また君と、今度はずっと 〜If you can Cross to tomorrow〜 作:Simca Ⅴ
神様……。
僕は今、あなたを恨むべきか感謝すべきかわかりません。
……いや、感謝すべきなのは分かってるんですよ。
問題はこの状況。
『おー、生まれた生まれたー』
『生まれたばかりの子って、こんなに小さいんだねー』
『スペ、優しく舐めてあげてね?』
『うん、姉さん』
『かぁ……お前も伯父さんになっちゃったか、スペ』
『ちょ、クロ!?』
『
目の前には3頭、それぞれ毛色の違った馬たちが、
……はい、僕が馬として生まれてまだ25分ほどですが、この3頭に代わる代わる舐め回されています。
いやぁ、びっくりしたのビッグ○ーターとはこのことを言うんだろうか?*1
狭い産道を通って、生まれ落ちたら藁の上、慌てて羊水を吐き出してから母馬らしき栗毛の牝馬にずっと舐めまわされていましたが、20分ほど経ったら何とか足に力を入れて立てる様になりました。
「おぉ……」
「やった。立ったぞ!」
「奇跡だ、奇跡の子が生まれた!」
見守っていた厩務員たちは一斉に……母馬や仔馬、それに他の馬が驚かないよう、静かに歓声をあげて喜びを分かち合っているのが聞こえた。
……馬に転生したばかりなせいか、それとも馬になってしまったせいなのかは分からないけど、人の言葉が若干遠いように思う。
「美鶴、おめでとう。あれはお前の馬だ」
「私の……馬」
ふとそんな声がして目を向けたら、
父親らしき男性は緑のポロシャツに帽子を被った出立ち。
他の人たちが一律に青い服を着ているということは、この人たちは牧場の職員で、親娘のほうは、どうやら違うらしい。
……いやでも、もしかして牧場主のご家族かな?
お父さんと思われる男性は優しく微笑んでいて、娘ちゃんも……あらら、泣いてる……。
そんな時、男性のすぐそばにいた別の厩務員の男性の襟首を後ろから喰む牡馬たちの姿が見えた。
「お? おいおいおい、何だ、お前たちも気になるのか?」
実は、僕が生まれてからずっと2頭の牡馬から見られていたんだ。
……僕、何かしましたかね?とか思っていたんだけども、その視線からして、どうやら僕が生まれてから立つまでをずっと見守ってくれていたらしい。ご近所さん?親戚?何にしても僕は立った。立ったぞー!
……でも、生まれたばかりの仔馬に牡馬なんて近づけていいものなの?
芦毛と黒鹿毛の馬、それぞれを撫でている親娘さんがある男性に視線を向けた。
多分、ここの現場で偉い人だろうか。
その人は軽くため息を吐きつつ……え? 頷いちゃった?
「……しょうがないな。今回だけですよ? 本来なら他の牡馬が仔馬を殺しかねないのに……」
え? それ、ホントにいいの?
すると娘ちゃんがこう言った。
「この子たちがそんなことするはずないです」
……いやいや、娘ちゃん、そのお馬さんたちに信頼寄せすぎでしょ、えぇぇ……。
僕が困惑しているのも知らないで、結局、その二頭のお馬さんたちも俺とお母ちゃんのいる馬房に入ってきた。
で、今こんな状態なわけでして……。
先ほどのお馬さんたちの会話を要約すると。
僕を舐め回してくれてる二頭の牡馬はスペとクロという。
前者は黒鹿毛のお馬さんで、後者は芦毛で白い馬体のお馬さん。
先ほどの会話からすると、クロは、この僕の新たな人生……いや、馬生というべきか。における僕のお父ちゃん。
で、スペは、僕のオジサン?にあたる馬らしい。
そして、もう一頭の栗毛の牝馬、この人、……いや、この馬が、今生における僕のお母ちゃんになるらしい。
うーん……スペとクロって、どこかで見覚えがあるんだけども……。
「それにしても、奇跡の子か……」
既視感の正体を慌てて前世の記憶を掘り返して考えていたら、美鶴ちゃん───先ほどの会話からして、今生の馬生における僕の馬主さんだと思うが、その美鶴ちゃんのお父さんが……多分牧場長のおじさんらしき人にそんなことを言ってた。
……さっきも誰かが言ってたな、「奇跡の子」って。
一体どういうこと?
美鶴ちゃんのお父さんが感慨に耽っている一方で、二人の会話を慎重に拾ってみると、牧場長はこう言った。
「そう呼ばれるのはある意味当然かもしれませんね……下手すりゃ何年か前にオースミキャンディが焼け死んでたかもしれないのに、それをあのクロスとスペが救ったんですもん、そして、今回生まれたのはクロスの子で、スペはこれで伯父さんになった。こんな巡り合わせ、奇跡としか言いようが無いです」
……え? 待って。
「オースミキャンディ」って今言った?
僕の今生の母ちゃんがオースミキャンディだって??
……何で僕がこんな疑問符を付けて困惑しているかといえば、オースミキャンディという馬のことを知ってるからだ。
実馬スペシャルウィークのことを調べていたらWikiにその名前があって、スペシャルウィークの半姉。そして、……確か、火事で焼け死んでいたはず。
しかも、オースミキャンディが早くに焼死したから、当然、僕の知っている競馬の歴史(と言っても素人に毛が生えた程度の知識でしかないが)では、オースミキャンディ産駒など存在しなかった。
ということは……。
まさかと思って、スペ……多分、スペシャルウィーク本
「クロスクロウ」───ネームプレートには確かにその名前が刻まれていた。
僕が知ってる歴史では凱旋門賞で亡くなったはずの、《日本競馬史の尺図》。
その
『おーい、坊や。大丈夫ー?』
『ボーッとしてるね』
『多分疲れてるんだろう……あとはそっとしておこうか』
『だね』
そう解釈した今生の父ちゃん───クロスクロウは、スペシャルウィークを連れて自分たちの馬房に戻っていく。
……まだちゃんと
正直言って……眠い……。
前回反則技と言ってたことについて。
理由は二つ。
一つは、このようなショートストーリー形式での形式は考えていなかったこと。
いつものストーリーを見ている方々なら分かるかもしれませんが、あれらと比べて10分の1の短さになっています。
なるべくならガッツリと書き綴って投稿するところなんですが、約10,000文字の1話を書き上げるだけで大体二週間掛かっているので、いい加減これだと、読んでる方も描いてる方ももどかしくて仕方ない、と思い始めました。
かといって、一週間に10,000文字規模の1話を投稿し続けるのはやはり厳しい。
……なので、1500〜2500文字の規模で1話に仕上げていったほうが、思いついたネタをガンガン書き綴っていけるかなと思いました。
そして、二つ目は、クロススキッパーの中身を転生者にする予定が無かったこと。
馬の思考回路というものはあまり理解できなかったし、どう描写するべきかがわからなくて感覚も掴めずじまい。
クロススキッパー視点で物語を展開させることをなるべく避けていたのはそのためでしたが、その副作用で実馬編が稼働できないという有様でした。
何より、ハーメルンでは転生競走馬がウマ娘になったパターンの話が多くて、これを採用してしまうとありきたりになってしまうと懸念していたために、別の解決策を1年ぐらい模索していたんですが、何も浮かばず……。
ウマ娘編だけ稼働させていたのはそれが理由だったんですが、やはり基礎を疎かにしている事実を認識せざるを得ず。
そこで、このようになりました。
最後に一つ。
実馬編をお待ち頂いていた皆様。
大変、お待たせして申し訳ありませんでした。
今作に望むものは?
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コメディ!
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シリアス……!
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スポ根!
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哀愁……
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ハッピーエンド!
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曇らせ、鬱展開……
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