また君と、今度はずっと 〜If you can Cross to tomorrow〜 作:Simca Ⅴ
こんなクソローテをやったら怒られそうですが、実際にやった人と馬がいるんですよね……。
だから俺は悪くないもーん。
あと、アンケートを設置しましたのでよろしくお願いします。
クロススキッパーのメイクデビューからたった1週間後に行なわれた小倉ジュニアステークス。
『先週に引き続いての出走となった15番クロススキッパー、好スタートのまま先頭を逃げる逃げる!』
『残り400で先頭クロススキッパーのまま変わらず第4コーナーを駆け抜ける! 後ろから9番メイプルロード、13番ブルーコンコルドが追い込むが間に合うか!?』
『残り200m! クロススキッパー、ぐんぐん突き放す、脚色は衰えない! そのままゴール! タイムは1分9秒5、2バ身差を付けての快勝です!』
『2着にメイプルロード、3着にブルーコンコルド!』
「はぁ……はぁ……はぁ……」
もちろん、トレーナーである矢萩にとって自分の
ターフに伏せっていたクロススキッパーは立ち上がり、拳を空に突き上げ、
「……やー!!!」
「「「「わぁぁぁぁぁっ!!」」」」
『やりました! クロススキッパー、
中2週どころか、メイクデビューからたった1週間でクロススキッパーはG3を走ることになったため、そのような過酷なスケジュールの組み方など、本来であればトレーナー失格という烙印を押されても仕方ない。
(
そんな矢萩の心配と困惑と自責を余所に、小倉レース場のスタンドからは歓声が巻き起こっていた───。
───そもそもこんな無茶なレースローテで走らせてほしいなどと言ってきたのはクロススキッパー自身だった。
「小倉ジュニアステークスに出走したい、だって?」
「はい! どうしても試したいことがあって……」
「ダメだ。1週間しか間隔が空いてないのに」
メイクデビュー後、ウイニングライブも終えたクロススキッパーはまだ
「お願いします!」
「ダメだぞスキッパー。確かに
「大丈夫ですトレーナーさん! 僕、今日のレースで全く疲れてませんから!!」
「ダメだって言ってるだろうが。お前自身が「疲れていない」っつってもそれは無自覚かもしれんだろう」
「お願いします! 小倉ジュニアステークスが終わったらトレーニング禁止でも何でもしてくれていいです! お願いします!!」
クロススキッパーはなおも食い下がり、頭を下げて懇願してくる。
そのあまりの諦めの悪さに、矢萩と宮松は顔を見合わせて困惑する。
その場に居合わせたチーム[ライジェル]とチーム[セントーリ]のメンバーたちも、クロススキッパーの只ならぬ雰囲気を感じ取った。
「……ねぇ兄貴ぃ。スキっぴーがこんなに頭下げてるんだし、許してあげたら?」
「そうはいかないぞ妹よ。馬好さんも言ってただろう。「一勝よりも一生を」って*3」
「えー? トレーナー、前にあたしにステイヤーズステークスから有馬記念の日経新春杯っていうクソローテやらせなかった?*4」
「それにしたってそれぞれ2週間と1ヶ月近く置いてあっただろう!*5 たった7日間なんて、休養があって無いようなものだ。下手すれば命に関わる!」
「チーフ」
「……宮松。お前もまさかスキッパーをレースに出せとか言うつもりか?」
「その是非を問う前にやることがありますよ」
そう言って宮松は矢萩と射手園を控え室の外まで引っ張っていく。
「お、おい宮松!?」
「フレアカルマさん!?」
「スキッパー。早く着替えて! 男連中は部屋の外に連れて行くから」
「だぁっ、なら引っ張らんでいい!」
「そうですよぉ!」
「話はまた後で聞くから早く」
「は、はい」
そうして忙しなくトレーナー陣は控え室からの退去を余儀なくされ。
クロススキッパーを始めとするチームメンバーたちだけが部屋に取り残され。
とりあえずは
スキッパーがライブ衣装を丁寧に畳み直しているところで、パーマーは呟くようにこんなことを言った。
「……何だか懐かしい」
「……え?」
「あ、ごめん、何でもない。終わったらトレーナー待たせてるし、行こう」
「あ、はい」
畳み終わったライブ衣装はこの後運営スタッフが回収して洗濯やクリーニング、あるいは補修などを行なって、また次のウマ娘に貸し出される、という流れになってる。
クロススキッパーが着替え終わって、各々荷物を持ち、忘れ物がないかチェックしてからチーム[ライジェル]とチーム[セントーリ]のメンバーたちは控え室を後にした。
帰りは小倉駅から鹿児島中央まで新幹線、鹿児島中央からJR大隅線で鹿屋。鹿屋駅からタクシー数台に分乗して一行は鹿屋旅館に戻った。移動の間、チームメンバーたちの会話は口少なめだった。
……1つだけ弁明しておくが、夜な事もあって移動中は寝てるメンバーも多かっただけであり、別にチーム全体の空気が悪かったとか別段重かったというわけではない。
鹿屋旅館に着くと、片道3時間の長旅で流石に寝ぼけ眼になるウマ娘たち。
クロススキッパーに至っては、メイクデビューでの疲れが出てか、移動中から半分寝てるような状態、旅館に着いて布団に寝かせればそのまま朝まで起きなかった。
というわけで翌日。
「……それで、何故そこまで小倉ジュニアステークスに出たいんだお前は?」
レース翌日ということもあって朝練もなく、起きて朝食を食べて歯磨きをして、のんびりした朝を迎えたチーム[ライジェル]の一行。
朝のランニングを終えて戻ってきたチーム[セントーリ]の一行も合流。
そして、一行が旅館の大広間にて朝食を食べ終えてから、矢萩はクロススキッパーに昨日投げかけるつもりでいた質問をぶつけた。
一夜明けて時間が少し開き、夜の燃え尽きそうな状況のテンションではなく、朝になって少し頭がスッキリした状態。
クロススキッパーも矢萩も、周りのチームメンバーたちも気が落ち着いていた。
冷静に矢萩が問いかけた内容に、クロススキッパーはこう答えた。
「その……メイクデビューでは、僕の理想とする走りができなかったから……」
「確かに出遅れてたな」
「……はい。本当は僕、逃げで前を譲らないつもりでした」
「別に気にするこたぁない。しっかり勝ってるんだから」
「で、でも……その時、おかしなものを見たんです」
「……おかしなもの?」
クロススキッパーが口にした「おかしなもの」。
それについて矢萩は若干の心当たりがあったので、カマをかけてみた。
「おかしなものを見た、か……例えば、後ろからボールに追いかけられる光景を見た*6とか、いつの間にかステージ上を走り回ってた*7みたいな、とかか?」
「えーと……うーん……まず何というか、レースの中盤で周りがスローモーションのように見えて……」
「……それ、もしかすると
「!」
心当たりがあったケイエスミラクルがそう言うと、ダイイチルビーも耳をピンッと張って反応した。
「
「うん。オレたちはそう呼んでる」
「レース中に稀に起こる現象ですね……私にも経験があります」
「ウチもウチも」
「
「えっと……世界が一瞬暗転して……僕の周りの
スローモーション、一瞬の暗転、それに周りに与えるデバフのような現象の発生……それらの条件を聞いただけで、チーム[セントーリ]とチーム[ライジェル]のメンバーたちの殆どがその現象を「
しかし、
その一点だけが気掛かりだったものの、ルビーはこう言った。
「……私を含めて皆さんにも共通しているのは、そのイメージが浮かんだ時に世界が止まって見えたり、周りを走っているウマ娘に影響が出る事でしょうか」
「うわぁ……ヴィクトリアマイルでウチがお嬢にやられたやつじゃん……*8」
「……さて何のことでしょうか」
ヘリオスから言われたことを若干とぼけるダイイチルビー。
しかしスキッパーは
「あの……
「服?」
「……あくまでもその光景は私たちのイメージの中だけのものです」
ダイイチルビーはそう前置きした上で、
「しかし……自分が見た光景の中では、確かに、
「しょ、勝負服ですか?」
「……あ。そういえば、スキッパーってまだ勝負服作っていなかったんじゃ……?」
パーマーの気付きに、彼女とヘリオスは矢萩をジトォッという効果音が思わず出そうなぐらいの目で見た。
「わ、悪かったって……九州から帰ったらすぐにでもやるつもりだったさ!」
「でも兄貴ぃ。確かスキっぴーは今年の年末のG1に出るんしょ?」
「だぁもう、帰ったらすぐにデザイン考えりゃぁ間に合うだろ!」
「ちょっと矢萩さん!?」
「チーフ、それはいくら何でもないですよ!!」
「3ヶ月あれば間に合う」
「えー!? 矢萩トレーナー、それはスキッパーちゃんが可哀想だよ! 今から頼んだらギリギリだとマヤ思うんだけど!?」
「そうだよマヤちゃんの、ぅゔん、マヤノの言う通りですよ矢萩さん!」
咳払いしてマヤノに同意する射手園。
ヘリオス、フレアカルマたちからも一斉に矢萩は怒られた。
「……年末といえばジュニア級でもG1が3つもあります。勝負服を作っているメーカーの方々が最も忙しい時期であることを矢萩さんは見逃しておられますね」
「ルビー。正しくは4つだよ*9」
ダイイチルビーも指摘し、そんなルビーの指摘に一点誤りがあったのをケイエスミラクルが訂正するが、2人とも矢萩に対しては揃って呆れ顔だった。
「ンァー……そうだったぁ……!」
完膚なきまでに正論でぶちのめされて呻く矢萩。
そんな時だった。
「勝負服ですか……」
「あ、その……すみません、五月蝿かったですか?」
「あ、いえいえ。こちらこそ聞き耳を立ててしまって……」
場所が旅館の大広間だったために、配膳を下げにやってきた仲居さんと旅館のオーナーの耳にも矢萩たちの話が入ってきたのは自然なことだった。しかも少々五月蝿かったことを矢萩は謝罪した。
「ウマ娘用の勝負服……確かウマ娘さんたちが重賞で着てる服ですよね」
「……そうですね。ここだと確かに」
ちなみにオーナーは「
中央や本州ではその認識は誤りと言えるのだが、北海道と
というのも、この8月の中津や荒尾、佐賀において実施された中津記念、霧島賞、ロータスクラウン賞などの九州においてG3(またはKG3)以上に格付けされているグレードレース*10で砂上のコースに現れたウマ娘たちは汎用勝負服や体操着だけでなく自分で用意した勝負服に身を包んでレースし、「じゃぁ俺たちも」ということで、中津記念に出走したアイルトンシンボリはいつものG1で着込んでいる緑色の勝負服に身を包んで参戦した。なお、無事勝利している。
これはホッカイドウシリーズを参考にKAUが取り入れた所謂ローカルルールであるのだが、結果的に北海道と九州の勝負服メーカーが地方産業として生き延びる一助にもなった。
なお、来年から小倉開催のG3以上のレース(ただしジュニア期のレースを除く)でも適用される予定だという。
「実は私の知り合いの1人が小倉でテーラーを営んでおります。ですから、もし宜しければ」
「え、あの、そんな悪いですよ」
「いえいえ。どの道……もしうちの子たちが
鹿屋旅館のオーナーの強い勧めを断り切れず、
「……お願いします」
クロススキッパーは座布団の上で正座し、頭を下げた。
それを見て矢萩も同様に胡座で崩していた足を整え直して正座し、
「……スキッパー本人がそう言うなら。オーナーさん、俺からもお願いします」
そうして2人揃って頭を下げた。
「かしこまりました。……次に小倉へ行くのは来週でございましたね?」
「え、えぇっと……」
「は、はい、そうです!」
「お、おい……」
小倉ジュニアステークスへの出走に良い顔をしなかった矢萩だったが、クロススキッパーに先手を取られてしまったため、もはや止めることが出来なかった。
「……はぁ〜……分かったよ……スキッパー。いいか?」
結局はスキッパーの熱意に押し切られて、勝負服の仕立てまでもが時期として重なったため、小倉ジュニアステークスへの出走を認めざるを得ないと悟った矢萩は、出走を許す代わりに、こう言いつけた。
「軽く流すだけにしておけ」
そうオーダーしたはずだった───。
───……のだが、終わってみれば、
「あんの、バカ……」
矢萩のオーダーをまさかの無視(とはいえ、クロススキッパー自身が出遅れのリベンジを果たしたい旨を矢萩は聞いていたのだが)、しかも全力疾走で最初から最後までレースをクロススキッパーは引っ張った。
逃げウマとしては教科書通りの文句なしの動きだ。
だが、逃げウマ娘というのは、先頭を維持するだけでも相当な体力を消耗するし、身体への負担も大きくなる。
短距離でならまだいいとして、今のスキッパーに1200m以上で逃げをやらせればどうなるのかは未知数。しかも先週メイクデビューで全力で走ったばかりだ。
……これは後が怖いな、と矢萩は頭を抱えつつ、ウィナーズサークルへと向かった。
「スキッパー」
「は、はい、と、トレーナーさん……」
「……何をビビってる?」
「いや、その、僕が無茶をしたから怒ってますよね……?」
「……あぁ、その通りだ。足とか身体とか本当に大丈夫なのか?」
「多分……大丈夫……です」
「……はぁ〜……結局は止められなかった俺のミスだ。すまん」
「そんな、謝らないでください! トレーナーさんのせいじゃないです、僕が言い出したことなのに……」
「……それで、どうだったんだ?」
「どうだった、って……」
「あの、お話中のところすみません、クロススキッパーさん、トレーナーさん。こちらへ」
一応は勝利したスキッパーと矢萩だったが、お互いに浮かない顔をしていたところを小倉レース場の主催者に促されてウィナーズサークルに案内され、小倉ジュニアステークスのトロフィーを受け取り、そのまま勝利者インタビューへと移行する。
「改めて、小倉ジュニアステークス勝利おめでとうございます、クロススキッパーさん」
「あ、ありがとうございます」
「前走がメイクデビュー、それからほぼ1週間しか経っていない今日G3を制覇しましたが、ファンの方々からはややハードなスケジュールでの出走を心配されていたとか」
「は、はい。でも、その……」
スキッパーは矢萩に目配せをする。
メイクデビューではこういったインタビューが無かっただけにどう答えていいのか分からなくなる。
しかし、矢萩はスキッパーのインタビューを引き継ぐようなことはせず、同じく目配せで「お前に任せる」と返した。
「……その、僕にとって、小倉は地元みたいなものですから……」
「な、なんと、クロススキッパーさんは小倉出身なのですか!?」
「い、いえ、実際には鹿児島に住んでたことがあって……たまに小倉や中津にも来たことがあるので、ちょっと思い入れのある場所なんです。今日のレース……個人的に試したかったことがあったことと、鹿児島にいる友達に僕の活躍を見せたくて。それでトレーナーさんに無理を言ってこうして出させていただきました」
「なるほど……ちなみにその「試してみたかったこと」というのは?」
「あぁその……お恥ずかしながら、メイクデビューは出遅れてしまったので、今回はそのリベンジをと」
「リベンジですか……ということは、今日のレースでクロススキッパーさんが披露した逃げが?」
「は、はい。メイクデビューではそれが出来なくて悔しくて……でも、今日のレースで逃げ脚を披露できて、しかも勝てたので無事果たせました!」
「それはおめでとうございます! ところで、今後の目標は?」
「えっと……その……クラシック三冠を走りたいな、って」
「おぉっ。ということは次走は朝日杯フューチュリティステークスですね!?」
「え、いや、ちょっと。そこはこれからトレーナーさんと話し合って決めるので……」
「ありがとうございました。改めて勝利おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます!」
先ほど派手にガッツポーズをしてみせたクロススキッパーは観客たちの声援に応え、インタビューしてきた記者からの質問に的確に答えたが、「朝日杯に出るか否か」については濁した。……これが翌日、ちょっとした一波乱を生むことになるなどこの時は思いもせずに、矢萩と共にウィナーズサークルを後にした。
そのままライブ衣装に着替えるために控え室に戻り、一旦気を落ち着ける。
〔……それで、どうだったんだ?〕
矢萩から投げかけられた、しかし、インタビューで流されてしまった質問がフラッシュバックする。
それに対して、クロススキッパーは自分以外がいない空っぽの控え室で、つい独り言でそれに答えた。
「逃げで理想的な勝ち方ができた……なのに……」
───スタートダッシュは実に完璧だった。
そのまま誰にも先頭を譲らず。
元々足りないスタミナを、足元にパワーを100%伝えるイメージと根性で補って。
そのままゴールイン。
従姉さんの走り方を思い出しつつ、パーマーさんやヘリオスさんのような「逃げの専門家」から教わったことで肉付けして、マヤノさんとの特訓の成果を今日は存分に引き出せた。
レースは勝った。
自分が活躍する姿はきっと
自分が理想とする走り方ができた。
なのに───、
「……結局
クロススキッパーにとって一番やりたかったこと。
それは、メイクデビューで見た光景をもう一度見たかったことだった。
しかし、残念ながらこの場では叶わなかった。
翌日。
鹿屋旅館からのチェックアウトまであと1日。
矢萩はクロススキッパーを連れて鹿屋の病院を受診した。
道中、周囲からの視線が痛い気がしたものの、病院に着くと、そこで勤めている医師の1人がクロススキッパーと顔見知りだったため、その中年医師の診察と検査を受けることに。
軽い健康診断のように心電図とレントゲンを録り、その結果は。
「先生、どうでしたか?」
「そうですねぇ……足の骨とか、循環器系とか色々と調べてみましたけど、特に異常はありませんよ」
「良かったぁ……」
「ただ、疲労が怖いのであと3日は安静にさせてくださいね。はぁ……ホントにこの娘は……」
中年の医師は呆れたかのように溜め息を吐いてそう告げた。
「せ、先生……」
「アスカちゃん、これ見たぞ」
スキッパーが2年間過ごした鹿屋でのホームドクターがこの中年の医師であり、彼はそう言って、2人の目の前に一冊の新聞を出してきた。
「……え?」
「はぁ……?」
「君が小倉ジュニアステークスを勝った時の
「「いやいやいやいやいや!」」
「え、違うのかい?」
「いや、その、皐月賞を走りたい、ってのはその通りだけれど、そこまでの道のりはそこに書いてあることの通りじゃなくてですね……」
「何だ。朝日杯に出るっつうのは書いた奴のただの勘違いか」
「そ、そうなんです!」
新聞記事のスポーツ面に書かれているのは、昨日の小倉ジュニアステークスでの勝利インタビューでのこと。
そこには見出しに大きく、
《クロススキッパー、小倉ジュニアステークスを勝利!》
《次の狙いは朝日杯か!?》
と書かれていた。
無論、これについて矢萩とスキッパーは強く否定した。
「しかし、朝日杯か……アスカちゃん……いや、クロススキッパーちゃんの
「えっと……その……」
「……まぁ、有体に言えば「考え中」ってやつです」
どう答えるべきか悩んだクロススキッパーは矢萩を頼ると、今度は矢萩がそう答えた。
「考え中ですか……別に構わないですが、無茶はさせないでいただきたいですね。尤も、今回のことはスキッパーちゃんが言い出したことなのは分かってますがね。ホントに昔から頑固なところがあって」
医師が少し呆れて「また無茶をしたな?」とスキッパーに呆れ顔をし、思わず矢萩はこんなことを尋ねた。
「……先生、スキッパーって昔からこうなんですか?」
「ちょ、トレーナーさん……」
「昔からって?」
「何というか、こう、「一度決めたら曲げない」というか」
「まぁ、そうですね。頑固なところがあって、それは変わってないようです。
「も、もう、先生ったら……」
矢萩が知り得ない少し昔のクロススキッパーについての暴露話。
必死で
今回登場した小倉ジュニアステークスは、2002年の小倉2歳ステークスをモデルレース……にするつもりでしたが、レース映像が残っていないため、勝利馬だったメイプルロードの次走(2002年の阪神JF)での走り方を参考にレースの終盤のみを描写しました。
ちなみに、実際の2002年のレースでは15番にいたのはマルブツタイクーンという馬でしたが、降着処分になってます。
しかし、何故降着になったのかがいくら調べても出て来なくて分からずじまいになってしまいましたので、結局は降着が起きなかったレース展開、かつマルブツタイクーンの代わりにクロススキッパーを入れる、という方法を取りました。
申し訳ありません。
もしどなたか、「2002年の小倉2歳ステークス」のレース展開を知っていたら教えてください。