日向如く 作:尾田栄~郎
その時、木の葉の里は熱狂に包まれていた。
長きにわたる雷の国との戦争の終結。講和条約の締結。
そして雷の国の使節団が木の葉の里へ入国。
歓迎のパレードが開かれていた。
うん、よくある父親の死亡フラグだ。
そして、9か月にもわたって里の住人を恐怖に陥れた、子供の皮を被った妖怪が忽然と姿を消したこともまた住人を喜ばせた。
ナルトの世界には妖怪がいたらしい。いやあ、転生してみなければ分からんこともある。
俺は早朝に分家を抜け出し、二代目様の火影岩の上に座るという大それた目線で使節団の到着を見ていた。
使節団。その先頭に立って入ってきた偉そうな男がおそらくヒナタ様誘拐の主犯格。
あいつが来るかは判らんが、マークしておいて損はないだろう。
ふと、そいつと目が合いそうになった気がしてその場を後にした。
「ふむ……?」
雷の国使節団。それをまとめる名もなき忍は不思議そうに火影岩を見上げた。
こちらを見る人の気配を感じたのだ。
「いかがなさいましたかの?」
使節団に対し、温厚そうな微笑を浮かべ応対するのは三代目火影。
四代目の死後、再び里を収める任についた老人である。
「いいや。里の護衛が多く感じましてな。それほど丁重に扱われるとは、こちらとしても喜ばしい限りです」
この発言は、彼がこれから行う日向誘拐作戦の動向を心配しての事だったが、悟られぬように細心の注意をはらった抑揚を付け加えられた発言であった。
「はっはっは。やはり里の重要な客人を迎え入れるのですからな」
その意向を知ってか知らずか、三代目は朗らかに返すのみである。
狸だとすれば、上手い。これからの作戦に不安を残しつつ、雲の使節団は入国したのだった。
「これ、ネジ。どこへ行っていた。今日が一族にとってどれだけ大切な日か解っておろうな?」
「申し訳ありません、お父様。祭り、という物を見てみたかったのです」
「まあ、しかたあるまい……身支度を整えよ。出発まで時間がない」
今日は日向にとっても大切な日。宗家のご息女、日向ヒナタ様の3歳の誕生日である。
俺は今日初めてヒナタ様に会い、そして籠の鳥となる。
それは分家と宗家、二つの家の関係性を明らかにするという意味でも重要な日だった。
遠くでパレードの音がする中、俺は宗家の門の前で、初めてヒナタ様を見た。
なんというか、やっぱ可愛い。
これまで一族の年の離れた女しか見てこなかった俺だけに、年の近い女の子ってだけで可愛く感じる。
ちなみに俺はロリコンじゃない。俺今4歳だぜ?
ああ、そうだ。あれ言っとかないと。
ヒザシの服の袖をちょいと引っ張る。
「結構可愛い子ですね、父様」
よし、言えた。
原作ネジと俺の共通見解。ヒナタは可愛い。
何やらヒザシが悲し気な顔してるが、まあ良いだろう。
宗家のお座敷に上げてもらって、一度ヒナタ様と手合わせすることになった。
横にはヒアシ様とヒザシ。目の前にはヒザシでなく可愛い従妹。
なんともやり難い。
「はじめ!」
ヒザシ様の号令がかかる。
……。
…………。
………………。
「貴様ら、ふざけているのか?」
ちょいおこなヒアシ様。
それもその筈。試合開始の号令があってからしばらく、全くの膠着状態である。
だって、ヒナタ様仕掛けてこないんだもん。
なんか、眼をしどろもどろに動かして、指一つ動かさない。
向こうが仕掛けてこないのだ。
ヒナタ様に押していくのは逆効果。原作を読んでわかった知恵だ。
「ヒナタ!」
「は、はい!」
ヒアシ様の声にびくっと反応して、やっと攻撃をしかけるヒナタ様。
軽く受け流して、反撃。……ってこれどうすればいいんだ?
胸はダメ。腹はダメージが大きい。顔は論外。
俺はこんな所で嫌われたくない。ヒナタ様と仲良くするルートで行くんだ。
反撃の為に出した手を引っ込める訳にもいかないし、ええい左肩!
「がふっ!?」
ぶっ飛ぶヒナタ様。
「けほっ!?」
壁にぶつかるヒナタ様。
「ふっぅ……」
意識を失うヒナタ様。
「……」
「……あれ、僕またなんかやっちゃいました?」
「ネジィィィィああああああああ!!!!!!??」
豆知識、娘を心配した親の絶叫は凄まじい。今日知った。
やっちまったのは俺でした。
「ヒザシ!?何故ネジは白眼を使いこなせている!?チャクラコントロールができている!?八卦空掌の如くチャクラが出ている!?」
真面目にやってきたからですかねぇ。
あかん。真面目にやりすぎた。
「いや、どうしてもチャクラを掌から出す制御が苦手なのか、あの威力になってしまいまして……」
「ネジは黙っていろ!なぜ白眼を前提としたチャクラを使った柔拳にまで修行が飛んでいるのだ!?ネジはまだ4歳だと聞いていたが!?」
「ネジは日向始まって以来の天才なのかもしれん……」
「そんな理由で娘が吹き飛んでたまるか!」
娘を案じる親の心配は深いようで、俺はもはや安全の為と言われそうな剣幕で卍の呪印を施されたのだった。
あとで知ったのだが、ヒナタ様との手合せにおいて俺が白眼やチャクラを使う事はヒザシにしても完全に予想外だったらしい。
つまりは俺がいつものノリで軽くやったら完全にフルスイングで、肩を壊したのはヒナタ様と。
何を言ってるかわからねーと思うが、そういうのは本人が最もわかりたくない物だ。
無事事故は起こって、その夜。
原作にはヒナタ様の誕生日と日向への襲撃の時間差がどれほどの物かは書いていなかったはずだが、幸いなことにヒナタ様は意識を失っておいでなので、それはそれは厳重に看病されている。俺が面会できないほどに。俺がそんなに怖いか、ヒアシよ。
ということで、宗家の屋根に陣取ってる分家の厄介者がこちらとなります。
敵を感知する為に白眼を使っているが、夜通し持つわけもないので特に周りが暗くなった時に使用を制限している。
「と……さっそくお出ましか」
8時の方向。おそらくは上忍クラスだろう。
しかし隠密行動が敵の忍術を制限してくれる。それなら白眼を持つこちらが五分まで持っていける。
顔には朝お祭りで買ったお面。俺が何者かは判らない。
多分。
足取りを見るに、相手はこっちが気づいてないと思っている。
イージーウィンのチャンスは一回。相手の不意打ちに柔拳を合わせる。
雲流・表切り!
そんな声が聞こえてきそうな無駄のない太刀筋。
「八卦空掌!」
屋根に向けた全力の八卦空掌。瓦は凄まじい速度で忍へ飛ぶ。
「!!」
忍びは刀を捨て、空中で反転。無数の瓦は刀を粉々にした。
「八卦空"連"掌」
追撃の八卦空連掌。この朝孔雀を元にした技は、数多に分岐し放散する八卦空掌。
さっきよりも的が広がった。
「ふっ!」
やはり身を翻すが、十発はあたりだ。
バランスを崩した相手の着地を狙って決めに行く。
「残念だったな!」
忍の手に光ったのはもう一本の刀。
「雲流・表切り!」
その刃は確かに俺を捉えた。が。
ぼふん。
「残念だったな」
忍は背後から聞こえた敵対者の声にぎょっとする。それ以上に目の前で消えたさっきの者は何だったのか判別もついていない様子だ。
「八卦掌!」
こんどは外さなかった。
ほどなく、力なく倒れる忍。
内臓疲労はどんな忍に対しても有効。当然と言えば当然か。
「仮面の少年……お前は日向ではないのか?」
「なぜそう思う?」
答えはしない。
「この内臓を締め付けるような痛み……これは噂に聞く日向の柔拳だろう」
「否。これは南斗八卦掌という」
「……なんだ、それは」
「内部から全てを破壊するのが北斗なら、外部から剛拳主体で経絡系に負担をかけるのが南斗だ。北斗と南斗は表裏一体なのだ……」
「日向の拳はいずこへ」
まあ方便だ。あの期間で点穴まで見切る事が出来なかった俺は、点穴をねらうのではなくチャクラを多段ヒットさせる事で内臓への負担を優先した柔拳を編み出した。
またより多くの拳をあてるため、拳技を打ち込む隙を作る為アカデミーへと潜入し影分身の術を習得した。結果、今の木の葉の警備は厳重になった。
そして南斗や影分身の習得に時間を費やした分、件の妖怪は出なくなったというわけだ。
「外傷もなく、俺が誰かも判らん。雲の忍、お前と俺が戦ったという証拠はない。これ以上騒ぎを起こせば外交問題になりうる……あとは解るな?」
「ああ。ここまで消耗していて、まだやろうとは思わん。お前も我々の目的が解っている筈だ。もう二度と日向に手は出さん」
「もちろんだ。俺の眼の白いうちはな」
「……」
ほどなくして、雲の使節団は去っていった。
この事件が表面化しなかった裏に、三代目の尽力があったかは謎のままである。
ちなみにこの2日後の昼にヒナタ様は目覚められた。
「ヒナタ様?大丈夫でしたか?ひどくうなされていたような……なにか怖い夢でも見られたのですか?」
「……」
「あの、その目止めてもらえます?」
余談だが、ヒナタ様はこの時初めて白眼を開眼なさった。
あとがき
ヒザシとヒアシが逆だったかもしれねェ等、誤字脱字があるかもです。
見つけ次第連絡いただけると助かります。
かしこ
日向ネジ、性質変化はどれ?(参考までに)
-
火遁
-
風遁
-
雷遁
-
土遁
-
水遁