また君と、今度はずっと 〜If you can Cross to tomorrow〜 作:Simca Ⅴ
あれからあっという間に数ヶ月が過ぎました。
たった3ヶ月ぐらいなのに、あっという間に自分の身体が大きくなったことに未だに実感を持てないでいる。
あ、ちなみに幼名が決まりました。
その名は───、
「あぁっ!? ホッパーくんが脱柵してる!?」
ワハハ、捕まえられるなら捕まえてみなよー!
はい、幼名は「ホッパー」に決まりました。
多分これは一生ものかもしれない。
普通なら、サラブレッドに生まれたからには、競走馬になるのが鉄板だと僕は思い込んでいた。
だから「ホッパー」って名前も、いつかは競走馬としての名前に置き換えられる仮の名だと思っていた。
ところが。
……さっき、「生まれてから3ヶ月ぐらい」って、僕、言ってたよね?
牧場長や、
ならば、3ヶ月後としたら、大雑把に考えても、5〜10月ぐらいになるはず。
ところが。(二回目)
今、暦の上では、なんと、2001年の1月!
しかも、ここは北海道!
つまり冬! 雪! 寒い! 以上!というわけである。
……逆算すると、僕はどうやら2000年10月に生まれたらしい。
うーん……何でこんな時期に?
どうしても気になって、僕が生まれた時から度々見に来てくれる宮崎親娘や、牧場長や厩務員さんたちの会話に聞き耳を立てつつ、事態の把握に努めた結果。
断片的な情報を繋げて、分かったことは四つ。
①この世界におけるクロスクロウは、どうやら凱旋門賞に出走する前に引退してしまったらしいこと。
②引退の原因になった病気? 疾患? だかのせいでクロスクロウがいつお亡くなりになるか分からないことに、宮崎親娘が危機感を抱いたこと
③二つ目の理由に関連して、一頭でも多くクロスクロウ産駒を残そうとした結果、本来ならやらないような時期にオースミキャンディに種付けした結果、生まれたのが僕だということ
④日本における競走馬としては遅生まれに輪をかけたような季節はずれに僕が生まれたので、宮崎親娘(主に親父さんの主導らしいが)は僕を競走馬ではなく乗馬として育てていくつもり、ということ
……ちょっと待って。
そもそも何故、クロスクロウが引退する羽目に?
理由は聞くよりも察するほうが早かった。
『ゴホッ、ゲホッ、グホッ……』
『おとーちゃん、大丈夫?』
『あ、あぁ、ホッパー、なんでもない、大丈夫だから……』
生まれて間もない頃、お父ちゃんであるクロスクロウは苦しそうに咳き込んでいた。
それを見ていた厩務員の人が、馬用の酸素吸入機を用意して、クロスクロウに充てがっていたのも見た。
どう見ても大丈夫なんかじゃない……。嫌だよ、今生でもお父ちゃんを亡くすなんて!
その原因がどうしても知りたかったので、こうして馬房を脱走して、牧場の母屋に向かっていたら、その軒先の窓から見えたあるものに気付いた。
それはやはり、凱旋門を象った銀のトロフィー───ではなく、
『金色で……大きなゴブレット?』
大きさは、人間の大人が両手で持たないとならないほど。
表面には何やら人が象られている。
……わからないぞ? こんなトロフィー見たことない*1。
「こら、ホッパー!」
『ギクッ……!』
やばっ、厩務員のお姉ちゃんに追いつかれた!
……あ! いいもの見っけ!!
「あ、ホッパー! こら、待ちなさーい!!」
いっせーの、せーっ!
ぴょんぴょんと跳ねて、目の前の柵を飛び越えて、雪の地面に無事着地。
「はぁ……はぁ……はぁ……も、もう! 柵を飛び越えてくなんて危ないって何度も言ってるでしょ!?」
ごめんね。
こんな無茶はこれっきりにするからさ、約束する。一応。
『どうしたの? ホッパー』
「あ、スペシャルウィーク……」
『スペおじさん!』
『厩務員さんにいじめられた?』
『うぅん、違うよ。遊んでもらっただけ』
スペシャルウィークはホッパーを追いかけてきた厩務員にあらぬ疑いの目を向けるところであったが、ホッパーから事情を聞いてそれは霧散するが。
『はぁ……ホッパー、厩務員さんを振り回しちゃダメだよ?』
『ごめんね、おじさん。どうしても聞きたいことができたんだ』
『聞きたいこと?』
『うん』
「スペシャルウィーク。……あなたに任せても大丈夫?」
厩務員は恐る恐るスペシャルウィークにそう尋ねた。
スペシャルウィークはその質問を理解したように頷きながら小さく嘶いた。
「……分かったよ。時間になったらまた馬房に戻すからね?」
『『はーい』』
馬はそもそも体温が高い動物であり、寒さにもある程度は強い。
しかし、やはり北海道の寒さは極寒であり、スペおじさんも防寒用の馬着を着てるし、僕は馬房から脱走する際に申し訳程度ながら羽織ってきた……ただ、走り回っていたから気付かなかったけど、止まった途端寒くなってきた……。
『大丈夫?』
そう言ってスペおじさんはまだ雪の残ってる地面に腹這いになり、僕を包み込むような形で温めてくれた。
『うん、大丈夫だよ……』
『……聞きたいことって、何かな?』
『……実はさ……』
この時、僕は自分が今日脱柵してきた理由をスペおじさんに話した。
先ほどの母屋の窓から金色の優勝カップみたいなものを見かけたことも。何故、
スペおじさんは静かに話を聞いてくれた後、重い口を開いて、こう呟いた。
『……これは、ボクが、クロから聞いた話なんだけどもね』
そして語られた内容について、まず僕の推測は当たっていた。しかし、予想を遥かに超える、衝撃の真実が待っていた。
ここから#04「英雄譚①」に繋がりますので、前以てそちらを読んでいただければ幸いです。
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コメディ!
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シリアス……!
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スポ根!
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哀愁……
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ハッピーエンド!
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曇らせ、鬱展開……
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