生徒は退出して貰おう」
「待って下さい兄さん、私たちは──」
「構わないよ堀北さん。私たちBクラスは後でちゃんとポイントを貰えればいいから」
「Aクラスも同じだ。それでは生徒会長、失礼します」
「それじゃあ私たちも失礼しまーす!」
なんだかんだ妹への想いを覗かせる堀北生徒会長だった。Dクラス以外の生徒が退出したことでこの場には、清にぃと鈴音ちゃんに櫛田と平田くんの4人が残った。
「PPはすぐに振り込ませて貰う。以上だ」
このお兄さん本当に舐めてる。期待させといてそれだけなんて……一発蹴り飛ばすか本気で悩んだ。
鈴音ちゃんが心配になり声をかけようとしたけど、どうやら不要な心配だったようだ。
「ありがとうございます。それでは私たちもこれで失礼します」
堂々としている。前の様にモジモジする事なくこの場から去ろうとする鈴音ちゃん。他の3人もそれ続いたが、堀北生徒会長から声がかけられた。
「待て。堀北鈴音と綾小路清隆、おまえたち二人はこの場に残って貰おう」
「……申し訳ございません生徒会長、私には頂いたポイントを他のクラスにも渡す義務がありますので」
「堀北さんそれは僕たちがやっておくよ」
「平田くん? 本当にいいの任せてしまっても?」
「うん。折角お兄さんに呼ばれてるんだから。それじゃあまたね」
平田くんは相変わらず
「それで何のようだ」
「あなたはまたそうやって! 先輩に対しての礼儀がなっていません。妹の愛歌さんを見習って下さい」
「構わん。それもまた個性だ」
「そうだ。これはオレの立派な個性だ。否定しないで頂きたい」
茜先輩の顔に影が差してる。ほらこっちに来て下さいね。私は茜先輩を背後から抱きしめた。
「流石のおまえでも一人では無理だったか?」
「流石も何もない。オレに期待しすぎだ」
「おまえと同じ学年じゃない事がこんなにも惜しいとはな」
「同じ学年だったらどうしてたんだ?」
「良き友人、好敵手になっていた、と俺は考えている」
堀北生徒会長のその返事に茜先輩と鈴音ちゃんは驚きを隠せずにいた。面白いのは二人が驚いた理由が同じようで少しだけ違いがある事だろう。
茜先輩は高育の生徒でトップに立つ堀北生徒会長が、清にぃと友達になりたいという事実に。
鈴音ちゃんは自分の尊敬する兄が、友達を欲しているという事実に。
鈴音ちゃんからしてみれば堀北生徒会長は、孤高で友を必要とせず、一人で何でもできる存在なのだから。
「光栄だな。生徒会長にそう思われるなんて」
「いつかおまえと全力で戦える日を楽しみにしている」
「その時はお手柔らかに頼む」
「どうだかな」
ホワイトルームの最高傑作と、高度育成高等学校の歴代最高の生徒会長の対決……見てみたい。確かにそれを考えると同じ学年じゃない事が悔やまれる。
それと清にぃは堀北生徒会長へ他に聞きたい事があるようだ。
「もう一つ質問してもいいか?」
「ああ、構わない。答えられる事には答えよう」
「今朝ヘリから降りた時に聞こえてしまったんだが、明日あんたたちが向かう島は何に使われるんだ?」
「それに関しては答えられない。他に聞くことはあるか?」
「いいや、オレはもう大丈夫だ」
まさか堀北生徒会長にまで聞くとは思わなかった。
今の質問に堀北生徒会長と茜先輩が私の方を向いていたら、少しめんどくさい事になってたけれど、二人とも流石は三年Aクラス。ボロが出なくて良かった。
「さて……鈴音」
「は、はい」
前みたいに顔色を伺う様な仕草はないけれども、相変わらず緊張はしている。
「今のおまえは、何を目指す」
「変わりません。私は……いいえ、私たちはAクラスへ上がります」
「……この俺に追いつくと?」
「少し前までならそうでした。でも今は違います。兄さんには兄さんの道が、私には私への道がある、そう考えております。それが正解かは分かりませんが……挑戦してみるつもりです。綾小路くんとそして綾小路さん、Dクラスと一緒に」
「……時間を取らせた。二人とも下がっていいぞ」
綺麗なお辞儀を見せ鈴音ちゃんは出て行き、清にぃも軽く頭を下げて出て行った。
尊敬する兄からの答えは返って来なかったけれど、鈴音ちゃんは何処か満足そうにしていた。
二人の姿が見えなくなったのを確認して、堀北生徒会長は私の方へと振り返った。
「綾小路に言ってなかったのか?」
「これでも生徒会ですよ? 無闇に言いふらしません」
「そうか。正しい判断をしてくれたようで何よりだ」
「もし話してたら?」
「おまえからの頼み事を断っていた」
本当に言わないでよかった。
こうして一年生との交流は無事に終わった。顔には出さなかったけれど堀北生徒会長は、妹の成長に嬉しそうにしていた。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
Fgoナウイミクトロンの後編が始まりましたね。
ストーリーを進めながら、こちらも更新する…至難の業ですね。
ストーリーに専念して速攻でクリアしてきます(現実逃避)
それでは次回もよろしくお願いします!
この中から苗字を選ぶなら?
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冬野(とうの)
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冬花(とうか)
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天野(あまの)
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天宮(あまみや)
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結城(ゆうき)
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悠木(ゆうき)