綾小路清隆の妹として、全力で支えます 作:ぐれーぷ
mnomnoさん、露馬さん、オトゥールさん、teonanaさん、Ren・Sumithさん、紡枢さん、TOGUROさん、マルクス田中さん、sallowさん、知らない誰かさん、歪曲王さん、@あaさん、Reikuさん、rumieさん、凶禍さん、ディカプリオさん、ハンス=シャルツさん、(:3 っ)3二二二つさん、アグエロォォさん、雲耀煌めきさん、wktkさん、そして前回予約投稿で後から追加した形になってしまった、リリアさん(さん)、好評価ありがとうございました。
また沢山の感想とお気に入り登録、誤字報告もありがとうございます。
今回は短めです。
「──感心したぞ。まさかお前たちがこんなにも高得点を取れるとは、正直思ってもいなかった。教科を問わず満点を取った生徒が10人以上とはな。私も嬉しいぞ」
テストの結果に大喜びするDクラスの生徒たち。それはもうすごかった。抱きついたり、大声で叫んだり、踊り出す子まで。鈴音ちゃんもようやく緊張がとれたようで、心なしが表情も柔らかい。
特に須藤くんの喜びようが凄かった。でも残念……こうなることを避けたくて早い段階から須藤くんを、勉強するように誘導してたんだけどな。
「席に着け。お前たちが頑張ったのは認める。喜びたくなる気持ちもな──しかし須藤、お前は赤点だ」
須藤くんの名前の上に無情にも一本の赤いラインが引かれる。
須藤くんは勿論のことみんなが反論していた。前回の小テストの赤点ラインが31点、それと同じだと思っていたらしい。
赤点の基準は各クラス毎に設定されており、その求め方は平均点を2で割った点数。今回Dクラスの英語の平均点は79.6点。それを2で割れば39.8になり、四捨五入をされれば40点という結果だ。
私が早めに行動して須藤くんに勉強させたおかげか、別の教科は点数が高くなっているけど、皮肉なことに英語の点数だけは私の知っている未来と変わらなかった。
その結果40点未満である須藤くんは退学。鈴音ちゃんは英語のテストだけ極端に低く、51点を記録していた。それは須藤くんが英語のテストでいい点を取れないと判断し、万が一のために自身の点を削って赤点ラインを下げたのだろう。けれどもそれも意味をなさなかったわけだけど。
クラスのみんなが愕然としている中、清にぃが私たちにだけ聞こえる声で話しかけて来た。
「須藤、残念だったな」
「そうだね。でも仕方ないんじゃない? 鈴音ちゃんがあそこまでしてあげたのに落ちたんだから、圧倒的に本人の実力不足だよ」
「意外だな。オレはお前が須藤のことを気にかけていると思っていた」
「それはそうだよ。本心から寂しいと思ってるよ? でも私からはこれ以上、彼に時間を使うつもりはないかな」
「そうか。愛歌が動いた方が都合がいいんだが……オレもポイントの仕組みが気になって来たところだ。どこまでやれるのか実際に確かめてくるか」
そう言うと清にぃは立ち上がり教室から出て行く。既に佐枝先生の姿は教室にない。清にぃが教室を出て行くと入れ替わるように、鈴音ちゃんが私の方へとやって来た。先程まで須藤くんと話していたけれど、お話は終わったみたいだね。
「ごめんなさい綾小路さん……あなたの期待に私は応えられなかった」
悔しそうに鈴音ちゃんはそう声を絞り出す。視界の端に映った須藤くんも申し訳なさそうにしていた。どうやら2人とも私に罪悪感を覚えているみたいだ。
別に悪いと思わなくていいのに。私が申し訳なくなるよ。私もこんな未来を予想したけど、英語の点数を下げなかったんだから。下げようと思えば下げれたのに。
「鈴音ちゃんは十分頑張ったよ。おにぃもそれは知ってる。だからダメもとで先生にお願いしてみるって」
「そんなの……無理よ。叶えられる訳がない」
「うん。そうだよね……こんなのあんまりだよ。須藤くん勉強嫌いなのに、あんなに頑張ったのに。鈴音ちゃんが1番クラスの誰よりも頑張ってたのに……
「っ……!」
鈴音ちゃんは弾かれたように教室から急いで出て行った。流石にあからさま過ぎだったかな? でもそれはそれで後から鈴音ちゃんに話しかけて貰えるからいっか。気づかなかったとしても後で問い詰められるだろうし。
すると今度は須藤くんが私の下へとやって来る。私はあれかな? 懺悔室にいるシスターか何かかな?
「綾小路、すまねぇ。俺ダメだった」
「……うん」
「堀北がわざと英語の点数を下げてくれたのに……ここまでやって貰って落ちた自分が本当に情けなくて、応援してくれたお前の気持ちにも応えられなくて……本当にわるい。俺はやっぱりクズ──」
そっと彼の頭を撫でた。自分に怒りを覚える気持ちも分かる。悔しいよね、頑張ったのにダメで、あんなに努力したのにって。
「そんな事ないよ。須藤くんは頑張った。確かに結果的に赤点を取ったけど、この2週間須藤くんが頑張ったのを清にぃや私に鈴音ちゃん、そして山内くんと池くんと櫛田さんは知っている。頑張ったんだから悔しいんだよ。全力を出したからこんなにも苦しいんだよ」
「っ、お、おれ……おれ頑張ったんだ。自分はクズなんかじゃないって、皆の期待に応えられるって。やれば出来るんだぞって……ちくしょう」
須藤くんは涙を流さないように堪えようとしている。可愛いなもう。山内くんや池くんは貰い泣きしていて、平田くんも悔しそうにしているし、他の生徒達も目を伏せていた。
「うん。その気持ちを忘れないで須藤くん。須藤くんならきっと立派な人になれる。だから泣くなよ! らしくないぜ? 未来のプロバスケット選手!」
「ッ……泣いてねぇよ。でも……ああ、俺この学校から退学しても頑張る。いつかお前や堀北、クラス皆に会っても恥ずかしくない様に立派に成長して見せるぜ」
「その調子だ須藤プロ! 有名になってもまた私とバスケしてよ?」
背伸びしすぎて足が疲れて来た。攣りそう。身長高いな須藤くん。
それはそうとそろそろかな? 私は端末を取り出し操作した。あなたのお兄ちゃんからの贈り物だよ鈴音ちゃん。
……それとこっち見ないでよ高円寺くん。え? なに? 『とんだ茶番だねマイプリンセス?』うるせっ! こっちも必要なことだからやってるだけで、本当は恥ずかしいわ!
「──全く、とんだ茶番ね。あなた達兄妹は本当に何者?」
私は茶柱先生を追いかけて出て行った綾小路くんを追いかけていた。彼が今から何をしようとしているのか、綾小路さんのおかげで気づいた。いいえ、あれは気付かされたと言った方がいい。
程なくして私は追いついた。2人の様子を窺う。もしかしたら何か綾小路くんの秘密を知ることが出来るかもしれない。彼は間違いなく何か隠し事をしていた。それは彼、綾小路くんだけじゃない。綾小路さんも同じだ。
話を聞いてやはり過去問を入手したのは綾小路くんだと判明した。おかしいとは思った。あの時は聞きそびれたけどやはり彼が裏で動いていた。
綾小路くんはポケットから自身の学生証を取り出し、茶柱先生へと差し出した。何のつもりだと茶柱先生は問う。
「須藤の英語、そのテストの点数を1点売ってください」
高らかに笑う茶柱先生。その後のやり取りで判明したがやはり点数はポイントで買える。
そしてその1点を買うのに必要な点数は──
「──点数を売ったことは今まで1度もないからな。そうだな……10万。特別に今この場で支払う事ができるのであれば、10万ポイントで売ってやろう」
意地悪ね。入学してからこの1ヶ月、たったの1ポイントも使わなかった生徒なんている筈がない。つまり1人で10万ポイントを支払うのは無理だ。そう、1人でなら。
「私も払います」
「堀北……?」
「ほう。まさかお前が来るとはな。予想外だった」
その言い方だとまるで別の誰かが来ると予想していた、綾小路さんが来ると思っていたと言うような口ぶりだった。
「須藤くんを退学にはさせないと言った以上、最後まで彼を見捨てないつもりです。これは私の責任でもあります」
「責任か。ならばお前1人で10万ポイントを支払うべきではないのか?」
そうしたいのは山々だ。けれど私の手元には10万ものポイントはない。その直後、私が持つ学生証が音を鳴らし震えた。通知だ。私の連絡先を知っている生徒は少ない。送り主を私は確認した。
そう……有り難く使わせて貰うわ綾小路さん。
「分かりました。私1人で払わせて頂きます」
「……なんだと?」
「おいおい、正気か堀北。10万ポイント以上持ってる生徒なんて1年でいないぞ」
茶柱先生は目を細め驚いていた。それと綾小路くん。あの時あの場にいて兄であるあなたが知らないはずがない。惚けようったって無駄よ。
「この通り10万ポイント、私は持っています、責任持って私が1人で支払います」
「……ふっ、なるほどな。いいだろう。売ると言った以上、須藤に英語の点数を1点売ろう。確かに受理した。須藤にはお前たちから、退学は取り消されたと伝えておけ」
どこか楽しそうにしている茶柱先生。私はそれが気に入らなかった。この人は担任としての責務を全うしていない。完全にDクラスのことを見捨てているかと言えば、それはそれで断言できないのも事実。普段から私たちを試すような言動が嫌だった。
「どうだ堀北。これで綾小路兄妹がどれほど有能か、Aクラスへ上がるために必要だと、お前にも少しは分かったんじゃないか?」
「……綾小路さんはそうかも知れません。ですが彼、綾小路くんはどうでしょう。今のところ嫌味な生徒にしか見えませんが」
「おいおい。ちゃんと協力したのにそれはないだろ」
「それはどうかしら? テストの点数を兄妹揃って調整したり、過去問を入手しておきながら櫛田さんの手柄にしたり、最後には点数を買うなんて答えを出した。普通じゃないわ」
「それだと愛歌も嫌味な生徒になるな」
「綾小路さんは……違うわ。彼女は私がAクラスに上がるために力を貸してくれているもの」
「オレも力を貸したつもりなんだが」
ええ、それは認めるわ。だけど1度でも綾小路くんが素直に力を、貸してくれたことなんてなかった。それに比べ綾小路さんは素直ね。私が困っているときに助けてくれる。
「……私が、か」
「……? なに?」
「いいや、なんでもない。でもまあ、愛歌は確かにオレよりはDクラスの為に頑張っているな」
「何を今更分かりきったことを」
「雑談はここまでだ。2人とも戻るぞ。もうすぐ授業の時間だ」
茶柱先生はそう言うと先にクラスの方へと歩いて行く。茶柱先生の後を追いかける綾小路くんの脇腹に私は思い切り手刀を叩きつけた。
「ってぇな!? 何すんだよ堀北」
「そう言う気分なのよ。これからはもっと素直になりなさい」
「お前がそれを──っておい!? 危ねぇっ!」
残念、仕留め損ねたわ。
何はともあれこれで本当の本当に、誰1人退学することなく私たちDクラスは中間テストを乗り越えた。
あの後、鈴音ちゃんと清にぃから、クラスで須藤くんの退学が取り消しになった事が伝えられた。
その事実にクラス皆が驚く。そして喜んだ。どうして取り消しになったかは、佐枝先生にクラスの皆には教えてはいけないと言われたらしい。今回だけ特別に、それしか教えてくれなかった。その後、鈴音ちゃんが案の定私の下に来て、
「助かったわ綾小路さん。10万ポイント、なるべく早く返せるよう頑張ってみるわ」
そんな事を言ってきた。私はそれを断った。その10万は堀北生徒会長から貰ったものだ。返すなら堀北生徒会長に返すように私は伝えた。
それを口実に兄妹水入らずで話せばいい。私からも堀北生徒会長にお願いしてみよう。
それで今は放課後。この後、清にぃの部屋で祝勝会をやる事になっている。珍しく鈴音ちゃんも参加だ。私も無事に終わって参加したいな。
「……ああ、すまない。初めまして。僕はこの学園の理事長、坂柳だ。よろしく。堀北くんも忙しい中すまないね」
「いえ。自分達から提案させて頂いた身、貴重な時間を使っていただき感謝します」
「初めましてです。坂柳理事長、ご存じだと思いますが綾小路愛歌です」
「もちろんだよ。早速本題に入らさせてもらうよ? 皆忙しい身だからね」
私は今、堀北生徒会長と坂柳理事長と一緒にいた。こうして直接会うのは初めてだけれど互いに互いを一方的に知っているはず。理事長はガラス越しで。私はパパから話を聞かされて。
ここに堀北生徒会長がいるから、清にぃや私の話をすることはやめたのだろう。私もそっちの方が助かる。
「それじゃあ早速、君たち……綾小路さんの発案だったね。綾小路さんの提案したこの『企画』に関して話そうか」
そう。今私は、前回堀北生徒会長に話した私の成したい事を実現するべく、堀北生徒会長と共に理事長と会っていた。コレがもし実現したなら夢に一歩近づく。今の私にはこれ以外に方法が思い浮かばなかった。
多分無くても上手くやれる。だけど多分じゃダメだ。私の最終目標を達成するには成功率を限りなく100%に近づけなければならない。
「綾小路さん。君には申し訳ないけど正直に言うとね、現状この学校でこれをやるメリットはない」
やっぱりそうなるか。私は事前に準備してきた返事を返す。
「ですがこれが上手くいけばスポンサーが当校に付くかも知れません。そうなればスポンサーからの援助金は言うに及ばず、会社によっては物資の提供で学校生活がより良い物になります」
「確かにそうだね。だけどお金には困ってないんだ。こんな事を聞かれたら税金の無駄遣いだって国民から怒られるだろうけど」
この学校は政府が全てを負担しているため、確かにお金には困らないと思う。けれどお金はあって困るものでもない筈。先生達の給料も上げれるし、生徒達の学ぶ環境も更に良くなると私は思う。それに外とのコネクションは大事だ。
「言いたい事は分かるよ。きっと君がやろうとしている事が上手くいけば、Aクラスで卒業した時に、海外への進学先や就職先が増えることは間違いない。君たちも知っている通りあくまで高い進学率と就職率があるだけで、どこでも100%と言うわけではないからね。選択の幅が増える事はいいことだ」
「ならやるべきだと私は思います。理事長の仰った通り生徒達が卒業した時に、選択出来る未来が1つでも多くなるよう、学校が、そして教師として、全力で応援し応えるべきだと思います」
「……綾小路さん、君は自分のことをよく分かっている。僕の耳にも君の噂は届いた。天から与えられた多くの才を君は余すことなく発揮しているね。君が思っている以上に、君には才能が満ち溢れているよ。だからこそ失敗した時にその才能が霞むのを、僕はみたくない。それに『コレ』が実現した場合、君は
私はここでようやく気づいた。この人は守ろうとしてくれているんだ。清にぃと私のことを。本当にこの人は教師としてまた人として、きっと尊敬されるべき存在なのだろう。
そんな事になればパパが黙っている筈もないのは分かってる。でもだからこそパパが、アイツが存在している限り、成し遂げなければならない。
これが本心からなのか嘘なのかは関係ない。私が信じるのは自分と清にぃだけ。本心だったとしても自分でなんとかする。嘘だったとしても自分でなんとかする。だから既に私は前から準備を始めていた。今第一歩を踏み出さなければならない。私たちに……私に残された時間は僅かなのだから。
「坂柳理事長、私からもよろしいでしょうか?」
「もちろん。堀北くん、君の意見も聞かせて欲しい」
「ありがとうございます。私はこの学校に感謝しています。自分が大きく成長していると実感を抱き、きっとこの学校を無事卒業できた時には、自信に満ち溢れきっとどんな困難が道を阻んだとしても、乗り越えて行けると思っています」
堀北生徒会長は笑みを浮かべている。その笑みはどこか懐かしむようで、また楽しみにするように、そして少し悲しそうに見えた。
「それらも全て偏にこの学校の伝統が、ここで出会った仲間たちが、そして何よりも自分たちを信じ見守ってくれた先生達がいたからこそです。坂柳理事長、先程彼女が仰ったように、どうか彼女を、綾小路愛歌を、この学校の未来溢れる生徒の1人を応援してあげてください。いつも私たちにしてくれるように」
坂柳理事長は静かに考えていた。沈黙が続くこと数分。どこか気が抜けたような声で、苦笑いを坂柳理事長は浮かべた。
「……困ったなあ。それを言われると頷くしかないよ」
「っ! それでは」
堀北生徒会長は少しだけ身を乗り出しながら、やや興奮気味に食い付く。こんな一面もあるんだ。
「生徒会長にそこまで言われたらね。うん。堀北くん、そして綾小路さん。君たち2人の『企画』に僕は賛同する。校長にも僕から話を通しておくよ」
「ありがとうございます! 坂柳理事長なら応援して下さると信じておりました」
「坂柳理事長ありがとうございます。堀北生徒会長もありがとうございました。これで一安心です」
「こんな時ぐらいもっと喜んだらどうだ?」
「まさか許可されるとは思わなくて。嬉しさのあまり冷静になっています」
「そうか。確かに冷静になるだけの時間はあったな」
やっぱり堀北生徒会長も気づいてたのかな? こうして無事、私は自分の夢を叶える為の第一歩を踏み出した。
要件も済んだので帰ろうとしたら、坂柳理事長に呼び止められた。
「堀北くんすまない。綾小路さんと2人で話したいことがある。いいかな?」
「構いません。それでは私はお先に失礼します。綾小路妹もご苦労だった」
「はい。改めてありがとうございました、堀北生徒会長。お気をつけて」
堀北生徒会長が部屋から出たことで、私と坂柳理事長の2人っきりになる。多分そう言うことなんだろう。
「本当に大きくなった。君は知らないかもだけど、僕は前に1度だけ君たち兄妹を見ているんだ。ガラス越しにね」
「そうだったんですね。ではやはり先程の私の存在を知られることになる、というのは……」
「ああ。綾小路先生はきっと許さない筈だ」
「勝手なことをするな、って言いますね。あの人なら」
「もう1度聞くよ。それを知った上で君はコレをやりたいのかい?」
折角だから考えてみる。
ホワイトルーム魔の『4期生』などと呼ばれていた中で、残っていたのは私と清にぃの2人だけ。清にぃの記録を除いた時、私が残っていた頃で、私の記録よりも高い数値を出した生徒は少ない。総合的な記録で見れば清にぃの次に位置している。けれど分野ごとに分ければ私よりも秀でた生徒がいる事も事実。
それを考えた時に私のホワイトルーム生としての価値は高いかも知れないが、最悪居なくても問題なく稼働する。よって消される事もありえるだろう。
けれど……こと清にぃの支え役、言うなればボディガードとして、私よりも秀でた生徒はいない。その一点に関しては断言できる。
「……7:3と言ったところですね。私の身の安全は。危険だと思いますが、それを知った上で私はやりたいと思っております」
「覚悟は決まっているんだね。本当に困った」
「それに関しては申し訳ございません。きっと坂柳理事長の身も危険に晒すことになります」
「綾小路さん、勘違いしているよ。僕が困っているのは、僕の力じゃ君たち兄妹を守りきれる保証がないことだよ」
ありがたい事だ。自分よりも私たちのことを優先に考えてくれているのだから。
「1つだけ確認させて。正直僕には『コレ』をやって君にメリットがあるとは思えない。どうして『コレ』じゃないとダメなんだい?」
「普通に私がやってみたいからですよ。あの場所だとできませんからね」
「……僕のことが信用できないかい?」
「正直に申し上げますとはい。まだ信用できると判断できません。ですが信じてみてもいいかな? とは思ってます」
きっとこの人に私の目指している『モノ』を言っても、誰かに話したりそれを邪魔する事はない。寧ろ手助けしてくれる筈だ。清にぃを守ろうとしてくれた人なんだから。
「綾小路さん。今君が何を思って、何を成し遂げようとしているのか僕には分からない。信じてもらえないだろうけど、最初から僕は、君たちが持ってきたこの『企画』を受理するつもりだった」
「分かってました。坂柳理事長、あなたは先の会話で1度も
寧ろこの『企画』のいい所を深掘りするよう誘導してくれた節さえある。どこまで理解していて、考えて持ってきたのか確認するために。
先程堀北生徒会長にもっと喜んだらどうだと言われたが、途中で坂柳理事長は最終的には認めるだろうと確信してしまい、喜びも徐々に薄れていった。あるのはただ安堵だけ。次のステップに進めてよかった、それぐらいにしか思えなかった。
「さすがだね。有栖も聡明だけど君も娘に負けず劣らずだ」
そういえば坂柳有栖はどうして接触して来ないのだろう? 私の噂は絶対聞いているはず。なら名前も把握しているはずだ。まさか私のことは眼中にない? あくまでも覚えてるのは清にぃだけ? それはそれで悲しい。
他に考えられる可能性としては、清にぃが舞台に出てくるまでは会わないつもりなのかな。清にぃは注目されたいとは思っていないから。
「今日はここまでにしておこう。僕もこの後、用事を控えているからね。これは僕のプライベートアドレスだ。なんでもいい、こんな僕でよければいつでも連絡して来なさい」
「ありがとうございます坂柳理事長。あなたのことを信用できると私の中で答えが出た時、その時に本当に全てを話します。私の目指している終点を」
「その日が来ることを心から待っているよ。気をつけて帰りなさい。夜は暗いからね」
最後の最後まで生徒思いのいい人だ。
さてと、私も祝勝会参加しますか。鈴音ちゃんがいるからね、絶対参加しないと。
須藤くん強化フラグ入社しまーす。これにて第1巻はおしまいです。
坂柳理事長の口調難しいです。
1つ注意点があります。愛歌が景品になる特別試験、PPやCPの代わりに愛歌が〇〇、などといった馬鹿げた展開にはなりませんので。またクラスが増えるなど、原作と乖離するような事はしません。
詳しくは書けませんが皆さんのご期待に応えられるように頑張ります。ハードルの高さは、1mぐらいにしておいてください。そしたらきっと満足していただけます(震え声)
坂柳理事長と綾小路パッパのフルネームはよ公開して…松雄さんの名前も知りたいよ。八神くんの本名も。みんなのフルネーム公開してください…。
そしてもしかしたら、今月最後の更新になると思います。できたら今月中にもう1話だけ更新したいのですが。南雲くんとの会う約束&後日談、ちょっとした日常、どれかになるかもです。多分南雲くんかなぁ。
それではまたよろしくお願いします。最後まで読んでくださりありがとうございました。今後も何卒、よろしくお願いします。感想お待ちしております
〜おまけ〜
真っ白な空間。そこに育つ子供たちは、毎日毎日、教え込まれる。
『綾小路清隆を超える存在になれ』
ある者は綾小路清隆に『恐怖』を抱き。
ある者は綾小路清隆に『憎悪』を抱き。
ある者は綾小路清隆に『恋心』を抱き。
ある者は綾小路清隆を『崇拝』する
これは『憎悪』を抱いた少年と、『道具』として育てられた少女の、とある日のひととき。
「いやじゃないの?」
「どう言う意味かしら?」
「だって……綾小路清隆を引き立てるための『道具』としか見られてないだろ。アンタは」
「それで構わないわ。そのためにわたしは生まれたのだから」
「……壊れてるなアンタ」
「面白いことを言うのね。ここに壊れていない子なんて居ないわよ。あなたもそうでしょう?」
返事はない。少年は黙った。自分は壊れている。『憎悪』にその身を燃やしている。無駄なことだ。わかっているのにも関わらず、やめれない。無駄だと理解している上でやめない。それをバカと言わずなんと言う。
「もう時間ね。それじゃあまたね──くん」
「待って!……もし仮に、仮に俺が綾小路清隆を超えたら。アンタは綾小路清隆に接するみたいに……俺の為に生きてくれるのか?」
少年のそんな問いに少女は振り返ると、万人を魅了する笑顔を浮かべ頷いた。
「ええ。あなたが綾小路清隆を超えたなら、きっとわたしは、あなたの為に生きるわよ」
少女はそう言い残し、少年の前から去っていった