また君と、今度はずっと 〜If you can Cross to tomorrow〜   作:Simca Ⅴ

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後編は完成させるのがかなりの難産でした。
実際に第51回有馬記念のレース状況を見て実況を聞き、それを文章に起こしつつ、そこにオリジナル要素を書き加えて、と……。
やってみれば案外時間はかからなかったものの、問題があったのは気持ちの入れ方。
一番辛かったのは、レース実況を聞きつつ音楽は同時には聴けないことでモチベーションの維持やアップが保てなくて……。
ふと気分転換に少し昔の歌丸師匠が司会やってた頃の笑点を見たお陰で少し元気になって、その勢いのまま書き上げました。
歌丸師匠、円楽師匠、ホントにありがとうございました……。

※2022年12月22日追記……ノイジースズカに関する部分に修正を加えました。その他にも注釈を増やしてみました。

とにかく、今年の有馬記念が始まる前に間に合って良かった……。
疲れたぁ!


#??B面『英雄譚② 二つの有馬記念・後編』※2022年12月22日修正

 ─── 2006年12月24日。中山競馬場。

 第51回有馬記念(G1)

 芝右2500m / 天候 : 晴 / 芝 : 良

(枠番)(馬番)(馬名)(騎手名)

1 1オロールクロアットO・ペリーオ

2 2デルタブルース石田泰成

2 3ドリームパスポート海老奈仁義

3 4ディープインパクト拓 勇鷹

3 5ダイワメジャーM・デモーロ

4 6スイープトウショウ生沿健司

4 7コスモバルク木十嵐不雪

5 8メイショウサムソン石端真守

5 9トウショウナイト撫澤智治

6 10クロススキッパー柴畑由臣

6 11スウィフトカレント縦峰則大

7 12メジロシクローヌ細井舟子

7 13シムーンカルマ外田幸宏

8 14ブエナビスタ桂 玉樹

8 15ノイジースズカ拓 孝次郎

8 16キングカメハメハ安堂勝海

 

『やぁ、ホッパーさん!』

『ホッパーどん(さん)!? なんで有馬記念に?』

 返し馬の最中、トウショウナイトとメイショウサムソンと顔を合わせたクロススキッパーはそんなことを聞かれた。

『やぁ、ナイトくん、サムくん、久しぶりだね!』

「おっとっと、ホッパーくん!?」

 

【返し馬の最中ですが、10番クロススキッパーが、8番のメイショウサムソン、9番のトウショウナイトに近づいて行きました】

 

 クロススキッパーは、メイショウサムソン、トウショウナイトたちと頭や鼻を擦り寄せてる仕草を見せた。

 

【二頭もビックリするどころか、クロススキッパーとハグをしているみたいですね?】

【メイショウサムソンは栗東でクロススキッパーとよく併走していますからね。ただトウショウナイトの場合は美浦所属ですが?】

【確かクロススキッパーとトウショウナイトは京都記念と安田記念で真っ向勝負をしてましたが……ただ、そこまで仲は悪くないようです】

【父のクロスクロウもこんな感じだったらしいですが、その気質は実の息子にも受け継がれているみたいですね】

 

『ホッパーさん!? まさかこんなところで会えるなんて!?』

『え、ホッパーさんってマイラーじゃなかったんかい!?』

『カメくんもブルースくんも元気そうだな。足の調子は悪くないみたいだね、いやぁ、良かった良かった』

 

【今度はキングカメハメハとデルタブルースがクロススキッパーに寄って行きましたね】

【おっと? ダイワメジャーも行きましたね】

 

『やいやい、カメ。ここまで来たなら百年目!』

『メジャーくん、君も来たんだね?』

『あ、ホッパーさん、ちわーっす! おい、カメ、一昨年のダービーと去年の天皇賞・秋とマイルCSではよくもやってくれたな。今回はお前よりも早くゴールラインを駆け抜けてやるぜ!!』

『いいよ、望むところだよ』

『そこのデルタ何ちゃら、お前にも負けないからな!』

『えっと……』

 ダイワメジャーに詰め寄られたデルタブルース。しかし、

 

『……名前なんだっけ?』

 

 ズコー……。

 

【ダ、ダイワメジャー転倒!?】

【大丈夫でしょうか……あ、大丈夫みたいですね】

 

 威勢よく絡んで行ったのに、「名前なんだっけ?」と返されてしまったダイワメジャー、ズッコケるものの、すぐに立ち直って言った。

『俺だよ、俺! ダイワメジャー!』

『えっと……ごめんなさい、どちら様ですか?』

 その状況に、もしクロススキッパーが(ウマ娘)だったなら間違いなく頭を抱えていただろう。が、何とか場を取り成した。

『あぁえっと、ブルースくん、この(ヒト)がダイワメジャー。メジャーくん、彼はデルタブルースくん』

 そういえばこの二頭は正面対決したことがない。

 片やダイワメジャーといえばマイルから中距離路線が主戦場。

 それに対してデルタブルースはステイヤーであり、シニア期に入ってからは2200mより短いレースには出走していなかった。

 そのデルタブルース、「ダイワメジャー」の名前を聞いて思い出したかのように言った。

『……あ。ダメジャー、コレジャー、炊飯ジャー!の』

『そうそのダメジャー……って、誰がダメだってコラァ!?』

『いやぁ、悪かったって、思い出した。ホッパーさんがそう教えてくれたんだった。……ですよね?』

『ギクゥッ』

『あ、今ギクって言った。さてはホッパー先輩、俺のこと「ダメジャー」だなんてこいつに吹き込んだんですね!? 初対面なのになんて事してくれるんですか!!』

『いやぁ、だって、君ら同期のはずなのに話したことのない、言うなれば友達の友達の話を僕がするなら名前を覚えやすくしたほうがいいかなと……』

『だとしても、もうちょっとマシなのを……』

『良いじゃない、ダメジャーくん』

『良いのにダメジャーって……www』

『あー、もうっ! カメもナイトも!』

『まぁまぁ、ダメジャーくん、ホッパーさんだって悪気があったわけじゃないんだから』

『そうだよ。ダイワメジャーくん。僕ら、気が付けばいつもホッパーさんのお世話になってるじゃん』

『そりゃそうだけどさ……』

『だってホッパーさん、僕のこと、レース中に「周りが見えなくなる癖がある」って教えてくれたし。それを気にしてダービー*1を走ってみたら、無事に1着になれましたし。ホッパーさんがいなかったら、その後の天皇賞・秋もマイルチャンピオンシップもきっと走れなかったんだろうな、って*2

『それなら俺もだよ、カメくん?と同じ感じで。未勝利を中々勝てなくて焦っていた時にホッパーさんが併せ馬してくれて。そのお陰で未勝利も勝てた*3し、青葉賞はそこそこ良かったし、そのまま目黒記念に出て勝てたし*4*5

『そりゃ、俺だってホッパー先輩と何度か併せ馬してもらって色々アドバイス貰ったけどさぁ……じゃぁ、俺がダービー負けたのって先輩がカメに入れ知恵したから?』

『あ、メジャー先輩。おい(自分)も似た様なことあったど(ありました)。ダービーでおいがブエナちゃんに負けたん(負けたの)も先輩がブエナちゃんに入れ知恵したせいらしゅうて(らしくて)*6

『ちょ、サム』

『あー、やっぱり! 先輩、なんで!?……って、痛ったぁ!?』

『失礼ね、ダメジャーさん。ダービーで勝ったのは私の実力なのに。……ちょっとは騎手の拓さんのお陰でもあるけど』

『お止しなさいビスタ』

 

【ブエナビスタがダイワメジャーにタックル!?】

【あ、でも、メジロシクローヌとクロススキッパーが空かさず止めに入りましたね……】

 

『ちょ、何すんだよ?』

『メジャーくん、ストップ。じゃないと』

『……じゃないと?』

『僕も君のこと、「ダメダメのダメジャーくん」って呼ぶよ?』

『そ、それだけは勘弁してください!』

 

 恐らく人の姿をしていたなら五体投地していたほどにダメジャー、もといダイワメジャーはクロススキッパーに頭を下げた。

 

『あなた、メイショウサムソンさんと仰いましたね?』

『え、えぇ、その……あなたは?』

『私は……』

『ゲゲッ、シクローヌ嬢!?』

 

【おっと!? 今度はデルタブルースがメジロシクローヌに頭を下げた……!?】

【私たちの目の前にいるのは競走馬たちですが、反応が一々人間臭くなってますね……何だか見覚えがありますが】

 

『……ブルースさん、どうしたの?』

『サムくん、ダメジャーくん、カメくん、ナイトくん、ヤバイよ! この(ヒト)、ホントにヤバいよ!!』

『何を大袈裟な……高々フランスで勝ってきた程度ですのよ? それで(ヒト)狂人(バーサーカー)扱いだなんて失礼だと思いませんこと?』

『いや、セイランよ。兄ちゃんはそういう意味の「ヤバい」って意味じゃないかt』

『兄上はお黙りなさい』

『あ、はい……』

 フランスで勝ってきた。そんな一言からキングカメハメハは自身が()()()()レースの名を出してみた。

『フランスで勝ってきたって、ジャック・ル・マロワ賞*7を?』

『あなたは何を言ってるのかしら? 凱旋門賞*8よ』

『へー、凱旋門……『『『えゑゑゑゑゑヱェェェッ!!!?』』』』

 驚きの事実を告げられたカメことキングカメハメハとトウショウナイトとメイショウサムソン、それにデルタブルースと、さっきまで頭を下げていたダイワメジャーまでもが再び、これでもかと頭を垂れるという異常事態に……。

『『『『『申し訳ございませんでした(あいもはんやった)!』』』』』

『ふんっ。メイショウサムソンさんと、あと、ダイワメジャーさんといいましたわね? 競走の世界はやり直しが効かない一発勝負*9。それが常識です。なのに、さっきっから聞いてれば、まるで兄上のせいで自分たちが勝ちを逃したような言い草ではないですか。でも、どちらのレースも兄上は出走しておられないはず。……そうですよね、兄上』

 そう尋ねられて首がもげそうな勢いで肯定するクロススキッパー。

『そもそも兄上は妨害するような姑息な真似をするほどの舐め腐った駄馬(ダメニンゲン)でもない。それどころか、兄上はただの併せ馬だけでなく、一緒に走った相手の様子を事細かく見て、どうすれば勝てるかすらご教授してくださるのよ? こんな()()()、中々おりませんでしょうに。それも併走した相手には公平にそれを伝えてくれる。そのチャンスを生かすも殺すも貴方達、いえ、()()()次第でしょう? もちろん、ビスタは兄上のアドバイスに従ったまでのこと。そのチャンスを活かして勝利した。それだけのこと。結局、勝ちも負けも己の実力に依るもの。他馬(他人)のせいにしている暇がおありなら己を磨きなさい』

『お義姉(ねえ)さま……流石に言いすぎです……』

『これぐらい言わねばなりませんわ。ビスタこそ、あなたも私と同じく「()()()()()」の肩書きを背負っているのでしょう? しかもその内の一つはあなたのお父様に続いて()()()()()()()()()()()()()も含まれていて、あなたが誇るその勝利を貶されたのでしょう? もっと怒っていいですわよビスタ』

『そうよそうよ!』

 そう同意したのは、メジロシクローヌのライバル、スイープトウショウ。ダメジャー、もといダイワメジャーが早速嫌な顔をした。

『ゲッ、スイープサン!?』

『そもそも去年の天皇賞・秋を勝ったのは他ならぬ私よ? な・の・に、勝利した私を差し置いて、何勝手にカメとばかりバチバチやってんのかしら? だからあんたはダメジャーなのよ!!』

『ガーン!!』

 

『……ねぇ、日本の馬って毎回こんな感じなのかい?』

『あ、あははは……』

 

【いつの間にかクロススキッパーを中心に輪ができてます】

【海外から参戦のオロールクロアット、何だか引いてますが……】

 

 主に引いてる原因は牝馬集団からの圧……なのだが、

 

『ねぇねぇねぇ、そんな事より走ろうよ?』

『んだんだ。ごちゃごちゃ言うより勝負で決着つけりゃ良いべ』

『みんな、ノイチャンとバルククンの言う通りダヨ』

 

 そんな所に割って入ったのは、栗毛の牝馬と、二頭の牡馬。片方は芦毛でもう片方は鹿毛だ。牝馬は緑色の、牡馬のうち鹿毛の馬は赤をベースに黄色が入ったメンコを付けていた。

 

『……カルマ』

 

 赤いメンコを付けた牡馬が視界に入った瞬間、殺意のような波動を漏らしながら、歩みを進めるメジロシクローヌ。

 

『ちょ、ステイ、ステイ、シクローヌサン!?』

『……』

『あ、ははははっ、じゃぁボクはここで……!』

 

 メジロシクローヌが「カルマ」と呼んだ馬は慌てて逃げ出したが、

 

『あれ、カルマくん、どうしたの?』

 

 そこに立ち塞がったのは、

 

『んぁああぁっ、ディープくん!? オロールくん!? ごめん、匿って!!』

 

 カルマは芦毛と鹿毛の牡馬たちにメジロシクローヌとの盾になってもらい、隠れようとする。……が、悲しいかな。まずカルマが「ディープくん」と呼んだ鹿毛の牡馬の体重は440kgほどしかなく、馬体もどちらかといえば小さかった。

 芦毛の「オロールくん」の馬体重も450kgが精々。

 一方でカルマはそれより50kgぐらい重く、つまり馬体は「ディープくん」や「オロールくん」よりも大きかった。

 当然、追いかけてきたメジロシクローヌから隠れも逃げられも出来ず。

 

『こら、待ちなさい!!』

『や、ヤダ、イヤです、ごめんなさい!』

『どうどうどう、ストップだよセイラン!』

「セイラン、止まって。ストップ!」

 

 このままだとディープくんとオロールくんの周りで追いかけっこを始めかねなかったので、クロススキッパーが慌てて止めに入る。

 見かねた厩務員もやってきて一時は騒然となるが、

 

「……ブルルルッ!」

 

 厩務員とクロススキッパーに止めに入られて、漸くメジロシクローヌも大人しくなった。

 

【いやぁ、一瞬ヒヤッとしましたね。シムーンカルマが視界に入った瞬間、メジロシクローヌが追いかけ回すなんて】

【メジロシクローヌは馬っ気が出た様な感じではなく、何か怒ってる感じでしたね……しかも、オロールクロアットとディープインパクトの周りで始めてしまうとは】

【クロススキッパーがいなかったらどうなっていたことか……凱旋門以来の因縁があるとはいえ】

 

『二人とも。特にセイラン! 凱旋門で負けて悔しかったのは分かるが、決着はターフの上で付けるんだ! いいね?』

『はいデース……』

『……はい、兄上』

『さぁ、みんな。旧交を温めるのはここまで。()()に戻ろう』

 

【そのまま二頭、クロススキッパーに促されてかパドックの周回に戻ります。他の馬たちも同様に】

【そういえば、今回出走するメンバーの中ではクロススキッパーが最高齢ですね*10……先ほどの輪のようなものが出来ていたことといい、()が自然とこの場の空気を作り出しているように思えます。果たしてこのまま有馬も獲って史上初の()()()の栄誉に与かることができるのかクロススキッパー】

 

 思わず実況も馬であるクロススキッパーのことを「()」と呼んでしまうほど、その行動は普通の馬ではあり得ないようなことだった。

 

 そのままパドックでの周回が終わると、騎手が乗り始める、のだが……。

 

『えー? ユタカさんディープくんに乗るんデスカ?』

『カルマさん、言いたいことはわかるけど……』

『そんな事より走りたい』

 

 シムーンカルマ、ブエナビスタは「ユタカさん」こと、拓勇鷹が騎乗するディープインパクトを羨ましそうに見つめていた。

 シムーンカルマといい、ブエナビスタといい、ノイジースズカといい、そしてディープインパクトといい、凱旋門賞や日本ダービー、マイルチャンピオンシップに無敗三冠達成、ティアラ三冠達成などなど、彼ら彼女らが自身の大金星として自慢げに語るレースでは常に拓勇鷹が一緒に走ってくれていた。

 

 ……実際、拓勇鷹もこの四頭の騎乗依頼を今回受けていたが、悲しいことに、別のレースを走るわけではなく、四頭とも同じレースに出るとなれば……青いたぬきでもいれば「分身ハンマー」を強奪もとい拝借できれば四人に分身できて万々歳だったんだが、あいにくそんなもんはフィクションである以上、騎乗を一頭に絞らなければならなかった。

 

 少なくとも、ノイジースズカとブエナビスタの馬生最後の花道を飾る相棒が自分であってほしいと願うほどに思い入れがある。

 しかし、ディープインパクトはこのレースがラストランだ。

 ノイジースズカとブエナビスタには来年も乗れる機会がある。となれば、勇鷹は迷わず、今回の相棒にディープインパクトを選んだ。

 

 ただ、ノイジースズカの場合は凱旋門賞から引き続き勇鷹の弟である拓 孝次郎が騎乗することになり、すっかり慣れたようだ。そのせいか、全く気にしてくれない。それはそれで悲しいが……凱旋門賞の直前に乗り換えを悩んでた時間を返して欲しい気もする勇鷹である。

 

 ところで、シムーンカルマも今年に入ってからは本拠地である南関東で散々暴れ回っていて、大井所属の外田幸宏騎手ともすっかり信頼関係が構築出来ている。初騎乗でフェブラリーステークスを制し、帝王賞も勝利していることがその証拠とし得るだろう。悔しいことに自分よりも外田騎手の方がシムーンカルマにはむしろ合っているかもしれない。悔しいが。

 

 最後までディープと対抗馬を貼っていたのが、実はブエナビスタだった。

 ブエナビスタの場合は秋華賞で桂 玉樹が騎乗して勝利を収め、桜花賞、日本ダービーの勝利を含めてメジロシクローヌ以来の「実質三冠馬」の称号を手にしていた。……尤も、菊花賞を走ってないので「実質三冠牝馬」が正しい表現だが。

 この娘の父親はスペシャルウィークだ。スペシャルウィークは自分に初めて日本ダービーの栄冠を齎してくれた。その娘が今度は日本ダービーへの出走を何と直談判してきて、しかも勝った。日本競馬史上初めての父と娘による日本ダービー制覇の栄誉を自分に与えてくれた。

 この親娘には愛着があった。

 でも、ブエナビスタには来年にも乗れる。

 そう考えて振り切るしかなかった。

 

 そういえば、生沿くんはスイープトウショウに乗ることになったが、あの娘、大丈夫だろうか。

 メジロシクローヌが出るレースでは大人しいと聞いたが。

 

 そう考えながら勇鷹はスイープトウショウの背に乗る生沿健司を見ていた。

 スイープトウショウは、端的に言えば典型的な「駄々っ子」だ。ゲート入りを拒否したことは数知れないし、暴れはしないが、「動かなくなる」のだ。そうなると厄介だ。クロスクロウのような特殊な例を除けば、いくら騎手とはいえ馬が何を考えているか、何を話しているかなど明確には分かるはずもない。

 

 だが、生沿が乗った今のスイープトウショウは、去年の第132回天皇賞(秋)(天覧試合)でやらかしたような反抗的な態度が成りを潜めていた。ただ、仮にあの時と同じ状態に陥ったとしても油断は全くできない。その天覧試合でヘヴンリーロマンスをアタマ差で破ってしまっていたからだ。だから行動が予測できない。

 ディープと同じ追い込み勢故にこの上なく厄介かもしれない。

 それに、メジロシクローヌが同じレースに出走する場合だと、メジロシクローヌを徹底マークする癖もあり、メジロシクローヌが共に出走するレースでは掲示板を外したことがない。

 

 予測できないと言えば、いつもなら生沿が乗るクロススキッパーもそうだ。

 この子の父親を勇鷹はよく知ってる。他ならぬスペシャルウィークの僚馬で兄貴分、併走時にもよく世話になった。

 あのクロスクロウ持ち前の賢さを子のクロススキッパーは丸ごと引き継いだような性質で、得意な戦法は父親と同じく逃げと追い込み。最近は逃げが多く、この逃げで今年の宝塚記念とマイルCSを勝利して、しかも後者ではノイジースズカを破って連覇を阻んでいる。

 また、不器用だが、差しも出来るようだ。それも、2003年の皐月賞ではネオユニヴァースを徹底マークして苦しめたほど。

 ただ、あの時はまだクロススキッパーも体が出来ていない時期で、しかも、あの時出走した馬の中では間違いなく最年少だった。

 今回は慣れない長距離(2500m)に挑んでくる。父親が踏むことのできなかった舞台に立ち、尚且つ勝利するために。

 今日は生沿くんではなく、柴畑さん騎乗。しかしそれでも油断できないのは、クロススキッパーのマイルCS勝利を()()も柴畑さん騎乗で成しているせいだろう。

 いつもの逃げで勝負してくるかもしれないし、体力を温存して差しで走るかもしれない。賢く、出遅れても勝ったことがある。しかもG1をだ。

 警戒するに越したことのない相手だろう。

 

 そして、メジロシクローヌ。

 去年の凱旋門賞ではシムーンカルマに敗れてその後の10ヶ月間、重賞制覇すらできないほどに調子が落ち込んでいた。それが、騎手に復帰した細井さんと共に今年の凱旋門賞を日本馬として2頭目に獲ってみせ、去年の雪辱を見事に果たした。そこからは以前の調子に戻ったように見える。

 世間では同じ葦毛とインパクトのある戦績故に「メジロマックイーンの再来」とまで持て囃されているが、メジロシクローヌの武器は、ノイジースズカと同じく大逃げ。しかも、宝塚記念と札幌記念ではクロススキッパーと共に逃げを行ない、まるでそれはかつて90年代初頭に魅せてくれたダイタクヘリオスとメジロパーマーの走りを彷彿とさせるものだった。

 

 騎手を背中に乗せた馬たちは、返し馬を始める。

 観客席では、勇鷹がディープインパクトの背に乗ると歓声が響き渡った。

 

【割れんばかりの歓声です。ディープインパクト、これが最後のレースです。我々に最後にどんな走りを見せてくれるのか……その思い出を果たしてどのように我々の胸に刻み込んでくれるのでしょうか。しかし、幸か不幸か、今日のレース、ディープインパクトの勝利に待ったをかけるためか、他の15頭もディープインパクトに劣らない実力を持った馬たちが勢揃いしています】

 

 実況がそう言ったタイミングで、今度は勇鷹の弟・孝次郎がノイジースズカに騎乗した。すると、ディープインパクトの時に巻き起こった歓声がさらに大きくなり、誰かが指笛まで鳴らした。

 

【ノイジースズカ……かつて拓勇鷹が騎乗したことのあるエアグルーヴ、天皇賞・秋での悲劇から復帰しての翌年のマイルCSで再びG1の栄冠を手にしたサイレンススズカの、その初産駒でわんぱくなお転婆娘、ノイジースズカ。凱旋門賞では惜しくも4着。先月のマイルCSでは、クロススキッパーに差し切られて連覇ならずでした……】

【そのクロススキッパー、来年も現役続行を陣営側は宣言していますが、気付けば今日のレースで走る面々の中では、いつの間にか最高齢……一生に一度は。有馬記念を走ろうと。尚且つ勝つために。今日は二頭の引退を見送るためだけでなく、父・クロスクロウがついぞ果たせなかった有馬の舞台に、恐らくはこれがラストチャンスと踏んでの出走を、ハグロ陣営が決めました】

【おっと、メジロシクローヌにスイープトウショウが寄っていきましたね。生沿騎手、手綱を握っていますが、まるで聞かない、聞いてくれない。……いや、しかし、メジロシクローヌが出るならばと。いつもと比べるとあまり暴れませんね】

【そうですね、いつもとは段違いに落ち着いているようです。そのメジロシクローヌには、細井さんが騎乗しています】

 

 メジロの白地に緑のラインが入った勝負服に身を包む女性騎手が、メジロシクローヌの背に乗っていた。

 

【2001年に、細井舟子、騎手を一旦引退。しかし、2005年にメジロシクローヌの主戦騎手だった奥分幸蔵が引退することになり、そのバトンを引き継ぐ形で4年のブランクを経て騎手に復帰し、破竹の34勝。そのまま35勝目をG2の札幌記念で挙げてメジロシクローヌを連覇に導き、その足でフランスへ。奥分騎手と獲れなかった凱旋門へ、雪辱を晴らすために逃げを打って、ノイジースズカと、ディープインパクト、それに、スペリオルワンダーを押さえ込んで堂々の1着……そのメジロシクローヌがゲートに向かいました。スイープトウショウも後に続きます】

 

 ファンファーレが奏でられ、メジロシクローヌが自らの馬番のゲートに歩み出すと、いつもはゲート入りを嫌がるはずのスイープトウショウがあっさりと6番のゲートに収まった。

 その様子に、観客から歓声が上がった。

 

〔いいぞー!〕

〔シクローヌ、よくやった!〕

 

【ゲート入りだけでこんなに歓声が上がるもの珍しいですね】

【そうですね……あれだけゲート入りを嫌がる癖のあるスイープトウショウがあっさりとゲート入りしたんですから】

【ただ、本来であれば奇数番の馬が先にゲート入りし、それから偶数番の馬がゲート入りのため、ディープインパクトはより後方で他の偶数番の馬たちと待機中です】

【えぇと、順番が前後しましたが、1番、イギリスからの参戦者、オロールクロアットがゲート入りしました】

【ジャパンカップでの出走が、陣営の諸事情により間に合わないと判断したため、この有馬記念に参戦を決めた、オロールクロアット。父は、メジロシクローヌ、クロススキッパーと同じ、クロスクロウ。今年のキングジョージ6世&クイーンエリザベス・ステークスでは、日本馬による親子制覇を狙ったクロススキッパーを、差し足で仕留めて、自身の三連覇を達成。凱旋門では、日本馬三頭を相手に死闘を演じて、結果は5着……。陣営がその雪辱を誓った舞台、それがこの有馬記念です……!】

【5番ダイワメジャー。9番トウショウナイト。13番シムーンカルマが次々とゲートに収まっていきます】

【先ほどのドタバタ劇とは一転して皆落ち着いてますね】

 

 ゲート入りはその後も粛々と行なわれ、

 

【10番クロススキッパー。ゲートに向かいますが……おっと? すぐ後ろの4番のディープインパクトに向き直りました?】

 

『先輩。今日も勝ちますから』

『……あぁ、僕も全力で行く。僕も一つ言わせて欲しい』

『……何ですか?』

 

【おや、クロススキッパー、ディープインパクトと向き合ったまま止まりました】

【あ、あれれ、クロススキッパーが頭を下げました……?】

 

『ディープくん。ありがとう』

『え、や、やめてくださいよ、今ここで頭を下げるなんて……何で?』

『僕のお父ちゃんは、このレースを走るのが夢だった。勝つのがまた夢だった。そう教えてくれた。僕は、ここに来るまで覚悟を積むためと言いながら色々と回り道を繰り返してきて、いつの間にかおじさんに片足を突っ込んでた。きっと僕にとって、これが有馬を走る最後のチャンス……だからこそ君に感謝したいんだ。こんな大舞台を君や妹たちが用意してくれたことに。だから()()()()()。僕も()()で君に挑む。そして、()()()()()()から』

 

 それだけ言うと、クロススキッパーは頭を上げて、方向転換。ゲートに歩いていった。

 

 その後ろ姿を、ディープインパクトと勇鷹は見送る。勇鷹はディープインパクトに問い掛けた。

「ディープ? 大丈夫かい?」

「……ブルルルッ(うん)」

 その目には闘志の炎、青白い炎が目の奥で燃えていた……。

 

【クロススキッパー、10番のゲートに今収まりました】

【それを見送ったディープインパクトも、ゆっくりと後に続き……】

 

 最後に拓勇鷹の騎乗するディープインパクトが収まると、

 

【年末の中山最後の大一番、第51回有馬記念、4番ディープインパクトがゲートに今収まりまして、】

 

 ─ガシャンッ、

 

【スタートしました! 出遅れなく良いスタートを切りました16頭! スウィフトカレントがゆっくりと後ろへ下がります。さぁ先行争い。早速先頭でハナを奪いました12番メジロシクローヌ! 二番手の位置に15番ノイジースズカが続く! おっと!三番手、三番手にクロススキッパーが続く!!】

 

『兄上、どういうおつもりなの?』

『……せっかくなんだ、最後まで全力で突っ走ってグランプリを制覇する方がかっこいいだろ?』

 

【最初の第4コーナーを周り、正面スタンド前へ。逃げ宣言をしたメジロシクローヌとノイジースズカ、互いにハナは譲らない、激しい先頭争いを見せる! 三番手のクロススキッパー、先頭に出るタイミングを伺っていますね、この三頭が先頭集団を形成しています。先頭集団のクロススキッパーから二馬身、いや、三馬身開いてダイワメジャー、シムーンカルマ、デルタブルース、メイショウサムソンとオロールクロアット、ドリームパスポート、トウショウナイト、そしてブエナビスタが続きます。ここで、ダイワメジャーとシムーンカルマが入れ替わった】

 

『ユタカさん、まだダメなの?』

「まだだ、落ち着くんだディープ……」

 

【ここから先頭集団が第1コーナーに入りますが、中団の先頭を走るシムーンカルマと先頭集団の間隔がどんどん開いていく! 現在後方三番手にディープインパクト! 拓勇鷹、どう行くか。スイープトウショウはそれを横目に進出を開始。後方五番手にいました、キングカメハメハに並ぶ。そのキングカメハメハが第1コーナーを回って第2コーナーへ差し掛かる、今1000mの通過タイム出ました、57秒9! ハイペースです、これを作り出しているのは、爆逃げコンビです!】

 

『……やるわね、ノイちゃん』

『ローヌさんも。でも、ここは私が勝つ……!!』

 

【さぁ先頭メジロシクローヌ、逃げています細井舟子、第2コーナーを超えて第3コーナーまでの直線に入る。半端な逃げではない、でもそれはノイジースズカと拓 孝次郎とて同じこと。両者、先頭が時々入れ替わっています。彼女たちから少し下がり、2馬身離れた位置にクロススキッパーと柴畑由臣。この三番手クロススキッパーから四番手のシムーンカルマとの間には最低でも10馬身は開いているように見えます!】

 

「ローヌ、大丈夫? 疲れてない?」

『うん、大丈夫よ、()()()、まだ行ける!』

 

 鞍上の細井がメジロシクローヌに語りかけると、メジロシクローヌは「大丈夫!」と嘶く。

 

【四番手のシムーンカルマ、必死に食らいついていく。五番手のダイワメジャーも続く、六番手のメイショウサムソン、早めに上がっていった。2番のデルタブルースが内、その間に割って入った1番オロールクロアット】

 

(いつぞやの凱旋門と同じ展開……!)

(なら、ボクが勝ちマス、勝ってヤッテヤルデス!!)

 

【そして、14番ブエナビスタがここにいます、さらに9番トウショウナイト、インコースにドリームパスポート。キングカメハメハ、加速し始めたかここまで上がってきた。そのすぐ後ろに北の雄コスモバルク。しかしそれをスイープトウショウが追い抜いて行った。さらに後ろに、ここにいましたディープインパクト! 最後方にスウィフトカレント。いよいよ大詰め! 先頭のメジロシクローヌとノイジースズカ、第3コーナーに入っていきます!】

 

『『ここ(だ)!』』

 

【メジロシクローヌとノイジースズカ、クロススキッパーとの間には2馬身、しかし、クロススキッパーのすぐ後ろに、シムーンカルマ、メイショウサムソン、ブエナビスタが迫る! おっと、ここでスイープトウショウがスパートを掛けた! グングン加速する! だが、いや待った、そこでディープインパクトも加速! キングカメハメハ、負けじとついて行くが少々苦しい! 最後の第4コーナー、外から行ったぞ赤い帽子の拓 勇鷹とディープインパクト! クロススキッパー、苦しいが粘っている、一方でノイジースズカがズルズルと下がってく!?】

 

『くぅ……悔しい……! あとは任せた二人とも……!』

 

出た! 多段ロケットだ!まるでこれは今年の凱旋門賞の再現です!ノイジースズカがズルズルと下がるものの、クロススキッパーとメジロシクローヌは躊躇わず走り続ける! このまま行ってしまうのか!? さぁ、間も無く第4コーナー! ディープインパクトが翼を広げるか! ディープが今翼を広げた!! だが、しかし、しかしだ、そこに待ったをかけるべく、スイープトウショウ、さらにはシムーンカルマとオロールクロアットまでもが追い込んで来た!! でもクロススキッパー、メジロシクローヌ、まだだ、まだ終わってない、まだ逃げる逃げる!

 

『ウソだろ……』

『まだあの二人加速する気か……!』

 

【だが、ディープインパクト、シムーンカルマ、オロールクロアット、スイープトウショウ! 四頭共にクロス兄妹の影をすでに踏んでる! 残り300m!

 

『……今だ!』

「行け、ディープ!」

 

【ここでディープインパクト、末脚が炸裂! しかし、これにシムーンカルマもオロールクロアットも追随する、スイープトウショウ、大外に回った! 残り200m、残り200mだ! 四頭ともクロススキッパーを抜いた、残り150! メジロシクローヌに四頭が追い縋る! だが、シクローヌ、凱旋門賞馬は執念で粘る粘る!!

 

『勝つのは僕だ!』

『逃がさないデース!』

『勝負よローヌ!』

『お嬢、ここでリベンジさせていただきます!』

『いいわ、みんなまとめてかかって来なさい!』

 

【何てこった、残り100m、短い直線でインから中央まで四頭先頭で並んだ、大外のスイープも追随する! メジロシクローヌのライバルはこの私だと言わんばかりに!! そのまま五頭、もつれたままゴールイン! これは勝者が分からない、分からないが凄い戦いだった!

 

 五頭が完走すると、観客席からは大歓声が上がった。

 その最中に一歩遅れる形で後続のライバルたちもゴール板を駆け抜けていく。

 

【クロススキッパー、ノイジースズカ、彼らには届かなかった……。だが、メジロシクローヌ、ディープインパクト、スイープトウショウ、シムーンカルマ、オロールクロアット、最後の最後で彼らは魅せてくれました!! おっと、「写真」判定のランプが付きました。2着と3着がわかりません。しかし1着は……4番だ、ディープインパクト1着!! 4着、シムーンカルマ、5着、オロールクロアット!】

 

 正面スタンド前の掲示板で、1着に「4」、4着に「13」、5着に「1」が表示され、そうして観客たちの歓声がより増した。

 しかし、2着と3着は?

 ゴールの瞬間のリプレイがスタンド前のモニターに映し出された。

 

【インからシムーンカルマとオロールクロアットが進入、真ん中でディープインパクト、メジロシクローヌが走り、大外からスイープトウショウ……】

 

 モニター上では、ディープインパクトが間違いなく1着でゴールしていた。

 

【えーと、メジロシクローヌとの間ではアタマ差のようですが……】

 

 横から見た映像では、メジロシクローヌがギリギリのアタマ差でディープインパクトに競り負けていたのがハッキリと映っていた。

 上からの映像では、メジロシクローヌから僅かに遅れることシムーンカルマとオロールクロアットが順にゴールしているのが見えた。

 

【シムーンカルマとオロールクロアットがギリギリ届いてないですね……】

 

 つまり、シムーンカルマとオロールクロアットが4着・5着なのは確定だ。問題はメジロシクローヌとスイープトウショウ。コース中央を駆け抜けたメジロシクローヌに対して大外から飛んできたスイープトウショウがどこまで迫っていたのか。

 

【僅かですが、スイープトウショウが体勢有利のような……あ、今、写真判定のランプが消えました】

 

 すると、2着に「6」、3着に「12」の字が電光掲示板に灯った。

 

【確定しました! 2着、スイープトウショウ! 3着、メジロシクローヌ! 敗れはしたものの、スイープトウショウ、大舞台で宿敵よりも先着してみせた! 二頭いる凱旋門賞馬の影を両方とも見事に超えてみせました、ハナ差です、ハナ差でスイープトウショウがメジロシクローヌに先着した!

 

 その実況に、スタンドからはさらに歓声と拍手が上がった───

 


 

【───というわけで、細井さん。惜しくも3着でしたね】

【えぇ。確かに悔しかったです。でも、終わってみると、悔しいって気持ちよりも、「やり切った」、「中山の大舞台で2500mを走り切ってみせたんだ」っていう達成感の方が大きかったですね。凱旋門賞の時の拓騎手とディープインパクトに迫られた時は怖かったですけど、有馬記念では、それ以上にライバルのスイープトウショウの追い込みに驚かされました。ディープもスイープも、そんな所から届くの!?って感じで】

【スイープトウショウとメジロシクローヌといえば、2004年の牝馬三冠での叩き合いが───】

 

「あ、こんなとこにいた。ホッパーくーん、メッシくーん、休みの時間は終わりだよー?」

 

 窓からテレビを見てその音声を聞いていたホッパーとメッシは、呼びに来た厩務員の女性の声に振り返り、軽く嘶いた。

 

「良い子良い子……さぁ、午後も追い運動やっていこうねー」

「ブルルルッ、フンフンッ!」

 

 女性厩務員に「おいでおいで」をされながら、ホッパーはついていく。

 メッシも戸惑い気味だが、ホッパーについて行った。

 追い運動のためのレーストラックに向かう最中にメッシはホッパーにこんな事を言った。

 

『ねぇ、お父ちゃん』

『なんだいメッシ?』

『お父ちゃんって、やっぱ凄い馬だったんだね』

『そんな事はないさ。俺以上に凄い馬はいっぱいいるよ。メッシもきっとレースに出てみれば父ちゃんより凄いやつがいるってわかるさ。そのためにも練習、しっかりやろうな?』

『うん、お父ちゃん!』

 

 冬が迫る北海道の大地。

 太陽が中天にある内に()()()を終わらせねば。

 ホッパーはそんなことを思いつつも、これから何年かは掛かるがいつかは舞台に立つであろう実の息子のために、今日の午後もしっかり走っていこう。

 もう中年に足を突っ込んでいる、でも、まだまだ頑張ろう。

 

 そう。

 あの有馬記念のような舞台に息子たちを送り出すためにも。

*1
ちなみに史実でいう2004年の日本ダービーは「死のダービー」として語り継がれており恐れられているとか。ここでは起きなかったらしい

*2
史実のキングカメハメハは2004年の神戸新聞杯を勝利後に故障してそのまま引退してしまった

*3
史実のデルタブルースは2004年4月17日の未勝利戦でようやく勝利してクラシック路線に入ってきた

*4
目黒記念は2001年から2011年までの10年間は三歳馬も出走可能だった。ただし、三歳で目黒記念を制覇した馬は史実では現れず仕舞いである

*5
なお、史実の2004年の青葉賞ではデルタブルースは13着と惨敗、目黒記念は未出走である

*6
もし2006年にブエナビスタがいてダービーに出てきたら……?

*7
史実での日本馬の勝ち鞍はタイキシャトルが今のところ(2022年時点)では唯一。なお直線1600mのマイルながらちゃんとG1である

*8
言わずと知れた難攻不落のフランスG1

*9
目覚まし時計

*10
実際の第51回有馬記念では、出走馬のうち、ウィンジェネラーレが最高齢だった。なお、ここでは出ていない。




何か、我ながらとんでもないことやらかしたような気分。
……一先ず言い訳を。

まぁね、この話ではクロスクロウがとりあえず子供を残せるぐらいまでは生き延びて、その子供たちが主役になると言いましたよ。
そしたらね、いやぁ、2000年代と今のレースって、開催時期が違うものがあったり、出走条件が違うものがあったりと、調べてみたら「わぁ、なぁにこれぇ?」みたいなもんがいっぱい出てきまくったんですよ、はい。
それで色々妄想を垂れ流して練りに練って固めて、ついでにクロススキッパーとメジロシクローヌが多方面にエフェクトのパルスウェーブを周辺に吐き散らして、主に結果がとんでもない方向へすっ飛んで行って「うわぁ出たぁ!」みたいな。あ、はい……。

と、とりあえず。
ウマ娘編をこれからやるなら、
①メイショウサムソンは薩摩弁(実は育成場所が鹿児島でした)
②キンカメちゃんとダメジャーちゃんは同室コンビ

ってことだけは決めた。決めたったら決めた!(マテコラ

あと、この物語におけるブエナビスタについて。
感想をいただいた方々からのご指摘がありましたが、お察しの通り、ここのブエナビスタは生まれが3年くらい早まりました。
なお、その原因を作ったのは紛れもなく(白い)ヤツさです……。
この理由……ここでぶちまけるまでは、皆さんのご想像にお任せいたします。
また、前回の掲示板回でもプーンと匂わせておりましたように、ぶっちゃけるとブエナビスタは馬主が史実とは全く違います。アナザーカラーのビスタちゃんでも作ろうかな……
しかも、2006年のクラシック期を走っていた、ということは……まぁ、大変なことになりますよね!主に次の年が!

というわけで、今年最後の投稿になりそうなので、皆さん、良いお年を!

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