綾小路清隆の妹として、全力で支えます   作:ぐれーぷ

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8限目〜なんでもは知らないわよ。知っていることだけ〜

 

 

 二人三脚の種目が終えると10分間の休憩が挟まれた。手洗いに行くなど、自分のコンディションに異変は起きてないから確かめる時間。

 その10分の休憩時間が終わると、今度は先に女子から競技を消化して行く。

 私たち女子の種目は騎馬戦。

 私が騎手を務め支えてくれるのは、篠原さんと佐藤さんに千秋ちゃんのメンバー。

 3人はよく一緒に行動しているため連携は取れていた。

 

 でも結果は私たちのとこ以外は全滅。辛い結果になってしまう。

 敗因は鈴音ちゃんが執拗に狙われ士気の低下……何よりAクラスとDクラスとは違って、BクラスとCクラスは戦略を練ってから挑んでいたことが大きい。

 鈴音ちゃんはかなりショックだったみたいで悔しさを隠せずにいる。

 テントのベンチに座り頭を伏せタオルを被っていた。

 

 

「……ねえ、本当にこのまま放置するつもり?」

 

 そんな鈴音ちゃんを放置していると、現状Dクラスの状況を見かねたのか千秋ちゃんに声をかけられた。

 

「うん。何もしないよ」

 

「約束が違うんだけど」

 

「約束は守ってるよ」

 

「私が真剣にやったら結果を出すって約束したよね?」

 

「そんな約束した覚えはないけど……仮にしたとして、私結果ちゃんと出してるよ?」

 

「いやいや、私より1位少ないじゃない」

 

「1位は確かに少ないけど、全ての競技で上位3位以内には入ってる。これで結果を残せてないって不満をぶつけてくるのは、流石に千秋ちゃん酷いと思うけど?」

 

「……はぁ。確かにね。ごめんね愛歌。思ったよりも熱くなってるみたい」

 

「ううん。気にしないで。私も千秋ちゃんの期待に100%応えてあげれなくてごめんね」

 

 

 千秋ちゃんが焦る気持ちは分かる。

 この体育祭でクラス1位を取るために本気を出してるのにクラス全体が結果を残せていない。

 もどかしくなる気持ちもあるが、今後の女子グループでの関係にも変化が生じるため、やるからには中途半端な結果で終わりたくないんだろうね。

 男性と違って、女性社会ではそこら辺に敏感なのだ。

 

 

「それはそうと……龍園くん上手すぎない?」

 

 

 先ほどから平田くんがハチマキを掴もうと何度も手を伸ばすが全て躱していた。

 遠目で見てる分にはそう見えるけど、龍園くん小細工してるんだよね。

 

 

「もう何回目? 平田くんがそう何度も失敗するとは思えないんだけど」

 

「龍園くんのことだからハチマキに何か仕込んでそうだよね」

 

「うわ、せっこ」

 

「そうでも無いと千秋ちゃんの言った通り、あんなに接近してるのに何度も失敗するとは思えないよ」

 

「何か仕掛けてくるとは思ったけど……それに絶対また須藤くん煽られてるでしょ。須藤くんはこの体育祭で、私たちのクラスの強みでもあり弱点でもある選手だからね」

 

 

 須藤くんが活躍することは結果を見る前から分かる。

 それはDクラスは勿論、他クラスもそう。

 そして同時に須藤くんが機能しなかった場合、Dクラスの士気が下がり辛い戦いを強いられることも全クラスが分かっているのだ。

 

 だからこそAクラス率いる葛城くんたちも、須藤くんたちを助けに行こうとする。

 当然それも予想できる範囲なので、龍園くんは対策を打っていた。

 Bクラスの騎馬隊に行手を阻まれて応援に行けずいるね。

 

 

「そろそろ終わるよ愛歌」

 

「……あーあ、負けちゃった。ずっと龍園くんたちにやられっぱなしだね〜。綱引きこそ勝てたけれど、あれも素直に喜べない感じみたいだし? おにぃ怪我とかしてないかな? 心配」

 

「確かに結構激しくぶつかり合ってたし心配だね」

 

 

 競技が終了し密集していた生徒たちが離れていく。

 見えやすくなったことで兄の無事をひとまず確認できてほっとした。

 ただ須藤くんがかなり苛立っているのが遠目でもわかるね。

 

 

「あちゃ、遂に我慢の限界を超えたっぽい。おにぃと平田くん今の須藤くんを止めきれるかな?」

 

「龍園くんに襲いかかりそうだねあれ。須藤くんも成長したとは言え、流石にこれだけ重ねてやられたら我慢できないかぁ」

 

「厳しいね千秋ちゃん。よく我慢した方だよ。前の須藤くん考えたらとっくに怒ってるでしょ」

 

「まぁ〜確かにね。それにしても1年生赤組はやられっぱなしだね。せっかく2年3年の赤組が好成績を残してるのに、白組と拮抗してるんだから」

 

「現生徒会長と次期生徒会長が同じ赤組なのに、ここまで差が広がらない体育祭は初めてなんじゃない?」

 

「私たちの代は初めてが多いね。クラスポイント0にしたり。これからも増えるのかな? やだやだ」

 

「その法則が生きてたら最後に立派なことを成し遂げるんじゃない?」

 

「立派なこと?」

 

「過去1度たりとも、DクラスがAクラスに上がれたことはない……だったけ?」

 

 

 それは佐枝先生が私たちに言ったことだ。

 学年が始まって以来、DクラスがAクラスに上がれたことは1度もない。

 もし千秋ちゃんの言った通りこれからも私たちの代が学校の歴史上、初めてのことを更新していくのならば、始まりがDクラスだった生徒たちがAクラスで卒業……なんてこともジンクスがあるなら更新するかも知れない。

 しかし当然そんな『運』のような、見えない何かに頼るのは間違えている。

 実力史上主義。それがこの学校、そしてこの世界の在り方。

 

 

「それは夢見すぎだね。Aクラスに上がるには実力がないと無理よ」

 

 

 千秋ちゃんのその呟きに私は頷いた。

 

 すると須藤くんを宥めながら帰ってきた男子のみんな。

 雰囲気は最悪で須藤くんの怒りが今にも爆発しそうになっていた。

 

 

「ちくしょう! 龍園の野郎……ッ!」

 

 

 誰も座っていないベンチを思いっきり蹴り飛ばし、フラストレーションを発散する須藤くん。

 暴力が我慢できてるのは確かに偉いけれど、物に当たる時点で周囲からの評価は変わらないよ。

 こんなことを言えば余計に苛立つだろうから、今はそっとしておこう。

 千秋ちゃんにおにぃの所へ行ってくると伝え1度分かれた。

 

 

「お疲れ様おにぃ。色々と大変だったね」

 

「まぁな。状況は把握出来てるのか?」

 

「何にも。分かるわけないじゃん」

 

「おまえにも分からないことがあるんだな」

 

「分からないことだらけだよ」

 

「でも大体予想はついてるんだろ?」

 

「龍園くんが須藤くんを煽ったことと、ハチマキに何か細工をして平田くんが奪い獲れなかった。この2つしか知らないよ」

 

「それが全てだ。やっぱりなんでも知ってるじゃないか」

 

「なんでもは知らないわよ。知っていることだけ」

 

 

 実際に見ていれば分かることだよね。

 競技が終わった直後、龍園くんに怒っていた須藤くん。

 そして龍園くんのハチマキに何度か触れていたと思われる平田くんの手を、清にぃと須藤くんの2人が触れて確認し、また須藤くんが龍園くんに怒っていた。

 それが遠目でも分かった。そのことから今おにぃに言ったことが予想できる。分かっていた展開だ。

 

 

「ねえ清隆と愛歌。流石にこのままじゃヤバイんじゃない?」

 

「わぁ! 名前呼び嬉しいよ! 恵ちゃん!」

 

「何がだ? って、愛歌はともかくどうしてオレも下の名前呼びなんだ?」

 

「どうしてって、平田くんも洋介って呼ぶようになったし、アンタたち兄妹とも仲良くなって来たから……ただの気まぐれよ」

 

 

 うんうん。理由はなんでもいい。私は恵ちゃんがおにぃを下の名前で呼んでくれていることが嬉しい。

 本当は身体測定をしている時から呼びたかったけど恥ずかしいから清にぃのことを、アイツとかアンタって呼んでいたことは気づいていた。

 私の名前も下で呼んでいるのは言い訳できるように、次いでなのも気づいてる。

 それでも私はすごく嬉しいよ。

 

 

「そんなことよりも……このままじゃヤバイでしょ。堀北さんずっとなんか苦戦してるし、それに今Dクラス最下位よね? ここから勝てるの?」

 

「堀北が苦戦している理由は体育祭が始まる前に言ったことが原因だ」

 

「始まる前に……あっ」

 

「そう。裏切り者の存在だよ恵ちゃん」

 

「私たちのクラス情報……誰かが参加表のリストを流したってこと?」

 

 

 恵ちゃんの発言に清にぃは頷いた。

 

 

「堀北さんの相手が毎回Cクラスの矢島さんと木下さんだった理由はそれなのね?」

 

「そうだ。少なくとも龍園にはこちらの情報は全て握られている」

 

「……ねえ清隆、まさかアンタじゃないよね?」

 

「残念ながらオレじゃないな」

 

「……」

 

 

 恵ちゃんが黙って私の方を見た。

 私がまさか裏切ったって思ってるのかな? 

 

 

「私も違うよ」

 

「いや、それは分かってるけど……まあ、誰が裏切り者なのかは取り敢えず聞かないけどさ。Dクラス今最下位だよね? ここから勝つことは出来ないの?」

 

「可能性は限りなく0に近いな。既にこの体育祭の参加票は決めて提出してある。今から出来ることなんて限られている上、頑張ったところで結果は大して変わらないだろう」

 

 

 その後も恵ちゃんがおにぃに質問を続けるけど……何か引っ掛かる。私何か見逃してる? 

 今の恵ちゃんの反応。少し違和感を感じてしまった。

 

 

「──ちくしょう! やっぱあの野郎許せねぇ!」

 

 

 須藤くんの怒鳴り声が響き、私は思考をやめる。

 清にぃも恵ちゃんも会話を中断し、須藤くんの方へと視線を向けていた。

 須藤くんの表情は怒りに染まり、その怒りの先は龍園くんたちCクラスを捉えている。

 するとCクラスのテントへ向けて歩き出す。

 このままでは危ないと判断した平田くんが駆け寄った。

 

 

「待って須藤くん! 暴力はダメだよ!」

 

「安心しろ平田。殴るつもりはねぇよ。ただ俺はアイツを無理矢理にでも先生のとこに連れて行くだけだ!」

 

「もう競技は終わって証拠も残ってないはずだよ。それに龍園くんが大人しく着いてくるとは思えない……須藤くん今は我慢しよう。ね?」

 

「……けんな」

 

「え?」

 

「ふざけんな!!」

 

 

 須藤くんの怒鳴り声がテントに響いた。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

「──結果は大して変わらないだろうって……じゃあ、清隆はこの状況をこのままほっとくの?」

 

 

 軽井沢の質問にオレは頷く。

 

 

「言ったはずだ。オレは今回この体育祭ですることは何も無いと」

 

「でもこのままじゃ勝てないじゃん」

 

「だろうな」

 

「いやだからさ」

 

「勝つつもりがないってことだ」

 

「えっ?」

 

 

 今回の体育祭、オレはやられるだけやられてしまえばいいと考えている。

 そのことは軽井沢にも伝えていたがどうやら、Dクラスがどんなにやられたとしても勝つと思っていたようだ。

 この状況から勝つことが可能だったとして勝ったとする……しかしそれでは堀北はもちろん、今後のクラスの為にはならないからな。

 勝つ為には『勝利』することに対して貪欲にならなければならない。

 今のDクラスはただ漠然と、他クラスに勝ちたい、Aクラスになりたい、と思っているだろう。

 それではダメだ。クラス1人1人が『勝つ』ことに飢えなければAクラスに上がる事はもちろんのこと、Cクラスにすら勝てない。

 

 

「正直、清隆の言ってること私にはよく分からない」

 

「だろうな」

 

「でも……DクラスがAクラスに上がるために必要なことだってことはわかった。もう私からは何も言わないで──」

 

 

「──ちくしょう! やっぱあの野郎許せねぇ!」

 

 

 軽井沢が話している最中に、須藤の怒鳴り声がテントに響く。

 突然のことに軽井沢は話すのをやめ、オレたち3人は声のした方へ向く。

 どうやら須藤が我慢の限界に達したようで、今からCクラスに乗り込もうとしているようだ。

 そんな須藤を宥めるべく平田が駆け寄るが、須藤の不満が爆発した。

 あまりの剣幕に一部の生徒は怖がっている。

 

 

「我慢我慢我慢……もう十分我慢しただろ!? いつまで我慢しろって言うんだよ!!」

 

「それは……」

 

「それともなんだ? このまま我慢してやられっぱなしでいろって言うのか!? ざけんなよ! 俺はリーダーとしてこのチームを勝たせないとダメなんだよ! それなのにこんなやられっぱなしでいられるか!!」

 

 

 須藤の気持ちは分かる。

 だが相手はあの龍園だ。行けばまた何かしらのトラブルが起きかねない。

 それは平田も分かっているため、須藤を止めようとしていた。

 

 

「平田! 俺とお前はリーダーだろ!? ならクラスのために一緒に来いよ!!」

 

 

 須藤がそう叫んだ。

 須藤と仲のいい山内や池ですら須藤から距離を取り、殆どのクラスメイトが視線を合わせないように、須藤の逆鱗に触れないようにしている。

 堀北ですら呆れている様子だった。

 

 

「確かに君はリーダーだよ須藤くん。でも今の君を見てリーダーだと認めてくれる仲間はいるのかな?」

 

「……ッ! ……なんでだよ……俺はお前たちのために……」

 

 

 平田の指摘でクラス全体を見た須藤は気づいた。

 自分はリーダーとして慕われてなどなく、クラスの腫れ物として距離を置かれていると。

 

 

「須藤くん。君が人一倍この体育祭で勝ちたい気持ちが強いことはみんなが知ってる。そして君が今日までクラスみんなのために頑張ったこともだ」

 

「……せぇ」

 

「今君はその頑張りを、一時の感情で無駄にしようとしている。だからどうか冷静になって欲しい」

 

「……うるせぇ」

 

「煩わしいのは分かる。でも僕たちには須藤くんが──」

 

「うるせぇって()ってんだよォ!!」

 

「ッ……!?」

 

 

 須藤が平田を突き飛ばそうとする。

 平田は身構えたが突き飛ばされることはなかった。

 その理由は愛歌が平田と入れ替わる形で、須藤と平田の間に入ったからだ。

 その結果、平田の代わりに愛歌が突き飛ばされる形となった。

 

 

「綾小路さん!?」

「っ! 愛歌!!」

「愛歌ちゃん!!」

「綾小路さん大丈夫!?」

 

 

 平田、松下、みーちゃん、櫛田の4人が尻餅をついた愛歌の下へ駆け寄る。

 

 

「何の騒ぎだ?」

 

 

 騒ぎを聞きつけた茶柱先生がやってくる。

 クラスの雰囲気、須藤の心苦しいそうな後悔を滲ませている顔、そして尻餅をついてクラスメイトに心配されている愛歌。

 状況からして何が起こったか想像するのは難しくない。

 

 

「……殴ったのか?」

 

「佐枝先生私は殴られてないですよ。因みに本当に」

 

「つまり手は出されたと?」

 

「普通に須藤くんにバスケの練習に付き合ってもらってただけですよ。最近のバスケ、身体をぶつけてくるようなプレスが増えて来ましたからね」

 

「見苦しい嘘だな。バスケ部でもないお前がか?」

 

「バスケ部では無いけど私が趣味でバスケしてるのは知ってますよね? それに須藤くんと一緒に練習してるのも。今私は須藤くんにコーチングして貰ってました。それが全てです」

 

「……どうなんだ? 須藤」

 

「お、俺が……」

 

 

 茶柱先生は質問相手を須藤に変えるが須藤は答えられずにいる。

 そんな須藤の様子を見て茶柱先生は1度ため息を吐いた。

 

 

「今おまえたちを見てトラブルがなかったと判断するのは無理だ。しかし当事者たちがそう言うなら仕方はない。だが私が駆けつけた以上、上には報告する義務がある。念の為、互いに距離を取れ。以上だ」

 

「佐枝先生お忙しい中ありがとうございました」

 

 

 茶柱は軽く手を上げ返事をしそのまま持ち場へと戻って行った。

 

 

「妹がやられてるのに何もしないわけ?」

 

「愛歌がしたことだろ。オレには関係ない」

 

「うわぁ、こんなお兄ちゃん絶対要らない。最っ低」

 

 

 愛歌が行かなければ倒されることはなかったのは事実だからな。

 それよりも問題は2人だな。

 

 

「気はすんだ? 須藤くん」

 

「綾小路……わりぃ」

 

「謝らなくていいよ。それでこれからどうするの? リーダー」

 

「っ……俺は抜ける。今のクラスに俺は……邪魔だ」

 

「そう。リーダーの須藤くんがそう決めたなら何も言わないよ」

 

「待って須藤くん!!」

 

「待つのは平田くんの方だよ。行かせてあげて」

 

「っ! で、でも!」

 

「いいんだ平田。わりぃな……後は頼んだわ」

 

「須藤くん!!」

 

「平田くん落ち着いて。こっちに来て。私と少し話そう」

 

 

 須藤はそう言い残しその場から去って行った。

 この後も競技ある訳だが、須藤がいないとなるとDクラスの戦力は半減したようなものだな。

 

 1クラスの生徒が1人2人消えたところで体育祭が中断される訳もなく、2年3年の騎馬戦が消化されて行く。

 問題児2人の内、1人はクラスから去り、もう1人は今も落ち込んでいる。

 そろそろオレもすべきことをするか。

 

 全員参加種目、最後の競技である200m走の時間になったため、オレは平田と共に雑談を交えながら列へと並んだ。

 そんなオレらの元に龍園がやってくる。

 

 

「よぉ平田。須藤はどうした?」

 

「少し気分が悪いみたいで休憩中だよ。心配しなくてもすぐに帰ってくるよ」

 

「それはよかったぜ。この程度で心が折れて逃げ出したと思ったからな。流石にそんな雑魚じゃなかったみたいで安心だ」

 

 

 どうやらDクラスのことはちゃんと監視してくれていたようだ。

 

 

「ほら、第2レースで呼ばれてるよ龍園くん。個人競技全部1位なんだって? 凄いね」

 

「クク、褒めんな。照れちまうだろ」

 

「今回もメンバー的に1位は取れそうだね。とても運がいいみたいだね」

 

「日頃の行いがいいんだろ? 神様は俺の素行を評価してくれてんのさ」 

 

「そう。ならそんな龍園くんに1つ予告しておくよ」

 

「予告だと?」

 

「今日という日が終わるまでに面白い経験をさせてあげるよ」

 

 

 そんな平田の返事に龍園は鼻で1度笑いレースへ入った。

 またしても楽々と1位を獲ったことから、平田の言ったことは龍園に何の動揺も与えられなかったと思われる。まあ、そうだろうな。

 直ぐにオレと平田の番がやって来て、全員参加種目最後の200m走を、平田は1位でオレは3位で走り終えた。

 

 

「さて。問題児もう1人の様子を見に行くか」

 

 

 オレは堀北の元へと足を進めた。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 清にぃが200m走から帰ってくると鈴音ちゃんの元に行き何か話している。

 きっと落ち込んでいる鈴音ちゃんの目を覚ましに行ってるのだろう。なら私もすべきことをするだけ。

 

 

「平田くんおかえり。どうだった?」

 

「特に反応はなかったよ。それより須藤くんは……」

 

「うん。帰って来てないよ」

 

「そう、だよね……」

 

 

 平田くんが明らかに落ち込んでいる。

 さっき須藤くんは平田くんを突き飛ばそうとしたが、身代わりになった私を突き飛ばしてしまった。

 その事態にみんな驚き心配してくれたり、須藤くんを怖がっていたけど……内心私は感心していた。

 須藤くんは突き飛ばそうとした訳で、殴ろうとはしなかった。

 

 

「た、確かに……僕たちの知る須藤くんなら殴ると思う」

 

「うん。須藤くん凄い成長してるよ。それに私だから突き飛ばされたけど、運動部に入ってて男性の平田くんなら身体を少し揺らしたぐらいで済んでたと思う。咄嗟に間に入っちゃったけど悪手になっちゃった」

 

「仮にそうだったとしても嬉しかったよ。ありがとう綾小路さん。僕やっぱり須藤くんを呼び戻しに行ってくるよ!」

 

 

 この後、2年3年の200m走が終われば昼休憩。

 平田くんは須藤くんを探しに走り出そうとしたが私は腕を掴んで止めた。

 

 

「待って平田くん」

 

「綾小路さん?」

 

「その役目は他の人にあるから」

 

 

 そう言うと平田くんは鈴音ちゃんの方へと視線を向けた。

 今もまだ清にぃに説教されている。気が滅入るかも知れないけど頑張ってね鈴音ちゃん。

 

 そんなこんなしてる内に午前の競技が終わり、昼休憩へと入る。

 鈴音ちゃんの姿は見えなくなり、きっと須藤くんを探しに行ったのだろう。

 櫛田さんも須藤くんを探しに行くと立ち上がり、クラスメイトの協力の申し出を断って1人駆け出して行った。

 

 

「あれ? 綾小路さん私に何かようかな?」

 

「いや何もないよ」

 

「そ、そうなの? じゃあどうして着いてくるのかな?」

 

「あ、ごめんなさい。櫛田さんに着いて行ってるつもりはなかったの。私が用事あるの保健室(・・・)だからさ」

 

 

 私がそう答えると櫛田さんが足を止める。

 

 

「そ、そうだったんだね! ごめんね勘違いして。どこか具合が悪いの?」

 

「ううん。鈴音ちゃんがほら怪我してたでしょ? 保健室にテーピング貰いに行こうと思ってね。さっき先生に貰いに行ったら切らしてるんだって」

 

「そっかぁ……綾小路さんって本当に堀北さんと仲がいいんだね! 私も見習わなくっちゃ」

 

 

 しらこいな。本当は須藤くんを探しに行くんじゃなくて、鈴音ちゃんを陥れようと行動してた癖に。

 ひとまず今はやるべきことがあるので放っておく。

 櫛田さんと別れそのまま私は、本当の目的の場所である保健室ではなく生徒会室へと向かう。

 すると偶然、廊下で鈴音ちゃんと堀北会長と茜先輩を見つけた。

 

 

「兄さん……」

 

「鈴音か。情けないな」

 

「……返す言葉もありません」

 

「だろうな。ここからどうするつもりだ? その足で」

 

 

 堀北会長は鈴音ちゃんの足を見てそう聞く。

 

 

「私の足の怪我は特に問題ではありません」

 

「ほう? その足で勝てると」

 

「……いいえ。このままでは勝てません」

 

「ならどうする?」

 

「私は……私には……勝つことよりも、やるべきことがあります。すみません一刻を急いでるので失礼します」

 

「そうか。鈴音、無理はするな」

 

「っ……はいっ」

 

 

 遠くで眺めていた私は思わずニヤけた。

 鈴音ちゃんは気づいていなかったかも知れないが、またあのバカ兄は鈴音ちゃんを試していた。

 その結果、鈴音ちゃんの返答に満足した堀北会長は妹へ少し歩み寄った。

 もっと仲良くできないのかな。

 

 

「お待たせしました」

 

「愛歌さんお疲れ様です」

 

「来たか綾小路妹。生徒会室へ行くぞ」

 

「ですね。動画のチェックできるとこまで頑張りましょう」

 

 

 これから私が行うのは後日配信する予定である、今回の体育祭の午前の部を撮影した動画の確認だ。

 昼休憩の間に少しだけ作業をしておこうと予め決めていた。

 

 

「あ、そうだ。例の頼みごとちゃんとやってくれました?」

 

「ああ。頼まれていた通り、指定の場所に全て仕掛けておいた」

 

「さっすが生徒会長。茜先輩もありがとうございます」

 

「いえいえ。でも本当に良かったんですか? こんなことの為にPPを使うなんて」

 

「何の見返りもなく依頼はできませんからね」

 

「あまりにも破格だ。と橘は言いたいのだろう」

 

「はい。こんなことのために50万PPも支払う必要はなかったかと。会長が最初に提示した10万でよかったのでは?」

 

「その5倍の金額を提示することで、私にとってそれだけ重要なことだと知っておいて欲しかったんですよ」

 

 

 痛い出費ではあるが必要経費だ。と言っても流石にこんな短い期間、たった1ヶ月で100(・・・)万PPの出費は痛い。

 

 

「おまえを敵に回している1年生は可哀想だな」

 

「そうですかね? 私なんて所詮個人、1人ですよ」

 

「確かに個人ではありますが……」

 

「1個人が動かせるPPではないな」

 

 

 そう言うことか。確かにこんなポンと50万……それも2人は知らないだけで100万も使っている。

 1年生ができる芸当ではないだろう。

 

 そんな立ち話も程々にしようやく生徒会室へと辿り着く。

 中にはクラスを持たない教職員の先生が2名おり、私たち3人分の弁当が置かれていた。

 その弁当を食べながら私たちは作業を行う。

 私はその作業をしつつ、この昼休憩の間にして千秋ちゃんにお願いしてあり、それが無事に達成されることを祈っておいた。

 千秋ちゃんのことだから無理しそうだからそれが怖い。

 

 そんなこんなしている内に昼休憩の時間が終わりを迎える。

 ここからは午後の部、後半戦だ。





更新遅れてすみません汗
最後まで読んでくださりありがとうございました!

もしかしたら体育祭もう2話続くかもです。次回もよろしくお願いします

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改めて今回もありがとうございました
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