綾小路清隆の妹として、全力で支えます 作:ぐれーぷ
元気な子、その源は、朝ごはん。
となればこの私には朝ごはんをしっかりと摂取する義務があるのだ。
現在、午前の7時30分。世間一般的に朝食の時間だ。生徒たちは皆、朝食を食べに朝食ビュッフェへと向かった。
私も当然そっちで朝食を摂りたかったけれど、この後、鈴音ちゃんと清にぃの3人で、今回の『特別試験』について話し合う事になっている。
その為、集合場所のカフェである『ブルーオーシャン』で朝食を摂る事にした。
私の他に生徒の姿は無く、ここのカフェでも不人気と思われる、日陰の奥にあるテーブル席に私は腰を下ろす。
店員さんがやって来て注文を終えると、清にぃも丁度やって来た。
「おはよ。いい夢見れた?」
「ああ。暗闇の中、何も感じず何も分からない。不思議な感覚だったぞ」
「それは凄いや。何も見なかったんだね」
「そう言う事になるな」
なら最初から夢は見てないと言って欲しいなお兄様。
そんなくだらない会話をしている内に約束の時間になり、鈴音ちゃんも姿を現した。
「鈴音ちゃん。おはよ〜」
「おはよう。2人とも早いわね」
「ああ。10分前行動は常識だろ?」
「あら、あなたが常識を語るの? なら常識的にあなたの今までの行動を見つめ直して見ましょうか」
「約束の時間さえ守れば何の問題もないよな。おはよう、堀北。いい夢は見れたか?」
清にぃは早々に白旗を上げた。普段の清にぃが鈴音ちゃんを揶揄っても勝てないよ。
店員さんが注文を伺い来たけど、鈴音ちゃんは何も頼まなかった。水だけでいいらしい。私だけ朝食を食べるの申し訳ないな。
早速、私たちは改めて情報の整理を始めた。
・学校からの呼び出しとメールに書かれていた詳細。
・干支になぞえられた12のグループ分け。
・4つの結果による『特別試験』の締め括り。
・最後にこの後、午前8時に学校からメールで『優待者』についての通達。
違いがあるとすれば説明担当の先生と、指定された時間と部屋ぐらいだろう。他の生徒も同じ筈だ。
「グループ分けの法則は今のところ分からないわね」
鈴音ちゃんの言う通りだ。
事前に私たちは互いのグループ分けされたメンバーの情報を共有しており、鈴音ちゃんのグループは間違いなく各クラスを纏める上での、中心人物達が集められている。
ただそうなると……Bクラスで間違いなく中心の中心、帆波ちゃんが私のグループにいる事がおかしい。
この理由を現状分かるのは私だけだろう。
星之宮先生も可哀想に……私たち申のグループは直ぐに終わってしまうと言うのに。
あと私だけが知ることと言えば、本来清にぃのグループに配属される筈だった帆波ちゃんの代わりに、安藤紗代さんが、そしてその彼女の代わりに鈴音ちゃんのグループに網倉麻子さんが配属されていた。
「それにしても堀北のグループは最悪だな。サッカーのリーグ予選で言うところの、死のグループか」
「そう、じゃあ我々ブラジルの勝利ね」
「大和魂を見せろ」
こうして3人で話すのが私は好きだ。この2人が話しているところを見ているのも好き。この2人がとにかく大好きなのだと改めて思った。
さて、遂に午前8時を迎える。私たち3人の端末が同時に震えた。
私たちは互いの端末をテーブルに置き、メールを確認しあった。内容はほぼ一緒。全員『優待者』には選ばれず、集合時間と部屋が違う。
「それにしてもこの文面……気に入らないわね。まるで私に『優待者』としての資格がないって言われた気分よ」
「この錚々たるメンバーの中で、それだけ自信があれば問題はなさそうだな」
「馬鹿にしないで……と言いたいところだけれど、あなたたちが居なければ今日までやられっぱなしなのは事実。怖気ついている暇はないの」
「今の鈴音ちゃんなら大丈夫だよ。2人とも頑張ろう」
櫛田さんが裏切るだろうから最悪、辰グループは『優待者』を当てられてしまうかも知れない。
もしそうなった時は……うん、櫛田さんを退学にさせよう。櫛田さんがいなくなったら、私がその役目を引き継げばいい。
「不要な気遣いだと思うが、リーダー格の連中は既に戦略を練っていると考えるべきだ。おまえもこの試験でどう立ち回るか、どう物事を運ぶか、戦略を考えるべきだ。既に『シンキング』は始まっている」
「ええ。言われなくても分かっているわよ……因みに2人は……既にこの試験の結果が見えているの?」
「実際会って見ないと分からない点はあるが、勝つ為の方法は幾つか思いついたつもりだ。もっとも、今直ぐに実行できる作戦はないがな」
「……流石ね。綾小路さんはどうかしら?」
「お楽しみにってことで」
「……そう。ええ、2人とも結果を楽しみにしておくわ」
「オレもだ。堀北と愛歌がどんな形でこの『特別試験』を終えるのか楽しみにしておく」
清にぃが私に期待してくれている……上っ面だったとしてもニヤけが止まらない。
清にぃにどっちが先に『優待者』を見つけるか勝負したい。そして勝った方の言う事を何でも聞くという景品を賭けて。そしたら清にぃの1日を私のために……考えるだけで震えが止まらないよ。
私がくだらない妄想をしている間に、2人は今警戒すべき人物は誰かと話し合っていた。試験とは関係ないことだけれど、辰グループのことを考えれば無理もないよね。
「綾小路さんはどうかしら?」
「私? 私は勿論、鈴音ちゃんだよ!」
「はぁ。綾小路さん、話は聞いていたのかしら?」
「ごめんごめん。そうだね、坂柳さん。私は坂柳さんかな」
「……昨日も言っていたわね。そこまで彼女を警戒する理由が分からないわ。まだ彼女は何もしていないじゃない」
「うん。そうだよ。この段階に来て、まだ何もしていない。にも関わらずAクラスのもう1人のリーダーとして認識されている。或いは、私たちが気づいてないだけで既に何かしているかも知れない」
「愛歌の言う通りはもっともだ。知らないってのは恐ろしいことだからな。だが、今一番警戒すべき相手か、と聞かれれば違う。そうは思わないか?」
確かに清にぃの言う通りだ。私はそれに頷いた。
清にぃや鈴音ちゃんと私が捉えているフォーカスが違うため仕方ない。
龍園くんか。今と全く関係ないけど、清にぃと同じ誕生日だし祝ってあげようかな。
私の心の中でだけど噂をすれば何とやらだ。
「こんないい天気に美女2人と食事か? 金魚の糞らしからぬ身分だな。俺も混ぜてくれよ」
「高いよ〜。龍園くんに払えるかな? 最低でも50万PPは払って貰わないと」
「はっ、ぼっくりもいいとこだぜ。そこの金魚の糞は払えてるのか?」
「身内は割引100%。てか、清にぃを指して金魚の糞って言わないでくれる? こう見えて私、お兄ちゃん関係の煽り耐性ないから直ぐにキレるよ」
「そりゃあいいこと聞いた。無能な兄を持って大変そうだな」
「次はないよ?」
「なんだ? 何もできないのか? 兄が無知無能だと妹も大したことないんだな」
どうやら龍園くんは戦争をご所望らしい。私の前で清にぃを馬鹿にするとどうなるか教えてあげる必要があるみたいだ。
私は深く深呼吸をしお腹に力を込める。そして構え、唸らせる。怒りの感情を込めて私は解き放った。
「キャー! 助けてぇぇぇ! 龍園くんにレイ──」
伊吹さんに口を塞がれてしまった。
「認めるぜ。おまえが狂ってるってな」
龍園くんが運ばれて来た水を一気に飲み干し、そう答えた。流石の彼も私にレイプ犯として仕立て上げられるのは嫌らしい。ニヤけていた顔が無表情になってたから間違いない。
「そう言えばメールが届いただろ。おまえたち3人はどうだ? 『優待者』にはなれたのか?」
「どうかしら、まだ見ていないから分からないわね」
「なら今ここで確認したらどうだ? それぐらい待ってやるぞ」
「あなた達が帰った後、じっくり見させて貰う事にするわ」
そろそろ息苦しくなって来たので、伊吹さんに何もしないと伝えて解放してもらった。それにしても私の朝ごはんまだ?
「鈴音、それとは別に1つ教えてくれよ。おまえの裏にいる人物について」
「私の裏にいる人物? いったいどういう意味かしら」
「無人島での試験、おまえみたいな真面目ちゃんにあんな結果は残せない。それにこいつの報告を聞く限りおまえが動いた形跡も無い。あとは言わなくとも分かるだろ?」
「何が言いたいのかさっぱりよ。それに彼女に見抜かれるほど私は間抜けじゃないわ。だって彼女、熱で体調を崩していた私に苦戦をするぐらいだもの」
「言うじゃない。なら今ここで再戦してどっちが強いかハッキリさせようじゃない」
鈴音ちゃんの安っぽい挑発に乗っかり、苛立ちながら詰め寄ってくる伊吹さん。
当然、鈴音ちゃんはその喧嘩を買わない。それどころか更に挑発を重ねた。
「遠慮しておくわ。ああ、理由も言っておきましょうか。怖いから逃げたって言われるのは癪だもの。暴力行為は試験のルールにも禁止と書かれているわ。殴りたいならどうぞ。学校側に訴えてCクラスはペナルティを受ける。あなたのお陰でCクラスとの差が縮まるわね。それも2度も」
わお、煽るねぇ鈴音ちゃん。
伊吹さんが鈴音ちゃんと距離を一気に詰めた。それももう互いの鼻が触れ合うぐらいの距離にまで。
距離は詰めたものの伊吹さんは手を出せない。無人島での失態、そしてここで手を出せば2度目の失態となる。
伊吹さんの性格上、自分にだけペナルティが科せられるのであれば普通に手を出すと思う。でも自分の私情で他の人にまで迷惑をかけるのを良しとしない。こう見えて意外と律儀なのだ。
「綾小路さんコーヒーを注文して貰える? 今ならどんなコーヒーでも美味しく頂けそうだわ」
鈴音ちゃんが昨晩から、水を得た魚のように活き活きとしている。人を煽ることがモチベーションに繋がるなんて……恐ろしい子。序でに清にぃも同じものを頼んでいた。
コーヒーが届くと、再び龍園くんが口を開く。
「昨日の葛城は無様だったな。おまえのことを警戒している様子も笑える」
「あら、それはあなたたちもでしょ? だからこうしてやって来た。違うかしら?」
「同じようで違うな。葛城が警戒しているのは鈴音だが、俺が警戒しているのはおまえの裏にいる人物、または協力者だ」
「まるであなたには私の考えた戦略がどんなものか分かっているみたいな口ぶりね。それが別の人物が考えたと?」
「試験終了の直前に鈴音から別の誰かへとリーダーが変わっていた」
「呆れたわね。そんなことぐらい既に全クラスが知っていると思うのだけれど?」
「まだ俺の話は終わってねぇよ」
龍園くんは続ける。彼は無人島で起きた事を確りと把握していた。
「おまえが自分の意思でリタイアしリーダーを替えたのではなく、誰かの手によってリタイアさせられリーダーの入れ替えを強制された。そして──そのリーダーこそがおまえの裏にいる人物、俺はそう判断を下した」
流石の一言だ。綾小路清隆は只者ではない、鈴音ちゃんはきっと内心でそう思っているに違いない。
昨日、『特別試験』についての説明を終えた後、私たち3人のグループ部屋で清にぃが龍園くんの今後の動きを予想していた。
『間違いなく龍園は堀北の背後に誰かがいると突き止める。オレはその人物が愛歌になるように誘導した』
清にぃならそれぐらい片手間の指手間の暇つぶしぐらいのレベルでできる。つまり清にぃは凄いって事だ。
それを鈴音ちゃんに言ったら「あなたは稀に、綾小路くんが関わると知能指数が下がるのね」って言われた。よく言っている意味がワカラナイ。
「おまえの協力者は相当頭がキレる。しかも若干だが俺と似た思考回路をしてやがる。この俺が炙り出してやるよ」
「そう。精々頑張るのね。仮にあなたが言ってる事が正しいとして、ここの2人はどうかしら? 私に友人と呼べる存在はここに居る兄妹だけよ」
「兄の方はないだろ。コイツは金──この作戦を思いつけるほど優秀には見えない。少し前までは妹が濃厚だったが、流石にここまで狂ったやつに出し抜かれたとは思いたくねぇな」
「何も分かってないのね」
「クク、そう焦るなよ。Dクラス全員が標的だ。この俺がゆっくり品定めしてやるから楽しみにしておくといい……だが残念だな。この裏で動いてたやつはもっと後で行動に出るべきだった」
「どう言う意味かしら?」
「俺の戦略を早々見破れたのは俺と似た思考回路を持っているからだ。そんな奴が今日まで身を隠し水面下で動いていたのにも関わらず、こんな序盤でもう動き出してしまった。その存在を知った以上、俺が同じ手でやられる事はない。実力はあっても勝負所が見えてないようだな。それがそいつと俺との差だ」
このドヤ顔がいつか恐怖に歪められると思うと笑えてくる。
龍園くんは満足したのか席を立つ。どうやらやっと帰ってくれるみたい。
「AクラスもBクラスも、そしておまえたちDクラスも、全員俺が潰す。その時、おまえたちは思い知るだろう。一年で誰が王に──」
「──お待たせしました。こちら、キングパフェ・ギャラクシーストロベリーホイップのレインボーアイスクリーム、トッピング、生クリームとココアパウダー二倍マシ、5段パンケーキです」
やっと私の朝食が運ばれて来た。ずっと食べたかったんだよね。
私の目の前に期間限定メニューのパンケーキがやって来た。高さは15cm程だろうか? 期待してたものよりも少し小さかったけれど、朝食から甘い物を沢山食べるのは良くないよね。仕方ないのでこれぐらいで我慢しておこう。
店員にナイフとフォークに取り分け皿が5人分置かれたが、私1人で食べるので返した。
早速実食してみる。うん、めちゃくちゃ美味しい。朝はやっぱりパンに限るよね。
「待って……綾小路さん、これはなに?」
「朝食!」
「……とんだ化け物だ。行くぞ伊吹」
「まって。えっ……カロリー3000越え……うっ」
龍園くんは伊吹さんを連れてこの場を去っていた。伊吹さんが去る直前に何か言っていたけれど、上手く聞き取れなかった。パンケーキ食べたかったのかな?
「私は時々、あなたの妹が恐ろしいわ」
「奇遇だな。オレもそう思う」
珍しく2人の意見がすんなりと一致していた。その理由がちょっと癪だけど、この2人が仲良くできるならよしとしよう。
「それはそうと愛歌、助かったぞ」
「はいしょーゔあよ〜(大丈夫だよ〜)」
「どういう意味か私にも説明して貰える?」
やっぱり清にぃは気づいたけど、鈴音ちゃんは気づかなかったみたいだ。
私がさっき龍園くんの清にぃ弄りの幼稚な挑発に乗りづつけたのは、清にぃを候補の可能性から少しでも外すためだ。
龍園くんは私が清にぃのことを挑発すれば簡単にキレる、ヤバい妹として認識してるはず。なら裏に居る人物を嘲笑した時、私が何も反応を示さなかったら清にぃは違うと、推測できる様に予防線を張っておいた。
「まあ、単純であからさまだから龍園くんが当てにするとは思えないけどね」
「あからさま過ぎるからこそ余計悩むだろう。それに中々の迫真の演技だったぞ。オレも途中で気づいたからな」
「まったくね。私もいつもみたいに、またおかしくなったと思ったわ」
「ああ。流石だな愛歌」
この2人は私を褒めてるの? 貶してるの?
『──それでは、これより2回目のグループディスカッションを開催します』
短く簡潔にそうアナウンスで告げられた。
さて、改めて私の申グループにいる生徒を見渡す。話したことある生徒と目が合えばお互いに手を振り挨拶し、初対面の子は顔を逸らされてしまう。仕方ないよね。
「さてと、1回目のディスカッションでは自己紹介したよね。2回目は何しよっかなって思ったけど……折角だしトランプでもする?」
そう提案する帆波ちゃんの手にはトランプが握られていた。いいね、トランプ。大富豪やりたい。
「私は賛成だよ帆波ちゃん。知らない生徒も居るから、折角だし仲良くなりたいよね」
「愛歌ちゃんから1票頂きました〜。逆に反対の子はいる〜?」
帆波ちゃんが部屋全体を見渡しながらそう聞いた。
誰もトランプで遊ぶことに反対しなかったので、このまま進めても問題はなさそうだ。
トランプを考えた人は本当に凄い。ババ抜き、7並べ、神経衰弱、大富豪、スピード、ダウト、ポーカー、ブラックジャック。こうして遊べるものを挙げればキリがない。コミュニケーションが苦手な子でも楽しく遊べるゲームの1つと言える。
「高円寺くんはやらないの?」
「私が参加したら圧勝して、誰も楽しめないだろうからね。こうしてマナカのプレーを眺めてるだけで十分さ」
とのことらしい。確かに高円寺くんが参加したらずっと勝って勝って場が白けそうだよね。意外と他人への気遣いもできるんだね……と思ったけど、きっと自分が面白くないだけなんだろうなぁ。
Aクラスの生徒は葛城くんの指示で、話し合いにもトランプにも参加せず沈黙を貫かせて貰うとのこと。その徹底した守りのスタンスは流石だけれど、勝つ気も負ける気もないという戦略……本人曰く勝つためにやってるって言うけど、攻めるのが好きな人から見たら鼻で笑われるだろう。
「はい。じゃあ次は愛歌ちゃんの番だね」
そう言って帆波ちゃんがカードを差し出して来る。今私たちがやっているのはババ抜きだ。残り時間は20分か。そろそろいいかな?
「あ、そうだ。帆波ちゃん、私『優待者』が誰か分かったよ。これかな? ありゃ、ペア揃わなかったか〜」
「えーそうなんだ。凄いね愛歌ちゃ、ん、は……え、ええ!? す、ストップ! ババ抜きは一度中止!」
帆波ちゃんが慌てだしババ抜きを中断させた。
部屋にいる生徒全員が息を呑んだのが分かる。いや、唯一高円寺くんだけはいつも見たいに、目を瞑って椅子を揺籠のように揺らしリラックスしていた。
私はひとまず帆波ちゃんに視線を戻す。
「何か別のゲームでもするの?」
「この状況でそれはちょっと違うんじゃない? それは次のディスカッションがあったらやろう。このまま勝ち逃げを許す訳には行かないから議論しあいたいな」
「警戒しすぎだよ帆波ちゃん。私たちDクラスだよ? 50ポイント伸ばした所で変わらないって」
「それはどうかな? もし本当に『優待者』を当てたら50CPプラスで392CP、Dクラスはスタートこそ0ポイントだったけど、現状全クラスの中で1番CPを増やしてるよね」
「言われて見ればそうだね。でもまだまだ届かないから大丈夫だよ」
「にゃはは、この50ポイント差でAクラスを逃したら悔いても悔やみきれないって。私は例え1ポイントだったとしても安く見ないよ」
確かに帆波ちゃんの言い分はもっともだ。
私自身、最初は今回の『特別試験』を楽しむつもりでいた。でも高円寺くんと同じグループになってしまったので、彼にポイント盗られるぐらいなら私が獲得しようと思った。
今後、高円寺くんがPPで困ってる時、PPを私が払う代わりにDクラスへ協力して貰う取り引きができるからね。
「それでもさ、残り20分切ってるよ? ここから何が出来るの?」
「っ……どうしようかな。これは本当に困ったよ」
帆波ちゃんには勿論、皆に申し訳ない。
でも私は、私に与えられた力を使わず腐らせるつもりはない。私の新しい人生だ。私は私がやりたい様に生きると決めたのだから。
帆波ちゃんは何とか議論へ持ち込み、対抗として偽の『優待者』がBクラスの生徒から名乗り出るが、勿論それが意味をなす事なく、申グループは初日の試験で終わりを迎えた。
『申グループの試験が終了いたしました。以降、申グループの皆様は試験に参加する必要はありません。他の試験参加中の生徒の邪魔をしないよう気をつけて、夏のバカンスをお楽しみください』
星之宮「……え?」
船上試験は後、3話ぐらいで終わらせる予定です