また君と、今度はずっと 〜If you can Cross to tomorrow〜 作:Simca Ⅴ
また、今回の挿絵は、pixivにてタダシ(旧sinzan)さんに描いていただきました。
この場でお礼を申し上げます。
中央トレセン学園のウマ娘たちはメイクデビューをする上でトレーナーが必要になる。
そのトレーナーというのも大きく分けて二種類おり、片方は1人のウマ娘を指導する、いわゆる「専属トレーナー」と呼ばれる部類。2人以下しか担当を持っていないトレーナーがここに含まれる場合もある。
もう片方は3人以上の複数のウマ娘を指導してチームの結成を許される、いわゆる「チームトレーナー」である。
専属トレーナーとチームトレーナーの違いと言えば、学園から支給される設備の大きさがまず違うのだが、トレーナーたちには共通して教室の半分ほどの大きさの部屋が一室、トレーナー棟に用意される点は共通している。
4月13日の放課後。
「……」
チーム[ライジェル]のチーフトレーナーである矢萩が今いるトレーナー棟の部屋を尋ねようとした尾花栗毛のウマ娘。ドアレバーに手を掛けようとしては躊躇うように手を引き、ノックしようにも足が今一歩前に出ない。
そんな奇妙な動作を繰り返してどれぐらいの時間が経ったのかは分からなかったのだが、
「君、どうしたの?」
「!」
突然に横から声を掛けられて思わず耳と尻尾がピンッと張る尾花栗毛のウマ娘。
「あ、いえ、そ、その!? え、えぇっと……?」
ややキョドりながら声を掛けてきた相手に向き合うと、キャスケット帽を被った人物がそこにいた。
ただし、背はクロススキッパーよりも低く、顔立ちは中性的というか童顔で、
(こ、子供……? いや、……違う?)
その外見は年端も行かない少年にしか見えないのだが、スーツに身を包み、その襟にはトレーナーバッジが光っていることを彼女は見逃さなかった。
しかし、少年トレーナーが一足早く尾花栗毛のウマ娘の正体を見破った。
「……あ。君がクロススキッパーだね?」
「え? ぼ、僕のことを知っている……んですか?」
「もちろん。お隣のチームトレーナーから君の噂は予々」
「お隣……?」
「あ、自己紹介がまだだったね。初めまして」
そうして少年トレーナーは右手を差し出して、尾花栗毛のウマ娘、クロススキッパーと握手した。
「チーム[セントーリ]のチーフトレーナーをしている射手園っていいます。よろしくね」
「あ、ど、どうも。僕はチーム[ライジェル]所属のクロススキッパー……です」
看過されている以上は名乗る必要は別にないのだが、丁寧な挨拶に対してはつい律儀に応えてしまう。
「矢萩さんに用事かな?」
「え、えぇっと、その……」
「ちょうど僕も用事があるんだ」
躊躇していたクロススキッパーを横目に、射手園はドアをノックしてから「失礼しまーす」と言いながら部屋に入っていく。そんな彼にクロススキッパーは慌ててついて行った。
「……あぁ、射手園くんか。どうした?」
「矢萩さん、明日のコースの使用の件についてなんですが……」
「あぁ〜……どうするか。合同練習にしてもいいが」
「でも、ルビーとケイくんはマイラーズカップでそっちのヘリオスちゃんと当たる予定ですし……」
チーム[ライジェル]とチーム[セントーリ]。
この2つのチームは隣り合ってるだけでなく、メンバーとトレーナー同士も仲が良いため、合同練習も頻繁に行なっている。
ただ、2人が明日の合同練習を躊躇しているのは、同じレースでぶつかるライバル同士という点だ。
そんな矢萩自身はヘリオスとパーマーを同じレースで走らせることに全く躊躇がないので今更感はしていたし、チーム[セントーリ]との合同練習を楽しんでる節もあるのだが、チームが違えば方針が違うのは当たり前で。
同じレースでぶつかり合う時になるべく他チームに自分たちの作戦を見せたくないトレーナーも多いものだ。前に射手園トレーナーから「先輩、デリカシーがないです!」と怒られたので矢萩も実はその点を気にするようになった。
「そういえばマヤノも今年デビューだから来年ぶつかるよな……っておい。噂をすればいたのかお前」
「え、あ、し、失礼しますトレーナーさん!」
開いたままになってるドアの向こう側の陰に矢萩が気付く。
髪や揺れる尻尾を見て、矢萩も隠れているのがクロススキッパーだとすぐに分かった。
バレたと分かってクロススキッパーは逃げようとするのだが、
「待って。話があるんでしょ?」
「……!」
自分よりも小柄な射手園トレーナーに手を掴まれて逃走を阻止され、しかもその力が普通の人間の男性よりも強く、それこそウマ娘並みの握力があると、力を込めて手を握られた瞬間にクロススキッパーにも分かった。
きっとそれがなかったなら、クロススキッパー自身も矢萩に「あのこと」を話さずに逃げ出していたかもしれないと思うと、これは彼女に話を切り出す覚悟を与えることになった。
「ちょうどいい。お前も聞いてけ」
矢萩にはそんなクロススキッパーの覚悟などわかるはずもないが、ここに当事者同士が集まったのは好都合と思い、話し合うことにした。
トレーナー室に備え付けられた2人掛けのソファーにクロススキッパーと射手園を座らせ、その対面に矢萩が座って話を始めた。
「さてと……合同練習云々の前に聞いておきたいんだが、射手園くん。マヤノのデビュー戦は決まったのか?」
「あ、はい。今年の8月にしましたが、京都か小倉か札幌かは悩んでて……」
「おいおい、お前が悩んでどうすんだ? 誰よりもマヤノのことをトレーナーとして分かってるのはお前だろ?」
「それはそうなんですけどね……」
そもそもこの
しかし元々彼は幼馴染であるマヤノトップガンのために中央のトレーナーを志して、そして、史上最年少で中央のトレーナーになったという経歴を持っていた。
そんな彼とマヤノは仲睦まじく、時にマヤノに揶揄われる姿も目撃されているが、それだけマヤノも射手園に心を許していて、中央トレセン学園に来る前からごっこ遊びという形で担当ウマ娘とトレーナーの真似事をして共に育ってきた(時に立場が逆転したこともあるらしいが)。
それ故に射手園はマヤノのことを隅々まで知っていて、マヤノも同じくらい射手園のことを知り尽くしている。
だからこそ射手園は悩む。
なので、参考ついでに別の質問を射手園は矢萩に切り出した。
「……ところで今年の[ライジェル]の夏合宿先は?」
「前にも話したが小倉記念走らせるついでに
「え? 何でですか?」
「今、中津トレセンか宮崎トレセンに宿泊申し込みを申請してるんだが、応募が多すぎて下手すりゃ抽選になりそうなんだよ……」
「中津トレセン……今年からあそこも中央との交流で合宿所を使っていいという話を聞きましたけどもういっぱいなんですか?」
「みたいだな……」
中津トレセン学園……その名を聞いてクロススキッパーは、
「中津トレセンか……懐かしいな」
と、思わず呟いてしまった。
「ん? スキッパー、お前、大分の中津に行ったことあるのか?」
「あ……はい。その……ほんの2年前行ったっきりですけど」
やや歯切れ悪くもクロススキッパーはそう明かした。
というのも彼女自身、中津レース場とトレセン閉校の危機に自分の一家が絡んだのだが、今ここで話すべき内容ではないと思い、飲み込む。
そんな一昔前の話をするよりも、彼女には喫緊の問題があったからだ。
だが、その「喫緊の問題」をいざ口にしようとしたら、矢萩に先を越されてしまう。
話題は明日のトレーニングのことに移る。
「夏合宿のこと、参考にならなくてすまんな」
「え、あ、はい……いいえ、そんなことないですよ。そっか……九州はいっぱいかぁ……。それはともかくとして、明日、合同練習やりますか?」
「俺は別に。射手園くんが良いなら是非一緒にやりたいんだがな?」
「あ、そ、それじゃぁ、明日は……合同練習ということにしましょう」
「いいのか?」
「……迷いましたけど、僕も噂で聞いていた[ライジェル]の新星が気になっちゃいまして」
「え?」
「そうかそうか。はっはっは」
クロススキッパーは、デビューもしていない自分の下バ票がいつの間にか上がっていることに戸惑いを覚えるも、矢萩はそれを軽く笑い飛ばした。
「で。さっき俺が言おうとしていたことに繋がるんだが、射手園くん、もし出来れば……」
「スキッパーちゃんをマヤちゃんのスパーリングパートナーにしたい、と?」
「まぁ……そんな感じだなぁ」
「ふーん……なるほど。良いと思います」
「だろぉ?」
矢萩と射手園はその案に笑顔で合意するも、目は全く笑っておらず、まるで猛禽類のような眼差しを互いに向けている。
これに、先ほどの戸惑いが戦慄に変わったような気分がしたクロススキッパーは、自身にプレッシャーのようなものがのし掛かって来たように錯覚した。……いや、一瞬後にそれが錯覚ではなかったことを身を以て知る羽目になる。
「……で。スキッパー。お前の話ってのは何だ?」
「そうそう。さっき逃げようとしていたけど?」
クロススキッパー は にげられなかった。▼
「はぁ……? つまり、クロスクロウの病状とか引退とか手紙とか、そこら辺の話をお前はお口にチャックどころかポケットの奥の奥に押し込んでて?それが原因で[ライジェル]から追い出されることを心配してんのか?」
やや早口で比喩表現も混じった口調で状況を確認する矢萩。
「はい……デュランダルさんもアローキャリーさんも怒っていましたし……」
「そりゃ怒るわな……いてっ」
射手園はいつの間にか矢萩の隣に移動しており、クロススキッパーは2対1で対面することになったのだが、そんな矢萩から出た一言に「
「まぁ……待て。俺は別にお前を追い出すつもりはねぇよ。というか、折角
「はぁ〜……理由そっちですか……?」
「事実だし。それに昨日の話ならキャリーとデュラン、あと、宮松からもとっくに聞いてるぞ」
矢萩がスキッパーをチーム[ライジェル]に留めておきたい理由に、射手園は呆れて溜め息を吐く。
ちなみに、前日の放課後に宮松明美ことフレアカルマがクロススキッパーを連れての外出をそれとなく提案したのは矢萩自身だったりするのだがこの場では何も言わなかった。
「でも、僕がいたら、チームの空気が悪くなるんじゃないかって……」
「別にそんなことないぞ。誰だって秘密にしたいことの1つや2つあるものだ。一々深く詮索しないし、話したい時になったら話せばいい。話はちゃんと聞いてやるから」
「トレーナーさん……」
「……」
目を潤ませているクロススキッパーと、それとは対照的に疑いの眼差しを向けてくる真横の射手園。
そんな彼の視線に、矢萩は眼差しを返し、
「……はぁ〜……分かりましたよぉ……」
根負けした射手園は、漸く矢萩に対して言った「デリカシーがない」という言葉を、疑いの目を向けるのを止める形で撤回した。
「ただな。わからないことがあれば質問してほしいし、試してみたいことがあれば臆せず言ってくれ。俺はお前のトレーナーなんだからな」
「はい!」
「でも矢萩さん。今のところスキッパーちゃんにトレーナーらしいことをしているのはフレアカルマさんのほうじゃありませんか?」
「それは言わない約束だろ……じゃぁチーフトレーナーらしいことをしなきゃならんな」
「というと?」
「ほれ」
矢萩がソファーから立ち上がって机から取り出したのは……、
「これって……メジロシティの?」*1
「マヤノと2人で行ってこい。それでスキッパーとマヤノの併走を頼みたい」
「1回分にしてはだいぶ割高な賄賂のような気がしますが……?」
「そりゃそうだ。1回どころじゃない」
「……」
一瞬嫌な予感がしたので、眉間に皺を寄せながら矢萩が持ってきた賄賂を突き返す用意をする。
「この券、内容次第によっては受け取りを拒否してもいいですね?」
「多分そうはならないと思う。そっちにとっても悪くない話だ」
「……わかりました。一応聞きます」
「?」
翌日の土曜日。
中央トレセン学園は基本的に土日休みである。
これは中央のレースが大抵の場合、土日に重賞ないしはG1を開催している関係であり、補習などを除いて授業の時間とレースの時間が被らないようにしているためだ。
4月の土日というのも慌ただしく、初旬から5月の後半に掛けて毎週のようにG1レースが連続する。
実際、翌日にはG1の皐月賞が控えており、登校日ではないにも拘らず、中央トレセン学園の練習コースでは大勢のウマ娘たちが走り回っていた。
京都や阪神、小倉や札幌などの遠隔地の場合は前日から現地入りする必要も生じるのだが、皐月賞といえば開催場所は中山レース場なので、出走するウマ娘たちは中央トレセン学園にて最終調整に臨んでいた。
しかし、こんなに慌ただしいのは、明日出走を控えているウマ娘たちだけが走っているわけではなく、今年のジュニア期でのデビューを目前に控えたウマ娘たちにとっては日々毎日のトレーニングが重要になってくるのだ。
そして、今年のジュニア期にデビューするウマ娘が[セントーリ]と[ライジェル]には1人ずついた。
[ライジェル]のメンバーでは、クロススキッパー。
[セントーリ]のメンバーでは、マヤノトップガンである。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「いいよ、その調子、頑張ってクロちゃん!」
この2人は今まさに併走トレーニング中だったのだが、余裕のある表情のマヤノトップガンに比べて、クロススキッパーの息は明らかに上がっていた。
「マヤノちゃん、あんなに走れるようになったんだね……」
「初めて併走を行なった時にステイヤーとしての資質を感じましたが、今はさらに磨きが掛かっていますね」
「それに比べてスキッパーったら……」
そんな2人の併走を見て、休憩中のチーム[セントーリ]のウマ娘たちはそれぞれで感想や呆れの混じった溜め息を漏らしていた。
午前中のクロススキッパーはひたすらマヤノトップガンとの併走に時間を費やした。
そして午後からは、
「ほらほらほらぁ!! スキッパー、もっとキビキビと走れぇ!! 」
「は、はいぃぃぃっ!」
芝コースを走行するデュランダルとアローキャリー、そして、クロススキッパー。
先行するアローキャリー、そこから2〜3バ身ほど間を開けてクロススキッパーが続き、一番最後尾にデュランダルがいる。デュランダルは半ばスキッパーを追い立てる形で走っていた。
通常はウマ娘2人が併走するのが基本パターンだが、今回はちょっと違う。
午前こそマヤノとのマンツーマンでの併走だったが、午後からはクロススキッパーに実際のレースに模した状態でのトレーニングを行なっていた。
距離は1200m、芝コースで。
アローキャリーもデュランダルもレース時のような全力疾走ではないが、そのスピードにクロススキッパーはついていくのがやっと。
しかも、スキッパーの後ろからデュランダルが煽っていて、余計にスキッパーの体力の消耗が激しくなる。
「デュランダル、本気出しすぎないで。まだスキッパーに今日あと
『わかってるっての!!』
デュランダルは首からマイク付きのトランシーバーを下げており、このトランシーバーの受信先はサブトレーナーであるフレアカルマのスマートフォンであった。
「さぁ、第3コーナーを超えたわよ」
『よっしゃぁ! おらおら行くぞ!!』
「本当に大丈夫なんですかね……?」
「うーん……デュランダルの追い込みは結構怖いし、スキッパーはんにいきなりあら劇物やったんちゃいますか……?」
『聞こえてっぞヤマトぉおっと!?』
「「「?」」」
トランシーバーが拾ったデュランダルの声は驚いていた。
ダイタクヤマトへの悪態はともかく、驚いた理由は何事かと双眼鏡で併走する2人を見たら、まず、先行で走るアローキャリーを追い込みで抜き去ろうとするデュランダルだったが、これにクロススキッパーがなんと、足元をまるで爆発させたかのように芝に足を思いっきり踏み込んで、デュランダルと共に先行で走るアローキャリーをあっという間に追い越していった。
『……はっはは、やるじゃねぇ、か!!』
横目で見ていたデュランダルも空かさず負けじと再加速。
だが、これにクロススキッパーが必死で食らいついていった。
それが残り600mの地点である。
ゴール板を先に越えたのはデュランダルだった。
続けてクロススキッパーが1バ身差でゴールしてきた。
最後にゴール板を通過したのはアローキャリーだったが、先頭でゴールしたデュランダルと彼女との間には3バ身差がついてしまっていた。
「……ここまで出来るなんて……!」
フレアカルマは素直に感心していた。
「はぁ……はぁ……はぁ……ふ、フレアカルマさん……! ど、どうでしたか……?」
「そうね……まさか追い込みに入ってきたデュランダルに練習とはいえ、あそこまで喰らいつけるなんて……」
「じゃぁ……?」
「うーん……でもまだ分からないわよ? 今日はあと2回走ってもらって終わりにするけれど……1時間休憩ね」
「は、はいぃ……」
ほぼほぼ息が上がってるクロススキッパーは、立ってるのもやっとという状態だった。
「おい無理するな。とりあえず地べたでもいいから座れ」
余力のあるデュランダルが、そんなクロススキッパーを見かねて地面に膝を下ろさせた。
「す、すみません……」
「仕方ねぇさ。トレセンに入ったばっかりならこんなもんだろ。にしても、まさか俺の脚に付いてくるとはな……」
「……」
この時のアローキャリーは、どこかからやってきた悔しさと自己嫌悪が混ざった感情故に、押し黙ってしまった。
もちろんこれはただの練習だ。だが、アローキャリー自身は……こんなことを考えてしまった。
(まさか抜かされるなんて……不意を突かれた……)
練習故に本気は出していない。しかし、さっきのは自分の気が緩んでいたのではないか?と。
桜花賞を勝利したはいいが、彼女はその後からがどうにも身が入っていない気がしてならなかった。
「……スキッパー、サブトレ。キャリーと、ちょいと早くチームルームで休憩してくるぜ」
「!」
アローキャリーは自身の落ち込んでる気持ちをデュランダルに勘付かれたことにハッとするが、逃げようにも時既に遅かった。
「あ、行ってらっしゃい。スキッパーはこのまま1時間休憩ね」
「はい」
しかし、クロススキッパーもアローキャリーが暗い気分を纏っていることに気が付いており、
「あ、あの……」
デュランダルに連れられて練習場を去っていくアローキャリーに声をかけようとするが、それをフレアカルマが制止した。
「スキッパー。キャリーのことはデュランに任せておきなさい」
「……はい」
もちろん、アローキャリーが暗い雰囲気を醸し出していたのは、サブトレーナーのフレアカルマにも何となく分かった。特に今さっきの追い比べを見ていたら。
チーム[ライジェル]のルームの鍵を開けて入ると、アローキャリーとデュランダルが2人きりになった。
デュランダルは早速問う。
「……おい、何を凹んでやがるんだ?」
「……」
その問いに、アローキャリーは答えられなかった。
「……当ててやろうか。俺だけでなく、スキッパーに抜かされたのがショックなんだろ?」
「! な、何故それを……!?」
「おいおい、何年ルームメイトをしてると思ってんだ? さっきのはただの練習、しかも、スキッパーの奴の脚質を見るために走っただけだろうが」
「……」
「……ったく、お前らしくないぞ。いつもなら格下相手でも手を抜かないはずなのに。最近気が抜けちまってないか?」
「」(ビクッ
デュランダルの指摘に思わずウマ耳がピンッと張ったアローキャリー。
「……図星か」
「……面目ない」
「謝ってんじゃねぇよ。その言葉を向けるとしたら、俺じゃなくてスキッパーに言うべきだろうが」
「……ねぇ、デュランダル。言いたいことがあるんだけどいい?」
「んだよ改まって」
「いいから。……G1のクラシックってさ。すごいところだったよ」
「まぁな。実際一緒に行ったからよーくわかってる。それがどうかしたのか?」
「そのせいなのかな……
「はぁ!? てめぇ怪我してんなら……!」
「違うの!違う、怪我じゃないの。何というか……力が入らないというか、身が入らないというか……」
「身が入らないだと?」
「うん……私、ホッカイドウシリーズからの転入生なのはデュランも知ってると思うけど、私のお父さんね、元々旭川トレセンでトレーナーをしていたんだ」
「それなら聞いたぞ。で。その親父さんから桜花賞を勝って褒められたってことも聞いたぞ」
「そう……お父さんは、私が中央G1を勝つ姿を見たかった、ってずっと言っていたんだ。でも、桜花賞を走ってみてわかったんだ。
「だからか……スプリントに転向するとか言い出したのは」
「お父さんに相談したら、そう言われた」
「……でも、てめぇはそれに納得してねぇな?」
「え?」
「はぁ? おい無自覚かよ。本当ならこのままティアラ三冠ルートを行きたかったんだろ?」
「え、まぁ……うん。憧れがないと言ったら嘘になる……かな?」
「……ケッ。くだらねぇ」
「ちょ、ちょっと! くだらないって何!? 人が真剣に悩んでるのに!」
「俺はスプリンターだ」
「何を今更……」
「てめぇ、わざわざトレーナーにスプリント路線への転向を言い出したくせに、腹括る覚悟もないまま練習なんかに来てんのかよ! ……舐めてんじゃねぇぞ」
「舐めてなんか……」
「ティアラの一冠とスプリンターズSの冠を
「……!」
「……道理で腑抜けた走り方をしてるわけだ。納得できたぜ」
「……!!!」
そこまでボコボコに言い負かされて……アローキャリーはただただ泣くしかなかった。
「泣いちまったか……おい、キャリー」
「バカ……」
「いいから聞けよ。泣いたままでもいい。さっきの。お前がティアラに未練がある話……あれは俺以外には絶対に話すなよ?」
「……え?」
「俺はな……クラシックやティアラの三冠路線からマイルやスプリント路線に転向してくるのを「堕ちる」って表現する奴が一番嫌いなんだよ。だが、それは俺だけじゃない。元々からマイラーやスプリンターとしての道を選んだ奴らのほとんどが同じことを考えてる」
先ほどデュランダルが語気を強めて怒りを露わにしたのも当然と言えば当然だ。
「……さっきの話が俺とお前の秘密なら、今から言う話も誰にも話すんじゃねぇぞ? ……俺は元々、皐月賞とか日本ダービーとか出てみたかったんだよ」
「え……っ? それって……」
「あぁ。笑っちまうだろ? 俺みたいな捻くれ者でもダービーウマ娘に憧れちまったんだ。だが沼崎に言われた。〈走る距離が長いと色々考えちゃう癖があるよね?〉って。……図星だったぜ。だから余計なこと考えずにぶっ飛ばせるスプリンターを目指すことを勧められた」
「沼崎さんが……?」
沼崎トレーナー。
チーム[ミモザ]の元チーフトレーナーだった人物で、デュランダルとアローキャリーを以前担当してたトレーナーでもある。
「最初はまぁ……お前みたいに納得出来ねぇ感じだったさ。だがな……ある逃げウマ娘が後続を派手にぶっちぎって勝利した時のスプリンターズSの映像を見せてくれたんだよ。あれにすっかり脳を焼かれて、俺は次の年のスプリンターズSは生中継で見たくなっちまったんだ」
「だからあの日は練習をサボってたんだ……」
チーム[ミモザ]が解散し、チーム[ライジェル]に2人が合流した後。思えば去年スプリンターズSを開催していた日、デュランダルは午後の練習をサボっていたことをアローキャリーは思い出していた。
「だがあいつにはお見通しだったんだよ」
「あいつ、って、矢萩トレーナー?」
「あぁそうだよ……そしたら「妹が出てるから見てくれ」とか言い出してよぉ」
「……ねぇ、ちょっと待って」
「あん?」
「つまり、矢萩トレーナーは、あなたと一緒にスプリンターズSを見ていたってこと?」
「そうなる……あっ」
「そっか……そっか……2人とも練習サボって試合観戦してたんだぁ、へぇ〜……」
「いや、違っ、録画だ録画!」
攻守逆転。あの日、アローキャリーはただただグラウンドを走らされたことしか覚えていない。なのに、デュランダルと矢萩トレーナーは自分を放ってテレビを見てサボっていたんだ、と。そう解釈したアローキャリーからは先ほどの泣き顔からは一転、涙が一瞬で蒸発してしまうようなドス黒いオーラを放ち始めた。
だが、デュランダルは自身の言葉に語彙が足りずに齟齬が発生したとすぐに理解して訂正した。
「ホ ン ト に ?」
「う、嘘じゃねぇよ! 練習サボった翌日、トレーナーに呼び出されてよぉ……」
矢萩がデュランダルをトレーナー棟に呼び出した際、そのおさぼりの理由を聞いた途端、「じゃぁスプリンターズS一緒に見ようぜ!」とテレビとBDレコーダーをいつの間にか用意してきて、矢萩は妹のことをひたすらトーク、時々レースの解説……要は妹の自慢話が暴走してそれにデュランダルが付き合わされたわけだ。
「うぅ……思い出したら寒気がしてきたぜ……」
「Oh……」
「……今年からスプリンターズS見る時どうすりゃいいんだろうな……」
「知らないよそんなこと……」
サボった罰はしっかり受けたようで、遠い目をするデュランダルと、何とも言えないアローキャリー。
「……って、何やってんだ俺。そうじゃなくてだな……」
思いの外早く正気に戻ったデュランダルが、口を開くついでに話を戻した。
「スプリンター路線は別名「電撃戦」。スピードがモノを言う世界だ」
「それは知ってるけど……」
「だから駆け引きなんか考える余裕もなくあっという間にゴールに行っちまう。しかし悔しいが、これが俺の性に合ってやがった」
「……何だかごめんね。さっきのこと」
「……いいや、気にしてない。お前は
さっきまで抱えていたティアラ路線への未練は、心に掛かっていたモヤモヤと一緒にいつの間にか何処かへと吹き飛んでいたアローキャリー。
と、ここで、アローキャリーは前々から疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「……そういえば気になったけど、デュランって追い込みだよね?」
「それがどうした?」
「でも、あなたがスプリンターズSにどハマりしてスプリンターを志すきっかけを与えてくれたのは逃げウマ娘だったんでしょ? 逃げや先行じゃなくて、短距離で追い込みって……不利じゃないの?」
短距離は距離の短さ故に、逃げや先行が有利と言われている。
差しや追込が不利という扱いになるのは、そのような逃げや先行のウマ娘たちが終盤で壁になり抜け出しにくくなる場面が多いためである。
だが。
「だからだよ」
デュランダルは不敵に笑い、
「
(あぁ……)
アローキャリーは納得できたような、何か別の感情が湧きそうになっていた。
一方、クロススキッパーは1時間のクールダウンの後、今度は逃げ役のダイタクヤマトを投入、クロススキッパーと併走する先行役にケイエスミラクルを。
先頭をただただ直走るダイタクヤマト。
そこから1〜2バ身ほど離れた先行のポジションから様子を伺うケイエスミラクル。
フレアカルマは先程のデュランダルと同じ指示をケイエスミラクルに出していた。
即ち、
(仕掛けるタイミングは
(ケイ先輩が仕掛け始めたら、僕はそれについて行く……!)
先ほどのデュランダル・アローキャリーペアとのトレーニングは追い込みの脚使いを見るためだったが、今度は先行での脚の使い方である。
(……! ここだ!)
(!)
ケイエスミラクルが「ここだ!」と思ったタイミングは、ゴールまで残り300mの地点。
そのタイミングをクロススキッパーが見逃すことはなく、ケイエスミラクルが仕掛けを始めたところで、彼女も足に力を込めて、芝の地面を蹴り上げた。
そして、逃げをしていたダイタクヤマトをゴール手前残りの50mでケイエスミラクルが差し切った。
ダイタクヤマトは半バ身差でケイエスミラクルに遅れてゴール。
クロススキッパーはさらに1バ身ほど遅れてゴールに飛び込んできた。
さらに1時間後。
今日のラストランではクロススキッパーの差し脚の使い方を見ることにした。
ここでは、先行を走るアイルトンシンボリと、差し脚を得意とするダイイチルビーがクロススキッパーと一緒に走ることになり、
「はあぁぁぁっ!」
「!」
最後の450mほどからダイイチルビーが差し脚による仕掛けを始めた。
これにクロススキッパーは遅れることなくついていく。
そして、普段からダート戦に特化していたアイルトンシンボリを軽々とゴール手前200mほどでダイイチルビーが交わし、アイルトンシンボリとクロススキッパーはほぼ同時にゴール板を駆け抜けた。
そして翌日。
最後に控えていたのは、
「さて、スキッパー。うちのチームの幟を見たから分かると思うが」
「は、はい。今度は逃げですよね……?」
「その通り。というわけでだ……妹ぉ!」
「ウェイウェイ! スプリントの距離、手加減しないYO!」
「いんや、お前じゃない。パマちゃんが短距離で逃げをやってくれ」
「え? あたし、スプリントは苦手なんだけど……?」
「えぇー!? なんでぇ!?」
「ハンデだハンデ。お前が短距離でぶっちぎったらスキッパーがついて行けねぇよ。一方のパマちゃんは中から長距離が適正。短距離では巡航スピードに入る前に終わっちまうが、その方がまだスキッパーがついて行けるだろ?」
「ちぇー……」
「というわけで、ヘリオスにはスキッパーとパマちゃんを後ろから追走する役目な」
「うわー。トレーナー、ルビーちゃんやマックイーンが良くやるあれをヘリオスにやらせちゃうの?」
「マジでぇ……?」
「何度かプレッシャー当てられてんだから、それを思い出しながら走ってみ?」
「うーん……わかった、やってみる」
「あぁ、あと距離の方は昨日と同じ1200m。ただし
「ちょ!?」
「えぇー!? 」
「「ダート!?」」
「兄貴ぃ、鬼畜すぎぃ!!」
「私たちがダート苦手なの分かってるくせにー!」
「だあぁぁっ、悪いって! つーか今日何の日だか分かってるよな!? そのせいで芝コースが使えねぇんだよ!!」
「何の日ってそりゃぁ……」
「「……あっ」」
パーマーとヘリオスは間抜けな声を出したが思い出した。
今日は日曜日。しかも、午後3時半から皐月賞だ。
「朝から10時まで皐月賞に出る連中が直前まで練習ってことで芝コースを占領してるもんでな……。その時間を過ぎたら中山に行かなきゃならんし」
「え?」
「えー? チームルームで見ようよー!」
「そうそう、絶対鬼混みだよ!?」
「分かってるよ。心配はありがたいんだが、チャンスは今年しかないだろう? 生の皐月賞を見れるのは」
「……スキっぴーのために?」
「そうさ。それに、こんなこともあろうかと優先観戦券をゲットしてきた。だが、それも4人分しかなくてな……」
チーム[ライジェル]の大半は留守番決定だな、と矢萩が考えていた時、
「あ、あの! 矢萩さん!」
「射手園くん?」
「そのチケットの内の2枚、……僕たちに譲っていただけませんか?」
「え? イルちゃん?」
「マヤちゃん、皐月賞。一緒に観にいこう」
「……ふ、ふふーん、デートだね? 良いよ行こう!」
「……」
射手園トレーナーからの急なデートの誘い(?)に顔を若干赤らめながらマヤノトップガンは応じるが、これについて「面白くない」と言わんばかりの顔をしている
そんな
「分かったよ射手園くん。2枚は君らにあげる。行きと帰りは俺が送ってく……と言いたいとこだが、もうこの時間から車を走らせても混むことは確定だからなぁ……」
「あ。それなら府中本町から船橋法典に行きますから」*2
「良いのか? 混むから座れないかもしれんぞ」
「だ、大丈夫ですよ矢萩さん! 僕だってもう子供じゃないんですから!」
そう胸を張る射手園トレーナーであるが、身長がマヤノトップガンとあまり変わりないので実年齢に比べると不覚にも可愛らしく見えてしまう。
「じゃあ……宮松」
「あ、はい?」
「君に引率を任せるから、スキッパーと、射手園くんたちと一緒に中山に行ってくれないか?」
「分かりました。任せてください」
「さてと……おしゃべりは終わりだ。スキッパー。ダート1200mを逃げで走ってみろ」
「逃げで走れと言われても……」
「自分が出せる限りの力で最初から最後まで走ってみろ、ってことだ。これが終わったらちょっと休憩して着替えて中山に行ってこい」
ダート1200mのスタート地点に3人が揃ったのを確認して、矢萩は虹色のメガホンを手にして叫んだ。
「よーい、スタート!」
それと同時に横にいたフレアカルマがストップウォッチをオンにした。
オーダー通りの並び順で、メジロパーマーが前にポーンと飛び出して、これの2番手にクロススキッパー、3番手にダイタクヘリオスが追従し、3人は全力疾走を開始する。
全力疾走する3人、途中までは矢萩のオーダー通りクロススキッパーとの差をあまり詰めずに走っていたヘリオスだったが、流石に中間の600mになってくると「差」が顕著に現れてくる。
「おいおい、マジかよ……」
これまでヘリオスとパーマーは共に「ダートは苦手」と嘆いていたのだが、それに対してクロススキッパーはまだ練習らしい練習を始めていない段階にある。
ならばトレーニング量の差で2人が早々にクロススキッパーを引き剥がしに掛かるだろう───矢萩はこの逃げ脚を見る際に最初はそう思っていた。
だが、蓋を開ければどうだろうか。
「ウソ……っ!?」
「マジか、あいつ」
「えぇぇぇっ、パーマーさんを早々に抜き去って先頭を独走してる……?」
「ヘリオスはんが全く付いて行けてへんなんて……!」
[ライジェル]のウマ娘たちは目の前で起きてる状況をまるで信じられなかった。
600m辺りのカーブ付近で3番手にいたはずのダイタクヘリオスがいつの間にか2番手のクロススキッパーよりも大きく離され、ついでに最初は5バ身差ぐらい先行していたはずのメジロパーマーのすぐ後ろまで一気に迫り、ゴールまで300mの地点でクロススキッパーはチーム[ライジェル]の古株である爆逃げコンビをあっという間に抜き去っていった。
その後の直線300mはほぼクロススキッパーの独走でゴール板を越えていった。
「……これはたまげたなぁ」
「そうですね……確かクロススキッパーって、芝レースに出たがっていましたよね……?」
「ちょっと待ってくれよ。……宮松。今の見てどう思った?」
「え?」
宮松サブトレーナーことフレアカルマは矢萩からの呼びかけに反応がやや遅れる。
彼女は先ほどのダートでのタイムを見て驚いてたのだが、矢萩に尋ねられた内容を即座に理解して返事した。
「 ……そうですね……私の目にはクロススキッパーにはダートの走り方が合ってるような気はしますけど?」
「そうか……だが、他の脚の使い方を見ていても、芝での走り方も違和感がなかったような?」
「そうですよね、矢萩さん。うーん……?」
トレーナー陣3人が頭を傾げていた時、ヘリオスがそこへ戻ってきた。
「はぁー……いやぁ、参ったわぁ……」
「あ。おかえり妹ぉ。ほれぇ」
「サンキュ、兄貴ぃ」
先ほどのダートレースでは完全にビリでゴールしたヘリオスだったが、流石にG1で活躍しているウマ娘だけあって、苦手なバ場を走破したとはいえあまり息は上がっていなかった。
そんな彼女が矢萩たちの元に戻ってきたのを見計らって、矢萩はクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出してヘリオスに手渡した。
「うひぃーやっぱダート苦手だわぁ……」
「スキッパーにあっという間に逃げ切られたな」
「それな! 兄貴ぃに言われた通りスキっぴーにプレッシャー加えようとしたらそれどころじゃなくなったしぃ……」
「はぁ……はぁ……はぁ……と、トレーナーさん、僕のタイム、どうでしたか……?」
そこへ少し遅れてパーマーと一緒に、クロススキッパーが戻ってきたが、全く息が上がっていないパーマーとヘリオスとは対照的にクロススキッパーは膝を抱えて呼吸を荒くしている姿が余計に目立っていた。
そして、彼女に言われた通り、フレアカルマがタイム計測をしていたストップウォッチを見ると、
「おうおうおう……?」
「トレーナーさん……?」
「……スキッパー、お前のダート1200mでのタイムは1分11秒5だ」
「えっと……それって速いんですか?」
「中山のダート1200mの1勝ウマ娘レベルに匹敵するタイムだ」
「えっと……?」
ちなみに、中山レース場のダートコースで同じ長さのメイクデビューを走るウマ娘たちの平均タイムが「1分13秒1」とされているので、現時点でクロススキッパーはそれよりも速いタイムを出したことになる。
もちろん、本番と練習では勝手が違うため、本番でも同じような好走ができるかはわからないが。
「あ、あの……」
そんな時、誰かのスマホが鳴る。
それは矢萩がスマホに仕掛けていた目覚まし機能からの音であり、時間は午前10時になっていた。
「……おっと、いけない、もうこんな時間か。スキッパー、着替えて中山に行ってこい」
「は、はい」
「射手園くん、宮松、頼んだぞ」
「は、はい、チーフ」
「分かりました。マヤちゃん」
「うん、イルちゃん行こ!」
ややはぐらかすような形になったが、時間が時間なのでさっさとクロススキッパーを皐月賞の観戦に送り出した。
4人がトレセン学園のグラウンドから去っていくのを見送ってから、デュランダルは矢萩の脇を小突いて問い質した。
「……おいトレーナー、一体どうすんだお前?」
もちろん、言わんとすることはわかっている。
「それな、デュラン……チーム[ライジェル]、チームルームに
虹色メガホンを片手に、グラウンドで練習中だったチーム[ライジェル]のメンバーたちが、このコールに応じて、矢萩の元に集まってくる。
(さて。困った。これは荒れるぞ……)
彼女たちをチーム[ライジェル]のチーム棟へと促す矢萩の内心では厚い雲のようなモヤモヤが立ち込めようとしていた。
無理もない。
午前中、普通にダートを1周走らせて、逃げ脚の適性があるかどうかを見る───目的はたったそれだけだったはずが、予想外の
しかし経験上、こういう場合は1人で考えても碌なことにならないことは矢萩も理解していた。
ならば、クロススキッパーと一緒に走ったチームメンバーたちと話してみる方がいいだろう。
長い1日になりそうだ。
ごめんなさい、次回に続きます。
メジロシティですが、このシリーズでは鬼怒川温泉の付近にある、という設定を採用しています。
理由は、今の鬼怒川温泉の付近って廃ホテルや廃墟が結構多い、という話を耳にして記事をちょっと読ませていただくと、「栄枯盛衰ってこういうことを言うんだなぁ」としみじみ。
ウマ娘に絡めて「栄枯盛衰」といえば……どうしても自分の頭の中でその言葉との結びつきが固結び並みについて回ったイメージがメジロ家でした。
しかし、向こうではメジロ家他、日本中の旧財閥やら企業やらが鬼怒川温泉街の整備に介入した結果……端的に言えば、「ホントにメジロシティが出来ちゃいました、あはは」というイメージでお願いします。
余談ですが、メジロシティの誕生とテコ入れの結果、北関東のウマ娘レース場は史実とは異なる方向へ繁栄が推移していくことに……。
そういえば来週末(24日土曜日)にはウマ娘三周年と同時に、新シナリオ実装だとか。
……上山や中津、高崎とか横浜とか走らせたいなぁ……そんなタイムスリップモノのシナリオ来ないかなー……?