綾小路清隆の妹として、全力で支えます   作:ぐれーぷ

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キスイさん、カヤンさん、貝木光さん、_:(´ཀ`*_)⌒)_さん、明日奏さん、落ち着け俺さん、サーたんさん、タイゴさん、ゲスト4さん、寿司勇者ヒロさん、daisannさん、ベルスニカさん、kamikouさん、好評価ありがとうございます。沢山頂いてもし名前抜けていた場合、申し訳ございません。

また沢山の感想、お気に入り登録ありがとうございました。




4限目〜私はあなただけの味方〜

 

 

「──お前らは本当に愚かな生徒たちだな」

 

 遂に迎えた5月1日。私達Dクラスの生徒は今朝、10万ポイントが振り込まれていない事に動揺を隠せずにいた。清にぃにも一応情報を共有したけれど、やっぱり既にこうなる事は予想していた。けれど流石に0だとは思わなかったみたい。過去初めてらしいから仕方ないよ。

 ポイントは振り込まれたと断言する佐枝先生、皆が未だに理解できずにいると高円寺くんが高笑いする。

 

「ははは! なるほど、そういう事だねティーチャー。確かに、ポイントは支給されている。そう0ポイントが、ね?」

 

「どういう事だよ高円寺!? だって毎月10万ポイントが支給されるって……」

 

「私はそう聞いた覚えはないね。そうだろう? マイプリンセス」

 

 その呼び方本当にやめて欲しいな高円寺くん。Dクラスのみんなは大丈夫だけど、他クラスや他学年の人達には絶対誤解させる。

 クラスメイト達の視線が私に集まったので、私は少しだけ恥ずかしい気持ちになった。

 

「えーっと、ごめんちょっと分かんないや。だって佐枝先生は『ポイントは毎月1日に自動的に全生徒へ振り込まれることになっている』って言ってたよ?」

 

「……なるほどね。綾小路さん、確かに茶柱先生は10万ポイントが振り込まれると一言も言ってないわ。あくまでポイントが毎月1日に振り込まれる……つまり私達には1ポイントも支給されてないのよ」

 

「高円寺と堀北2人の言う通りだ。嘆かわしい。これだけヒントを与えてやって自分で気がついたのが数人とはな」

 

 クラスメイト達は悔しそうに下を向いたり、いつもと違った怖い雰囲気を纏う佐枝先生を怖がったりしていた。

 こんな人が来年にはメイド姿になって、腕で胸元を隠してスカートの裾を掴んで、目をキュっとして恥じらうんだよ? やばくない? こんな大事な時だって言うのに、妄想が止まらない。早く2年生になりたい。これ以上想像したら笑顔を浮かべそうなのでやめます。

 私がそんなしょうもない妄想をしていると、平田くんは姿勢を正して先生に質問をしていた。

 

「ポイントが1ポイントも振り込まれなかった理由を教えてください。でなければ僕たちは納得出来ません。それに僕達には知る権利があると思います」

 

 佐枝先生が説明を始めた。遂にみんながこの学校のSシステムを、実力で生徒を測るという意味を知ることになる。

 遅刻欠席98回、授業中の私語や携帯を触った回数391回。たった一ヶ月でこれだよ。空前絶後の記録と言える。不名誉すぎるけどね。

 つまり私達Dクラスは入学祝いで貰った10万という1000クラスポイントを、たった一月で全て失ったのだ。

 後ろから鉛筆の動く音が聞こえて来る。鈴音ちゃんは冷静に状況を分析し、大事なとこをメモしているようだった。

 平田くんがポイント増減の詳細を聞いてたけど佐枝先生は教えてくれない。学校の方針だから仕方ないね。

 

「一ついい事を教えてやろう。仮に今月マイナスを0に抑えたとしても、ポイントは減らないが増えることもない。となれば、来月も振り込まれるポイントは0ということだ。つまりだ、どれだけ遅刻や欠席をしても関係ない。どうだ? 普段からこれらを繰り返すお前達にとっては朗報だろう? 覚えておいて損はないぞ」

 

 生徒達を見下す様に薄い笑みを浮かべながら佐枝先生はそう言った。動揺を隠せない皆の都合など無視して、佐枝先生はSシステムに関しての説明を続けた。用紙を広げて黒板に貼り付け、そこに書かれた各クラスの成績とも言うべき数字に鈴音ちゃんは気づく。その並びがあまりにも綺麗すぎると。

 

「Aクラス940ポイント。Bクラス650ポイント。Cクラス490ポイント……そしてDクラス、0ポイントだ。このクラスポイントの『×100』をした数字が、お前たちのプライベートポイントとして振り込まれる。先に言っておこう、不正は一切行われていない。この一ヶ月、A〜Dの全クラスが同じルールで採点されている」

 

「な、ならなんで他のクラスはそんなにポイントが残ってんだよ!? Aクラスは940って事は9万4千ポイントも今月貰ってるのかよ!? そんなのずるいって!」

 

 池くんは叫ぶ。気持ちは分からなくはない。けれどこの一ヶ月の間、クラスの皆は好き勝手な生活をしてきた。その全ての過ちがこうして結果として返ってきているだけ。自業自得、まさに今私達の状況を表している。そして何人かは気づき始めた。ここ『高度育成高等学校』のクラス分けの実態に。

 

「──最も優秀な生徒はAクラスへ。ダメな生徒はDクラスへと。大手集団塾でもよくある制度だ。つまりここDクラスには不良品が集まると言うことだよ」

 

「っ……!」

 

 鉛筆の音が止まり息を呑む声が聞こえた。どうやらクラス分けの仕組みに鈴音ちゃんはショックを覚えたようだ。鈴音ちゃんの他にもショックを受けている生徒は多い。ましてやDクラスの中でもテストの成績がいい、学力のある生徒は余計にそう。

 人は良くも悪くも周りに影響されやすい。優秀な生徒は優秀な生徒と、不出来な生徒は不出来な生徒と分ける。至極当然、当たり前のことだ。

 

「このポイントが0である限り、僕たちはずっと0のままということですね?」

 

「その通りだ。だが安心するといい平田、寮の部屋は無料だ。それに食事にも無料のモノがある。死にはしないさ」

 

 なんの慰めにもならない。この一ヶ月、クラスは贅沢な暮らしをしてきた。それを我慢しろと言うのは中々に辛い。ストレスは溜まる一方だろう。

 次はクラスポイントについて説明される。今回もし私達が491ポイント残っていればDクラスからCクラスへと昇格していたこと。

 また当校では中間テスト、期末テストで1科目でも赤点を取れば退学になる事実。今回の小テストがもしそうだった場合、赤点を取った7人が退学になっていた。

 そして希望する就職、進学先を叶えられるのはAクラスのみという事実。

 その事実に幸村くんは滅茶苦茶だと反論……ううん、文句を口にした。

 

「さてこの長苦しいHRも終わりだ。中間テストまで残り3週間、できることなら退学を回避してくれ。幾ら私とは言え、受け持ったクラスで退学者が出れば悲しいものだ。お前らが赤点を取らずに乗り切れる方法は、必ずあると確信している。応援しているぞ?」

 

 それを最後に佐枝先生は教室から出て行った。

 知っているとは言え、その後のクラスは酷いものだった。言い争いを始める生徒、項垂れる生徒、なんとか纏めようとする平田くんに、そんな彼と揉める幸村くん。そして仲裁に入る櫛田さん。

 現状このクラスで1番信頼されてるのは櫛田さんと平田くんだ。皆のことは2人に任せて問題なさそう。

 

「鈴音ちゃん大丈夫……?」

 

「AとDの差を聞いた時、ショックを受けていたな。お前も進学組か?」

 

「そんなの誰だってショックを受けるに決まっているわ。入学前に一切の説明がなかった……納得なんてできるはずがない。あなた達兄妹は自分達が不良品だと言われて、ショックではないの?」

 

「オレは別にだな。自分が優秀だとはとても思えない。妥当と言っちゃ妥当だろう」

 

「清にぃはそんな事ないよ。私は心当たりがあるけど……でもそっか、兄妹が同じクラスになる理由もわかったよ」

 

 理解ができない、そう言わんばかりに鈴音ちゃんは私達を見ていた。無理もないよね。自らを不出来だと認めているようなものなんだから。

 

「オレとしちゃ、AだのDだの言う前にポイントの確保をしたいところだな」

 

「そうだねおにぃ。まさかこんな事になるなんて……夢にも思わなかったよ」

 

「……」

 

「なに? どうかした清にぃ?」

 

「いいや、なんでもない。気にしないでくれ」

 

 大丈夫、言いたい事はなんとなく伝わった。よくもまあ、そんな嘘を堂々と……的な事を言いたかったに違いない。

 逆に鈴音ちゃんはプライベートポイントに関しては二の次だと答えた。佐枝先生の言う通りなくても死にはしないと。死にはしないけどそんなのやだ。

 

「あなた達兄妹はポイントどれぐらい残っているのかしら?」

 

「オレは約8万ぐらい残っている」

 

「私は6万ぐらいかな」

 

 おにぃ、流石に気づかれるから私を見るのはやめよう。今ポイント見せてなんて言われたら面倒くさいよ? 

 平田くんが教壇に立ちクラスの今後について話し始めた。隣には櫛田さんが立ってフォローしている。清にぃと鈴音ちゃんも2人に耳を傾けた。でも平田くんも櫛田さんも冷静じゃないね。幾らクラスのためとは言え、そう何度も須藤くんを名指ししたら不快にするだけだ。

 考えてみて欲しい。皆が見ている前で何度も名指しで注意されればまるで自分が全て悪い、そう言われているような気分になってもおかしくない。正直須藤くんが突っかかる部分もあるから、一概に平田くんと櫛田さんが間違っているとも言えないけどね。

 須藤くんは自分を巻き込むなと言い残し、クラスを後にした。流石の櫛田さんも追いかけないみたいだ。

 

「……」

 

「待って綾小路さん。少し話したいことがあるんだ」

 

「ごめんね平田くん。後でもいいかな? お手洗いに行かせて」

 

「あ、ああ。呼び止めてごめんね綾小路さん。うん。後でも構わないよ」

 

「ありがとう」

 

 私は須藤くんを追いかけた。体育館の方に向かっているみたいで付いていく。授業までには戻れるかな。最悪置いていこう。

 

「須藤くん大丈夫?」

 

「綾小路……連れ戻すように言われたのか? 悪いが俺のことはほっといてくれ」

 

「ううん、連れ戻す気はないよ。ただ今日の放課後、バスケの見学行ってもいい?」

 

「え、別にそれはいいけれどよ……俺を連れ戻しに来たんじゃねぇのか?」

 

「なんで? 戻りたいの? あんなに須藤くん須藤くん須藤くんって、名指しして晒し者みたいにされたら、普通誰だって戻りたくないでしょ? 私だったら嫌だなあ」

 

 人は共感される事でその相手に仲間意識を覚える。ましてや今回須藤くんは誰にも庇って貰えず、ただただ事実を突きつけられた。自分が間違っていると彼も分かっている。分かっているからこそ、その事実から逃げ出したくもなるし、受け止められない時が人にはあるのだから。

 今回私がするのは須藤くんの矯正でも、説教でもない。ただ共感してあげる。私はあなただけ(・・)の味方だよ、私だけがあなたの味方をしていると心に植え付ける。それだけでいい。弱っている時の人の心ほど、付け込み安いものはないからね。

 

「それにっ、今は嫌なことを考えてもしょうがないよ。そんなことよりも最近ドリブルの切り返しのタイミングがなんか合わないんだよね。須藤くんは何か意識してる?」

 

「え、あ、えっとな。俺は──」

 

 今頃清にぃは平田くんから放課後に話し合いをしたいって誘われてるんだろうな。

 多分さっき平田くんは私も誘おうとしたんだと思う。放課後にバスケ部の見学しに行く約束しちゃったし断ろう。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

 衝撃の事実にクラスは混乱していた。堀北さえもショックを受けている様だった。そんな堀北に愛歌は心配そうに声をかける。

 

「鈴音ちゃん大丈夫……?」

 

「AとDの差を聞いた時、ショックを受けていたな。お前も進学組か?」

 

「そんなの誰だってショックを受けるに決まっているわ。入学前に一切の説明がなかった……納得なんてできるはずがない。あなた達兄妹は自分達が不良品だと言われて、ショックではないの?」

 

「オレは別にだな。自分が優秀だととても思えない。妥当と言っちゃ妥当だろう」

 

「清にぃはそんな事ないよ。私は心辺りがあるけど……でもそっか、兄妹が同じクラスになる理由もわかったよ」

 

 どうやら世間一般的には同い年の兄妹が、普通同じクラスになる事はない様だ。確かに正直やりにくい部分はある。別々のクラスならもっと情報も集まっていただろう。愛歌だって今よりも自由に動けた筈だ。

 

「オレとしちゃ、AだのDだの言う前にポイントの確保をしたいところだな」

 

「そうだねおにぃ。まさかこんな事になるなんて……夢にも思わなかったよ」

 

「……」

 

「なに? どうかした清にぃ?」

 

「いいや、なんでもない。気にしないでくれ」

 

 我が妹ながらよくもまあ、そんな嘘を堂々と吐けるもんだ。入学式のあとに愛歌が茶柱先生に質問したことは教えてもらっている。入学初日からこの学校の仕組みに気づいていたのは、例えAクラスでも一握りの生徒だろう。

 

「ポイントなんて副産物でしかないわ。茶柱先生も言っていたでしょう? ポイントがなくても生活はできる。実際随所至るところで無料で提供されている物があった」

 

「確かにな。今思えばあれはポイントのない生徒達への救済措置なんだろうな」

 

 この学校のあらゆる場所にヒントはあった。10万もの大金を一ヶ月で使い切るなんて普通有り得ない。どうして無料で提供しているのか? そもそも本当に毎月10万もの大金が支給されるのか? 少しでも疑問に思ったならば聞くべきだ。それをしなかった結果がこれなのだから。

 

「あなた達兄妹はポイントどれぐらい残っているのかしら?」

 

「オレは約8万ぐらい残っている」

 

「私は6万ぐらいかな」

 

 平気で嘘をつく妹が少し怖い。

 その倍の12万ポイントを持っている事をオレは知っている。よくもまあそんなに貢いで貰えたな。

 男子も女子も一度は遊びに行く、か。確かにそうして特に男子と遊んでおけば、 あれ(・・)を実現させた時に大きなメリットになる。

 目指しているもの、狙いを説明された時はおかしくなったのかと思ったが、こうしてポイントが最初に貰った10万よりも増えているのだから流石だ。

 本当に愛歌は思い付き、行動に出るまでがはやい。先を見据えすぎだ。ただ1つ悪い部分を挙げるなら、事前報告ではなく事後報告が殆どなことだな。今のところ問題は無いため注意する必要はない。実際本当に大事なことは事前に言ってくれる。つまりこれはただの粗探しだ。

 

 平田が教壇に立ちクラスの今後について話し始めた。時折櫛田がフォロー入っている。

 だが今回ばかりは失敗だったな。平田も櫛田も。そう何度も個人を相手にしたら、改心はおろか不快にするだけだ。案の定須藤は苛立ちを顕にして「俺を巻き込むな」と言い残し教室を後にした。

 オレは愛歌に袖を引っ張られ目を合わせる。どうやら須藤の事は任せても良さそうだな。

 今思えば須藤と関わりを持ちバスケを始めて距離を縮めたのも、そう遠くない内にこうなることを予期していたのかも知れない。ここまで来ると未来予知……いや、未来既知(・・・・)と言うべきか。

 

「綾小路くんと堀北さんも少しいいかな? 放課後に今後の方針について、対策や計画を話し合いたいんだ。是非君たちにも参加して貰いたい。もちろん綾小路さんにも。どうかな?」

 

「どうしてオレたちなんだ?」

 

「全員に声をかけるつもりだよ。一度に全員に声をかけても参加してくれそうにないからね」

 

「ごめんなさい、私は参加しないわ。話し合いは得意じゃないの」

 

「ただその場にいてくれるだけでもいいんだ。もちろんもし何か思いつけば──」

 

「申し訳ないけれど、私は意味のないことに付き合うほど暇ではないわ。二度は言わない」

 

 堀北はそう言い切ると自分の席に座り直した。平田は残念そうにしていた。オレの方を見てきたのでオレが参加するかどうか確認したいのだろう。

 正直参加してもいい。クラスの大半はこの話し合いに参加する筈だ。だがオレも断った。もし仮に須藤も参加したとして、堀北だけが参加しなかったという状況になった場合、クラスの不協和音は止まらないだろう。

 平田はそれを察してしつこく誘う事はしてこなかった。

 

「あんなに冷たく断る必要もなかっただろ」

 

「はっきりと拒絶した方がお互いのためよ。彼も無駄な時間を使いたくはないでしょうから。それに頭の悪い生徒が揃ってもまともな話し合いになるとは思えないわね」

 

「おまえなあ、そういうとこだぞ」

 

「間違った事を言ったかしら? きっと話し合いよりも今の不満や、お互いに自分を棚に上げた罪の擦り合い、そしてそれを止めようと奮闘する平田くんと櫛田さん。そんな光景しか私には思い浮かばないわね」

 

 簡単に想像できてしまったのがまた悔しい。十中八九堀北の言う通りになるだろう。まともな話し合いになるとは申し訳ないがオレも思っていない。堀北の言葉を借りるなら、まさに時間の無駄だ。個人で対策した方がまだマシかも知れない。

 

「それに私は学校の評価に納得していない。受け入れないわ」

 

「受けいれないって言ってもなあ……」

 

 それ以上は話す事は無いのか会話が途切れたため、オレも自分の席に戻った。

 時間はあっという間に過ぎ、放課後がやって来る。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 

『──1年Dクラスの綾小路清隆くん、綾小路愛歌さん。担任の茶柱先生がお呼びです。職員室まで来てください』

 

 やっぱり私も呼び出されちゃったか。

 クラスに戻ったあと、案の定平田くんから放課後に対策会議なる話し合いに参加して欲しいと誘われた。バスケ部の見学に行く約束をしたからと断ったのだけれど、清にぃと一緒に職員室へと呼ばれてしまった。

 

「ごめん須藤くん。先に行ってて」

 

「わかった。先輩には俺から伝えておく」

 

「うん。ありがとう。それじゃあまた後で」

 

 教室から出ると程なくして清にぃも出てきた。

 

「愛歌、何か心当たりは?」

 

「特に無いよ。強いて言えば多くの男子生徒からポイントを巻き上げた事ぐらい?」

 

「絶対それだろ。1年が10万以上のポイントを持っているなんておかしいからな」

 

 そんな事ないよ。Bクラスの帆波ちゃんは200万近いポイントを持っているんだからね……って清にぃに言えるはずもなく私は焦ったふりをした。

 

「今咎められるとちょっとめんどくさいな」

 

「目標が遠ざかるな」

 

「絶対成功させるけどね。今後(・・)の為にも」

 

 その為には生徒会会長とも一度会わないといけない。それに関しては心配していない。確実に会える方法を知っているから。

 目的の職員室についたので数度ノックしてから扉をそっと開いた。中を覗くけど佐枝先生の姿は見当たらない。

 すると清にぃは近くにいた星之宮先生に声をかけた。

 

「あの、すいません。茶柱先生は居ますか?」

 

「え? サエちゃん? えーっとね、あれ? さっきまでいたんだけど」

 

 え、え? 星之宮先生可愛くない? ちゃんと見たのはこれが初めて。佐枝先生にはメイド服を、星之宮先生には和服を着させたい。この人はきっと恥じらうとかないだろうから、メイド服を着させても可愛いなぐらいで終わりそう。

 

「ちょっと席外してるみたいだから、中に入って待ってたら?」

 

「どうするおにぃ?」

 

「……いえ、じゃあ来るまで廊下で待ってます」

 

 職員室の中にいると嫌でも目立つよね。しかも兄妹揃って待つなんていい注目の的だ。すると星之宮先生もひょこっと廊下に出てきた。

 軽い自己紹介が始まる。星之宮智恵先生。佐枝先生とは親友だと自称し、お互いにサエ、チエと呼び合う仲だとか。黙ってれば美人なのになあ。

 

「2人はどうしてサエちゃんに呼び出されたの? 教えて? ねえねえ」

 

「さあ? 分からないんですよね。なんでだろうな」

 

「私も分からないです。なんでだろうね」

 

「2人とも分かってないんだ……ふーん?」

 

 品定めするかの様な目。やめて欲しいなそういうの。

 

「君達の名前は?」

 

「綾小路清隆です」

 

「私は綾小路愛歌っていいます」

 

「あら、あなたたちが綾小路くんたちね。綾小路さんの噂は聞いてるよ。本当に美人ね綾小路さん。なんでも沢山の男を誑かしたんですって? それも先輩も多数」

 

「人聞きの悪いことを言わないでくださいよ星之宮先生。誘われたから遊んだだけです。せっかく誘って頂いたのに断ったら申し訳ないじゃないですか」

 

「ごめんね? あまりにも綺麗だからつい。羨ましい10代の肌……。綾小路くんも雰囲気イケメンね。かなり格好いいじゃない〜。兄妹揃ってモテるでしょ〜?」

 

 ノリが高校生みたい。佐枝先生とは本当に対極にいる気がする。男子達からは人気がありそうだった。私は嫌いじゃないな。今度時間がある時に佐枝先生の高校時代とか聞いてみよっと。

 清にぃが珍しく嫌そうな表情をしていたから、それを黙って眺めていると佐枝先生がやって来た。

 

「何をしてるんだ星之宮」

 

「いったぁ。何するの!」

 

「うちの生徒に絡んでるからだろ」

 

 2人の言い合いが始まる。これはまた珍しい。生徒指導室へ移動しようとするが、星之宮先生も付いてくる。暇なのかな? 無理にでもついて来ようとした時、星之宮先生に用事がある生徒が現れた。

 

「星之宮先生、少しお時間よろしいでしょうか? 生徒会の件で──あ! 愛歌ちゃん、お疲れ〜」

 

「帆波ちゃんお疲れ様〜。生徒会に入るの?」

 

「うん。入りたいなって思ってる。星之宮先生借りてもいい?」

 

「だ、そうだ星之宮。さっさと行け」

 

「はあ。これ以上からかったら拳骨されそう。またね2人ともっ。今度は私の相手もしてね〜。それじゃあ職員室にでも行きましょうか一之瀬さん」

 

「はい! またね愛歌ちゃん」

 

「うん。バイバイ」

 

 2人と別れ、私達3人は目的の生徒指導室へとやって来た。

 

「それで、オレたち兄妹を呼んだ理由はなんですか?」

 

「その話をする前にちょっとこっちに来い。2人とも私が呼ぶまで黙ってここに入ってろ。いいか? 物音を立てたり、静かにしなかった場合、2人とも即退学だ」

 

 理不尽すぎる。反論しようと清にぃは口を開いたが、バタンと扉は閉められた。訳もわからない状況になったが、すぐに声が聞こえて来る。鈴音ちゃんだ。

 どうやら自分がDクラスへと配属された事に納得してないみたい。当然と言えば当然だよね。

 

(堀北は納得がいかないみたいだな)

 

 清にぃが手話でそう伝えてくる。私も手話で返事を返した。

 

(鈴音ちゃんは自分が優秀だと思ってるからね。Aクラスにいても不思議じゃないけど)

 

(あの社交性だとな。もし単純な学力で全てが決まるなら、須藤や池に山内達は入学すらできていなかったはずだ)

 

(逆に言えば平田くんや櫛田さんがDクラスなのは不思議だよね。Bクラス、ううんAクラスにいてもおかしくないよ)

 

(確かにな。裏を返せばその2人の長所を帳消しにする何かがある。だからDクラスにいるんだろうな)

 

 すると向こうも丁度会話が終わったようだった。

 

「──もういいぞ。出てこい綾小路兄妹」

 

 このタイミングで出るには中々の勇気がいる。どっちから先に出るか揉めていると佐枝先生が脅してきた。

 

「出てこなければ退学にするぞ」

 

 お兄ちゃんなんだから先に出てよ。なんか怖いよ向こう側。仕方ないと呟きながら清にぃは扉を開けた。

 

「いつまで待たせれば気が済むんスかね」

 

「鈴音ちゃんやっほー。さっきぶり」

 

「2人ともどうして……私の話を聞いていたの?」

 

「何か話してるのは分かったが、壁が厚いせいか上手く聞こえなかったな」

 

「そんなことはない。給湯室はこの部屋の声が良く通るぞ?」

 

「……わ、私は全部聞こえてたよ?」

 

 清にぃに睨まれる。ごめん、嘘は良くないから。更に睨まれる。それが兄が妹に対する態度なのか。可愛い妹なのだから許してくれてもいいじゃないか。

 

「さてお前たち兄妹を呼んだ理由を話そう。堀北も最後まで聞いていけ……Aクラスに上がるためのヒントになるかも知れないぞ?」

 

 ここから立ち去ろうとした鈴音ちゃんの足が止まる。どうやら食いついたみたいだ。

 佐枝先生は私と清にぃを見ながら笑みを浮かべる。

 

「お前たちは面白い生徒だな、綾小路兄妹」

 

「茶柱、なんて奇特な苗字を持つ先生には負けますよ」

 

「全国の茶柱さんに土下座してみるか?」

 

 睨んでくるがもはやヤンキーのそれだ。そんな事はどうでもいいと話を進める。クリップボードから見覚えのある入試問題の、解答用紙がゆっくりと12枚並べられていく。

 

「国語、数学、英語、社会、理科、さらには今回の小テストまでもが、2人揃って全てが50点。堀北これが意味するものが何か分かるか?」

 

「そんな、まさか……あなた達狙ってわざと?」

 

「偶然って怖いっスね。まさか愛歌も50点だったなんて」

 

「あくまでもシラをきるか。お前たち兄妹は意図的に50点で揃えた。違うか?」

 

「佐枝先生偶然です。点数操作ができるなら私もおにぃも高得点を狙いますよ」

 

 私と清にぃは偶然を装う。そんな私達を見て驚く鈴音ちゃんと、呆れたとため息をつく佐枝先生。話は終わらない。

 

「ならこれはどう説明する? 学年でも正解率3%の問題を解き、正解率76%の問題を間違える。普通ありえないだろう」

 

 これに関しては私は当て嵌まらない。清にぃと違って難しい問題を私は解かなかった。ただ簡単な問題だけで調整している。

 清にぃと佐枝先生の舌戦が始まるけれど、あくまで偶然を装う清にぃに佐枝先生が諦めた。

 

「あなたたちはどうして、こんなわけのわからないことをしたの?」

 

「どうしても何も偶然だよ鈴音ちゃん」

 

「その通りだ。実は天才だった、そんな設定はないぞ」

 

「どうだかなぁ。ひょっとしたらコイツらはお前よりも頭脳明晰かも知れないぞ堀北」

 

 それ以上鈴音ちゃんを煽らないで。せっかくいい関係築けて来てたんだから。その後も佐枝先生からの疑いは晴れる事はなく、職員会議が始まる時間が迫って来た為、今日のところは解散となった。

 

 さてと私もバスケ部見学しに行きますか。

 

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

「──ごめん! 鈴音ちゃん、清にぃ。私約束があるから先に帰るね! またね」

 

 愛歌はオレたちの返事を聞かず走り去って行った。さてとオレたちも解散するとしよう。帰って休みたい気分だ。

 

「待って」

 

 堀北に呼び止められたが止まらない。オレは早く帰りたいんだ。

 

「さっきの点数本当に偶然なの?」

 

「だからそう言っているだろう。それとも意図的だという根拠があるのか?」

 

「根拠はないけれど……2人揃って全てのテストの点数が50点は異常だわ。2人はAクラスになりたくないの?」

 

「そりゃあなれるものならなりたいさ。堀北はAクラスに並々ならない思いがあるようだな」

 

「いけないかしら? 自分の将来を考え、それを有利にする為に頑張ろうとすることが」

 

「いいや。寧ろそれはいいことだろう」

 

 オレは話を切り上げた。そろそろ本気で帰りたくなって来たので走り出そうか悩んでいると、目の前に立ち塞がられた。

 

「Aクラスに上がる為に協力して綾小路くん」

 

「どうしてオレが……」

 

「なれるものならなりたいのでしょう? なら私に協力しなさい。Aクラスになってみせるわ」

 

「言ってる事わかってるのか? クラス全員の遅刻やサボり癖、そして点数、その全てを改善してやっとスタートラインだ」

 

「……ええ。途方もないわ。できることなら私がDクラスなのは学校側のミス、そう願いたいわね。けれど本当に全部学校側の言う通りなら、他のクラスがAクラスに上がるためのチャンスがあるはずだわ。いいえきっとある」

 

 それは同意だ。でなければ公平性に欠ける。全ての生徒を公平に扱わなければ学校として成り立たない。でなければ生徒によるデモが起きるだろう。

 

「オレは事なかれ主義だ。面倒ことはやめてくれ」

 

「ありがとう綾小路くん。きっとあなたなら協力してくれる、そう信じていたわ」

 

「オレの話聞いてたか? 一言も言ってないぞ」

 

「あなたの心が言ってたもの。私には聞こえたわ」

 

 そこまで行くともはや怖い。オレが協力した所でできることは少ないだろう。下手をすれば……いや、堀北1人でやった方がスムーズに事が運ばれるかも知れない。

 

「あとは綾小路さんね」

 

「愛歌も誘うのか? ならオレは要らないだろ」

 

「あなたたち兄妹、2人の協力が必要なのよ。綾小路くんには私の家来に、綾小路さんには橋渡しになって貰わないと」

 

「家来って……せめて言い方だけでも変えてくれ」

 

「ねえ、綾小路くん」

 

「人の話を聞けよ」

 

「綾小路さんも本当に偶然なのよね?」

 

 何が、とは聞かない。テストのことを言っているのだろう。

 それに関しては愛歌自身に聞かなければ分からない。オレは受験の時に愛歌にテストを50点で揃えるとは言ってない上、お互いに自由にやろうと決めていた。だからオレ自身どうして愛歌がそうしたのか分からない。

 目立ちたくないという理由があったのかも知れない。だがそれだと矛盾する。愛歌は目立ちすぎている。しかも愛歌がこれからやろうとしている事を考えれば……。

 

「きっと偶然だろう。そればっかりは本人に聞いてくれ」

 

「そう……あなた達とはこの一ヶ月それなり時間を共にして来た。綾小路くんがどうしてそうしたのかはまだ分かる。でも綾小路さんに関しては何も分からないのよ」

 

「奇遇だな。オレも愛歌が何を考えているのか分からない。アイツはいつもその場の思いつきで行動に出ることが多いからな」

 

「……ちゃんとあなたも兄なのね。わかったわ、考えがまとまったら連絡するからそのつもりで。また明日、綾小路くん」

 

 そう言って堀北は何処かへと行ってしまった。

 連絡すると言われても……オレ、堀北の連絡先待ってないぞ。





そろそろ匂わせていかなと叩かれそうなので。

ランキング100位でびっくりしました…まさかのランクイン。嬉しい
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