綾小路清隆の妹として、全力で支えます   作:ぐれーぷ

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7限目〜鈴音ちゃんは私のですから〜

 

 

 さて。現在赤組が優勢な状況な訳だけど……正直Dクラスの士気は良いとは言えない状況だ。

 須藤くんをはじめ、運動部員の生徒たちは着実と好成績を残せているが、他の生徒たちの結果が残念な状態になっている。

 例えば池くんや山内くんは5位や7位といった最下位争いをしている。女子で言えばみーちゃんや愛里ちゃんがそうだ。良くても4位。上位入ることは出来ずにいた。

 そして……必ずCクラスの生徒には勝てずにいる状況。

 

「清にぃ。やっぱり駄目だったね」

 

「そうだな。予想できた結果だ」

 

「冷たいね〜。教えてあげればよかったのに」

 

「おまえが教えればよかっただろ? でもしなかった。つまりそういうことだ」

 

 そうね。今の鈴音ちゃんには1度挫折を経験するべきかも知れない。この先、龍園くんを相手に今の考え方とやり方じゃ勝つなんて無理。

 そしてそれは龍園くんだけにじゃない。総じてDクラスの上位互換である帆波ちゃん率いるBクラス。全てにおいて高水準の能力を持った坂柳さんたちAクラス。

 当然DクラスがAクラスに上がるためには、この3クラスを下す必要がある。考えるだけでも前途多難だ。

 このクラスはAクラスに上がるだけのポテンシャルを秘めいている。けれどリーダーの鈴音ちゃんも生徒たちも、まだまだ未熟だ。

 

「あーあ、鈴音ちゃん。またあの2人とだ」

 

 今行われている2種目めの競技はハードル走。

 鈴音ちゃんの組にはCクラスから矢島さんと木下さんがおり、陸上部の2人だ。

 最初の100m走こそ鈴音ちゃんは1位だったが、ハードル走となると話は変わってくる。

 普段日常の中、部活で経験している2人と違って、鈴音ちゃんは慣れていない。

 私と清にぃの予想通り鈴音ちゃんは3位。惜しい結果となった。

 

「2人とも何見てんの?」

 

 そう声をかけてきたのは千秋ちゃんだ。

 

「鈴音ちゃんだよ。毎回相手がCクラスの強敵だねって」

 

「それにしても愛歌よく気づいたな」

 

「ふふ。鈴音ちゃんは私のですから」

 

「いやアンタのじゃないでしょ」

 

 千秋ちゃんに即否定されてしまった。

 それにしても清にぃも頑張るよね。千秋ちゃんからも疑われないために、私が先に気づいて教えてもらった……って遠回しに伝えるんだから。

 こういう細かいところでいつも情報戦を行なっている。徹底してるよね。

 

「堀北さんずっと運悪いね。どう思う2人は?」

 

「運が悪くて可哀想だと思うよ」

 

「まあ、流石にそう何度も続かないだろ」

 

「本当に釣れないなぁ」

 

 千秋ちゃんからの探りを流しつつ、次の競技に注目する。

 次の競技は男子たちのみで行われる『棒倒し』。シンプルかつ、過酷な競技だ。

 

「……愛歌」

 

 移動する直前、清にぃに呼び止められる。

 アイコンタクトだけ交え、体育祭が始まる前に話し合っていたことを思い出した。

 さりげなく周りを見渡し、今がその状況であることを確認できた私は清にぃに1度頷き行動する。

 

「平田くん少しいい?」

 

「綾小路さん? 何かあったの?」

 

「これから何か起きるってとこかな。次の棒倒し、きっと龍園くんは何かしてくる。気をつけてね」

 

「……うん。そうだね。忠告ありがとう。気をつけるよ」

 

 そんなに深刻そうな顔をする必要はない気もするけれど……平田くんは力強く頷いて移動を再開した。

 

 さて。私はどうしたものか。

 鈴音ちゃんも帰ってきてはいるが、近づき難い雰囲気を纏っている。

 自分の結果を出せていないこと、何度も強敵と同じ組み合わせになり、焦りを感じているのだろう。

 普段の私ならここで鈴音ちゃんに声をかける……だけど今回の体育祭、私は鈴音ちゃんを1度突き放す。

 私から声をかけ元気づけることはせず、鈴音ちゃんから声をかけられても必要最低限の会話しかしないつもりだ。

 それに、私が鈴音ちゃんを避けていることはもう本人も気づいているだろうから、話しかけてこないかな。

 

「うわぁ、須藤くん可哀想」

 

 いつの間にか隣にいた千秋ちゃんそう呟く。

 私も視線を競技の方へと移すが、須藤くんが見当たらない。

 

「さっき倒れたから、多分そのまま色んな生徒たちから踏まれていると思うよ」

 

「だから見えなかったんだね。可哀想に」

 

「怒らないといいんだけどね」

 

 そう心配する私たちだったが、案の定須藤くんは怒りを露わにしていた。

 だけど堪えようと頑張っているのも遠目で分かり、周りには清にぃも平田くんもいたため、問題は起きないだろう。

 結果的に『棒倒し』はAとDクラスの赤組の負け。BとCクラスの白組の勝ちだ。

 少しづつ不穏な雰囲気がDクラスを包む。しかし時間は待ってくれない。次の競技だ。

 次は『玉入れ』。私たち女子のみで行われる競技だ。

 

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 男子の『棒倒し』女子の『玉入れ』男子の『綱引き』が終わり、障害物競走の最終レースで須藤が1位を取った。

 因みに最下位を取った男子生徒は須藤からお叱りを受けることになっている。障害物競走でオレは3位でゴールし、ビリを回避したので須藤から怒られずに済んだ。

 一方、池は見事に最下位でゴールし、須藤からお叱り(デコピン)を受けていた。池どんまい。次は頑張れよ。

 

「──さっきも見た展開だな」

 

 男子が終わると今度は女子が障害物競走となる。

 今走っているのは堀北であり、またしてもCクラスの木下と矢島の2人が偶然にも同じ組み合わせだった。

 だが、次もこの偶然が続くならそれはもう偶然ではない。分かっていたことだが、やはり櫛田は龍園にDクラスの情報を売る選択をしたか。

 

「っ! 堀北さん!」

「堀北!!」

 

 平田と須藤が同時に堀北の名前を呼ぶ。

 Cクラスの木下と堀北が衝突し共倒れになった。

 その結果堀北は後続に抜かれて7位。一方の木下は競技続行不可能と判断し、最下位となった。

 

「平田悪い。堀北の様子を見に行ってきてもいいか?」

 

「うん。勿論だよ。僕も行きたいけど……ここで待ってた方が良さそうだね」

 

「そうだな。堀北の性格上、多人数に囲まれるのは嫌がるだろう」

 

 次の二人三脚のペアである平田に断りを入れ、テントへ帰ってきた堀北の元へと駆け寄った。

 歩き方から見るに負傷しているのは明らかであり、この後の競技にも支障を来すのはまず間違いないだろう。

 

「堀北、その足じゃ無理だ」

 

「綾小路くん……確かに少し痛むわね。けれど競技に出れないほどじゃ──つッ!?」

 

 オレが前触れもなく堀北の怪我をしたと思われる足の部位に軽く触れてみると、大袈裟とも思えるほどに身体を震わせた。

 これが大袈裟で無いのであれば、明らかに競技に影響が出る……いや、この後の競技全てをキャンセルし回復に努めるべきだろう。

 

「この足で出るのか?」

 

「……我慢はできるもの。必ず結果を出すわ」

 

「とても結果を出せそうには見えないけれどな」

 

「しつこいわね。私の心配より自分の心配をしたらどうかしら? あなた、私以下の成績でしょう?」

 

「オレの分も愛歌が頑張ってくれるさ」

 

 今行われている女子の障害物競走へ視線を移す。オレに釣られ堀北も今走っている女子たちを見る。その中には愛歌の姿があった。

 

「……2位」

 

 ゴールした愛歌の順位を見て堀北がそう呟く。

 

「流石だな。安定して上位に入ってるな」

 

「そうかしら? 安定してるのは認めるけれど、流石かどうかは頷き難いわね。手を抜いているように見てるのは私だけかしら?」

 

「そうか? 兄目線では、一生懸命頑張ってる妹に見えるけれどな」

 

「あんな笑顔で走ってて? 随分余裕そうね」

 

「お前のその理論だとBクラスの一之瀬たちの生徒の殆どが手を抜いて挑んでいることになるな」

 

「はぁ……もういいわ。私の負けよ。少し休ませて」

 

 勝ち負けは特に無かったが、あの堀北がすんなり自分の負けを認めるなんてな。こちらが思っているよりも辛いのだろう。

 堀北が椅子に腰を下ろしたのでオレも隣に座る。

 

「実はさっきの障害物競走、少し引っかかってることがあるわ」

 

 そう切り出した堀北の話をオレは黙って聞く。

 

「私と衝突したCクラスの木下さん……走っている最中、背後から何度も名前を呼ばれたのよ。最初は無視していたのだけれど、あまりにもしつこいから振り向いて様子を見ようとしたら……」

 

「衝突してお互いに怪我をしたってことだな?」

 

 堀北は頷く。

 

「その話が本当なら悪意のある接触かも知れないな」

 

「綾小路くん、まさかあなた……私がしょうもない嘘を吐くとでも?」

 

「そうとは言っていない。あくまでも第三者の意見として述べただけだ。オレ個人としては堀北の言ったことを信じている」

 

 仮に堀北がその事実をオレに語っていなかったとしても、知っていたことだがな。

 

「愛歌ちゃんおかえり! 2位凄いね!」

 

「頑張った甲斐があったよ。後もう少しで1位いけそうな気はしてたんだけどね……」

 

「次頑張ろう!」

 

 競技から帰ってきた愛歌がクラスの女子と話している。堀北が怪我をしていることは気づいているだろうに、こちらに視線を向ける素振りすら見せない。

 

「……喧嘩でもしたのか?」

 

「なんのことかしら?」

 

「いいや。心当たりがないならいいんだ」

 

「……」

 

 堀北の表情は優れない。やはり愛歌との間で何かあったのだろう。そう言えば今朝一緒に登校したっきりで、その後2人が話している所を1度も見ていないな。

 

「こんな時、須藤くんは頼りになるわね」

 

 堀北がそう呟く先では、池とペアを組んだ須藤が二人三脚を1位でゴールした。池は半ば須藤に引き摺られるような形でのゴールだったが。

 

「確かにそうだな。オレたちのクラスの中で1番の身体能力の持ち主だからな」

 

「高円寺くんを除いて、ね」

 

 高円寺の実力は正直未知数だ。1学期最初にあったプールの授業の時、そして無人島試験での単独行動、この2つしか判断する情報がない。

 

「説得したんだってな」

 

「知っていたのね。結果は徒労に終わったわ」

 

「そんなことは無いと思うぞ」

 

「そうかしら? 綾小路さんなら説得出来たと思うのだけれど」

 

「今回は愛歌にも無理だったんだろう。もしできるならとっくにしている」

 

「……そうだといいのだけれど」

 

「何か引っ掛かる点でもあるのか?」

 

 オレがそう聞き返すと堀北は少し顔を伏せ黙る。

 

「……綾小路さんが失望したという可能性があるわ」

 

「なに? 愛歌が誰に失望したんだ。高円寺にか?」

 

「それは──」

「綾小路くん、そろそろ競技に行かないと」

 

 堀北が何か言いかけた所で、オレは平田に呼ばれた。次に出場する競技の二人三脚のオレたちの番が近くなったようだ。

 

「悪い堀北。続きは後で聞く」

 

「いいえ。結構よ。それよりも平田くんと走るのだから、1位を獲ってきなさい」

 

「無茶なことを言うな」

 

 オレはそう言い残して平田の元へと駆け寄った。

 

「綾小路くん取り込み中ごめんね。実は綾小路さんから──」

 

「──なるほどな」

 

 どうやら平田がさっきオレを呼んだのは出番が近づいたからではなく、愛歌からの指示のようだ。

 それなら平田の行動も納得がいく。コイツは人が会話している最中に突然、中断させるような事はしない。

 そしてあくまでもこれは推測だが、堀北と愛歌のことで疑問が解けた。堀北と愛歌の間には何も起きてなかった。そう何も無いから今の堀北は苦しんでいる。いつもは愛歌から堀北へ歩み寄ったが、それが無い今堀北は避けられていると感じているだろう。

 

「……踏ん張り所だぞ堀北」

 

 オレはそう小さく呟き、平田と共に二人三脚へと臨んだ。





かなり短いです汗
最後まで読んで下さりありがとうございました。
次回結構飛んで、後2話で体育祭編は終わりたいと思ってます。

次回もよろしくお願いします。感想、お気に入り登録お待ちしております
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