綾小路清隆の妹として、全力で支えます   作:ぐれーぷ

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少し長いです…これで体育祭はおしまいになります。


10限目〜高円寺くんがやりたいようにやらなくちゃ〜

 

 体育祭も大詰め。最後の競技全学年対抗の1200mリレーが始まろうとしていた。

 オレたち1年Dクラスと1年Aクラスを除いて、生徒たちのボルテージは最高潮まで高まっている。

 

 

「須藤くんと堀北さんは……代役を立てるしかなさそうだね」

 

 

 この場にいない2人の名を呼び、平田は代役で走る生徒を選ぶ必要があるとクラスのみんなに伝える。

 

 

「男子女子から代役で──」

 

「──待たせたわ。状況はどうなってるかしら?」

 

 

 ようやく須藤を連れやって来て堀北の声に、平田の言葉は掻き消される。

 自分の話を遮られたことよりも、2人が戻って来たことが嬉しい平田は、嬉しそうな表情を浮かべた。

 

 

「みんな本当にすまん。俺が不甲斐ないせいだ。もしみんなが良ければ、1200mリレー……俺に走らさせてくれ」

 

「須藤くん……! もちろんだよ。みんなもいいよね?」

 

 

 平田に同意する生徒たち。

 みんなの反応に安堵した須藤は、愛歌の方を見つめた。

 今朝の事故を知っている生徒たちは2人を黙って見届ける。

 

 

「須藤くん。何か勘違いしてるみたいだけど、私須藤くんが押し倒したことは怒ってないよ」

 

「……え?」

 

「前までの須藤くんなら押すんじゃなくて、殴ってた。もちろん人を押し倒す事態よくないことだけれど、須藤くんが頑張って変わった……変わろうとしているんだなってことは分かったよ」

 

「っ……平田おまえのことを押そうとしてすまねぇ。それに綾小路も……リーダーとしての責任を放棄して悪かった」

 

「うん! ちゃんと反省してるみたいだし私からは特に何も言わないよ。それに私がリーダーとしての責任を問い詰めても何様だって話だから。最後のリレー頑張ろう」

 

「……ああ。俺に、俺たちに任せてくれ」

 

 

 一件落着か……いいや、堀北も残ってたな。

 今度は堀北が愛歌の元へやって来る。そして目の前に来ると立ち止まった。

 

 

「綾小路さん。この体育祭が終わったあと、2人で少し話さない?」

 

「うん。いいよ」

 

 

 短く終わった2人の会話。愛歌の返事に堀北は頷いた。

 今はそれどころじゃないからな。

 1200m走の代役をどうするかだ。堀北が足を負傷しており、誰が代わりに走るか話になるが愛歌が立候補する。

 愛歌の立候補に松下と須藤に平田の推薦もあり、堀北の代役は愛歌が務めることになった。

 平田とオレが1度目を合わせる。平田には悪いがオレと変わってもらうことにした。

 

 

「みんなごめん実は僕も──」

 

「──みんな悪い。俺も誰か変わって貰っていいか? 実は足を挫いてるんだ」

 

 

 またしても遮られてしまった平田……少し可哀想だな。

 そして棄権を申し出たのは弓道部の三宅だった。

 どうやら昼前の200m走で負傷したらしい。

 わざわざ平田が棄権する必要がなくなった。嬉しい誤算だ。

 

 

「なぁ。もしよかったら三宅の代わりにオレが走ってもいいか?」

 

「綾小路、おまえ足速いのか?」

 

「安心して須藤くん。私より速いよ」

 

「まじかよ。兄妹揃って(はえ)ぇのな。それなら俺は構わないぜ」

 

「僕も賛成だよ。しっかりと活躍してくれてるし、綾小路くんが適任だと思う」

 

 

 愛歌、須藤、平田の3人の後押しもあり、オレは無事1200mリレーに参加することとなった。

 後はこのメンバーで走ればいいだけなのだが……ここで予想外の人物が声を上げる。

 

 

「待ちたまえ。平田ボーイ。何か言いかけていなかったかい?」

 

 

 みんなが声のした方へ同時に向く。

 この特徴的な声と話し方は顔を確認しなくとも分かる。高円寺だ。

 

 

「あ、いや。何でもないから気にしなくていいよ」

 

「そうなのかね? てっきり負傷していると思ったのだが……なら私が代わりに走る必要はなさそうだねぇ」

 

「え……高円寺くん走ってくれるのかい?」

 

 

 誰もが驚いた。当然オレも驚かざる得なかった。

 まさか高円寺自ら1200mリレーで走ると名乗り出るとは思わなかったからだ。

 高円寺の身体能力の高さは無人島試験で、1人生活していたことからも伺える。

 平田に堀北とオレの3人は目を合わせ、頷き高円寺に参加してもらう事にした。

 

 

「ならお言葉に甘えてお願いしてもいいかな? 高円寺」

 

「ノープログレム。ただし第1走者を私に譲って貰おう。その条件が飲めるなら代わりに走ってあげよう」

 

「分かったよ。なら走る順番を考えよう。まず第1走者を高円寺くん。次に──」

 

 

 平田が走るメンバーの順番決めをしている間、オレは愛歌の隣に移動し、そっと耳打ちをした。

 

 

「愛歌、おまえだろ? あの高円寺をどうやって説得したんだ」

 

「流石ね。分かるんだ? それと厳密には説得してないよ。何をしたかと言うと──」

 

 

 愛歌が高円寺に話しかけたのは借り物競走が終わった後のこと。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

「──ねぇ、高円寺くん。この後の予定は空いてる?」

 

 テントの下で目を瞑り静かに瞑想をしていた高円寺くんには私は声をかけた。

 

「見ての通り、体調が回復するまで瞑想を続けるつもりさ」

 

「そっかぁ。でも貴方ならもう遊べる程度には回復したんじゃない?」

 

「どうだろうねぇ? さて、君が私に何の用かな? まさかとは思うが、君もクールガール同様に時間を無駄にするつもりかい?」

 

 

 自分は体育祭に参加するつもりはない。

 そう伝えているのだろう。鈴音ちゃんみたいに時間の無駄遣いはするなと。

 

 

「もうそんなに身構えないで? 大した要件じゃないよ。この後、体育祭最後のリレーで私と清にぃは遊ぶ予定なんだけど、高円寺くんも一緒に遊びましょ! という友人としてのお誘いだよ」

 

 友人としてこの後の遊戯に誘っただけ。

 これは私の本心だ。建前もなくそこに打算的でもない。ただただ、私が楽しみたい。やりたいことを伝えているだけ。

 

「なるほどなるほど。強制ではないのなら、断っても構わない……ということだね?」

 

「もちろん。でもレディからのお誘いを断るほど、高円寺くん無粋な人ではないよね?」

 

「ふふふ。初めての経験だねぇ。レディから……いいや、他人からの下心のないお誘いは」

 

「へぇ。疑わないんだ」

 

「私は君たち兄妹に興味がある。君にならこれだけで伝わるだろう?」

 

 つまり私たち兄妹を見ていたと。

 そして見ていて気づいた。今回の体育祭で上位を狙うつもりがないことに。

 高円寺くんは私を好意的に見てくれている。でも信用している訳でない。だから彼自身が見て感じて、そう判断した。

 私が高円寺くんをクラスのために結果を求めて誘っているのではない、と。

 自分がそう判断したなら誰が何と言おうと自分を信じる。それが彼なのだ。

 

 

「それに君のその美しい瞳を見れば分かるさ。さながらテーマパークに来た少年少女のよう。早く遊びたくて仕方ないと訴えている」

 

 

 む。そんなに分かりやすいのかな? 

 高円寺くんに言われた通り私はうずうずしていた。

 今直ぐにでも駆け出したいぐらいに興奮している自分がいる。

 

 

「レディの心を口にするなんて悪い男だね〜」

 

「すまない。私はレディの気持ちを察してあげるのが得意でねぇ」

 

「察しても口にしていいことと、しちゃいけないことがあることも学ぼうね。それで、どうする高円寺くん。私たちと遊ぶ? 遊ばない?」

 

 

 僅かな沈黙が流れた後、高円寺くんは笑顔を浮かべ返答した。

 

 

「参加しても構わないが……噂によれば、どうやらこの遊びに参加するには参加費が必要みたいじゃないか」

 

「そこに関しては他の人に負担させるから安心して。私と高円寺くんは対等。だから私がお金を出すこともない。これで安心?」

 

「フフ。いいだろう。対等だからこその友人。それもレディからのお誘いだ。久しぶりに楽しもうじゃないか」

 

「そうこなくては」

 

 

 高円寺くんに手を差し出すと握り返してくれる。

 最後の最後に楽しい体育祭になりそうだよ。

 

 

「それでどうやって遊ぶつもりだね?」

 

「ご自由に。高円寺くんがやりたいようにやらなくちゃ。そうじゃないと楽しめないでしょ」

 

「ほぅ? でも本当にいいのかい?」

 

「いいよ」

 

「その結果、君にとってつまらない時間になったとしても?」

 

「しょうがないよね。それが高円寺くんにとって楽しいことなんだから」

 

「ふふふ。流石はマナカだ。安心したまえ。場を白けさせる様なマネはしないとも」

 

「期待してる。それじゃまた後で」

 

 

 高円寺くんにそう言い残してDクラスのテントへと戻ってきた。

 

 私は高円寺くんのことを説得したんじゃない。

 ただ友人としてお遊びに誘っただけ。

 最後に行われる3学年合同1200mリレーは私たちにとってはお遊びだ。

 全生徒に教えてあげる。

 1年Dクラスをあまり舐めない方がいいよってね? 

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 

 体育祭最後の種目、3学年合同1200mリレーが始まる。

 オレたちのクラスの第1走者は須藤の予定だったが高円寺が務めることに。

 須藤はその次の第2走者。第3走者は小野寺。第4走者に松下。第5走者を愛歌が務め最後の第6走者、アンカーはオレが走ることになった。

 

 他クラスのアンカーを担当することになる生徒を確認していると、堀北学や南雲の2人の姿もあった。

 2人とも1度目が合う。

 堀北学はオレがいることに特に反応を示さない。

 逆に南雲はどこか楽しそうな表情を浮かべている。

 

 

「それでは! 位置について! 用意──」

 

 

 ──ドン! 

 

 

 スタートの合図を告げる雷管の音がグラウンドに響く。

 全クラスの第1走者が一斉に──いや、1人の生徒を除いて全走者が走り出した。

 

 

「なっ!? アイツっ!! おい!? 何やってんだ! さっさと走れよ! 高円寺!!」

 

 

 走りださなかった唯一の生徒。それは高円寺だった。

 まさかこのまま走らないつもりか? 

 そう思った矢先、遂に高円寺が動き出す。

 

 

「フフ……ハンデはこれぐらいでいいかね?」

 

 

 高円寺が一気に加速し駆け出す。

 1人……また1人、1人と先にスタートしていた生徒たちを抜き去っていく。

 高円寺の豪快な走りに1年Dクラスは興奮した声を上げる。

 そして高円寺はそのまま前を走っていた生徒たちを次々と抜き去り、驚くことに1位で須藤へとバトンを渡した。

 

 

「ははっ。マジかよ。おまえんとこのクラスは変人揃いだな? 綾小路」

 

「お疲れ様です。南雲先輩」

 

 

 オレに話しかけて来たのは2年Aクラスのリーダー。そして現生徒会の副会長であり、次期生徒会の生徒会長が約束された、南雲雅だ。

 その隣には堀北学の姿もある。直前まで2人で話していたようだ。

 

 

「今日1日、おまえたちのクラスを眺めてたが……中々面白い生徒たちが揃ってやがる。しかも1位と数十m離れた状態からスタートして1位を奪い取るなんて芸当を見せられてしまった。先輩としての面目が丸潰れだな」

 

「確かに1位でバトンを渡しましたが、3年2年のAクラスがすぐ後ろに居ますから安心できませんよ」

 

 

 そう答えたそばから、須藤からバトンを渡され走っていた小野寺が、2年Aクラスと3年Aクラスの生徒に抜かれてしまう。

 現在1位が2年Aクラス。2位が3年Aクラス。3位がオレたち1年Dクラスだ。

 

 

「綾小路。鈴音の代役か?」

 

 

 てっきりアンタは他人がいる時はオレに話しかけてこないと思っていたんだがな。

 

 

「ああ。今のクラスはあいつが繋いだものだ」

 

「……鈴音なりに足掻いたのだな」

 

「このクラスは強くなるぞ」

 

「そうか。見届けられないのが残念だ」

 

「なら俺が堀北先輩の代わりに見届ますよ。こいつらのクラスがどれだけ強くなるのか。俺が生徒会長になれば、嫌でも不出来な生徒は落ちていくっすからね」

 

「南雲……本当に変えるつもりなんだな?」

 

「ええ。真の実力至上主義の学校へとね。堀北先輩が気にかけているコイツの実力も気になるところですから」

 

 

 どうやら南雲が生徒会長になったらこの学校はより一層、実力至上主義へと変わっていくらしい。

 堀北学はそれを止めたいのだろう。そしてそれを止めるために愛歌を利用している。

 しかしオレは南雲の掲げる実力至上主義というものが何なのか気になる気持ちもあった。

 

 

「……アンタたちさえ良ければ、この駆けっこぐらい本気でやってもいいぞ?」

 

「ほう?」 

 

「はっ。随分と偉そうに言うじゃねぇか綾小路」

 

 

 もう直ぐ松下から愛歌へバトンが渡される。

 しかし現状は2年Aクラスがややリードし、1、2m後ろを走る3年Aクラス。

 その後を追っているのが1年Dクラスだ。

 

 

「面白い。最後におまえの実力を見せてもらおう」

 

「俺も乗ってやるよ綾小路。しかし差が開いてるな? 待ってやろうか」

 

「いいえ。後輩は先輩の背中を追うものですから……それに──すぐ追いつきます」

 

 

 その直後──

 

 

「「「うおぉおおおおお!!」」」

 

 

 グラウンドに興奮した声が至る所から沸く。

 松下から愛歌へとバトンが渡され、10m近く先を走っていた2年Aクラスと3年Aクラスの男子2人との距離を猛スピードで詰めていく。

 

 

「……おまえも大変だな。あんな怪物を妹で持っちまって」

 

「本当にそう思いますよ」

 

 

 南雲が呆れたようにそう言った。

 堀北学は何も言わなかったが、その表情には笑みが浮かんでいる。

 遂に3者が直線へと入った。3人の間に差は無い。横並びの状態。

 オレたち3人はテイクオーバーゾーンのギリギリまで下がる。

 

 

「堀北!!」

「雅!!」

「清にぃ!!」

 

 

 南雲と堀北学はバトンを受け取った。

 しかしオレはバトンをまだ受け取らない。愛歌もまだバトンを差し伸べてない。

 テイクオーバーゾーンのギリギリまで走りオレは加速する。

 そしてオレが左手を後ろに伸ばした瞬間、愛歌からバトンを丁度渡された。

 まるでオレがいつ手を伸ばすのか分かっていたようだ。

 正真正銘フルスロット。全力でオレは駆け出す。

 

 

「うおおお!? 何だあの3人!?」

「がんばれぇぇぇ!!」

「負けるなぁぁあぁ!」

「走り抜けろぉぉぉおお!」

 

 

 誰の応援かも分からない歓声がグラウンドを包む。

 無機質なあの真っ白な部屋で、淡々と走り続けた日々。

 人生で初めて土を蹴り全力で走っている。

 オレたち3人は風を切るように全速力で駆け抜けた。

 

 

「「ッ……!!」」

 

 

 横並びの状態から最後のカーブでオレは更に加速する。

 斜め左後ろに2人の姿が。

 走る前に2人が浮かべていた感情を思い出す。 

 学のどこか楽しむような表情、南雲の驕りの混ざった表情、両者共にそれは無くなり、『勝利』への執念を見せている。

 ただ純粋な身体能力での勝負。

 

 

 ほら──もっと加速するぞ──

 

 

 再び怒号のような大歓声がグラウンド中へと響き渡った。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

「アンタたち……めちゃくちゃ速いじゃん」

 

 

 競技終えた私と清にぃが戻って来ると、視線を外したまま恵ちゃんにそう言われた。

 

 

「そうかな? みんなが遅かっただけだよ。ね? おにぃ」

 

「ああ。オレたちは普通だぞ」

 

「いやいや、2、3年相手に勝って置いてそんなこと言えるわけ?」

 

 

 最後のリレー対決。結果は1年Dクラスが1位で走り終え、同着にゴールした堀北会長と南雲先輩だったがビデオ判定の結果、2位は2年Aクラス、3位は3年Aクラスと幕を閉じた。この僅差は普段から時間がある時にサッカー部の練習に参加していた南雲先輩との差だろう。

 最初から高円寺くんが本気で走っていたら、1年Dクラスの圧勝で終わっていたね。

 その事実に気づいている生徒も多く、私たちは学校中の視線を集めていた。

 

 

「綾小路ぃぃ〜! おまえたち兄妹揃って(はえ)ぇじゃねぇか!!」

 

「うぐっ」

 

 

 須藤くんが背後から清にぃの肩に腕を絡ませて来た。

 勢いもあっておにぃの口から変な声が出た。

 そんな清にぃもかわいい。

 

 

「つか! 今まで手ぇ抜いてた……いや? 足か? ともかく全力じゃなかったのかよ!」

 

「い、いたい。痛いから背中を叩くのはやめてくれ須藤。火事場のバカ力ってやつだ。愛歌が鬼気迫る表情で走って来たからな。オレも頑張ろうと──ぐぎゅ!?」

 

 

 当然、また清にぃから変な声が上がる。

 脇腹を抑えており、隣に鈴音ちゃんがいて、鈴音ちゃんの手を見ると手刀のような形を取っているため、清にぃの脇腹に叩き込んだのだと思われる。

 

 

「それだけじゃ説明できないわね。あの速さは、嘘つき」

 

「ほら清にぃ嘘ばっかつくかr──はうぅっ」

 

「それはアンタもよ。愛歌。この嘘つき兄妹め」

 

 

 突如脳天に衝撃が走り何事かと振り返ったら、千秋ちゃんが笑顔を浮かべながら私の頭に拳骨を落としていた。

 笑顔を浮かべているけど、目は笑ってない。怖いよ千秋ちゃん。

 

 

「堀北さん、この兄妹ちょっとお説教が必要だと思わない?」

 

「奇遇ね松下さん。私もそう思ってたところよ」

 

「2人が怖いよぉ〜。愛里ちゃーん!」

 

「うぇ!? ま、愛歌ちゃん!? み、みんな見てるから! 抱きつかないで!?」

 

「おまえら、頑張って走って来た仲間にする仕打ちじゃ無いぞ……いてぇ」

 

 

 私は愛里ちゃんの元へ避難した。

 あのままじゃほっぺがにぎにぎの刑もされたと思う。本当に痛いからあれはやだ。

 

 

「あなたたち兄妹が最初からそうやって……はぁ。もういいわ」

 

「堀北さんもお疲れ様。気持ち、すごく分かるよ」

 

「ええ、松下さんもご苦労様。お互いこの兄妹相手に苦労させられるわね」

 

 

 好き放題に言われてるが、今は我慢するしか無い。

 すると鈴音ちゃんが清にぃの方を、千秋ちゃんが私の方を見た。

 視線があっただけだが、何を言いたいのかは分かる。

 あんな走りを見せた以上、注目は避けられないね。

 でもその注目されることが目的だ。

 注目されることで、これから龍園くんは余計に悩まされることになるんだから。

 

 

「──それでは、これより本年度体育祭における勝敗の結果を伝える」

 

 結果は赤組の勝ち。最後のリレーなんか、1位〜3位まで全部赤組なんだからやばいよね。

 堀北会長と南雲先輩が赤組にいるんだから負ける筈がなかった。

 次に各クラスの総合得点が発表され、それが終わると、各学年ごとによる順位の発表だ。

 

 1位・Bクラス

 2位・Cクラス

 3位・Dクラス

 4位・Aクラス

 

 

「えっ!? 俺たち3位なん!?」

「うそ!? よかったぁぁぁ!」

 

 

 へぇ。こうなるのね。

 どうやら私と千秋ちゃんが結果を残したのが大きいと思われる。

 お互い午後の推薦競技では多くの1位を獲得した。

 次に最後の1200mリレー。3倍の得点となる競技で、1位を取り150点の追加。

 須藤くんと鈴音ちゃんが抜け、最下位だと思われていたDクラスは3位となった。

 

 これにより赤組として勝ったが総合順位3位のDクラスは−50CP。

 他のクラスも計算すると、1年のCPはこのようになる。

 

 

 Aクラス・824

 Bクラス・753

 Cクラス・542

 Dクラス・342

 

 

 全クラスが後退したことになる。Cクラスとは200PPの差だ。

 それはそうと、葛城くんは大変だろうね。

 Aクラスは最初940CPを持って学校生活をスタートしたけれど、今は824CPにまで減っている。

 Bクラスにいつ刺されてもおかしくない状況だ……クラスメイトからの不安は相当なものだろう。

 

 

「続いて最後に、学年別最優秀選手を発表する」

 

 

 須藤くんの鈴音ちゃんの名前呼びをかけた発表。結果は──

 

 

『──1年Bクラス・柴田颯』

 

 

「くっそぅ! やっぱそうだよなぁ」

 

 

 須藤くんは順調に結果を残していたが、途中から抜け出したこともあって、残念ながら学年別最優秀賞を逃してしまった。

 その結果、鈴音ちゃんのことは名前で呼ぶことは禁止にされてしまう。

 さらに鈴音ちゃんに一方的に須藤くんの条件を飲んでいたため、鈴音ちゃんが今から出す条件を飲んでもらうと約束させた。

 それは、正当な理由なく暴力を振るうことを禁止ずる、こと。

 

 

「そんなことでいいのか?」

 

「そんなこともあなたは守れてないのよ」

 

「うぐっ……わかった。言う通りにする」

 

「ええ。それから私も今回、あなたのように期待に応えることができなかった」

 

「いやでもお前の場合怪我があるだろ」

 

「それでもよ。罰を受けなければ私が気が済まないの。だから須藤くん、あなたが呼びたいのであれば、私のことを下の名前で呼んでも構わないわ」

 

 

 一瞬、須藤くんは鈴音ちゃんが何を言ってるのか理解できなかったが、ゆっくりと状況を把握し、嬉しさのあまりその場で叫びながら、池くんと山内くんを抱きしめていた。

 

 

「それから綾小路さん」

 

「なぁに?」

 

「船上特別試験のことよ。あなたが優待者を当てていたら、綾小路さんが喜ぶことを私が自分で考えてして欲しい……だったわね」

 

 

 てっきりなかったことにされていると思ったけれど、どうやら覚えていたらしい。

 

 

「これからは綾小路さんのこと、愛歌さんって呼ばせて貰うわ……構わないかしら?」

 

「っ!! 鈴音ちゃん! だーい好き!!」

 

「ちょ、ちょっと綾小路さん!?」

 

「あ! 名前!!」

 

「っ……ま、愛歌さん。暑苦しいから離れて欲しいのだけれど」

 

 

 全くもう、恥ずかしがり屋さんなんだから。

 背後から清にぃに、ちょろいな、って言われた気がしたけれど無視。嬉しいものは嬉しいのだ。

 

 

「てっきり忘れられてたと思ってたよ」

 

「有耶無耶にしようと思ったのだけれど……あなたのことだから、もしかしたらそれが原因で怒っていると思ったのよ……まさかと思うけど違うわよね?」

 

「ん〜? どうだろう〜?」

 

「……冗談よね? 愛歌さん」

 

 

 本当の理由は鈴音ちゃんの心を追い詰めるためでした……なんて言えないから、ここは私の方こそ有耶無耶にさせて貰おう。

 いい感じに勘違いしてくれているみたいだし。

 

 

「ねぇ、少しいい? それに妹の方も」

 

 

 すると清にぃが1年Aクラスの神室真澄に話しかけられていた。

 着替えたあと、17時に玄関に兄妹揃って2人で来るように言われる。やっとご対面だね。

 

 これで体育祭は終わりだ。

 生徒たちも帰り支度を済ませて各々のタイミングで帰り始める。

 私と清にぃはクラスで鈴音ちゃんが来るのを待った。

 

 

「今回は龍園くんに完敗だわ」

 

「ああ、龍園に乾杯……すまん冗談だ。だからその手を下ろしてくれ」

 

「まったく……いいえ。今回だけじゃない。あなたや愛歌さんが居なかったら、ずっと龍園くんにやられていた。悔しいけれど、今回の敗北で学んだつもり。1回り成長させて貰ったつもりよ」

 

「鈴音ちゃんなりに頑張ったもんね」

 

「このクラスは強くなるぞ」

 

「ええ。私もそう思う……今日、強く確信した。このクラスならAクラスにも上がれるって。そのために片付けなければいけないことが山積みね。土下座の1つぐらい安いものね」

 

「「土下座?」」

 

「気にしないで。独り言よ。それじゃ2人とも今日はお疲れ様。また」

 

 

 鈴音ちゃんはそう言い残し先に教室を出て行った。

 そうなると必然的に清にぃと2人っきりになる。

 

 

「そろそろ聞いてもいいか?」

 

「私がこの体育祭で何をしてたか、だよね?」

 

 

 清にぃがそれに頷く。

 

 私は今回の体育祭、龍園くんが櫛田さんと結託して鈴音ちゃんを潰しに来ると分かっていたため、行動に出た。

 まず堀北会長に頼み、堀北会長が知る限りでこの学校で過去、監視カメラの死角で問題が起きた場所に、私が作った小型の監視カメラを設置して貰った。

 

 

「スポンサーから支援として送られてきた物で作ったやつだな?」

 

「そう。松尾に頼んで学校の敷地内で手に入らない部品を、ドライヤーや加湿器などのカモフラージュを使って中に埋め込み、送って貰ってそれを組み立てたやつ。計、5つ。50万PPで設置の依頼をした」

 

「流石だな。残りの50万PPは?」

 

 

 残りの50万の内、30万を南雲先輩へと払っている。

 もちろんただ30万をあげた訳じゃない。

 30万PPを支払う代わりに、2年生たちの監視の目を体育祭が始まる前から使わせて貰った。

 丁度南雲先輩からのメールが届き、清にぃへ見せる。

 

 

「……凄いな。生徒の居場所を特定できるのか」

 

「そうだよ。南雲先輩は2年全体を掌握しているみたいなものだからね。その情報網がどれだけの物なのか確認したかったのと、龍園くんや櫛田さんの動きを監視して貰った」

 

「南雲の武器の1つを詳細にしり、龍園と櫛田2人の動向の確認も済ませた訳か。一石二鳥だな」

 

 

 この先、南雲先輩と敵対する事があった場合、その時のために南雲先輩の持つ情報網の出来ることと出来ないことを詳しく確認しておきたかった。

 結果、私の予想以上に凄まじいもので、これが来年になればより精度が上がることを考えれば厄介だね。

 ほぼ特定の生徒の追跡が可能。見失ったとしても、誰がどのエリアに居るのか特定できる。

 体育祭という集団で居る事が多い物だったが、これが生徒たち全員をバラバラに散りばめられた場合、更に精度が上がるだろう。

 

 

「それで残りの20万は?」

 

「それはもう返ってきたよ」

 

「誰かに貸してたのか?」

 

「ううん。預かってて貰ったの。推薦競技でPPは代役を立てるのに消費することは分かってたから、予め少なくしといた。そうしたら櫛田さんを巻き込む口実もできるし、私が大してPPを得られてないって向こうも勘違いさせれるからね」

 

「なるほどな。随分と動き回ったな」

 

「まあね。絶妙に残香を残してきたから、龍園くんはそれを辿ると思うよ。鈴音ちゃんの裏にいる人物を追うとすればするほど、私の存在が浮き彫りになってくるんじゃ無いかな」

 

 

 まぁ、言うほど清にぃは今回行動してないけどね。

 でもその微かな残り香も私の物で上書きしておいた。

 その中には2年も3年も混ぜられているから余計に悩むことだろう。

 

 

「愛歌分かってると思うがこれ以上は不要だ」

 

「うん。もちろん」

 

「よし。それじゃあそろそろ時間だな。行くか」

 

「ん──、疲れた。早く終わらして帰ろう」

 

 

 17時に差し掛かろうとしている。

 私たちは言われた通り玄関に向かう。既に神室さんは到着していて、私たちを待っている状態だった。

 

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

「──俺が直接あいつに怪我を負わせてやったのさ。こうやってな」

 

 

 龍園くんが思い切り廊下へ足を踏みつける。

 誰もいない廊下は、バン、と不気味な音を響かせていた。

 やはり木下さんの怪我は私とぶつかって出来たものではなかった。

 龍園くんに指示され私と衝突し、そのあとに龍園くんが負わせたもの。最低な戦略ね。

 

 

「50万分け前をやるって言ったら承諾したぜ? 金の力ってのは恐ろしいなぁ」

 

「櫛田さんも知ってたのかしら?」

 

 

 私は龍園くんの隣に立ち、私を睨みつけている櫛田さんへと問いかけた。

 

 

「はあ? 知る訳ないじゃない。ただ龍園くんがあなたを──」

 

「黙れよ桔梗。おまえは余計なことを喋んな」

 

「もう遅いわよ龍園くん」

 

 

 私は携帯を取り出して2人に見せる。

 そして今までの会話の録音を2人に聞かせた。

 もしこのまま私に土下座とPPを要求するのであれば、これを証拠に戦うと。

 一瞬、龍園くんの表情から笑みが消えたけれど再び不敵な笑みを浮かべ言い返してくる。

 

 

「少しは学んだってとこか? だが言っただろ? 今話したことは事実でもなんでもねぇ。お前が被害妄想で作り上げた話に付き合ってやっただけなんだよ」

 

「ならその前後を切り抜いて提出するまでよ。それなら今の話が妄想かどうか確認する術はないわ」

 

「もしそうするならオリジナルを出すだけだ。こっちはただの録音じゃねぇ、動画で撮影してある」

 

 

 はぁ。最悪ね。

 最後の最後ぐらい一泡吹かせようと思ったのだけれど、どうやら龍園くんは想定以上の人物だった。

 それだけに私は今回の体育祭での自分の甘さに恥ずかしくなる。もっと考えておくべきだったと。

 

 

「詰みだ鈴音。早く土下座しろ。そして噛み締めるんだな。完全な敗北ってやつを」

 

 

 私に残された手はない。

 大人しく相手の言われた通りにするしか無いわね。

 膝を曲げ地面に膝をつけようとした時、龍園くん端末が震えた。

 大して気にしていなかった龍園くんだが、送られてきたメールを開き耳に押し当てると、驚いた表情を浮かべた。

 

 

「どうしたの? 龍園くん」

 

「おいおい、まじかよ。最高だ。鈴音、テメェの裏で動いてる奴は最高に面白(おもしれ)ぇやつだな!」

 

 

 1人ハイになっている龍園くん。着いていけてない私たちに、龍園くんは誰かから送られてきたファイルを私たちに聞かせてくれた。

 その内容は、先程私の被害妄想として前提に進められ話していた内容。それを更に詳しくしたもの……つまり一連の出来事が全て仕組まれていたと分かるものだった。

 

 

「全て計算してやがった。桔梗が裏切ることも、テメェが俺に完膚なきまでにやられることも! 全部! 鈴音、おまえの裏で糸を引いているやつは最高だぜ」

 

「ちょっと待って……これって、どういうこと!? なんでこの写真を持っている訳!? だってこれまだ参加票リスト作る前じゃない!? しかもこっちは……!?」

 

 

 櫛田さんが明らかに動揺し、周りを見渡している。

 見えないがどうやら話の内容を聞いていると、櫛田さんが龍園くんと密会しているところを撮影されたものが送られてきたみたいね。

 しかも1つは今この状況を撮っている物だった。

 

 

「もうここにはいねぇよ。それに言っただろ? 全部計算されてたんだよ。テメェが裏切ることも」

 

「一体誰が……まさか綾小路さん?」

 

「今ここで決めつけることはしねぇ。だが確かなのは、コイツは鈴音も平田も裏から操っていやがる。なるほどな、確かに面白いものを見させて貰ったぜ。今まで静かに潜んでた奴だ。そう簡単に尻尾を掴まえさせるたまかよ」

 

 

 ああ。これで納得が行った。

 最後のリレーであの兄妹2人が全力で走ったこと。

 そして愛歌さんがあの高円寺くんも誘導して、リレーに参加させたのだと。

 全ては龍園くんの目を欺くために。

 櫛田さんは悔しそうな表情を浮かべ、龍園くんは満足したと言い残し、この場を去っていった。

 

 

「……本当にとんでもない人たちね」

 

 

 私はこの場にいないあの2人の兄妹を思い浮かべてそう言い残した。

 

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 

「──それじゃあ連れてきたから。私はもう行くよ」

 

 

 特別棟へと連れてこられたオレと愛歌。

 そこには杖を手にしている少女、坂柳の姿があった。

 

 

「ええ。ありがとうございます真澄さん。またよろしくお願いしますね」

 

「……はぁ。じゃ」

 

 

 真澄と呼ばれた生徒はオレたちを置いて去っていく。

 どうやらオレたちを呼んだのは目の前にいる坂柳のようだ。

 

 

「ごきげんよう。綾小路清隆くん。そして綾小路愛歌さん」

 

「ごきげんよう。坂柳有栖さん」

 

「ああ。坂柳だったか。ちょっと待ってくれ、メールを送りたい相手がいる」

 

「ええ。ごゆっくりと」

 

「……待たせたな。おまえでいいんだよな坂柳。オレたちを呼んだのは」

 

 

 坂柳は頷くとゆっくりオレたちの方へと歩み寄ってくる。

 そして手を伸ばせば届く位置で止まった。

 早く帰りたいため、何の要件か問う。

 

 

「実はもっと早くお会いしたかったのですが、綾小路くんはそれを望まないと思われずっと機会を伺っていたんです」

 

「その機会が今回来たと?」

 

「ええ。先のリレーでは素晴らしい走りをお見せいただきました。見ている私もとても高揚させられましたよ」

 

「満足頂けたようなら何よりだ。そろそろ本題に入らないか?」

 

「ふふ。そうですね。では改めましてご挨拶を。お久しぶりです綾小路くん。そして綾小路さん。8年と234日ぶりですね」

 

 

 オレと愛歌は顔を見合わせる。

 一瞬、脱落したホワイトルーム生のことを思い出したが、坂柳のような子供は居なかった。

 ならば会った事があるはずがない。

 その頃はオレも愛歌もホワイトルームいたのだから。

 

 

「ああ、私はホワイトルーム生ではありませんのでご心配なく」

 

 

 直後、オレたちのいる廊下の空気が変わる。

 どこか緩みのなったものは消えて無くなり、張り詰め冷たいものへと変わった。

 目の前の少女はオレたちのことを知っている。

 そう確信せざるえない。愛歌が裏切った線も考えておく。

 

 

「嫌なものですよね、相手が一方的に知っていると言うのは。ですがご安心をあなたたちを吹聴して回るつもりはございません」

 

「とても信用ならないな」

 

「私は綾小路さんがアイドルデビューしたあの日から、あなたたちの存在に気づき思い出しました。しかし私は今日まで何もしてこなかった。理由は綾小路くん。ホワイトルーム最高傑作と名高いあなたが表舞台に出てこなかったからです。不用意に目立ちたくないからだったのでしょう? だからこそ私は静観していました。これが信用に足る証拠かと。Dクラスの快進撃の謎は解けました。あなたたち2人がいたのなら当然のこと。どうにも堀北さんの戦略とは思えなかったのです」

 

「うちには他にも参謀が……と言いたいが、信じてくれそうにないな」

 

「はい。あなたが居る以上、誰の名を上げようとも無駄です」

 

 

 コイツはオレたちのことを知っている。

 もうそれは疑いようがない事実だ。

 

 

「退屈な学校生活になると思ってましたが……あなたが表舞台に出てくるのなら、楽しめると言うもの。綾小路清隆くん、あなたと戦える日を楽しみにしております」

 

「そうか。だが1つだけ訂正させてもらう」

 

「なんでしょう?」

 

「坂柳さん、私たち兄妹があなたと会ったのは8年と234日前じゃない。1年と67日前だよ」

 

「1年と67日前……」

 

 

 坂柳がそっと目を閉じ思い出そうとする。

 少しして穏やかな笑みを浮かべると瞼を開いた。

 すると軽く会釈をされる。

 

 

「あの時、海で私を日陰まで運んでくれたのはあなたたち兄妹だったのですね。その説はありがとうございました。あの時のハンカチは寮に置いてあります。お返ししましょうか?」

 

「ハンカチの1つぐらい構わない。無事だったみたいで何よりだ」

 

「ふふ。知らぬ間に借りを使ってしまっていたのですね。いつかこの借りはお返しいたします。偽りの天才であるあなたを葬ることで」

 

 

 坂柳はそう言い残すと再び歩き出し、オレたちを置いて階段へと向かう。

 どうやら話すことは終わったらしい。

 

 

「最後に1ついいか?」

 

「はい。なんでしょう?」

 

「──おまえにオレは倒せるのか?」

 

「……ふ……ふふ。ええ。必ず倒して差し上げます」

 

 

 そう答えた坂柳は今度こそこの場から去って行った。

 坂柳有栖。おまえにオレを倒せるのかどうか楽しみだ……願わくば、どうかオレを葬って欲しい。

 そうすればあの男が間違っていたと、証明されることになるのだから。





最後まで読んで下さりありがとうございました。

長かったですが本当にありがとうございました汗
やっと坂柳と絡めさせれました。嬉しい。

次回からペーパーシャッフル…ではなく、√堀北を少し挟み(2、3話予定)、ペーパーシャッフルの方へと入ろうと思います。


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