綾小路清隆の妹として、全力で支えます   作:ぐれーぷ

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感想いっぱい貰えたのでモチベが……っ。

体育祭編は次回で完結です。
今回もよろしくお願いします


9限目〜どう思う櫛田さん〜

 

 

 もう直ぐ体育祭の午後の休憩が終わる。

 生徒会室で動画の作業を終わらせた私たちは、グラウンドまで帰ってきていた。

 

 

「それじゃあここで。堀北会長、茜先輩残りの体育祭も頑張りましょう」

 

「ああ。大変そうだが、同じ赤組として健闘を祈る」

 

「愛歌さんご無理はなさらずに」

 

 

 私は挨拶を済ませDクラスのテントへと向かう。

 須藤くんと鈴音ちゃんの2人の姿が見当たらない。やっぱりまだ無理そうね。

 すると私の姿を見つけた千秋ちゃんが駆け寄ってきた。

 

 

「おかえり愛歌。頼まれてた件、ちゃんと済ませてきたよ」

 

「ただいま千秋ちゃん。ごめんね助かるよ。声かけられた?」

 

「ううん。一瞬見られたぐらい。私1人だったら何か言われたかもね」

 

 

 佐藤さんと篠原さんの2人を連れて行く様にお願いしておいて正解だったかな。

 

 

「それで? なんでこんなことをさせたのか教えてよ」

 

「ああ、それはね」

 

「愛歌!」

 

 

 私が説明しようとした時、遠くから清にぃに呼ばれた。

 近くには平田くんの姿もある。

 千秋ちゃんも振り返り、私が呼ばれている理由がこの後の午後の部の体育祭関係だという事を悟り、苦笑いを浮かべた。

 

 

「ごめんね」

 

「仕方ないよ。それにここで話す様なことでもないかもね。また後で聞かせて」

 

 

 それに頷き、2人で一緒に清にぃの元へと向かった。

 

 

「愛歌少し頼みごとがあるんだがいいか?」

 

「クラスのためでしょ? いいよ。何をすればいいの?」

 

「須藤や堀北は恐らくこの後、午後の部で行われる推薦競技は欠席することになる。その代役を選出しようとしているんだが1つ問題があってな」

 

「代役を立てるのに10万PPの支払いが必要なこと、だね?」

 

「そうだ。平田が全部受け持ちそうな顔つきだったからな。1人に負担をかけるわけにもいかないと判断した」

 

 

 推薦参加種目の競技は『借り物競争・四方綱引き・男女混合二人三脚・3学年合同1200メートルリレー』の4つ。

 鈴音ちゃんと須藤くんは全部参加予定のため、4×2の8で更にそこから8×10で80万PPの資金が必要となる。

 私は堀北会長への頼みごとや他のことにも大金を使っており、全て合計すると100万PPを消費してあるため、現在手元には35万PPしかない。

 因みに私はこの代役を立てなければいけないことを予想できていた。

 

 

「そういうことなら私も出すよ。まぁ、手持ちは35万しかないんだけどね」

 

 

 そう言って私は3人に自分の手持ちを見せた。

 清にぃは私が100万PPを超える資金を持っていた事を知っているため、一瞬どうしてこんなに少ないんだ? と言わんばかりの目を向けてきた。

 後でちゃんと教えるから。

 

 

「……愛歌でも35万PPが全額か。オレと合わせて46万……50万には届かないな」

 

「なるほどね。そういうことなら私もPP払うよ」

 

「いいのか? 松下」

 

「うん。私も多くないけど14万なら出せる。これで3人で60万PP。平田くんこれで足りる??」

 

「十分すぎるよ。みんなが10万づつ出してくれれば、50万は僕が負担するから」

 

 

 流石平田くん。でも50万は出し過ぎかな? 

 私が言うのも……というよりめちゃくちゃ消費した私だから言うけど、お金は使いすぎると大変よ。

 そんなわけでそろそろあの人を呼ぼうと思います。

 

 

「櫛田さーん少しいい?」

 

「綾小路さん? ちょっと待って! 今行くね!」

 

「……鬼だな」

 

「……鬼だね」

 

「僕のせいでごめんね……綾小路さん」

 

 

 清にぃと千秋ちゃんは私が櫛田さんの良心を利用したことに鬼扱いし、平田くんは意味のわからない謝罪をしてた。

 別に平田くんのせいじゃないのにね。

 おおよそ、僕が大金を持ってれば……とか考えているのでしょう。

 

 

「綾小路くんや平田くんに松下さんも集まってるね。どうかしたの?」

 

 

 やってきた櫛田さんに今話しあっていたことを説明する。

 大量のPPが必要な事情を分かってくれた櫛田さんは、ぜひ自分にも協力させて! と、とても有り難い提案をしてくれた。

 本当に素晴らしいよ。常人には真似できないよね。

 

 

「それじゃあPPに余裕のある、僕と櫛田さんと綾小路さんの3人が20万PPづつ、綾小路くんと松下さんの2人に10万PPづつ出してもらい、80万PPをカバーする形でいいかな?」

 

「決まりだな」

 

「3人には申し訳ないけどそれなら私としても助かるよ」

 

「気にしないで松下さん! みんなでクラスのみんなのために頑張ろう!」

 

「そうよ。須藤くんに関しては時間かけて返済して貰うことにしよう。40万PPをみんなで8万づつ分けましょ」

 

「そ、それはやりすぎなんじゃないかな綾小路さん」

 

「そうだよ愛歌。アンタの大好きな堀北さんだって欠席してるわけだし」

 

「須藤くんにはリーダーとしての責任をちゃんと果たして貰わないと……って思ったけどやっぱりやり過ぎ? どう思う櫛田さん」

 

「私はちょっとやりすぎだと思うな。須藤くんが頑張ろうとしてたの事実じゃない? ならその頑張りを評価するべきだと思うの」

 

 

 櫛田さんがそう言うなら仕方ない。

 これ以上、私がとやかく言うのはみっともないからね。

 

 

「もうチャイムが鳴っているから行動しよう。3人は借り物競争に参加していたよね?」

 

 

 私と清にぃ、そして千秋ちゃんの3人が平田くんの質問に頷く。

 

 

「なら先に僕と櫛田さんが、参加する予定だった須藤くんと堀北さんの分を払ってくるよ」

 

「待ってくれ平田。肝心の代役を誰に立たせるかだが──」

 

「──学力に自信がない生徒……だね?」

 

 

 流石は平田くんだ。清にぃもそれに頷いた。

 この場にいる全員がその理由は聞かなくてもすぐに分かったため、無駄な説明の時間は省く。

 こうしている間にも時間は過ぎるため、私たちは平田くんと櫛田さんの2人に任せ、競技が行われる場所へと向かった。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

「──綾小路くん靴紐結んじゃうね?」

 

 

 オレは午後の部の推薦競技の1つである、二人三脚に櫛田と共に代役で走ることになった。

 今櫛田には靴紐を結んでもらっている。男子がやると色々と問題がありそうだからな。

 

 

「綾小路くんは本当なら堀北さんや妹さんと一緒に走りたかったんじゃない? 私でよかったの?」

 

「ああ。寧ろ櫛田はよかったのか? オレなんかで」

 

「そんな、私は綾小路くんと一緒に走れて嬉しいよ? 頑張ろうね!」

 

 

 櫛田は本当に出来た生徒だ。AクラスやBクラスに居てもおかしくない生徒だ……この表面上の人間性だけを見ればだが。

 

 

「なあ、櫛田1ついいか」

 

「うん? ちょっと待ってね〜、もうすぐ結び終わるから。その後に聞くね」

 

 

 櫛田が後にして欲しいと返答するが、オレはそれを無視し言葉を投げかけた。

 

 

「おまえだったらしいな。CクラスにDクラスの参加票を流したのは」

 

 

 それを聞いた櫛田は1度手を止めるが、すぐに紐を結ぶのを再開して整える。

 そして立ち上がると笑顔を浮かべたまま、オレの方を見た。

 

 

「やだなぁ。私じゃないよ? 誰がそんな酷いこと言ってたのかな?」

 

「愛歌から聞いたんだ。櫛田に確認して欲しいってな」

 

「綾小路さんが?」

 

 

 櫛田が愛歌のいるDクラスのテントの方へと振り返る。

 オレも視線を向けると丁度愛歌もオレたちのことを見ており、笑顔で手を振ってきた。

 

 

「そっか。綾小路くんがお兄ちゃんだから妹の言ったことを信じたい気持ちは分かるよ? でも私はそんなことしてない。本当だよ?」

 

「クラスの参加票の撮影もしてたらしいじゃないか。禁止だったはずだろ?」

 

「そうだったけ? それは私が勘違いしてたかも。怪しまれるような行動しちゃってごめんね。でもそれを知ってたならどうして参加票を新しく作り直さなかったの? そうしたら私の撮った物は意味がなくなるじゃない?」

 

 

 無意味だな。

 同じDクラスの生徒である以上、いつでも確認は可能だ。

 仮にクラスの全員に内緒で勝手に参加表を作ったとして、本来の参加表と入れ替えたとする。

 それならCクラスへの参加表の流出は防げるが、クラスから反感を買うことにもあり、混乱していただろう。

 ならどうするべきか? 予め複数の参加表を堀北は作っておくべきだった。

 それならここまで追い込まれることもなかっただろう。

 

 

「なるほどね。綾小路くんの言いたいことは分かったよ……いや綾小路さんのかな? でも本当に私じゃないよ」

 

「オレもそう信じてる。ただ愛歌がな、茶柱先生に確認してみたそうだ。参加表を提出したあとに、わざわざリストを確認しにきた生徒がいなかったかどうか、って。もしいたらその人が犯人だよ。ってな。その生徒は……櫛田、おまえだそうだぞ」

 

「……」

 

 

 愛歌は手を振るのをやめると近くでDクラスを監視している茶柱先生の元へと向かった。

 そして茶柱先生に話しかけると、1度2人がオレたちの方を……正確には櫛田の方を見た。

 

 

「あーあ、本当に凄いんだね。綾小路さんって」

 

 

 櫛田が笑顔を浮かべたままそんなことを言った。

 櫛田の纏う雰囲気が不気味な物へと変わる。

 

 

「うん。そうだよ。私が参加表をCクラスにリークさせたの」

 

「……まじか」

 

「でも以外だなぁ。綾小路くん、妹さんに話してなかったんだ」

 

「なんのことだ?」

 

「私のことだよ。綾小路くんが私の制服に触れたこと、綾小路くんがもし話してたら綾小路さんがわざわざ私にこんなこと確認させないよね? だって大好きなお兄ちゃんが退学にさせられちゃうんだもん」

 

「……もしかしたら愛歌はオレのことを大して好きじゃないのかもな」

 

「ないない。私は心を読み取る力が他の人よりも強いつもり。綾小路さんは間違いなく綾小路くんのことを誰よりも好きだよ」

 

 

 ああ。そうだ櫛田。おまえはそう言ったことには長けているとオレも判断した。

 思った通りだ。おまえならこうするとオレは信じていた。

 

 

「あ、勘違いしないでね? 綾小路くんのこと褒めてるつもり。本当に私のことを秘密にしてくれてたんだって」

 

「それは……そういう約束だったからな。だけど信じていいのか? おまえのことだけ話して、オレが弱みを握られていることは話していない可能性もあるだろ」

 

「確かにそうだね。でも私は綾小路くんがそこまでバカな人には見えないかな? 私の秘密だけを教えた場合、綾小路さんが私に不審な態度を取った結果、自分が退学にされるかも知れない、ってことは予想できるでしょ?」

 

「あ、ああ。オレは実際にそう考えている」

 

「ね? でも綾小路さんは行動した。私たちのこと知ってたら出来ないもんね。だから本当に内緒にしてくれてた綾小路くんに私は感心してるんだ」

 

 

 残念だったな櫛田。

 これは茶番だ。愛歌は全部知っている。それにあいつは自分からは何もしていない。

 オレが指示したことをこなしているだけ。

 櫛田。おまえは気づいていない。愛歌の背後にオレがいることを。

 龍園。今も観察しているんだろう? おまえは気付けるか? オレの背後に愛歌がいて、その更に背後にオレがいることに。

 ここまでの流れ全てが、オレの手のひらの上だったということに。

 

 

「でも残念。綾小路さんの影響力じゃ、私も言い逃れは難しいかな。でも私も黙ってやられるつもりはないよ。綾小路さんが私の大事にしているものを奪うなら、私も綾小路さんが大切にしている物を奪わないとね?」

 

 

 櫛田がオレの方を見た。

 遠回しに愛歌のことを止めろと言っているのだろう。

 

 

「それは困るな。オレから愛歌には言っておくから勘弁してくれ」

 

「本当? ありがとう綾小路くん! やっぱり持つべき物は信頼できる友達だねっ。でも困ったなぁ。私も考え直さないとね」

 

「どういう意味だ?」

 

「私の退学させたいリスト。綾小路さんもたった今入っちゃった」

 

「それには堀北も入ってるのか?」

 

「うん。もちろんだよ」

 

「じゃあ体育祭が始まる前に堀北が櫛田に確認していた、船上試験の『優待者』をリークさせたことも──」

 

「──うん。それも私。理由はもう聞かなくても分かるよね?」

 

 

 堀北鈴音を退学させるため。だろう。

 そしてそのために龍園と手を組んだ。

 

 

「龍園が暴露する可能性は考えないのか?」

 

「あはは、私もそこまで間抜けじゃないよ。簡単に証拠は残していない。まあでも裏切られたらその時は龍園くんもリストに入れないとね」

 

 

 そうか。どうやら櫛田はオレが思った以上に……いや、オレが思ったほど優秀な生徒ではなかったようだ。

 オレの中で櫛田への評価が数段階下がった。

 

 

「あ、でも安心して。綾小路さんが退学しても寂しくないようにするから」

 

 

 それはつまり愛歌が退学した後、オレのことも退学にするということなのだろう。

 この学校の仕組み上、身内に裏切り者がいるだけで勝つのが難しくなる。

 だがオレや愛歌、それに堀北学ならその裏切り者を利用して勝つ。

 堀北にもこれぐらいの芸当はやって欲しいものだ。

 

 

「体育祭、堀北さんボロボロで可哀想だね。綾小路さんも何も力になれてないし。大変だね。綾小路くんは助けてあげないの?」

 

「そうだな。だが子供じゃないんだから、いつまでも面倒は見てられないだろ」

 

「ふふっ。それもそうだね」

 

 

 オレたちはそんなことを交えながら二人三脚を走り終えた。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 

 私が須藤くんを探しに来てからかなりの時間が過ぎていた。

 もう既に午後の部は始まっており、私や須藤くんが参加するはずだった、借り物競争はとっくに終わり、もうすぐ男女混合二人三脚が始まる頃ね。

 

 

「……情けない」

 

 

 寮のロビーに1人で座って須藤くんが戻ってくるのを待っていた私は思わず呟く。

 今日まで万全の準備を整えてきたつもり。

 今日の朝だって気合いは十分だった。

 けれどいざ体育祭が始まると龍園くんに完封され、認識が甘かったと思い知らされる。

 綾小路くんから言われるまでその現実から目を背けていた。

 心のどこかで私は、自分が失敗……敗北したのだと認めなくなかったのだろう。

 でも仕方ないでしょ。こんなに意気込んで体育祭に挑んだのに、始まった時にはもう既に詰みだなんて……出落ちにも程があるわ。

 誰だって認めたくないって思うじゃない。

 

 

「はぁ……ほんと、何やってるのかしら」

 

 

 しかも龍園くんの策略にハマり、体育祭が終わったあとに木下さんを負傷させたことに対する謝罪として、土下座と100万PPが要求されている。

 そのため今更戻ったところで代役を立てるためのPPも出せない私は、本当に役立たずな存在と化す。

 それならせめて須藤くんだけでも連れて帰る。それが今の私がやるべきこと。

 

 

「……マジ残ってたのかよ……おまえ何やってるんだよ……早く戻れよ堀北」

 

「……須藤くん、やっと来たのね」

 

 

 須藤くんがエレベーターに乗り込み乗りてくるところは監視カメラで確認していた。

 努めて冷静に須藤くんと向かい合う。

 

 

「戻る気になったかしら?」

 

「……今更戻ったところで迷惑だろ」

 

「そんな事はないわ。少なくとも私よりはマシよ」

 

 

 そう言った私の足を見て複雑な表情を浮かべる須藤くん。

 

 

「俺は……もう何度もクラスのやつらに迷惑をかけた。何度もだ。全然成長していねぇ」

 

「あなたは成長しているわ。Dクラスの中で誰よりも間違いなく」

 

「嘘だ。俺は同じ失敗を何度も繰り返している」

 

「それは綾小路さんに暴力を振るったことかしら?」

 

「っ……!」

 

 

 そう……。確かに須藤くんは前、綾小路さんともうスポーツマンとして暴力を振るわないと約束した。

 しかしその約束を2度も破ったことになる。

 更にクラスから向けられた、腫れ物を見つめるような視線。

 須藤くんがリーダーとしての役目を放棄して逃げたくなる気持ちも分からなくはない。

 

 

「須藤くん私たち似ているわね」

 

「……は? 俺とおまえが?」

 

「ええ。綾小路さんに呆れられ、期待に応えられず、そして認められたい人から認められない。あなたはクラスから、私は自分の兄から」

 

「い、いやいや。待てよ。おまえほどの奴が認められないのか? スポーツも勉強もできんだろ堀北は」

 

「ええ。でも最近少し分かったの。兄さんが私を認めないのは目に見える結果じゃなくて、私の考え方の方だって。メンタル的な部分ね」

 

「……なんか難しいな」

 

「そうね。確かに難しいわ。でもそれは須藤くん、あなたも同じよ」

 

 

 私と同じだと言ったことに納得がいってないのか須藤くんの表情はすっきりしていない。

 

 須藤くんは今回体育祭でみんなに認められようと頑張った。

 みんなから認められるためにどうするべきか? そう考えた結果自分が活躍すればいいと思ったのだろう。

 それは間違いではない。だがそれだと認められるのは須藤くんの身体能力という部分だけだ。

 1人の人間、須藤健という人間性は認めて貰えたことにならない。

 

 

「あなたが怒った時、あれは本当にクラスのため? 自分がやられ、結果が思うように出ないことに対する怒りじゃないと言い切れる?」

 

「……」

 

「私とあなたは結局、自分のワガママを押し通そうとしているだけにすぎないのよ。私もあなたもこのまま立ち止まってる訳には行かない。あなたがまだ過ちを犯しそうな時は私が止める。だからあなたも私のために力を貸して。もちろん私もあなたが必要とするなら全力で力を貸すわ」

 

「……本当に俺ってダセェな」

 

 

 須藤くんが頭を乱暴に掻き毟りながらそう答える。 

 両手で自分の両頬を、パチン、と勢いよく叩くと、彼は吹っ切れた表情になっていた。

 

 

「堀北。俺はおまえに協力するぜ。だから俺のことを助けてくれ」

 

「ええ。もちろんよ。みんなが待ってるわ。戻りましょう」

 

「ああ。俺はバスケ以外で初めて存在意義が認められた気がする……だからおまえのその気持ちに答えたい」

 

 

 須藤くんは少し照れ臭そうにしていた。

 そうね。よくもそんな恥ずかしいセリフを言えるわね。私じゃ言えないわ……。

 

 

「……私はこういうところをよね。治さなきゃね」

 

「あ? なんか言ったか? 堀北」

 

「髪を乱暴に掻き毟るような、そう言った見苦しい事はやめなさい」

 

「うっ。わ、わーったよ」

 

「そういう小さな言動1つ1つを治していくわよ。いいわね?」

 

「いぇ、イェッサー!」

 

「私は女性だからイェスマムよ」

 

「イェスマム!!」

 

 

 はぁ。本当に大丈夫かしら? 

 そう思った私だったけれど、どこか楽しんでいる自分がいることに気づく……いいえ、楽しんでいるというよりは、晴れやかな気持ちになっているというべきかしら。

 それがどうしてなのかは分からなかった。

 





最後まで読んでいただきありがとうございました。

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