綾小路清隆の妹として、全力で支えます   作:ぐれーぷ

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プール騒動編/4.5巻
1限目〜退学を覚悟してください〜


 

 

 

「──改めてよろしく軽井沢さん。これからは恵ちゃんって呼ぶね」

 

 今私は、清にぃと軽井沢さん改め恵ちゃんの3人と自己紹介をしていた。

 

「……あんたも私のこと知ってるの?」

 

 何をとは聞かない。私は清にぃから恵ちゃんの過去について教えて貰っている。虐められていたことを。どの時代、どの世界でも虐めはなくならない。辛い事実だね。私は知っていると返事を返した。すると恵ちゃんが清にぃの方を睨む。

 

「おまえを守るためだ。客船の時にも言ったはずだ。愛歌にもこのことは教えると」

 

「私の目の前で教えるものだと思ってたの。そうやってまた裏でコソコソと」

 

「まぁまぁ、私は恵ちゃんの味方だよ」

 

「はぁ、仕方ないわね。その代わり綾小路さんも私のことちゃんと守ってよね」

 

「もちろんだよ。それとぜひ、親しみを込めて私のことは愛歌って呼んで欲しいな」

 

「……考えとく」

 

 これは少し時間がかかるかな。将来清にぃの恋人になる恵ちゃんとは是非とも仲良くなりたいところだ。恵ねぇって呼ぶ日が来るのかな? 私の姉呼び第一号は誰になるんだろう。できることなら鈴音ちゃんも含め全ヒロインに清にぃと恋仲になって欲しいものだ。最終的には1人の女性を選んで欲しい。兄のハーレム婚を妹は認めません。

 

「あのさ、あんたと綾小路さんはそれが素なの?」

 

「どういう意味だ?」

 

「いや、だってクラスで見る普段のあんたと真逆じゃない。無口で頼りないのが印象だったのに、今はよく話すし……それなりに頼りになるって言うか」

 

 なるほど、他の人から見ると今の清にぃはそんな印象なのか。一緒にいることが多くて結構話してるから、もっと一般的な生徒として清にぃは見られていると思ったけど、どうやらまだ他の人には根暗の部分が見えるらしい。清にぃは恵ちゃんに、今後接していく中で確かめればいいと答えた。

 清にぃとの話が終わったので今度は私の方へと体を向ける。次は私の番ってことね。

 

「どっちだと思う?」

 

「分からない。綾小路さんは普段通り変わらないけど、隠している気もする。でも違和感みたいなのも感じないから……やっぱり分からない」

 

 だよね。この性格も私なんだから。私は別に多重人格とかじゃない。ただ自分の中でスイッチみたいな物がある。きっとあのホワイトルームの中で生き残るために、私の精神に異変が起きたのだろう。どっちの状態の方が楽かって聞かれると返答に困る。だってどっちの私も私なんだから。

 

「今後のお楽しみってことだね」

 

「答える気はないって訳ね……それで、今日は顔合わせだけなの? 用件は無いの?」

 

 恵ちゃんがベッドの上で横になりながら清にぃに聞いた。因みに私はベッドの中央に腰を下ろし、清にぃは机の椅子に座ってコチラを向いている。

 

「用が無いとダメなのか?」

 

「はあ? 普通は用件があるから呼ぶものでしょ」

 

「ぶっ……」

 

「……? 何どうしたの綾小路さん?」

 

「ごめん。なんでも無い。続けて」

 

 私は思わず思い出し笑いをしてしまった。その時のことを思い出す。懐かしい、私にとって大切な思い出の1つだ。

 

『用が無いと話しかけたら変?』

 

『変。普通は用件があるから話しかけるものだよ』

 

『相変わらずだね。そんなことは無いでしょ──愛歌はどう思う?』

「──はどう思う? ねえ、綾小路さん聞いてる?」

 

 恵ちゃんに呼ばれて意識が引き戻される。追想はここまでにしておこう。今はそれよりもこの問題が先だ。意識は別のところにあったけど、2人の話は聞いていた。今回のプールで須藤くん、池くん、山内くんの3人が企んでいることだ。

 

「私もそう思うよ。えっちな目的だと思うよ」

 

「でしょ? その3人の企みなんてエロ目的以外無いって。それでどうすればいい訳?」

 

 清にぃが話を続ける。

 明日私と清にぃは、その男子3人と鈴音ちゃんに櫛田さんの2人、計7人で夏休みの期間限定プールに行く約束をしていた。元々私と清にぃと鈴音ちゃんの3人で行く約束だったけど、男子3人に誘われていた櫛田さんに助けを求めら(巻き込ま)れた。鈴音ちゃんはそれはもうかなり渋っていたけど、成長するんでしょ? と説得させ頷いて貰った。

 

「もしかしたら愛里ちゃん、佐倉さんも来るかも知れないから8人だね。今は返事待ち」

 

「うわぁ、4人ともご愁傷さま。体の隅から隅まで視姦されるのは確実ね」

 

「安心して。私はあれ着ていくから」

 

 私が指を()した方向に恵ちゃんが視線を向ける。そこには私が事前に買っておいた水色と青と白の三色で彩ったボタニカル柄の水着があった。

 

「ラッシュガード、ショートパンツ、タンキニ、ショーツにレギンス……男子に1ミリも肌見せる気ないじゃん。ウケるんだけど」

 

「やだなぁー。日焼けするのが嫌なだけですよぉ〜。体型も気になるしぃ?」

 

「うわぁムカつく口調。綾小路さんの体型でダメなら他の女子は死ぬしか無いじゃん。それはそうとこれなら安心ね。視姦されるのに変わりは無いだろうけど、まだマシね」

 

 そういうことだ。肌の露出を抑えてる理由で日焼けが嫌だと言えばいい。体型が気になるは流石に煽りとして捉えられるだろうからやめておこう。恵ちゃんの反応で確認してよかった。そもそもの話、なんで肌の露出を抑えた水着なの? って聞かれてる時点でだいぶ気持ち悪い。仲のいい男子が聞いてくる分には全然構わない。それもそもそも、仲が良かったら無人島で着たビキニを持っていく。思考が読まれたのか清にぃが丁度そのビキニについて触れて来た。

 

「でも愛歌、おまえ無人島の時はみんなの前でビキニを披露しただろ。なんで今になって抵抗があるんだ?」

 

「その時に視姦されまくったからでしょ。あんた兄なのにそれも分からないわけ?」

 

「いやそれもおかしいだろ。確かに事実、愛歌は兄のオレから見てもとても綺麗だと思う。普段、他人から見られるのは慣れてるだろ? 街を歩いたらすれ違った人全員が振り返るほどだぞ」

 

「だーかーら! あんたねぇ、女の子は繊細なの! 慣れてると言っても何も感じないわけじゃないんだからね!? しかも普段見せてるのは私服や制服! 水着は肌を見せることになるんだから」

 

「……そう言う物なのか?」

 

「あはは。恵ちゃんありがとう。清にぃさ、鈴音ちゃんによくコンパスの針で刺されるじゃん?」

 

 それに刺されていると頷く清にぃ。一方で恵ちゃんが「え、堀北さんそんなことしてるの?」って起き上がって引いていた。当然の反応だよね。一応凶器を使って傷つけている訳だから。私は続ける。

 

「じゃあ刺され慣れてるから、別に今後コンパスの針で刺されてもなんとも無い?」

 

「言いたいことは分かった。女子の中ではそれと同じ程度ってことなのか?」

 

 私と恵ちゃんは同時に頷いた。同じ程度かどうかは分からないけど、どっちも嫌なことに違いはないからね。話が脱線してしまった。明日のプールの話の続きに戻る。

 明日、恵ちゃんは私たちと別にプールに来て貰う。私たちとは合流せずに男子3人の企みを阻止するのが仕事だ。

 

「えー、それこそ綾小路さんがやればいいじゃん。なんでうちなのよ」

 

「一緒に遊ぶのに突然愛歌が居なくなったら不自然だろ」

 

「そんなのトイレとか適当に嘘つけばいいでしょ?」

 

「あいつらもそこまで……いやバカだから考える。バレたんじゃ無いのか? って。人は何か良からぬことをしてる時は色々敏感だからな」

 

 もしそうなった場合は、清にぃの知らないところでやるかも知れない。私に知られたと思った以上、兄である清にぃは次やる時は関わらせない方がいいと判断する可能性がある。

 注意したり気づかれたりして、知らない所でこんなバカみたいなことをされるよりも、こうしてやらせて失敗に終わった方がいい。今回は失敗したから次こそは! ってなったらその時は本気で脅しに行く。

 

「堀北さんとかは? 堀北さんなら自然に抜け出せるんじゃない? それに綾小路さんたち仲良いでしょ」

 

「あのな……堀北に知られてみろ。どうなると思う?」

 

「……あー、死ぬわ。3人とも」

 

「そういうことだ。それにオレが裏でこそこそしてることはなるべく知られたく無い」

 

「……? どうしてなの」

 

 その理由は鈴音ちゃんのことを完璧に信頼していないことだった。今の清にぃのそれが嘘か本当かは分からない。遠回しに、鈴音ちゃんよりも恵ちゃんの方が信頼できる、と清にぃは伝えている。恵ちゃんはそれが少し嬉しそうだった。

 

「今までのDクラスの快進撃も全部あんたのおかげってことよね」

 

「そうだよ。清にぃが鈴音ちゃんと私に指示を出していたんだ。そして私たちを経由して平田くんにもね」

 

 清にぃはそれに頷いた。全部指示されていた訳じゃ無いけど、恵ちゃんには清にぃが優秀だと思って貰う必要がある。清にぃが本当に自分を守れるだけの存在だと心の底から信じて安心して貰うためと、恵ちゃんが清にぃに依存して貰うためにね。しばらくは恵ちゃんの前で清にぃを持ち上げていくことになるかな。

 

「……アンタ何者なのよ」

 

「匿名希望の世紀末のピアニストとでも思ってくれ」

 

「なにそれ。あんたでも冗談が言えるのね」

 

 清にぃのピアノの腕はかなりのものなんだけどなぁ。恵ちゃんがいつかそれを知った時にギャップで惚れてそう。

 そして話し合いの結果、恵ちゃんは協力してくれることとなった。2人は下準備に行くらしい。私はこの後、明後日のことで打ち合わせがあるから学校へと向かった。

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 そして遂にこの日がやって来た。

 

「綾小路さん、おはよう」

 

 ロビーで待っていると鈴音ちゃんが姿を見せる。今日はDクラスのメンバーで思い出作りに遊びに行こうということで、女性陣からは私と鈴音ちゃんに愛里ちゃんと櫛田さんの4人が。男性陣からは清にぃと3バカトリオの3人が参加する。8人で仲良く期間限定のプールで遊びましょう……と表向きはそうなっていた。

 

「鈴音ちゃんおはよう。本当に来てくれるとは思わなかったよ」

 

「元々私たちは……その、遊ぶ約束だったでしょ? 綾小路さんが行くなら私も行くわ。仕方なくね」

 

「うっ、な、なんだよ。別に何もしてないだろ」

 

「そ、そうだぞ堀北。まだ俺たちは何もしてないだろ」

 

「ええ……まだね」

 

「うっ」「げっ」

 

 山内くん池くんが鈴音ちゃんに睨まれていた。この後、自分たちがやろうとしていることを思い出したのか、下手くそな口笛で誤魔化していた。鈴音ちゃんは男子陣が煩悩で埋め尽くされていると判断したのだろう。深いため息を吐いていた。

 それはそうと鈴音ちゃんも素直じゃないなぁ。まぁ、ツンデレが鈴音ちゃんらしいからこれがいいんだけどね。どの時代もツンデレはいいよね。分かる。

 

「あ、あの堀北さん……おはよう、ございます」

 

「ええ。佐倉さんおはよう。お互い今日は楽しめることを祈りましょう」

 

「は、はい!」

 

 愛里ちゃんの頭を撫でてあげる。偉い、よく自分から挨拶できました。えへ、って笑う愛里ちゃん。あーもう可愛すぎる。ペットとして私の部屋に飼おうかな? 養ってあげたい。そんなことをしつつ考えていると櫛田さんもやって来た。

 

「櫛田さんおはよう」

 

「綾小路さんおはよう。堀北さんと佐倉さんもおはよう。山内くんと寛治くんもね」

 

「おはよう」

 

「お、おはようございます」

 

「「おはよう! 櫛田(桔梗)ちゃん!」」

 

 これで女性陣は全員揃った訳だ。後は清にぃと須藤くんを待つだけ。それまで少しお話でもしようかな。

 

「櫛田さん体調悪いの?」

 

「え? なんで綾小路さん」

 

「いや何かいつもと雰囲気違うなって」

 

「あ、ちょっと考えごとをね。元気だから気にしないで」

 

 どうやら考えごとをしていたらしい。時折り無表情になるから気になってしまった。目もどこに焦点を合わせてるのか分からないし、心ここに在らずみたいな状態。心配するのは当然だ。私がずっと見ていたせいで櫛田さんは苦笑いを浮かべて、考えごとの原因を話してくれた。

 

「実は迷惑メールが来てて」

 

「桔梗ちゃんに迷惑メール!? 誰だよそいつは」

 

「い、1回だけだから落ち着いて寛治くん」

 

「誰か分からないから困ってるのでしょ。そんなことも分からないの?」

 

「まぁまぁ鈴音ちゃん。そう睨まないの」

 

 迷惑メールか。その単語に鈴音ちゃんと愛里ちゃんも反応する。2人とも経験したことあるよね。鈴音ちゃんほど綺麗な女性ならもちろん、愛里ちゃんはつい数ヶ月前に経験したばかりだ。私も実はたまに送られたり送ったりする。送る相手は主に清にぃだけど。

 

「それで少し参っててさ」

 

「もし酷いようなら学校側に報告するべきね。場合によっては送り主を見つけて、ペナルティを与えるでしょうから」

 

「その……危なくなったらすぐ先生に相談した方がいいと思います」

 

「堀北さんも佐倉さんもありがとう。もちろん綾小路さんも。もしもの時はそうするね」

 

 流石の鈴音ちゃんもこればっかりは心配してくれるみたいだ。愛里ちゃんなんかは怖い思いしてるから心配になるよね。櫛田さんも大変だなぁ、船上での『特別試験』が終わっても悩まされるなんて。可哀想になー。そんなことを考えるとエレベーターが開き中から清にぃが出て来た。

 

「やっと来たのかよ綾小路!」

 

「おせぇぞ!」

 

「集合時間までには来ただろ」

 

「ギリギリよ。エレベーターの混雑具合じゃ遅刻していた可能性もあるわ」

 

 清にぃが私の方を見て来た。何が言いたいのか伝わっている。どうしてこんなにイライラしてるんだって言いたいのだろう。あー、伝ってる伝わってる。清にぃのあの目は、このメンバーなら確かに鈴音ちゃんもイライラするだろうけど、私が居るから話し相手にでもなって気を紛らわせることができたでしょ? って言いたいんだよね。残念ながら私<他のメンバー、だったみたいだ。愛里ちゃんのことは別に嫌ってはいないと思うけど。

 最後の1人、須藤くんを待つけれど一向に来ない。痺れを切らした池くんが須藤くんを呼びに上へ上がって行った。2人を待っていると帆波ちゃんたち

 Bクラスの生徒たちが姿を見せる。

 

「あ、Dクラスのみんなだ。おはよう。みんなもプール?」

 

 挨拶を返した後、それに頷いた。どうやらBクラスも夏休み最後の思い出にプールに行くらしい。あの施設がプールとして解放してあるのは今日までだから行っておきたいよね。折角だからとみんなで遊ぼうと帆波ちゃんに誘われる。

 

「もちろんだぜ! みんなで行こう行こう!」

 

 山内くんが凄く嬉しそうにその場でジャンプしながらそう言った。

 私たちも断る理由もないのでその申し入れに頷き、元々私と清にぃと鈴音ちゃん3人で遊ぶ予定が、10人を超える大所帯となった。池くんは須藤くんを起こして連れて来たことで、目的のプールへと向かう。

 道中みんなお喋りしながら歩いており、櫛田さんと帆波ちゃん含むBクラスの3人、その後ろに池くんと山内くん、そして清にぃと鈴音ちゃんに須藤くん、私と愛里ちゃんの順番で横並びになっていた。周りに迷惑をかけないようにだけ気をつける。

 

「愛里ちゃん改めて今日は来てくれてありがとうね」

 

「ううん。私の方こそ誘ってくれてありがとう。楽しみだね愛歌ちゃん」

 

 この後のことを知っているだけに、愛里ちゃんが純粋に楽しめるか心配になってくる。いや決めつけるのは良く無い。愛里ちゃんだって成長してるんだ。もしかしたら本当に楽しめるかも知れないよね。

 前にいる清にぃたちの会話で、須藤くんがバスケ部で活躍してポイントを貰えたと聞こえてくる。バスケの調子は良さそうだ。

 

「あー……綾小路、今度また一緒にバスケやらねぇか?」

 

「え、私……?」

 

 久しぶりに須藤くんに話かけられて驚いた。突き放してから結構経つからもう大丈夫だろうって思ってたけど。少し悩む、ここでまた私に依存されても困る……だけど今は当初の目的通り、鈴音ちゃんへ意識を向けさせることに成功しているし、鈴音ちゃんのことをちゃんと好きだし大丈夫かな。須藤くんかなりの一途だよね。少し悩み過ぎた。須藤くんが誘わなければ良かったって、気まずそうにしている。その表情を見て分かった。私を誘ったのは関係の修復、お互いの間にある気まずさを取り除くためだろう。

 

「いいの〜? 調子いい時に私にボコボコにされて凹まない?」

 

 須藤くんが一瞬驚いた後、すぐに笑顔を浮かべる。本当に嬉しそうだった。

 

「誰がボコボコにされるって? 言っとくが俺の勝ち越しだからな」

 

「今までのは手加減してあげてたの。どっちが上かをはっきりさせてやる」

 

「へへ、おう。その時は全力でやるぜ」

 

 これで正解なのかな。須藤くんと愛里ちゃんも嬉しそうにしているし、鈴音ちゃんも一瞬だけ微笑んでいたような気がしたから大丈夫だよね。

 愛里ちゃんはどうやら私と須藤くんに距離が出来たのは、暴力事件の時、自分が早く証言しなかったからと未だに思っていたみたい。全然関係ないのに困った子だ。私は無言で愛里の頭を撫でた。

 

「な、なに?」

 

「ん? 可愛いなーって」

 

「え、え? なに、え」

 

 可愛いって言われたのが嬉しかったのか、少しニヤけながら照れている。やっぱり可愛い。この生き物は癒しだ。

 そんなこんなで目的地のプールへと着いた。既に中に水着を着替えて来ていた私は、ワンピースとカーディガンを脱いでしまいラッシュガードを着て、先に集合場所に指定された廊下へと来ていた。程なくして清にぃもやって来た。

 

「着て来たのか」

 

「うん。めんどくさいし帰りもこの格好でいいかなって」

 

「そうか。因みに軽井沢も到着しているみたいだ」

 

「そっか」

 

 清にぃがプールを見渡してここを娯楽施設だと言った。普段は部活動に使われているが、今では屋台とかが展開されていてお祭り騒ぎだ。恋人同士で来る者、男だけで来た熱い友情で結ばれた者、女子だけの華のあるグループ、私たちみたいにクラスで来たグループ、プールにいる人たちは様々だ。

 次にやって来たのは帆波ちゃんだった。でk──立派なスクール水着で相変わらず元気いっぱいだ。

 

「……ねえ、2人とも何か運動してたの?」

 

「「デジャヴだ()」」

 

「……?」

 

 帆波ちゃんが困惑していた。前にもこんな質問をツンデレ姫にされた記憶がある。

 

「何もしてないよ。私はジムとかで筋トレするぐらい」

 

「オレはランニングぐらいだな」

 

「えー! 本当に? 2人とも体立派過ぎない?」

 

「「親に恵まれたのかも」」

 

「……仕方にゃいにゃ〜、そういうことにしとくね」

 

 その後も帆波ちゃんと会話を交えつつ、みんな水着に着替えて揃ったことで移動した。

 プールの中は多くの生徒で居て私と面識のある先輩たちも沢山いた。すれ違う度に名前を呼ばれてみんなで立ち止まるので申し訳なくなってくる。こんなことなら帽子とサングラスとか持ってくれば良かった。最近こういうのが無いから完全に油断してた。この学校に来る前は、外に出かける時は必ず変装していたのに……まだ一般人なのに変装してるのもおかしいけど。それだけ私から放たれている魅力は凄いということなのだろう。

 するとまた声をかけられた。ただ今度は私にでは無く帆波ちゃんにだった。声をかけたの帆波ちゃんと同じBクラスの柴田くん。男子生徒2人を連れていて、1人は私たちも面識のある神崎くんだ。話し合いの結果、彼等も加わり14人となる。サッカーできちゃうね。3人交代で全員プレーできる。

 

「そっちも来てたんだな愛歌」

 

「神崎くんおひさ。すれ違ったりはしたよね」

 

「ああ。こうして話すのは久しぶりだな」

 

 ああ、イケメン。素晴らしいイケメン。目の眼福になります。因みにジロジロ見ては失礼なので、あくまでも視界の端で堪能している。だから私は決して池くんたちと同レベルじゃない……誰に言い訳してるんだろ。大勢で移動を再開すると、向こうから女性の黄色い声援が聞こえて来た。声のする場所にはプールでバレーが行われていた。

 あー、そう言えば誘われてたっけ。南雲先輩のサーブを打つ姿を見て思い出した。

 

「あの人はね、2年Aクラスの南雲雅先輩。生徒会で副会長を務めてて、女の子に人気なんだよ。ね、愛歌ちゃん」

 

 みんなが気になっていた人物の紹介を帆波ちゃんがしてくれた。南雲先輩の話題はあまり振らないでほしいんだけど。

 

「そうだね。悪い噂もあるけど」

 

「……悪い噂?」

 

「気にしないで鈴音ちゃん。わざわざ人の悪いところを風聴して回るつもりはないから」

 

「聞くなってことね。分かったわ」

 

 大人しく引き下がってくれた。聞き取れたのが隣にいる鈴音ちゃんだけで良かった。他の人にも聞かれていたら話さないといけなかっただろうし。帆波ちゃんが南雲先輩の紹介を続ける。

 

「そして次期生徒会長として期待されているらしいよ。文武両道、絵に描いたような秀才なんだって」

 

「そう。でも今の生徒会長の方が優秀だと思うわ。何せ歴代最高の生徒会長と評価されているもの」

 

 鈴音ちゃんが生徒会長って言葉に反応して、張り合い出した。このブラコンめ、いいよ、続けて。ブラコンは見てて癒される。妹はいつだってお兄ちゃんが1番なんだ。教えてあげちゃって。

 帆波ちゃんと鈴音ちゃんが言い合いをしていると、清にぃが私の方へやって来た。私と清にぃは少しだけグループと距離を空ける。

 

「実際のところどうなんだ」

 

 南雲先輩がどこまでやれるか、って話だよね。優秀なのは間違いない。今の1年生では勝てないよね。坂柳さんとはまだ会えてないから判断できないため、彼女は除くけれど、葛城くんと帆波ちゃんはもちろん、龍園くんでもまだ勝てないだろう。当然経験の差もあるけどね。

 

「堀北生徒会長の方が手強いよ。ただ組織として捉えるなら2年で圧倒的な権力を持つ南雲先輩の方が厄介」

 

「他のクラスを手中に収めているわけか」

 

「それも全クラスね」

 

「……なるほど、確かにそれはめんどくさいな」

 

 清にぃと会話が終わったタイミングで、人を掻き分けて鈴音ちゃんが私の方へやって来た。何事かと思っていると目の前で立ち止まる。

 

「一之瀬さん生徒会に入ったそうね。知っていたのかしら?」

 

「え、あ、うん。もちろん知ってる──いあい、あなして」

 

「報連相! 客船の時も言ったわよね? 事後報告はしないって誓うと!」

 

 鈴音ちゃんに両頬を思いっきり引っ張られる。めちゃくちゃいたい。謝っているけど鈴音ちゃんは離してくれなかった。

 

「ま、待って堀北さん! 私はまだ入ってないから!」

 

「……どういうこと?」

 

「生徒会入りは決まったけど、正式にメンバーになるのは二学期なの! だからまだ生徒会メンバーじゃないから! 愛歌ちゃんを離してあげて?」

 

「……そうね、それなら事後報告じゃないわ。でもここで一之瀬さんが報告してなかったら事後報告になっていたから罰よ」

 

「あ、明日1日残ってるもん!」

 

「今日の今日まで私に言うの忘れてたのに?」

 

 ごめんなさい。これ以上は鈴音神を怒らせてはいけない。祟られてしまう。帆波ちゃんが苦笑いを浮かべていた。

 折角ならと私たちもプールでバレーをやってみようと言うことに。鈴音ちゃんが乗り気じゃなかったけど、帆波ちゃんが煽ったことと、昼食を賭けて勝負をすることにやる気を出してくれた。ただBクラスが6人、Dクラスは8人だ。愛里ちゃんが見学したいと申し出たので、こっちはローテションを組むことにした。

 

「よし、やるか!」

 

 須藤くんが凄いやる気を出していた。Dクラスの中でもその運動神経の良さは群を抜いている。期待できるね。

 

「なあ須藤、バレーの経験はあるのか? 因みにオレは無い」

 

「授業は昼休みに少しやったぐれぇだ」

 

「おいおい大丈夫かよ健」

 

「任せろ寛治。バスケは全てのスポーツに通ずる。つまりバレーはバスケ、バスケはバスケってことだ」

 

 なにそのローマみたいなノリ。

 そんなやる気十分の須藤くんのおかげで、始まったプールバレーは私たちが先制点だった。喜びで雄叫びを上げる須藤くん。ゴリラみたい。

 

「綾小路! 行ったぞ!」

 

 え、私? あ、清にぃの方向、あ、取れなかった。

 すぐに取り返されて同点に並ぶ。清にぃが須藤くんと鈴音ちゃんに怒られていた。2人ともちょっとやる気出しすぎじゃない? 

 それにしても帆波ちゃんと櫛田ちゃんの胸が凄いことになってる。それを堂々と凝視している池くんと山内くん。そして周りにバレないようにこっそりみる清にぃ。もう、男の子なんだから、ってやつだね。

 

「綾小路さんやる気あるの?」

 

 鈴音ちゃんに叱責されてしまう。

 

「あなた運動神経はいいでしょ」

 

「悪くは無いと思ってるよ」

 

「なら点をとって欲しいものね」

 

 どうやら鈴音様は点をご所望らしい。身体もそろそろ水の中で動くのに慣れて来た。私が慣れたってことは清にぃはもう動けるよね。清にぃにアイコンタクトを送る。首を横に振られたけど私はダメって伝えた。少しだけ面倒くさいって口が動いてたけど、清にぃも承諾してくれたことだし……1点だけ奪いに行きますか。

 

「……っ! 愛歌ちゃんが動いた! みんなしっかりボール見て!」

 

 帆波ちゃんがそう指示を出す。本当にボールを見てからでいいの? 

 私は翔ぶ。何の躊躇もなくスパイクを行う。ボールは私のところにまだ来てない。陽動だとBクラスは判断した……が次の瞬間、私の手はボールを捉えていた。そしてそのボールはBクラス側のコートへと叩きつけられ水が弾け飛ぶ。

 

「……え、え!? 何今の!? 愛歌ちゃんが……え!?」

 

 帆波ちゃんが驚いた声をあげている。

 

「今の凄すぎないか!? 愛歌ちゃんが先に飛んでスパイクのモーションに入って、そのスパイクの打点に綾小路のトスしたボールが丁度来るなんて……やばすぎだろ!?」

 

 丁寧に山内くんが全部説明してくれた。なるほどこれが例の速攻か。まさか成功するとは思わなかったよ。清にぃは何しても天才なんだね。清にぃはクラスみんなから問い詰められていた。ドンマイ清にぃ。

 

「……やっぱりあなたたち、隠してたのね」

 

「鈴音ちゃん違うってば。たまたまだよ。兄妹の絆が成せる技だね」

 

「またそうやって──」

 

「──あ! 山内くん交代しよっか! はいどうぞ!」

 

 身の危険を感じた私はプールから出て山内くんと入れ替わった。危なかった。あともう少しでヤられるところだったね。愛里ちゃんの隣に座って観戦をする。今度は清にぃが鈴音ちゃんに問い詰められていた。私が居なくなったことで次の標的に選ばれたのだろう。心の中でちゃんと謝っておく。ごめんね。

 

「……愛里ちゃん私ちょっと行ってくるね」

 

「え、何処に?」

 

「ほらあそこ。不審者見えるでしょ? 私のこと呼んでるから」

 

「あの人はさっきの生徒会の……あ、愛歌ちゃん」

 

「大丈夫! すぐ戻るから」

 

 私は愛里ちゃんにそう言い残して、南雲先輩の下へ駆けつけた。あのまま放置してたら後で何されるか分からないしね。

 

「よう。見てたぞ、凄い速攻だったな」

 

「それはどうも。何か御用ですか?」

 

「俺の誘いを断ったおまえが居たから見てただけだ。友達たちと来る予定だったのか。てっきり予定があるって言うのは嘘だと思ってたんだが」

 

「私のこと好き過ぎません? 南雲先輩ほどの人でしたら、予定がない限り断りませんよ」

 

「そうか? なら次空いてる日を教えろ。特別に合わせてやる」

 

「あー残念、2年先まで予定が埋まってました。ごめんなさい」

 

「そいつは残念だ。人気者は大変だな」

 

 南雲先輩とプライベートで会うとなるとコチラも色々準備しないといけない。堀北生徒会長との約束もあるし、せめて堀北生徒会長が卒業するまでの間は南雲先輩と関わるのは細心の注意を払うことにしていた。

 

「帆波を生徒会に入れたことに怒ってんのか?」

 

 どうやら私の付き合いの悪さを、帆波ちゃんを生徒会に入れたせいだと思っているらしい。本当は違うけどそれを利用させて貰おう。

 南雲先輩が続けて、1年生が私1人だと可哀想だったからと言ってきた。たった今思いついた嘘だろうね。

 

「生徒会入りしたことに不満はありません。入る条件で出したことに問題がありますよね」

 

「……帆波から聞いたのか?」

 

「帆波ちゃんが言うと思いますか?」

 

「どうやってそれを知った」

 

「さあ? どうしてでしょう。盗聴器でも万引きして仕掛けてあったかも知れませんね」

 

「ちっ。全部聞いてやがったか」

 

 南雲先輩が舌打ちをして面倒くさそうにしていた。当然私はそれを聞いてはいない。ただ知っているだけだ。情報というのは本当に素晴らしいよ。

 

「別にそこまで問題ではないでしょう。それを私が知ったところで南雲先輩が何か不都合があるとは思えないのですが」

 

「形はどうあれ俺のミスで帆波の弱みをおまえは知った。その事実にムカついただけだ」

 

「随分と自分に厳しいことで」

 

 どうやらこの話題はここまでらしい。南雲先輩の視線の先では、まだ私たちDクラスとBクラスのプールバレーが行われていた。もうそろそろ決着つくかな。

 

「アレが愛歌の兄か」

 

 どうやら南雲先輩は清にぃのことを見ていたようだ。それに頷いて私も清にぃの方へと視線を向けた。どっからどう見ても平凡。何も感じられず、何処にでも居るような生徒に見えた。

 

「さっきの速攻、スパイカーだった愛歌も凄いが……それに合わせた愛歌の兄の方が求められる技術レベルがレベチだ。おまえたち兄妹は恐ろしいな」

 

「そうなんですか? 清にぃがただボールを、ぶんって放ったやつを私がタイミング合わせて打っただけですけど」

 

「俺にそんな誤魔化しがきくかよ。堀北先輩が卒業しても楽しみがありそうだ」

 

「清にぃに手を出す時は退学を覚悟してください」

 

「はっ、おっかねぇな。このままだと刺されそうだ。俺もそろそろ戻るとするか」

 

 南雲先輩はそう言って一緒に来ていると思われている集団へ帰って行った。ちょうど試合の決着もついたみたいで私も戻る。結果は私たちDクラスの勝利だそうだ。約束通りランチをBクラスから奢って貰うことになったけど、試合で全然参加しなかった私は遠慮した。愛里ちゃんも見てるだけだったので遠慮するとのことだ。帆波ちゃんはそれでもと言ってくるのは目に見えてたので、最初から強い意思表示をして断った。こちらの思いを察してか、帆波ちゃんは笑顔を浮かべて「なんか悪いね」と言ってくれた。気持ちだけで十分だよ。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 空が赤くそまり閉館時間が近づいていることを知らせる。混み出す前に帰ることが決まり、オレたち一向は更衣室へと向かっていた。その向かう最中、オレと愛歌はこっそりと抜け出し軽井沢と待ち合わせした場所へとやって来た。少しして軽井沢の姿が現れる。どうやら無事に回収し終えた様だな。

 

「お疲れ様、恵ちゃん」

 

「いやぁー、ほんとしんどかった」

 

「悪いな助かったぞ」

 

 軽井沢のために買っておいた水を渡す。それがまだ未開封のものであると確認し、軽井沢はキャップを開けて水を口の中へと流し込んだ。

 

「うげ、温い」

 

「この暑さの中、手で持ってればな。それに温くはないだろ」

 

「もっとキンキンのやつが良かったの。それにしても本当にバカよね。犯罪よ? 犯罪。女子の着替えを盗撮、録画するなんて」

 

 軽井沢の言う通りだ。あの3人、主に山内と池がやろうとしていたことは立派な犯罪行為であり、バレれば一発退学待ったなしだっただろう。

 

「プールは楽しめたか?」

 

「楽しめるわけないでしょ。それに」

 

 軽井沢はそう区切ると警戒するように周りを見渡す。どうやら平田と付き合っていることを知っている生徒に、この状況を見られるのではないかと危惧しているのだろう。愛歌もいるから問題はないはずだが……それともまた昨日みたいに女子には色々とあるのか? そこら辺はまだまだ分からないな。

 

「それで、今後はどうするの?」

 

「どう言う意味だ?」

 

「Aクラスに上がるつもりなんでしょ? 次に向けて何か策があるんじゃないの? ほら、干支の試験みたいに櫛田(・・)さんが裏切(・・)っても『優待者』を報告させないように綾小路さんが櫛田さんへメールをおくらさせたやつとか」

 

 そう言うことか。次の『特別試験』が何なのか分からない以上、やれることは限られてくる。次からはCクラスをメインに相手をすることになるな。ここら辺で1度誰か退学者を出して、そのペナルティの把握をするのも悪くない。幾つか頭の中でプランを考えるが、今ここで決めることでもないので考えるのをやめる。軽井沢には敢えて今後の方針を幾つか話すことにしよう。

 

「1度Dクラスを放置する予定だ」

 

「どう言う意味?」

 

「今の堀北には1度心を折れて貰う必要がある。だからオレは次の試験、内容がどうあれ手を出さずに静観するつもりだ」

 

「え、ちょっと待ってよ。それでDクラスから退学者が出たらどうするの?」

 

「それでもいいと思っている。そろそろ退学者が出た時のペナルティが知りたい。他クラスでも構わないが、Dクラスから退学者が出る時は人によっては見殺しにする」

 

「そ、そんな……綾小路さんはそれでいいの?」

 

 軽井沢が愛歌へ振り返る確認するが、愛歌は笑顔で頷いた。オレの方針に従うと。

 

「あんたたち、やばすぎ」

 

「今更でしょ恵ちゃん。それに──プールに来たんだし、折角だから楽しもう!」

 

「え、キャッ!?」

 

 愛歌が軽井沢に抱きついてそのままプールの中へ飛び込んだ。軽井沢が短い悲鳴を上げながら水の中へと消える。軽井沢もオレや愛歌同様にラッシュガードを着ており、プールで着用したまま泳いでいいとも許可が降りている。問題はないだろ。

 水の中から顔を出した軽井沢が何回か咳き込んだあと、愛歌へ文句を言った。愛歌はそんな軽井沢を見て笑顔を浮かべるだけだ。軽井沢は呆れたのか苦笑いを浮かべる。2人はプールサイドに腕を乗せ、ぷかぷか浮かんでいた。

 

「平田くんにも相談するんでしょ」

 

「いや、しない。あいつは性格上、他クラスでも退学者が出ないならこれに越したことはない、と考えるタイプだ。こんなことを話しても無意味だろ」

 

「そうだね。無人島の時に私と伊吹さんのことで話したけど、伊吹さんを庇おうとする姿勢には流石に呆れたよ。まあ、平田くんの過去が過去なだけに仕方ないのかも知れないけど」

 

 夏休みのバカンスから帰ってきた時に軽井沢から教えてもらった平田の過去、それは平田の友達が学校で飛び降り自殺を図ったことだ。自殺をしようとした理由は虐めによるもの。平田がDクラスへ配属された理由は間違いなくこれに関連した何かだ。自分の友達が自殺を図ったからDクラスに振り分けられたなら、この学校の判断基準を疑う。高円寺や堀北の言う通り、学校側が測りきれてない部分があることになる。だが平田自身がその友達を虐めていたら? それならDクラスだった理由も納得が行く。もちろんそうとは限らないが、その可能性もある以上、平田洋介を信用することはできない。

 

「そろそろ戻らないと探しにきそうだな」

 

「清にぃ私は別で帰るって伝えといて。恵ちゃんと帰るよ」

 

「私は別にいいわよ1人で」

 

「恵ちゃんと仲良くしたいの。それに1人で帰ってる時に何かあったら守れないでしょ? だから清にぃは私にも教えたんだよ。同性なら清にぃの見えないところでも守れるから」

 

「そう言うことだ。じゃあ、軽井沢のことは任せたぞ」

 

「うん。またね。みんなにもありがとうって」

 

「そこまで言うなら……わかった。ありがとう、2人とも」

 

 こうしてまた1日が終わる。オレは軽井沢から受け取ったメモリーチップを落とさないように仕舞い(・・・)、更衣室へと向かった。着替えている最中、色んなところから同時に学校側からのメールを知らせる、携帯端末の受信音が鳴る。オレはそのメールを開いた。

 

「……そうか、遂にか」

 

 

『──高度育成高等学校に在住の皆様へご連絡です。明日、午後4時00分に高度育成高等学校並びに生徒会から重大な発表があります。メールの最後にURLを添付してありますので、詳しく知りたい方はそちらをご覧ください』





次回は17日の0時00分に更新です。やっとここまできました…すごい駆け足

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