綾小路清隆の妹として、全力で支えます   作:ぐれーぷ

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3限目〜私と会えて嬉しいの龍園くん?〜

 

 

 

「──まったくあなたはいつも!」

 

 オレの目の前で愛歌が堀北に両頬を上下左右へと引っ張られていた。

『特別試験』初日の2回目のディスカッションが終わり、オレたちは例のカフェで3人集まっていた。そして愛歌は今、堀北に躾けられている。

 引っ張られる度に、あうあう、と言っているが、愛歌の美貌も相まって余計に可愛く見せている。

 もしこのカフェに他の生徒たちがいれば、視線を集めていただろう。

 

「ずみぃまぜぇぁん」

 

「事後報告はもうしないと誓うかしら?」

 

「ぢがいまぁす」

 

「さっき問い詰めた時は私じゃないと嘘を吐いたわね? 嘘も吐かないと誓うかしら?」

 

「ぢぃがぁいまぁぁず!」

 

「……ふん」

 

 バチン。両頬を勢いよく挟まれ見事に赤く腫れ上がっている。めちゃくちゃ痛そうだ。

 それにしても美女の2人の戯れは絵になるな。

 

「清にぃぃぃ、痛いよぉ」

 

「よしよし、頑張ったなー」

 

「そこ、甘やかさない」

 

「愛歌、しっかり反省しろよ」

 

 捨てられた子犬の様な悲しい目で愛歌が見てくるが、相手があの堀北じゃ仕方ない。愛歌だっていつも堀北側に着くんだ。堀北と敵対したら何されるか恐ろしくて、今後の学校生活が不安になる。

 ここでもしオレが愛歌の味方をしようものなら「兄であるあなたも連帯責任」なんて言われ飛び火するかも知れない。それは勘弁願いたい。

 

「それで……『優待者』だと確信した上での判断よね?」

 

「うん。間違いなく」

 

 愛歌は初日の試験が終わった時点で『優待者』を見つけて告発した。

 最初は高円寺の暴走かと思ったが、オレの端末に愛歌本人から試験を終わらせたと連絡が来た。堀北には明日詳しく話すという事で、どうやら昨日は誰が告発したのか知らないと嘘をついていた様だ。

 まさか初日の試験が終わった時点で裏切り者が出るとは誰も思いもしなかっただろうな。

 

「どうやって『優待者』を見つけたのか教えて貰える?」

 

「これがさ実は偶然なんだよね」

 

「どう言う意味かしら?」

 

「報告したCクラスのその子が平常時と比べて挙動不審だったの」

 

「……それだけ?」

 

「うん。それだけ」

 

 堀北は信じられないと言わんばかりに頭を抑えた。

 まあ、気持ちは分からなくもない。これが愛歌の表向きの答えだ。

 実際は違う。愛歌はこの『特別試験』の法則に気づいた。その法則とは、所属している干支の順番と、そのグループの生徒の名前の順だ。

 オレたち卯グループは干支で4番目で、名前の順で生徒を置き換えた時、4番目に来るのは、オレ、安藤紗代、伊吹澪、軽井沢恵……つまりオレたちのグループの『優待者』は軽井沢となる。

 他にDクラスは櫛田と南が『優待者』に選ばれている。当然2人のグループもその法則で試した所、軽井沢同様にちゃんと2人が『優待者』になる様に調整されていた。

 正直な所、現状この法則が1番の有力ではあるが、絶対にこれだと言う確証も無い。せめてもう1クラス分、3人の『優待者』が判明してやっと賭けてみてもいい可能性が生まれる。

 愛歌がやった事はとてもリスキーな事で、どう考えても褒められた物ではないな。

 だが愛歌が今、堀北に言った事も事実。愛歌から見て挙動不審に見えたなら間違いない。何故ならあの『4期生』で唯一、最初から最後まで感情を自分の意思で残せたのが愛歌だけだからだ。その感受性とEQの高さは計り知れない。

 

「はぁ……もうこうなったら当たっていることを祈るしかないわね」

 

「大丈夫大丈夫、当たってるから」

 

 あ、堀北がキレたのがオレには分かる。イラッとしただろうなあ。

 

「……もし間違ってたらどうするのかしら?」

 

「鈴音ちゃんの言う事を、何でも1つ聞いてあげるよ」

 

「言ったわね? もしその時は、今後卒業までの間、全力で『特別試験』に挑んで貰うわ」

 

「もちろん。でもその代わり当たってたら鈴音ちゃんも私のお願いを聞いてね」

 

「……そうね、早々に『優待者』を見つけたことになるのだから、賞賛されるべきね。それでその時のお願いって何なのかしら?」

 

「そうだな〜……鈴音ちゃんが自分で考えて、私が喜ぶことをして」

 

「また無茶な……はぁ、分かったわ」

 

 堀北も可哀想にな。愛歌が賭け事をする時は本人が勝利を疑ってない時だけだ。つまり愛歌が賭け事を持ちかける、或いは乗ってくる時は負ける。

 ポーカーで言えば、手札にAが2枚、或いは絵札のカードが揃って2枚来た時にしかコールをしないってことだな。

 何かを賭ける時は、ああ見えて負けず嫌いなのだ。

 

「話し合いは明日にしましょう。1度、1人で情報の整理がしたいわ」

 

「そう? 一緒にした方が良くない?」

 

「その場合はまたあなたを叱ることになるかも知れないけれど……いいのね?」

 

「お、おやすみ鈴音ちゃん! また明日!」

 

「はぁ……綾小路くんもまた明日」

 

 オレは軽く手を振って返事を返す。もう午後の22時過ぎか。人の気配も少なくなって来た。

 オレたちもこのまま解散してもいいが、愛歌には聞きたい事がある。周りに誰もいない今聞いた方がいいだろう。

 

「軽井沢の情報が欲しい」

 

「いいよ。後で纏めたやつを携帯にメールしとく」

 

「ああ、助かる。それともう1つお願いがあるんだが」

 

「もちろんいいよ。何をすればいいの?」

 

 オレからのもう1つの頼み事、それは他グループやDクラスの生徒に、そのグループの『優待者』を教える様な事はしないで欲しい。これが愛歌への願いだった。

 

「理由は話さなくても分かるよな?」

 

「クラスの成長が見込めないからでしょ」

 

 その通りだ。あくまでも堀北の方針に従い、Dクラスの皆の力で『特別試験』で好成績を残すのが好ましい。このままだとオレと愛歌に頼りっきりになってしまう。今のDクラスに必要なのは結果そのものでは無く、結果を残す為の(すべ)だ。

 老子の格言と一緒だ。魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える。それがオレと愛歌のやるべき事なんだろう。

 

「さてと、私はそろそろ身体を動かしに行こうかな」

 

「ジムか。豪華客船にジムがあるのも驚きだが、よく毎日通えるな」

 

「体が資本だからね。それに夜遅い時間は誰もいないからね」

 

「そうか。なら途中まで一緒に行くか」

 

「うん! 行きたい」

 

 カフェの外に出ると、空には視界を埋め尽くす程の綺麗で幻想的な満天の星空が広がっていた。

 資料や映像では見た事のある景色。ここまで幻想的だと自分が異世界へ迷い込んだのでは無いかと思い始める。きっとオレや愛歌だからこそ余計にそう思うのだろう。

 

「凄い綺麗だね」

 

「ああ。オレはもう少しだけ見てから戻る」

 

「じゃあここでお別れだね。デッキの方に行くともっと綺麗だよ」

 

 愛歌は最後におやすみと付け足して去って行った。

 デッキか、これ以上綺麗に見えたら死ぬんじゃないのか? 気になるのでオレは愛歌に言われた通り、デッキの方へと向かった。

 

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 

 船上での『特別試験』3日目。

 私は今、清にぃと鈴音ちゃんの3人でいつものカフェに集まっていた。

 集まる理由は勿論、『特別試験』に関して。早速話し合いをと思ったけど、初日と同じように龍園くんがまたやって来た。ただ今日は伊吹さんは引き連れてなく、1人でやって来たみたい。

 

「よう。また3人で日陰デートか。男1人だと肩身狭いだろ? 俺も参加してやるよ」

 

 龍園くんはまたしてもこちらの返事を聞く前に、勝手に着席してしまった。左から鈴音ちゃんと私、そして私の表面に清にぃでその右側に龍園くんが座っている形だ。

 

「あなたと話すことは何も無いけれど?」

 

「そんな冷たくあしらうなよ。同じ1年生、もっと仲良くやろうぜ」

 

「あなたがもっと友好的なら考えてあげるわ」

 

「誰がどう見ても俺は友好的だろ?」

 

「あなたの場合は好戦的と言うのよ」

 

 2人の会話に私と清にぃは口を挟まない。ただ口の中にパンケーキを詰めていくだけだ。え、この組み合わせも美味いんだけど。やば。

 

「鈴音、おまえたちは『優待者』を見つけ出す算段はついたのか?」

 

「これが残念、何も思いつかないわ」

 

「クク、随分とあっさり認めるんだな?」

 

「嘘は苦手なのよ」

 

 鈴音ちゃんの言動的に答える気はないと龍園くんにも伝わっているはずだ。この後も、何を聞かれても鈴音ちゃんは知らない分からないと答えるだろう。

 予想通り龍園くんにもそれは伝わった様で、鈴音ちゃんへの直接的な質問はやめた。どうやら彼はこの試験の詰めの段階に入るらしい。

 

「そう。上手くいかないことを祈るわ」

 

「クク、楽しみにしておけ。またな鈴音」

 

 龍園くんはそう言い残しこの場を去っていった。

 清にぃは龍園くんの姿が完全な見えなくなったのを確認し、私たちに静かにする様にと指を立てた。

 先程まで座っていた龍園くんの席を覗くと、携帯端末が録音モードで残されている。

 余計なことを話せば龍園くんに情報を与え、かと言って黙れば後に龍園くんにバレてしまう。なのでここは聞かれてもいい事を話すことにしよう。

 

「この試験も結果を出すのは難しいよね。龍園くんはどうやって結果を出すんだろ」

 

「彼の言うことは今のところ無視しておきましょう。もし仮に本当に全ての『優待者』を知っていたとして、焦るのは良くないもの。だから綾小路くん、くれぐれも余計なことはしないように」

 

「ああ、分かってる。いつも通りおまえの指示通りに動くさ」

 

 このままここに居ては話したい事も話せないし、もう話す事も特には無いかな。

 私が鈴音ちゃんに電話をかけて、その電話先を他の生徒だったことにして、用事ができ私たちは解散する事にした。清にぃと鈴音ちゃんは部屋に1度戻るらしいので、私は今日の日課を早めに終わらせようかな。

 すると私の携帯端末が震え着信を知らせる。相手は意外な人物だった。

 

「珍しいですね。どうしたんですか南雲先輩」

 

 私の着信の相手、それは2年Aクラスの南雲雅だ。

 

『可愛い後輩の様子が気になってな。離島での試験の結果を見たぞ。圧勝だったな』

 

「ありがとうございます。まさか無人島で『特別試験』を行うとは思いもしませんでしたが」

 

『違いねぇ。俺もそうだった。この学校は本当に面白いことをしてくれるよ』

 

「同感です。用事はもう無いですか? 今少し取り込み中なのですが」

 

『それは悪いことをした。ある企業からスポンサーしたいと頼まれた。学校側は承諾、今契約内容を堀北先輩が確認中だ。堀北先輩からの伝言でな、自分に任せてもいいか確認して欲しいとよ。そっちに送るか?』

 

 本当なら私が対応するべきなんだろうけど……きっと堀北生徒会長は『特別試験』中の私を気遣ったのだろう。もう私は試験を終えているので対応してもいいけど、やってくれるなら任せたい。手間が省けるのは助かるからね。

 私は南雲先輩にそちらに任せると返事を返した。

 

『分かった。一応詳細は電話を切った後に送っておく。今度の『特別試験』も楽しめよ』

 

「はい。ありがとうございます」

 

 それを最後に通話を終了した。そして南雲先輩がメールで詳細を送ってくれる。

 念の為に今軽く内容を確認して特に問題はなさそうだったので、このまま堀北生徒会長に任せる事にした。後で部屋に戻ってから改めてしっかり確認しよう。

 私の目的の場所、ジムの中に入ると珍しく人の気配がした。誰なのか見渡して見ると、見覚えのある金髪を見つけてしまった。

 

「おや、マナカじゃないか。君もトレーニングかい?」

 

 そう、同じ申グループだった高円寺くんだ。

 

「軽くね。私はそこまで負荷をかけるつもりはないよ」

 

「そうかい。補助が必要な時は頼ってくれたまえ」

 

 高円寺くんは再びトレーニングへと戻った。それにしても彼の肉体は何度見ても凄いと思わされる。あんな肉体を持ってたら自慢もしたくなるだろう。

 時間が勿体ないので私も始める。柔軟とヨガをメインに2時間ほど行い、器具を使って筋肉に負荷をかけていく。最後に軽くランニングして私はお終いだ。

 音楽を聴きながら身体を解していると、ストレッチエリアに高円寺くんがやって来た。

 

「ふふ、マナカの身体も美しいねぇ。美しさだけで言えばこの私よりも上かも知れない」

 

「まさか高円寺くんが自分を下だと思うなんて……これは夢かな?」

 

「私は認めるべきところは認めるとも。だがこの私が美しさを追求していたのなら、マナカよりも上だった。それは断言しておこう」

 

 高円寺くんの場合は負けず嫌いとかとはまた少し違う様な感じなんだろう。

 私の場合は絶世の美女としてこの世に転生してしまった為、私の体型は本当に美しいと思う。自分で言うのは少し恥ずかしいけれどね……転生かあ。

 

「高円寺くんは悔しく無いの?」

 

「ん? 私が何に悔しいと?」

 

「一昨日、高円寺くんも気づいてたでしょ。『優待者』が誰なのか」

 

「ああ、そんなことか。君の方が早く気づいた。それだけのことさ」

 

 腹筋ローラーをしながらそう返事を返す高円寺くん。彼は彼でとんでもない存在だ。

 

「マナカは1回目ディスカッションが始まる前から『優待者』に気づいていたのだろう?」

 

「……どうして分かったの?」

 

「あの部屋で君は全員の生徒を1度見た。その際に1人の生徒だけ……そう『優待者』の生徒を見る時だけ、他の生徒よりも長く観察していた」

 

 高円寺くんの考察に私は驚く。まさかあの時に高円寺に見られているとは思っていなかった。

 確かに私は全生徒を見て観察した。『優待者』の子だけ少し長めに見ていたのは私も自覚している。でもそれは1秒程だ。他の生徒よりもたった1秒長く見ただけで、高円寺くんは私が彼を『優待者』として見ていたと判断した。

 

「今度は私が聞く番だね。質問に答えたのだから、答えてくれるだろ?」

 

「ええ、もちろん。聞く質問にもよるけれど」

 

「君ほどの人物がどうしてDクラスなのか。それが知りたくてね」

 

 私がDクラスの理由か。それはきっと清にぃと一緒でこの学園に入学できる生徒リストに載っていなかったからだろう。

 高円寺くんに嘘は吐きたくない。もし嘘を吐いて機嫌を悪くさせたら何をされるか分かったもんじゃない。この状況だと誤魔化すのも無理だろう。

 

「それは答えたくない」

 

「なら結構。正直に言ってくれて安心したよ」

 

「正直に言ってなかったら?」

 

「さてね、どうなっていたんだろうねぇ」

 

 相変わらず何を考えているのか分からない存在だ。しかも腹筋ローラーをずっと続けながら平然と話している。もはやゴリラだ。キングコングと言っても過言じゃ無いだろう。

 どうやら腹筋ローラーはお終いらしい。100回ぐらいやったんじゃないのかな? 

 

「そう言えば父の知り合いに、元政治家で綾小路先生と呼ばれていた男が居たと思い出したよ」

 

 ……高円寺くん、本当にあなたが何を考えているのか分からない。何を望んでそれを口にしているの? 

 

「君は似てないがマイブラザーは何処か面影があるねぇ。髪なんかは同じだ。もしかしなくても君たちの父親だったりするのかい?」

 

「高円寺くん、分かっててやってるのかしら?」

 

「ふふ。いいねえ、私はそっちのマナカの方が好ましい。どうして自分を偽っているんだい?」

 

「さっきから質問が多いわね。そろそろ鬱陶しいのだけれど」

 

「すまないねえ、興が乗ってしまった。私は汗を流してくるよ」

 

 そう言い残し彼はシャワールームへと向かって行った。

 高円寺くんが……厳密に言えば彼の父親が私たちの父親と関わりがあることを知っている。どこまで知っているのかが重要だ。これで高円寺くんはホワイトルームを知っている可能性が浮上した。

 もしその場合、高円寺くんは坂柳さん同様に『綾小路清隆(最高傑作)』を知っていることになる。

 ミスをした。最初の質問で嘘を吐くべきだった。いや違う。2個目の質問を否定すれば……ダメだ。高円寺くんのことは分からないけれど、あれはどう考えても確信した状態で聞いていた。

 

「ま、知られたものは仕方ない……って思うしか無いよね」

 

 高円寺くんがそれを吹聴して回ることは無いだろう。

 清にぃにこの事は報告する。1度会ってこのことについて清にぃと話すべきだ。そうと決まれば私もトレーニングを切り上げ、シャワールームへと向かった。汗を流して身支度を整え清にぃの下へ向かう。

 どうやら今日1回目のディスカッションが終え、今鈴音ちゃんたち辰グループの所に居るそうだ。

 目的の場所に到着すると、鈴音ちゃんと櫛田さんや帆波ちゃんに神崎くん、そして龍園くんの姿もあった。

 

「来やがったな人外」

 

「なに、私と会えて嬉しいの龍園くん? それで、これは何の集まり?」

 

 櫛田さんが現在の状況を私に説明をしてくれた。

 

「綾小路さん、今ね龍園くんからBとCにDの3クラスで優待者を共有してAクラスを倒そうって提案されたの……堀北さんが断った所だよ」

 

「なるほどね。大口叩いてた割には、面白い提案をするね? 龍園くん」

 

「俺はお前たちにチャンスを与えてやってるのさ。このままだとCクラスの圧勝で終える。それだと申し訳なくてな」

 

「龍園くんにも申し訳ないって気持ちがあったんだねぇ。でもその提案には乗れないかな。Bクラスの中には前に龍園くんの言動で傷ついた子もいる。ポイントが増えるからってそれを無かったことには出来ないよ」

 

「まさか断られるとはな。ここまで嫌われると悲しくなるぜ」

 

 そんなことは微塵も思ってないと龍園くんの顔を見れば分かる。

 龍園くんは立ち上がると部屋から出て行った。すれ違った時に1度立ち止まってこちらを見たけれど、直ぐに前を向き歩き出し去って行った。

 櫛田さんも友達と用事があるみたいなのでこの場を後にした。

 

「大変そうだね鈴音ちゃん」

 

「確かにそうね。それよりも問題は葛城くんたちよ」

 

「うんうん。あの籠城作戦を何とかしないと残っている人たちは困っちゃうよね。あ、愛歌ちゃんこの後、少し時間あるかな?」

 

「ごめん! 少し清にぃと話があるの」

 

「「綾小路くんとお話し?」」

 

 鈴音ちゃんと帆波ちゃんの声がハモった。そんなに不思議なことなんだろうか? 

 

「あ、あれ? 兄妹2人だけで話すのってそんな可笑しい?」

 

「う、ううん! 全然おかしく無いよ。私は後で話せれば大丈夫だから」

 

「ごめんね帆波ちゃん。直ぐに終わると思うから連絡するよ」

 

「うん。待ってるね。それじゃあ私たちはこれで」

 

 帆波ちゃんたちも神崎くんと一緒に去って行った。この場に残ったのは私と清にぃと鈴音ちゃんの3人。

 鈴音ちゃんはどうやら自分を除いて2人だけで話す事がとても気になるらしい。確かにいつも3人で話してるし、鈴音ちゃんの前で清にぃと2人っきりで話す事があるって言ったことなかったもんね。

 なので鈴音ちゃんにも一言謝ってから、私は清にぃの部屋にやって来た。もちろん部屋には私と清にぃしかいない。

 早速清にぃに高円寺くんとのことを詳しく説明した。

 

「……そうか。こればっかりは仕方ないだろ。高円寺が言うには親同士が知り合いで、オレたちと出会う前からアイツのことを知っていたみたいだからな」

 

「でも私が干渉しなければ気付かなかった可能性があるよね……これは失態だよ」

 

「あまり気にするな。高円寺がホワイトルームの事を知っているかどうかまだ分からない。それに愛歌の言う通り高円寺が吹聴して回るようなやつには思えないからな」

 

「……そうだね。ごめんね清にぃ」

 

「相手が悪かったとしか言えないな。何度も言うがそう気にするな」

 

 清にぃがそう言うのなら……。高円寺くんか、私の思ったよりも数段上のレベルにいる存在だと認識を改めた。

 

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