また君と、今度はずっと 〜If you can Cross to tomorrow〜   作:Simca Ⅴ

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 お待たせしました、いよいよクロススキッパーの皐月賞です。
 ちなみに、今回は色んな方に相談して練り上げているため、かなり長くなっています。


#24『クロススキッパーの皐月賞(雨が叫んでる)

 浦和桜花賞から10日後。

 

 埼玉県さいたま市桜区にある和菓子店「宮松庵」。

 いつもは静かなお店のカウンターの壁面に、今日だけは特別に液晶テレビが空いてるスペースに設置され、小雨という天候の中、和菓子を求めて訪れたお客たちの視線が釘付けになっていた。

 なお、店員と店主も内容を気にしていた。

 何せ今日は、

 

【全国のウマ娘レースファンの皆様こんにちは。今日はクラシック三冠最初のレース、G1皐月賞をお届けしたいと思います】

【中山グランドジャンプが開催された昨日は曇り空ながら春めいた気温でしたが、今日は一転して朝から肌寒い1日になりまして、時々小雨も降っています】

【このような天候ですが、バ場状態は良との発表です】

 

「これで良バ場とかマジかよ……」

 

 カウンターで注文した和菓子を受け取りつつも、テレビの向こう側の風景と、店の外の天気模様を見比べるかのように青年はそんなことを呟いた。

 

【見守るファンの傘も震えていますが、新たな時代のスターたり得るウマ娘たちの活躍を一目見届けるために、悪天候にめげる事なく中山レース場、今日も満員御礼でございます】

【クラシック三冠の第一関門。今年も18人の実力あるウマ娘たちが集いました。今、パドックが始まりました。1番から順に紹介していきましょう───】

 

「店長、今日は一体どうしたんだい? わざわざカウンターにテレビまで取り付けてレースの生中継を流してるなんて?」

 

 常連のお客が、レジ打ちをしていた店主にそんなことを尋ねると。

 

「あぁ……うちの娘がね」

「娘って、明美ちゃん? 確か現役時代はフレアカルマといったか。あの娘、とっくに引退したんじゃ?」

「いやいや、あぁ、引退はしてるんだが、今あの娘は」

「あ! 店長、店長!」

 

 アルバイトのウラが店長にテレビを指差した。

 店長がテレビに再び目を向けると、

 

【───拍手と歓声が大きくなってまいりました、5枠9番、クロススキッパー!】

 

 そのアナウンスと共に、クロススキッパーは黒地の勝負服を身に纏って姿を現す。

 彼女はパドック上で大きく息を吸って、吐いて、深呼吸をして気を落ち着かせている様子だった。

 

「ほう、クロススキッパーじゃないか。え、もしかして?」

「そうなんですよ。うちの娘ね、中央でトレーナー資格を取ろうと頑張ってる最中でしてね」

「確か、明美さん今サブトレーナーだったんだっけ?」

「そうだったな」

「へぇ、あの娘が中央でサブトレーナーかぁ……」

 

 常連客は感慨深そうに腕を組んで頷く。

 

【ジュニア期無敗、芝もダートも好走してみせた風来坊。今日も逃げ脚が炸裂するのか!? 従姉はあの黄金世代の皐月賞バ、クロスクロウ! サツキの花を描いた勝負服にはその背中を追って来た皐月賞への執念が光る!】

【果たしてサツキは花開くことはできるのか。距離不安も何のその、今日は3番人気です───】

 

「ん? ということは最近あの娘がこっちに来た?」

「あぁ。10日ぐらい前か。浦和で桜花賞をやる直前に顔を出して来たんだよ、しかもあの子と一緒に」

「ホントに? サインとか貰ったか?」

「おいおいオフで来てるって時にそれはイカンだろ」

「それでどうだったんだ?」

「娘は暫くぶりに会ったが元気だったぞ」

「クロススキッパーの印象は?」

「そうだな……ダートG1を勝っててジュニア期無敗っていう経歴の持ち主って割りには普通のウマ娘って感じだったな。あの娘の従姉ほどは騒がしくなかった」

「ほー……ん? ちょっと待て。クロススキッパーの従姉って、クロスクロウか?」

「……多分そうだな」

「あの浦和から中央行って、イギリスG1を獲ったとかいう?」

「あぁ、間違いはないだろう。よく見ると顔立ちもあの娘にそっくりだよ」

「はぇ〜……」

 

 常連客が感心したように声を漏らす一方、店主はふと、フレアカルマとクロススキッパーを見送った時のことを思い返す───。

 


 

 ───浦和桜花賞からの帰り。

 フレアカルマとクロススキッパーの2人は、フレアカルマの父が運転するN-BOXに揺られて、なんと武蔵浦和駅まで送って貰っていた。

 

「それじゃぁ、頑張れよ明美。スキッパーちゃんもな。皐月賞、応援してるぞ」

「は、はい、ありがとうございます!」

「お父さんも気を付けて帰ってね。体にも気を付けて」

「ありがとうな。……今度は電話してほしい」

「うん」

 

 そこでフレアカルマの父と別れて帰りの電車に乗るため改札をくぐる。

 2人はそれぞれチーム[ライジェル]と[セントーリ]のみんなに、と宮松庵特製の和菓子を包んでもらったお土産を手に持っていた。

 

「……」

「……」

 

 電車を待つ間の2人に流れたのは沈黙。

 平日の夕方なので帰宅ラッシュの時間が差し迫り、帰宅中の学生やサラリーマンの姿がぼちぼち現れ始める。

 しかし、先ほどまで歓声に沸いた浦和レース場に居たとは思えないほどに一転した静寂ぶりが2人の間には漂い、周りの喧騒や学生たちの話し声も耳に入らなかった。

 

「……」

「……」

 

 電車に乗っている間も2人に会話はなく、むしろ大移動だったこと、レース場での喧騒に飲まれて興奮したこと、夕方で後は帰るだけ、という安心感からか眠気を抑えられず───。

 

「───お客様、終点ですよ?」

「へ?」

「……ぇ?」

 

 気が付けば、いつの間にか府中本町に着いていた。

 2人が乗ってきた電車の終点で駅員に起こされれば、急いそと文字通り手荷物を纏めて、下車して、改札を抜けていった。

 

 そこから学園までは、ウマ娘の脚で行けば10分も掛からない距離にある。

 だが、敢えて2人はゆっくりと帰路に着くことにした。

 話したいこともあったから───フレアカルマは一旦立ち止まって、クロススキッパーの名を呼ぶ。

 

「……ねぇ、スキッパー」

「……はぃ?」

 

 スキッパーは立ち止まって、フレアカルマの顔を見ると───彼女の顔には、重苦しい何かがあったように思えた。

 

「……学園に帰る道すがらでいい。話したいこと、聞いてほしいことがあるの」

 

 まるで意を決したかのような口調でフレアカルマはスキッパーにそう言うと、スキッパーはこう返した。

 

「……近くに公園があります。立ち話も何ですし……」

 

 

 

 そうして急遽、府中本町駅近くの防災公園に足を向けて、途中自販機で飲み物を買ってからベンチに2人並んで座る。

 お互いにペットボトルのお茶を一口飲んでから───フレアカルマが切り出した。

 

「……私のお母さんね、5年前に亡くなったんだ。くも膜下出血が死因だったってお医者様が言ってたけれど……今でもそれを思い出すと時々怖くなる……」

 

 日中は暖かいが、夕方になり日が傾くにつれて肌寒さを感じるようになる。

 フレアカルマは自身に寒気が走ったのを感じ、思わず身を震わせた。

 それは果たして寒暖差から来るものか、それとも……? 

 

「カルマさん……」

 

 突然に切り出されたフレアカルマの母が亡くなった時の真相。

 スキッパーは直感的に、であるが、フレアカルマに寄り添うことしかできなかった。

 

「……ありがとう」

 

 小さくお礼をそう呟いてから、

 

「……私が引退したのは、そんな母の死が突然訪れたことがきっかけだった」

 

 フレアカルマが明かしたのは、喪失の後の話。

 

「私の実家のお店は元々、父と母が金勘定とお菓子作りの役割をそれぞれ受け持っていたけれど……母が亡くなってから暫くはお店を開けない日が続いたわ。一方で私も、その事件……そう言っていいのかはわからないけれど、それがきっかけで練習に集中できなくなって……折角未勝利を勝ち抜けたのに、全日本ジュニア優駿への出場権を見す見す逃して、1勝クラスすらまともに勝てずに。……そして結局、桜花賞に出走できなかった」

 

 先ほど、浦和で桜花賞を見ていた時に呟いたクロススキッパーの一言。

 

《……カルマさんも、やっぱり……?》

 

 ───実は、フレアカルマはかつて浦和桜花賞への出走を目指していた。

 しかし、彼女の家族に不幸があったことでその夢が駄目になった、そんな話をシムーンカルマから聞かされた時のクロススキッパーは思わず血の気が引いて、気分も沈んだ。

 

「そう……私だって、本当は桜花賞を走りたかった。勝ちたかった。なのに……気持ちが定まらずに勝てない自分が情けなくなって……」

「……それで引退して、さいたまトレセンを辞めて、ご実家のお手伝いに?」

「……やっぱり、シムちゃんが喋ってたんだ……」

 

 フレアカルマは一瞬、また会った時にシムーンカルマにどんなお仕置き(仕返し)をしてやろうか、なんて考えたが、クロススキッパーのお陰ですぐにそんな気持ちは霧散した。

 

「カルマさんは情けなくないですよ」

「でも……」

「それを言ったら僕だって……」

 

 クロススキッパー自身、思い返せば辛い出来事が結構あった。

 それを彼女はフレアカルマに打ち明けた。

 

「僕だって……前に話したから多分知ってると思いますけど、父と母を亡くしてから、従姉と妹と一緒に孤児院で育ちました。その従姉も、孤児院に来てから1年で引き取られて離れ離れになっちゃって……」

 

 もちろん、ここでスキッパーが語っている従姉とはクロスクロウのことなのだが。

 

「……その従姉が引き取られていったのは、お従姉ちゃんのお父さんの親戚だとか言ってました」

「……」

 

 それは……思ったよりもクロスクロウもクロススキッパーも家族関係がややっこしいことをフレアカルマは直感した。

 実際その通りだ。

 

「……僕とラン……つまりメジロシクローヌはですね、僕たちは親が同じですが、従姉はそもそも僕たちの両親の養子になったんです。それでも、僕が物心付いた頃は実の姉のような存在でした」

 

 そのクロスクロウも実は、実母が育児放棄してしまったために妹夫妻が引き取り───そのクロスクロウの母の妹こそが、クロススキッパーの実母だった。

 しかし、彼女の実の両親もスキッパーが物心ついた頃に自動車事故で他界してしまった。

 

 尤も、その関係をクロススキッパーが理解したのは、スキッパーが羽黒家の養子になり、彼女の妹のシクローヌが函館メジロ家に引き取られた後だったという。

 

「クロちゃんに、そんなことがあったなんて……」

 

 しかし、今スキッパーがポツポツと語ったことは、今の今まで、フレアカルマですら知らなかった暗い過去だった。

 

「その従姉さんが、中央で競技ウマ娘になって、皐月賞のパドックでまた会った時、多分あの頃から僕は従姉さんの背中を追いかけようって、思っていたんだと、思います。でもその従姉さんはイギリスG1を勝利した後、何処かに消えてしまって……いざ中央トレセン学園に来てみたら……」

 

 その後はフレアカルマやチーム[ライジェル]、[セントーリ]のみんなや、クラスメイトのダイワメジャーたちの知るところ。

 クロスクロウの引退が公になり、その原因を知ってスキッパーはレースを走るのが一時期怖くなった───しかし、

 

「……でも、あの時、僕に再び走るきっかけを与えてくれたのは、カルマさんでした」

 

 チーム[ライジェル]へと足を運び、そこに居たのは、現役時代の従姉と同じチームに居たという先輩のデュランダルとアローキャリー、そして、サブトレーナーというポジションに腰を落ち着けていたものの、スキッパーにとっての「ヒーロー(憧れ)」の片割れだった宮松明美こと、フレアカルマだった。

 

「もしあの時、僕がカルマさんに出会えていなかったら、僕はきっとこの場には居なかったかもしれません。……カルマさんのお陰で、入学前後には朧げな夢でしかなかった皐月賞への出走が、僕は今、あの日のお従姉ちゃんの背中に漸く辿り着く、その一歩手前まで来れたんです。僕だって、散々レースを走るかどうか迷って、メジャーちゃんやキンカメちゃんたちや、ラン……ローヌにも心配や迷惑を掛けてしまって……うぅ……」

「スキッパー……」

 

 気付けばスキッパーは泣いていた。

 フレアカルマが見知ってる範囲でだが、いつもは大人しくて、控え目で自己主張も強くなくて、レースで負けた時ですら、涙で顔を濡らしたことすらなかったというのに。

 だが、

 

「何だか……それって凄く皮肉というか、運命を感じる話だわ」

「……え?」

「聞いて、スキッパー。実は、私がトレーナーを目指すきっかけを与えたのはね、あなたのお従姉さん───クロちゃん(クロスクロウ)だったのよ」

「……それって……」

 

 シムーンカルマからも聞いた、「フレア姉さんがトレーナーに転向するきっかけを与えたのはクロスクロウだった」という話。

 先ほどまでの涙を吹き飛ばすようなその話の真実を、フレアカルマは語り出した───。

 


 

 ───4年前。

 

「おい、カルマ。考え直せよ。家業をしながらだってレースはできるだろ」

 

 さいたまトレセン学園の学生寮。

 実家まではウマ娘の脚で30分掛からない距離にあるとはいえ、学校やレースのある平日やトレーニングが忙しい時期のフレアカルマにとって、この学生寮は第二の家のような存在だった。

 そんな彼女が部屋を片付けて少なくない荷物を纏めて明日には退居するという話を聞きつけたクラスメイトのコスモネビュラは、フレアカルマの入寮している部屋までやってきて、学園に引き留めようと慌てて説得しにやってきた。

 しかし、

 

「……私も元々はそう思っていたよ」

「なら……」

「でも、気づいちゃったんだ、〈もう無理だ〉って」

 

 フレアカルマはこの年、本来であればクラシック期を迎えていたはずだった。

 この前年にフレアカルマは母を突然に亡くしたことは前述の通りであるが、それから漸く半年が経った時になって、レース界から去るという決断をした。

 だが、それはあまりにも、

 

「早すぎるよ……」

 

 コスモネビュラはそう言った。そんな彼女と抱擁し、

 

「カルマ……お前……」

「ねぇ、ネビュラ……お願いがあるんだ。私がレース界から去ったこと、絶対にクロちゃんには言わないで」

「な、何故……?」

「……わかるでしょ。あなたと同じように。きっと私をレースの世界に連れ戻しに来る。でもね……それは駄目なんだ」

「何で……!?」

「今の私の走り方、とても情けなくて、クロちゃんに見せたくないからだよ……!!」

「!」

 

 それを聞いてコスモネビュラは、

 

「はぁ〜……」

「……何その溜め息」

「いや、別に。……納得しただけだよ」

 

 いや、実は溜め息を吐いたことには半分嘘があった。

 コスモネビュラが、フレアカルマがレースを去る決断をした、その理由について、納得した反面、

 

(お姉ちゃんとしての意地というか見栄っ張り、ってやつか……)

 

 そう内心呆れてもいた。

 

 クロスクロウは去年さいたまトレセン学園に()()してきたばかりで、中学2年生でここ、つまりは、フレアカルマのルームメイトとして入寮してきた。

 一方、クロスクロウが中2の時、フレアカルマは高校2年生だった。

 

 ここで話が逸れて申し訳ないが、ちょっと説明したいことがある。

 

 実は地方トレセン学園に通う高校2年生というのは、かなり切羽詰まった状態だったりする。

 地方トレセン学園は基本的に中高一貫校であるが、中央トレセン学園との大きな違い、それは大学・大学院・短期大学制の有無だった。

 一応、地方トレセン学園の高校課程を卒業後もレースで活躍できる実力と人気があれば、その間は地方トレセン学園に在籍することも許されるのだが、大抵の場合は、中央トレセン学園の短期大学、もしくは地元の大学などに進学してレースを続けるウマ娘たちがほとんどだ。

 

 つまり、高校2年か3年でデビューをしないと、その後の進路に響くことになる。

 

 これはウマ娘各々の本格化の時期について「個体差」というものが絡む、そのために中々に難しい問題である。

 もちろん、世間一般で言う大学生ほどの年齢になって本格化を迎えるウマ娘というのも存在こそするが、それこそレースを走ることに余程の情熱を持っているウマ娘でないと、トゥインクルシリーズ、ましてやローカルシリーズで実績を挙げることなど容易なことではない。

 

 それ故に、実はフレアカルマも、本格化(を迎えたかも?)という状態でメイクデビューを済ませて、それでも未勝利を勝ち抜いてきたわけだ。

 

 ……ここでフレアカルマとクロスクロウの関係の話に戻そう。

 

 前述した通り、2人の間には3年の歳の差があったわけで、フレアカルマとクロスクロウの関係は、ルームメイトであり、親友であり───その親しさ故にカルマはクロウに対して先輩風というか、お姉ちゃん風を吹かせていた、というわけだ。

 

 そんなクロスクロウもフレアカルマの走り方に脳を焼かれた(魅了された)らしい。

 

 だからこそ、例えメイクデビューで勝敗が着いたとはいえ、フレアカルマは自身の弱い姿をクロスクロウに見せまいとした。

 また、2人はいつかは再戦したいという約束もあったのだが、それが果たせない夢になってしまった。

 そこまでの考えを一周巡らせてみると、コスモネビュラの抱いた感想は「意地を張っていることに対しての呆れ」から、

 

(ヒーローに裏切られるのは辛いもんな……)

 

 フレアカルマなりに、クロスクロウを裏切りたくない気持ちの表れであったことを理解した。

 

 

 

 それから間も無く、フレアカルマはさいたまトレセン学園から地元の普通科高校へと転校し、実家の和菓子屋を継ぐべく、和菓子作りへの鍛錬を重ねる日々を送った。

 だが、これらの事情が重なったためにフレアカルマの高校生活は秋季卒業まで伸びることになった。

 

 その秋季卒業まで残り7ヶ月に迫った時のことだった。

 

「こんにちはー」

「いらっしゃいま……えっ!?

 

 お店の切り盛り、お菓子作りでフレアカルマが色々と忙しいところにやってきた毛先が黒い芦毛のウマ娘。

 

「ク、クロちゃん!? え、な、何でこんな所に!!?」

 

 あなたのお従姉さんが、私の実家、「宮松庵」に現れた。

 

「カルマに会いたくてな」

「カルマ……その……」

「ネビュラ?」

 

 クロスクロウのすぐ後ろからバツの悪そうな顔をして出て来たのは、コスモネビュラ。

 その他にも、さいたまトレセン学園にいた時の友達がお店にやって来ていた。

 クロちゃんの担当だった沼崎トレーナーまでもが一緒に。

 

「……あー! ネビュラ。私の家のこと!!」

「悪い! 黙ってらんなかった!!」

「カルマが突然学園を辞めちゃったって聞いてから、みんな心配していたんだから!」

「そうだよそうだよ! 休学って方法だってあったはずなのに」

「……なぁ、カルマ」

 

 クロちゃんはそう言って私の手を取ったかと思えば、いきなり抱き寄せて、ハグしてきて……途端に周りから「キャー」とか「ワー」とかいう悲鳴が上がったものの、私にはそれをツッコむ余裕なんてなかった。

 

「ちょ、クロちゃん!!?」

「……ワケならみんなから聞いてる。辛かったんだな……」

「……」

 

 完全に不意を突かれた。

 強引とも言えるぐらいに空気が一瞬で変わった。

 相変わらず不器用で……それでいて優しくて───。

 


 

「───それで、結局はどうなったんですか?」

「その後、クロちゃんやネビュラたちがね、お店を手伝ってくれたり、お客さんを呼び込んでくれたりした。ちょうどあの時……クロちゃんがヨーロッパに行く直前だったの」

「渡英前?」

「あの時のクロちゃんは、イギリスG1(KGⅥ&QE)を勝ったらその足で凱旋門賞を獲りに行く気満々だった。ネビュラも、未勝利以来中々勝てないレースが続いていたけれど、走るのをやめていなかったし、諦めていなかった。けれども、そんなあの子たちを見ていて思ったんだ。同期の私は一体何をやっているんだろう?って。だから、卒業まであと半年しかない時に、私はトレーナーになりたいって思った。その後はとにかく必死に勉強して……あとはあなたたちの知る通り、ってところかしらね」

「カルマさん……」

「……まぁ、まだまだ私はトレーナーどころかサブトレーナーとしても未熟なのはわかってる、けれどね、元さいたまトレセン学園のウマ娘として、あなたのお従姉さんの同期として、あなたが目指そうとしている道を支えるのが今の私の役目で───」

「カルマさん!」

 

 フレアカルマが決意を新たにしようとしたところ、クロススキッパーが制止した。

 

「……カルマさん、その、カルマさんはまたレースを走りたいですか?」

「……」

 

 そう問われた時、フレアカルマは、これまで必死に抑え込んできたものに向き合うことになった。

 

「……走りたい。でも───」

 

 サブトレーナーとしての業務の傍ら、クロススキッパーたちの併走に何度となく付き合っていたフレアカルマ。

 その行動には、彼女自身が遠い過去の夢として忘れようと努めてきた、レースへの情熱が隠れていた。

 しかし、あんなことがあってレースの世界から一度離脱して、トレーナーを目指す身としてこの世界に帰ってきた。

 だが、今更ターフにもダートにも自分の居場所は無い───そう思っていた。

 

「……カルマさんが走りたかったレースって、浦和の桜花賞や全日本ジュニア優駿の他には何かありますか? それも、シニア期以降も走れるような」

「シニア期以降も走れるレースで?」

「何でもいいんです。現役だった頃には思いつかなくても、その後に頭に浮かんだものでも!地方でも中央でも良いんです」

「地方でも中央でも……」

 

 そう言われてフレアカルマの頭に真っ先に浮かんだのは、

 

「……JBCステイヤーズ」

「え?」

 

 JBCステイヤーズ。

 それは、いわゆる「JBCシリーズ」の長距離部門のレース。

 開催場所は地方レース場の持ち回りであり、

 

「高崎開催だった時のレースを見た時……高低差が中山や京都のそれよりもあるのに、2600mを走り切ったウマ娘に、不思議とあなたのお従姉さんの姿が重なって見えたの」

 

 高崎レース場と、その過酷なコースレイアウトで2600mを走り切って頂点に輝いたウマ娘を見た時の感想を口にしたフレアカルマにも、それを聞いたクロススキッパーにも、空気が激しく震えたように一瞬感じた。

 

「……あなたのお従姉さんがね、アスコットレース場に行くって聞いた時、真っ先に私は思ったの。高崎レース場の急坂を登り切って、降り切って、また登って降って、2600mのコースを走り切れた時、私はクロちゃんに近づけるのだろうか?って」

「……分かりました」

「? 何が?」

「カルマさん、今週の土曜と日曜は空いてますか?」

「……あなたのトレーニングがある以外は」

「なら、ちょっと遠出しましょう。トレーニングをするついでに」

「え?」

 

 突然のクロススキッパーのお出かけ宣言に面食らうフレアカルマ。

 スキッパーがその週の土日に誘った場所は───、

 


 

 ───スキッパーの目の前には発走ゲート、足元は(ターフ)

 浦和で見た桜花賞と、それから三日と経たずにフレアカルマと共に行った2日間の()()()()()()()。それらを思い返しながら、スキッパーは自身に言い聞かせていた。

 

(やるんだ。僕ならできる!)

 

 

 

 一方、トレーナー用の観覧席では、矢萩がポケットから徐ろにiPodを取り出していた。

 

「矢萩さん、それは?」

「iPod。まぁ、俺なりの願掛けみたいなもんだから気にしないでくださいな」

 

 スマホとSNSの時代に今更感のある時代遅れなiPod。

 チーム[キタルファ]のトレーナーはそれを物珍しいというよりは、信じられないものを見るような顔でiPodの音楽を再生しようとしている矢萩に声を掛けた。

 ……というのも、普通は担当ウマ娘が出走するという時にそんな行動は取らないものだ。

 

「前回*1の時はこれが無かったから負けたものでね」

「はぁ……?」

 

 そういうものだろうか。

 キタルファのトレーナーは訝しんだ。

 

「……チーフ。今日の曲目は?」

「Mr.ZivagoのTell By Your Eyes(雨が叫んでる)の×1.2倍速のやつだな。あいつ(スキッパー)が好きな曲だし、この天気(小雨)ならピッタリだろ?」

「……あの、チーフ」

 

 サブトレーナーのフレアカルマ(宮松)は、懇願するかのように、自分のトレーナースーツのポケットから、ウマ娘用のイヤホンを出してきた。

 それを見て察した矢萩は、

 

「……良いぜ。ちょっと待ってろ」

 

 彼は自分のiPod用の周辺機器が入ってるウエストポーチから、二股イヤホンジャックを取り出してiPodと、お互いのイヤホンを接続し、音楽を流し始めた。

 

 そうこうしている内に、いよいよ本番が始まる実況が流れた。

 

『さぁ、クラシック三冠の一冠目を賭けた熱き戦いに集し、18人のウマ娘たち。今最後の1人が枠入りを終え───』

 

 スタンドから見て右側にスターティングゲートが。

 間も無くガチャンッというゲートの開く音と共に、18人のウマ娘たちは一斉にターフの上へと駆け出していく!

 

『───スタートが切られましたG1皐月賞です!』

 

 スタンド前直線を駆け抜けていくウマ娘たちに観客が声援と拍手を送る……のだが、一部からは騒めきが上がり、出走するウマ娘たちもほとんどが実は戸惑い気味だった。

 無論、テレビの前でクロススキッパーを応援している人たちも、その騒めきの原因になった、たった一瞬の状況に困惑する。

 解説者と実況者が語ると、その困惑の正体を全員が漸く理解した。

 

((!?))

『おぉっと!? 9番クロススキッパー出遅れか、逆に好スタートを切ったのは6番サクラプレジデント!』

『いつもは逃げ脚を披露しているクロススキッパーですが、今日は後方から行くしかないようです』

 

 クロススキッパーの出遅れに観客たちが騒然とし、いつも通りの逃げでいくと踏んでいた他の出走ウマ娘たちはペースを乱されて困惑。しかし、先頭を取ったチキリテイオーはそんなことなどお構いなしに突っ走っていく。

 

『横一線に広がった18人、これからポジション取りながら1コーナーに向かっていく。外から先頭に飛び出して行ったのは13番チキリテイオー!2番手に11番ザッツザプレンtおぉっと、上がっていきますが掛かっているようです!』

『ザッツザプレンティ、冷静さを取り戻せるといいのですが……』

『17番タイガーモーションがチキリテイオーの外に被せるようにして回っていく、先頭第1コーナーのカーブへと入っていきました!』

 

 

 

「おいおい出遅れって何があった?」

「まさか故障!?」

「……いや多分違うな」

【さぁ今エイシンチャンプが中団の辺りを通過していきますが、その前後、前にネオユニヴァース、2バ身ほど後ろにクロススキッパー!】

 

 今年のトゥインクルシリーズの新星を応援していた常連客。

 ……実は、スキッパーのメイクデビューを見ていないため、そもそもスキッパーが出遅れる場面になど遭遇したことすらなかった。

 そのため、同じくレースを見ていたウラはスキッパーの故障を疑ったのだが、フレアカルマの父であり宮松庵の店主はそれを否定した。僅か数秒か一瞬か、正確なタイミングはわからないものの、その直後に続いた実況と映像からして、スキッパーが故障を起こしたとは到底思えなかった。

 

【中団が第2コーナーに差し掛かった所で順位を振り返りましょう、先頭はチキリテイオー、2番手に5番のエースインザレースが付けています、3番手にザッツザプレンティに、2番ラントゥザフリーズ、インコースから並んできます。外からはタイガーモーション、ダイワセレクションの外から回ってエイシンチャンプも上がっていきます】

【そして、じっくりと溜めてネオユニヴァースはこのポジション、前から大体7、8番目、並ぶようにしてサクラプレジデント】

【一方、後方3番手にクロススキッパー……】

「よっしゃぁイケイケ、チキリテイオー! クロススキッパーはバ群に沈んだぞ、そのまま逃げ切れ!!」

 

 先ほどバ場状態のコンディションに苦言を呈していた青年も皐月賞を見ており、彼はチキリテイオーを応援しているようだ。

 

【コスモインペリアルがズルズルと下がっていく、しかしサイレントディールは上がっていく。ビックコング、ブルーコンコルドも続く、おっとここでクロススキッパー上がっていきます、掛かってしまったのでしょうか?】

 

 

 

 その実況に中山レース場の現地でクロススキッパーを応援していた人々は騒然となる。

 スタートでの出遅れといい、出走した後の走り方といい、掛かってしまったようにしか思えなかった。この時点でクロススキッパーの勝ちは消えた───誰もがそう思ったことだろう。

 しかし、レースをリアルタイムで、チーム観覧席で見ていた担当トレーナーの宮松と矢萩だけは違った。

 先週の小旅行(冒険)を共にした宮松は心の中でクロススキッパーの勝利を信じ、そして……、

 

(!!)

 

 矢萩たちの隣にいたチーム[キタルファ]のトレーナーは、矢萩が露呈させた表情に背筋が思わず凍った。

 その時点で彼は気付いてしまった。

 

(まさか、罠……!?)

 

 そう、矢萩はここまでのレース運びを見ていて、ニヤリとしたのだ───。

 


 

 ───浦和桜花賞があった週の土曜日。

 フレアカルマはいつも通りトレーナーとしてのスーツ姿、クロススキッパーは中央トレセン学園の制服を着ているが、そんなスキッパーはショルダーバッグを右肩から左に斜め掛けで下げており、さらに手提げの荷物を右手に持っていた。

 そんな2人の姿は、京王線府中駅から新宿でJR湘南新宿ライン特別快速に乗り換えた電車内にあった。

 名目上はフレアカルマが引率なのだが、目的地を知ってるのはクロススキッパーと、彼女にGOサインを出した矢萩だけである。

 東京から北上する快速電車に揺られること、合計約2時間半。

 

「カルマさん」

「……スキッパー。ここは?」

『高崎ー、高崎ー。終点でーす』

 

 終点が近付いたので、特別快速に乗ってから10分で寝落ちしてしまったフレアカルマを起こそうとしたスキッパーだったが、車内アナウンスを聞いてフレアカルマはハッとした。

 

「高崎って……まさか」

 

 そのまさかだった。

 

 JR高崎駅。

 群馬県の南側に位置するこの駅は古くから交通の要衝として栄えており、JR東日本が運行する上越新幹線、JR高崎線を始め、上毛電気鉄道上毛線、上信鉄道などの9路線が乗り入れており、かつて現在の県庁所在地である前橋市とその地位を巡って激しい争いを繰り広げたことでも知られている。

 (ただし、競技ウマ娘たちの間では前橋よりはむしろ高崎の方の知名度が高い。理由は後述)

 西口には高崎モントレーという、上越新幹線開業と同時にオープンした駅ビルがあり、市街地に面している*2。西口から観音山方面に向かうバスもあり、その山の麓に群馬トレセンがある*3

 一方、東口の側には全国展開している某家電量販チェーン店の本社ビルが存在し、その東口に降りて、東毛広域幹線道路、という目の前で南北と東に広がる大きな道に沿って〈高崎芸術劇場前〉方面へと歩いて行き、〈Gメッセ群馬入口〉という信号に差し掛かるとここで右に曲がると、見えてきた。

 

 《ようこそ高崎レース場へ》

 

 駅からここまで10分。

 その道中でもそんな横断幕を目にしていたため、フレアカルマにもスキッパーが案内している行き先が何となくわかっていたのだが、考えることが色々とありすぎて、目の前で起きていることが整理出来ずにいる内にここまで来てしまっていた。

 

 何故、スキッパーは自分をここまで連れてきたのか?

 ここへ来るのに矢萩トレーナーに許可を果たして取ったのだろうか?(ただし、そもそも矢萩が許可を出していなければ2人はここまで来ていないのだが、それにフレアカルマが気付くのは少し後になる)

 そもそも自分たちが高崎にいること自体がフレアカルマには信じられなかった。

 

 クロススキッパーが高崎レース場の受付を訪れると、受付の係員は、

 

「……羽黒明日香さまですね? お待ちしておりました。先に中へどうぞ。()()()()()()()()()

「ありがとうございます」

 

 羽黒(はぐろ)明日香(あすか)……クロススキッパーの戸籍上の名前であり、競技ウマ娘としてではなく、羽黒家の一員としての身分が必要な際に名乗る名前である。

 

「……あなたが本名を使うなんて、一体このレース場の関係者とどんな関係が……?」

「ちょっとお父さんのコネをお借りしまして……」

 

 係員の案内で高崎レース場の4階までやってきた2人を応接間で出迎えたのは、

 

「羽黒さん、お久しぶりですね。お父様は元気ですか?」

「はい。桜葉理事長。お忙しいところお時間を頂きありがとうございます」

「り、理事長……!?」

 

 目の前にいるスーツ姿の男性が、まさか群馬トレセン学園の理事長だったなどとは夢にも思わなかったため、慌ててフレアカルマは頭を下げた。

 

「し、失礼しました! わ、私、中央トレセン学園でサブトレーナーをしている宮松明美と申します……!」

「宮松さん、そう固くならないでほしい。別に学園間の話し合いをするほど堅苦しいものではありませんよ。あくまでも羽黒さん……いえ、クロススキッパーさんは、コースの使用について許可を求めてきて、ついでに挨拶にやってきた。そうだね?」

「は、はい。それに、理事長にお土産をお持ちいたしました」

 

 そうしてクロススキッパーが右手の鞄に詰めて持ってきたものは、

 

「……おぉ、これは天賦ですね?」

「は、はい。お酒のことはよくわからないのですが、桜葉理事長はお酒がお好きだったかと思いますので……瀬名さんにもよろしくお伝えください

「なるほど、ありがとう。……これは瀬名さんのところの研究資料にもなるかな?

「瀬名さん?」

「あぁ、なんでもないです、こっちの話です」

 

 2人の会話から聞き慣れない人物名をウマ娘の優れた聴覚が拾い、つい尋ねてしまうのだが、クロススキッパーは何でもない、と誤魔化す。

 ……結局、九州の中津や鹿屋といい、この群馬高崎といい、クロススキッパー(の親)の人脈について改めて謎が深まったフレアカルマだった。

 

「あぁ、そうだ。あの、桜葉理事長。急で申し訳ないのですが……」

「群馬トレセンの宿泊施設を使うというのなら……」

「あぁ、いいえ、それは大丈夫です。事前にトレーナーさんに高崎駅前のホテルの予約をとっていただきました」

「え? ホテル?」

 

 そもそもフレアカルマは、ここで泊まり掛けになることを知らされていなかった。

 この事で後にスキッパーと、中央トレセン学園に帰った後に矢萩はお小言を言われることになるのだが、それはまた別の話。()()()()()()()()、フレアカルマに取って予想外かつ、嬉しいサプライズがこの直後に舞い込むからだ。

 

「それは……学園同士の交流ということで1日か2日であれば群馬トレセンのお部屋をお貸ししたんですが」

「いえいえ、むしろこちらこそ申し訳ないです、急に押し掛ける形になってしまったので……」

「そうですか。それと、コースの使用の件ですが、今日は午後から群馬トレセンの練習コースを()()()()で走り、明日は午前中を同様のメニューで、午後から高崎レース場のメインコースを使うとのことで。間違い無いですね?」

「は、はい」

「結構。高崎レース場は土日の18時には閉場してしまうので、その点だけ注意をいただければ」

「何から何までありがとうございます」

「いえいえ、あなたのお父様やお祖父様には返し切れない恩があります。これぐらいお安い御用ですよ」

「ありがとうございます!」

「……あの、すみません。質問をしても?」

 

 先ほどから桜葉理事長とクロススキッパーの間でだけ話が進んでいたため、状況をイマイチ飲み込めていないフレアカルマは置いてきぼりを食らい、いよいよ質問を切り出した。

 

「……メインコース貸し出しの件って、どういうことですか?」

 

 本場開催日ではない時の地方レース場において、土曜日と日曜日はコースが一般開放されている。

 ただし、現在の高崎レース場では、(群馬トレセン所属ではない)一般のウマ娘たちが走行できるのはメインコースの内側にある狭いコースだけに限られていた。

 

「高崎レース場も、かつてはメインコースも一般に開放していましたが、コースの改築を行なった関係で、今はサブコースのみしか使用許可を与えていません」

「……それは、な……いえ、もしかして?」

 

 桜葉理事長からの説明に「それは何故?」と問おうとしたところで、フレアカルマは気付いた。

 かつて高崎でJBCシリーズが開催された際、特にJBCステイヤーズをテレビで見た時、あれもコース改修後に行なったものであり、向正面に高低差5mの上り坂と下り坂があった。

 

「あの急坂は一般のウマ娘さん、特に幼い子に走らせるのは危険すぎます。あのコースレイアウトを提案してくれた人ですらそう言ってたらしいですし。なので、桜葉理事長権限の特別許可が無ければ群馬トレセンの生徒を除く部外者は基本的にメインコースを走れないんです」

 

 そうクロススキッパーが付け足すように説明した。

 ……あの急坂を思いついたのは桜葉理事長や、スキッパーの説明から察するに、もしかして群馬トレセン関係者ではない?

 

 なお、フレアカルマは知る由もないことだが、近年観音山の山道の一部が群馬トレセンの練習コースに組み込む改修を提案したのもその人物だったりする。

 尤も、群馬トレセンのウマ娘たちにとって高崎レース場の5mの坂は、観音山の山道を走り慣れていれば大したことはないという認識であるのだが、それ以上の急坂は高崎レース場の大きさの問題と、URA・NARの上層部に改修計画の草案を提出した際に「(5m以上の高低差は)危険すぎる」と判断されて没になった(なお、草案ではイギリスのアスコットレース場と同じような20mの高低差を持つ坂を用意しようとしていたらしいのだが、この事をフレアカルマが知るのは少なくてもこれから10年以上先の出来事になる)。

 

 その他、冷静に考えれば困惑するような要素を大量に孕んでいる状況下にあったはずのフレアカルマだったが、考えの深みに嵌まる前に、()()高崎レース場のメインコースを自分が走れるという事実に気付くのが一歩早く、

 

「桜葉理事長……ありがとうございます……!!」

 

 桜葉理事長に深々と頭を下げた時のフレアカルマの声は感動で震えていた。

 そして、かつて憧れたあのコースを、今これから走れることに感激し、既に忘れていたはずの競技ウマ娘としてのスピリッツとでも言うべきものに、再び火が灯るのを感じていた───。

 


 

 ───南関東では小雨、北関東のここ群馬でも14時ごろに小雨が降ったために、高崎レース場のダートコースには湿り気があった*4

 稍重一歩手前のバ場で向正面、高低差5mの坂を駆け上がって下ってまた上がっていくのは、群馬トレセン学園の小豆色ジャージ*5を着たウマ娘たち3人。

 その光景をメインスタンドから眺めつつ、正面スタンド前のモニターを見ているのは20代に差し掛かっているウマ娘。

 その人物に、豊満な胸の目立つ青髪のウマ娘が声を掛けた。

 

「モンスニーさーん、そろそろ帰ろうぜー?」

「待って、このレースを見終わってから……」

【3番人気のクロススキッパーがもし今日の皐月賞を勝利した場合、日本出身の10月生まれのウマ娘としては初の快挙となります───】

 

 レース解説者のコメントが高崎レース場のスピーカーにも伝わってきた。

 

「んなの家に帰ってからでも見れるじゃんか」

「んもぅ、相変わらずよねタービン。こういうのはレース場の巨大モニターで見れるんだからいいんじゃないの」

「そういうもんかね?」

「……あなただって、鈴鹿サーキットで生のレースが観戦できるならしたいでしょ? それと同じことよ」

「そういうもんかねぇ……」

 

 実を言えばこのモンスニーというウマ娘、高崎レース場にお酒を納品しに来る日が土日だったりすると、ほぼ一日中正面スタンド前に張り付いて離れないのだ。

 早いところ次の納品先に行かなければならないというのに。

 野球観戦に夢中になる同門の親戚の話をモンスニーからよく聞かされているタービンであるが、今のモンスニーがまさにその状態。

 ぶっちゃけると、このシマカゼタービンというウマ娘、「トゥインクルシリーズなんてどうでもいい、それよりも峠でレースだ!」というスタンスを貫いているため───この群馬を始めとする北関東どころか、下手すれば中央のウマ娘たちにすら引けを取らない実力者であるにも関わらず───群馬トレセン学園には通わず、一般の中高に在籍している。

 タービンが、ウマ娘たちが競うレースを見ていてもイマイチ興味が沸かない珍しいウマ娘であることを、義姉のメジロモンスニーはよーく理解していたため、

 

「まぁまぁ、これをあげるからこのレースだけ一緒に付き合ってよ」

「ちぇー……モンスニーさんっていつもそうだー。まぁ、食べるけど……」

 

 若干面倒臭そうにはしながらも、好物の焼き鳥で釣られたら付き合う他ない。

 

【───スタートが切られましたG1皐月賞です!】

 

 そうこうしている内に、正面スタンド前にある巨大モニターの向こう側の世界では歓声が上がり、レースが始まった。

 しかし、モニターや場内のテレビには明らかに尾花栗毛のウマ娘が出遅れる様が映っており、場内からは「あぁっ……」とか「うわぁ……」といった嗚咽が所々で漏れていた。

 

【おぉっと!? 9番クロススキッパー出遅れか、逆に好スタートを切ったのは6番サクラプレジデント!】

【いつもは逃げ脚を披露しているクロススキッパーですが、今日は後方から行くしかないようです】

「……あの尾花栗毛のウマ娘って逃げウマなのか?」

「そのようね、けれど……タービン、あなたも違和感に気付いた?」

 

 尾花栗毛のウマ娘───クロススキッパーが出遅れた瞬間を見たモンスニーとタービンは即座に違和感に気付く。

 

「あぁ……」

 

 そして、タービンは直感した。

 

【コスモインペリアルがズルズルと下がっていく、しかしサイレントディールは上がっていく。ビックコング、ブルーコンコルドも続く、おっとここでクロススキッパー上がっていきます、掛かってしまったのでしょうか?───】

 

 実況を聞いてメインモニターを見ていた高崎レース場のウマ娘レースのファンたち、ごく一部クロススキッパーを応援していたと思われる人々から、ある者は落胆し、ある者は「何やってんだよ!」と声を上げる。

 ところが、そんな観客たちの反応などお構いなしにタービンは言う。

 

「……あれ()絶対に()()()だな」

 


 

『───外からブラックカフェも上がっていきます、さぁ第3コーナーに向かっていきます、先頭はチキリテイオーのまま、2番手エースインザレース、3番手にザッツザプレンティという構えです。が、外、外を回りましてエイシンチャンプがスーッと上がって、第3コーナーを回ったばかりのところで先頭に並びかける!』

 

 先頭を走っていた、紫をベースにピンク色の配色を取り入れた勝負服に身を包むチキリテイオー、しかし、後続のザッツザプレンティ、外から回って並びかけてきたエイシンチャンプらのプレッシャーに無意識に圧されて徐々にズルズルと下がり始めていた。

 

「ちくしょー!!!」

 

 チキリテイオーにはわかっていた、自分のロスのある走り方やプレッシャーに弱い精神力ではスタミナが持たないこと、ただ逃げをするだけでは勝てないことなど、わかり切っていたはずだった。しかし、それでも自分の走り方を変えたくなかった彼女は必死で自分の足を回そうとするが、その粘りと努力は無常にも叶わない。

 

『先頭に5人! ウマ娘が5人固まっています、外から回ったエイシンチャンプが一瞬先頭に立った! サクラプレジデント、現在5か6番手辺りで前のウマ娘たちに睨みを効かせている! さぁ第4コーナー回って直線!! 最内からネオユニヴァース上がってきます! さぁここで先頭は横一線! さぁ外からエイシンチャンプ! サクラプレジデントも伸びてくる、チキリテイオーはズルズル下がって……あぁっと!』

(((((!?)))))

『大外から、大外からクロススキッパーが飛んできた!!? すごい足で上がっていく!?───』

 


 

 ───結論を言えば、タービンとチーム[キタルファ]のトレーナーの直感は半分当たっていた。

 それはつまり、このレース展開にクロススキッパーとそのトレーナーである矢萩が罠を仕込んでいたことを意味していたのだが、

 

「……スキッパー、再度確認なんだが、マジで行くんだな? ()()()()で」

「はい」

 

 クロススキッパーが皐月賞をどう走るか。

 いつも通り逃げのオーダーで行くつもりでいた矢萩だったのだが、群馬への小旅行より帰ってきた次の日の放課後、スキッパーとフレアカルマにそう提案された時には驚き半分、

 

「周りはきっとクロススキッパーをペースメーカーにしてくるはず」

 

 その認識は、矢萩もフレアカルマもクロススキッパーも、3人の共通認識として持っていた。

 

「……なるほど、それは面白そうだな。お前さんの今までのレースを分析していた連中の不意を突いてペースを崩させる、か」

 

 もちろん、これはただの小細工に過ぎない。それでも、敢えてその認識を破壊してみること、自分達以外の意表を突けるのは面白そうだと矢萩は同意した。

 

「それに……正直に話しますが、()()()()()今の僕は、逃げで2000m、ずっと先頭を走り切れる自信が無くなっちゃいました」

 

 それは、きさらぎ賞でネオユニヴァースとサクラプレジデントに先着された時から……いや、実際にはネオユニヴァースと競り合った時からクロススキッパーが感じていた懸念だった。

 そして、高崎レース場で2600mを走ったことでその懸念は確信に変わったのだろう。

 

「なるほど……お前なりに……いや、()()()()()()()、考えた末の決断なんだな?」

「はい。差しで……脚を残しつつなら、きっと」

 

 前言撤回だ。

 小細工なんてものじゃない、スキッパーは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ……それは良いとして、矢萩としては懸念が1つあった。

 

「……わかった。だが、本番まで時間がないぞ。スキッパー、お前は今まで逃げでずっと走ってきた。練習やメイクデビューでは差しや追込で走っていたし、練習もしてきた。だが、メイクデビューでのあれは事故のようなもの。最初から()()()()()()()()()()()()()()()()()、ぶっつけ本番になる。……それでも果たしてお前は良いのか?」

「トレーナーさん……」

 

 矢萩がクロススキッパーに向けた視線は、トレーナーとしてだけでなく、1人の年長者としてのもの。

 

「お前は確かに、逃げだけではない。その気になれば、先行でも差しでも追込でも勝てるだろう。だが、慣れない走りってのは、お前の寿命を縮めるかもしれない。そこだけは気をつけるんだぞ。走ってみて駄目だと思ったら、その瞬間にギブアップしてもいい。誰かが言っただろう。「一勝よりも一生を」ってな。……俺は、お前がここで終わるような奴じゃない……宮松もそう思っているだろう?」

 

 矢萩に問いかけられたフレアカルマは、彼の目を見据えてから頷いた。

 

「トレーナーさん……カルマさん……」

「確かにうちの担当で皐月賞を勝った奴はまだいない。お前さんの目標がお前の従姉(クロスクロウ)に追いつくことだってのも耳にタコができるぐらい聞かされてきたつもりだ。だが、追いつくだけじゃ駄目だ。ここまで来たなら超えてみろ。お前らしく、な」

「僕、らしく……」

「そうだ。……お前がメイクデビューで見た光景を追い続けているのも、それが理由なんだろ?」

 

 メイクデビュー。

 逃げで行くつもりが出遅れて結局差し・追込状態で勝ったレース。

 あのレースでしか見たことがない光景───、

 


 

 ───不意にそんな矢萩たちとのやり取りを思い出しつつ、第4コーナーに差し掛かった時だった。

 クロススキッパーの視界は───突如として暗転した。

 

(これは……!)

 

 それは、メイクデビュー以来8ヶ月余り、クロススキッパーが追い求めていた光景と感覚だった。

 

 

Cross Changing Gear!

          Lv.1

 

 

 観客はクロススキッパーの強烈な追い込みに驚き、出走しているウマ娘たちは実況でクロススキッパーの名を聞くより一瞬前に「圧」のようなものを感じた。

 

 きっと、「そんなバカな」とか、「とっくにバ群に沈んだはず」とか、そう思ったウマ娘たちもいたに違いない。

 しかし、

 

(前を見ろ。走れ。走れ、走れ、走れ。差すんだ。差して抜け!)

 

 突如そんな言葉が頭を過った時、クロススキッパーの視界は元の色彩に戻り、同時に彼女の頭の中で「カチッ」と何かがハマる音がした。

 そしてチキリテイオーは見た。自分より前へと飛び出していく、黒地にオレンジの装飾を施した勝負服を着た栗毛のウマ娘の後ろ姿を。

 ザッツザプレンティとエイシンチャンプも振り返ってしまった、いつになく真剣な表情で自分を外側から抜き去っていくクロススキッパーの姿を。

 

「はあぁぁぁぁぁっ!!」

 

 思わずクロススキッパーも大声を張り上げ、最後のラストスパートで力を振り絞る!

 

『先頭、サクラプレジデント、ネオユニヴァース、大外からクロススキッパー、激しくハナを奪い合う! 中山の直線は短いぞ、ネオユニヴァース、サクラプレジデントの叩き合い! 大外からスルリと飛んできたクロススキッパー!』

 

(負けない!)

(今度こそ……!!)

(ここは負けられないんだ……!!)

 

 先頭を争う3人、気持ちを互いにぶつけ合う走りに、後続のウマ娘たちは引き離されていくばかり。

 

『先頭争いはこの3人に絞られた、サクラかユニヴァースかスキッパーか! 3人もつれたままゴールイン!!』

 

 そして、皐月賞のゴールラインを超えた後───。

 


 

 ───時間を遡り、再び群馬は高崎。

 土曜日は午後から群馬トレセンのコースを教官付きで借りての練習走行。

 さすがは観音山の山道を流用したことだけあって整地されている普段のコースに比べて足場は悪く、起伏も激しく、中山や京都のコース、あるいは中央トレセン学園にある坂路ですら生優しいレベルであることを思い知らされた。

 群馬(グンマー)の洗礼を嫌と言うほど受けた2人は、幸か不幸か、現在の群馬トレセンでトップレベルの実力を持つウマ娘たちとこの山道を併走するチャンスを得た。

 片やクラシック期で身体が出来上がっていないスキッパーと、片や久々に「本気の走り」というものを身を以て経験して自身の身体が鈍っていたことを思い知らされたフレアカルマと。

 この群馬の過酷な環境に鍛えられた「群馬三銃士」たちとの実力差は絶望的なほど広かった。

 

 だが、この山道でのトレーニングをやっておいた方が、()()()()()()()()により深みを持たせられる、スキッパーはそう考えていた。

 

 もちろん、既に「高崎レース場の2600mのコースを走れる」という、滅多に得難い経験が出来る楽しみが待っていることをフレアカルマも知っている。

 しかし、スキッパーは「それだけでは足り得ない」と感じ……。

 

 翌日の午後1時頃。

 

 高崎レース場の2600mの発走地点に、簡易的なスターティングゲート(ロープを張る形のいわゆるバリヤー式)が設置された。

 その数はたった2人分。

 

 走るウマ娘の内の片方は、来週の皐月賞でも使う予定の勝負服を着て、高崎レース場のコースに現れたクロススキッパー。

 

 そして、もう1人は、

 

「お、お待たせ……」

「……おぉっ!」

 

 少し恥ずかしそうに、しかし同時に懐かしい気分に浸りながら現れたのは───勝負服姿のフレアカルマだった。

 

「……スキッパー、どうやって私の現役時代の勝負服を?」

「そりゃあ色々な所にお願いをしまして……」

 

 まず、フレアカルマの勝負服が果たしてあったかどうか。

 ……実は、クロススキッパーはその存在を知っていた。

 

「お従姉ちゃんとカルマさんが、互いに出来上がった勝負服を試着した時に写真を撮ってましたよね?」

「まさかそれを見て……え、でも、この勝負服は……」

「はい。カルマさんのお父さんとか、ウラワール理事長にもお願いして探してもらって……サイズが合って良かった」

「そ、そりゃぁ、現役時代に比べたら劣ったり、勝負服を作った時に比べたら背もちょっと伸びたけれど……」

「普段から運動と食事制限をしているカルマさんならまだ入るかも、って」

「それは余計なお世話」

「あたっ」

 

 現役時代と大きく変わった部分こそあまりないのだが、それはそれで後輩に知られたのはちょっとムカついたので軽くスキッパーの頭をチョップしたフレアカルマ。

 

「す、すみません……」

 

 そう謝るスキッパーだが、カルマは耳元で「シーッ」と言い、さらにこう続けた。

 

「……謝らないで。私こそムッとして手が出ちゃった。それよりも、お礼を言わせて」

「……カルマさん?」

「ありがとう……着てみて分かった。私まだ、レースを走りたいんだなって」

「……えぇ。きっとそう言ってくれるって思っていました。さぁ、始めましょう」

「いいわよ」

 

 そんな2人のやり取りを見ていた芦毛のウマ娘が、群馬トレセンの校章が描かれたスターティングフラッグを片手に尋ねてきた。

 

「……お2人とも準備は良いかしら?」

「はい」

「えぇ」

「じゃぁ、位置について」

 

 フラッグを天にかざし、

 

「用意」

 

 数秒の間があってから勢いよくそれを振り下ろす。

 

「ドン!」

 

 それを合図にフレアカルマとクロススキッパーは高崎レース場のメインコースへと飛び出して行った。

 そんな2人の後ろ姿を見送って、芦毛のウマ娘はもう2人の群馬トレセンの生徒たちと共に簡易的なゲートとして用意したロープを手早く片付けてコース外に退避した。

 

 そして間も無くフレアカルマとクロススキッパーの目の前には向正面に築かれた急坂が迫っていた───。

 


 

 ───あの時の模擬レースを思い出していたクロススキッパーだったが、次に気付けば、そこは中山レース場の救護室だった。

 

「良かった……気が付いた?」

「カルマさん……僕……あっ……! レースは……!!?」

「落ち着いて。ちゃんと説明するから。でもその前に」

 

 クロススキッパーは救護室のベッドに寝かされていたが、そんな彼女をフレアカルマは抱きしめて、スキッパーの耳元で、囁くようにこう言った。

 

「スキッパー。……あなたが今年の皐月賞ウマ娘よ」

「……え?」

「よく頑張ったわ……」

 

 そうして暫くして、漸く現実だと実感できたクロススキッパーは、声を震わせて、頬から涙が伝った。

 

「……うぅ……やったんだ……僕、ついにやったんだ……!」

 

 それは勝利の喜びであり、今日ここに至るまでに支えてくれたチーム[ライジェル]と[セントーリ]の皆のサポートと努力が実った瞬間だった。

 

 同じ中山レース場のどこかにあるモニター、そこに表示された競争成績。

 第11レース、G1皐月賞。

 1着は9番クロススキッパー。

 2着の3番ネオユニヴァースとはハナ差の決着だった。

 

 そして、クロススキッパーは───何かから解放されたようだった。

*1
スプリング・ステークス

*2

*3
群馬トレセンの場所については後書きを参照

*4
ここからは音楽と一緒にお楽しみください

*5
見た目は普通のジャージだが、実は「防刃・防弾・対衝撃仕様」が備わっている非常に頑丈なもの、らしい。




 今回登場した高崎レース場。
 実在の高崎競馬場は現在では「BAOO高崎」という駐車場兼馬券売り場に変わっています。
 現状のBAOO高崎は、高崎競馬場の建物をほぼそのまま面影を残しているんですが、かつてのダートコースがアスファルトで固められてしまっていて、実に勿体無いな、って写真を見ながら思っていました。
 ついつい自分は、中津といい高崎といい、こういう廃競馬場の写真や話を目にする度に、「あと20年ぐらいウマ娘の登場が早いか、もしくはそれに匹敵するレベルの競馬ブームが起きていたなら……」と考えてしまいます。

 ……なので、同じ高崎や群馬が舞台なら、と、ハーメルンで連載中でイナダ大根さまの作品『気儘に生きた転生馬物語』(以下「原典」)を参考にさせていただき、今回の「what if」を盛り込んだ高崎レース場の登場に繋がりました。……ついでに、どこか見覚えのあるウマ娘たちが顔を出しています。

 また、参考にさせていただいた原典では作者様曰く、「(群馬トレセンの場所は)ふんわりとしか決めていない」とのことなので、今作では「観音山付近に群馬トレセン学園がある」とした設定は筆者による独自解釈なので、原典とは厳密には異なるという点はご了承ください。

 ちなみに、作中で矢萩トレーナーが言ってたように、クロススキッパーの物語はここでは終わりません。

 あと、大変申し訳ありませんが、フレアカルマの勝負服は現在、構想の段階にあり、お披露目はだいぶ先になりそうです……。

ハルノウラワのエピソードはどの媒体をベースにしたものが見たい?

  • アプリ版(中央トレセンへ入学か転入)
  • 漫画版(ずっとさいたまトレセン所属)
  • 実馬編書けよオラァ
  • その他(活動報告にコメントお願いします)
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