日向如く   作:尾田栄~郎

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第四話 白眼は決して気持ち悪くない

「私!強くなりたいんです!」

 

 それは唐突に告げられた。

 

 不意打ち。まさに不意打ちだった。

 どうしてこうなったかと言えば思い当たる節がないわけでもない。

 でも、いやどうしてと思わずにはいられない。

 

 少なくとも俺は、今朝の段階ですらこのフラグを予期できていなかったのだ。

 

 今朝。

 分身と別れ、朝の身支度を整え、簡単な朝食をとっていた時に来客があった。

 まだ一般的な朝食の時間に差し掛かってもない時分に妙を感じたが、名家の客人がたかが四歳の子供に用があるとも思えず、朝食を優先した。

 しかしそこにやってきたヒザシは、客人は俺に用があるのだと言う。

 後の修業に不都合だからと修行着のまま食事をしていた俺だが、客人に修行着のまま出るのが適当でないと思う礼節は心得ていた。

 一応俺も名家(分家)の跡取りだからね。さすがにそれくらいは気にしたい。

 しかしヒザシは首を横に振った。その方が逆に都合が良いというのだ。

 話が見えぬまま俺は客室に連れていかれる――と思いきや、父に案内されたのはいつもの修行場だった。

 そこに品よく座っていた相手が開口一番言い放った言葉がさっきの物だ。

 

 前置が長くなったが、この時の俺の不可思議な状況は全て次の言葉に集約される。

 

「どうしちゃったんですか、ヒナタ様……?」

 

 そう。久しぶりというかご無沙汰というか、ぶっ飛ばして寝込ませたぶりのヒナタ様。

 彼女はバトル漫画的バイタリティと共に再登場してきたのだ。

 

「どうしちゃった、と言われれば……そうですね、このままではいけない様な気がして」

「まじかよ」

「はい?いえ、あの……私はネジさんに一撃でやられました。肩の傷は癒えましたが、今回の事は日向本家の名に大きな傷をつけた気がするのです。

 いえ、それを責める気はありません。

 私はこれまで、対面の人を傷つける事を気にして試合をおろそかにしては、お父様に叱られていました。 

 しかし気付いたのです。私は来年、姉になります。このまま、私が弱いままでいると、その重荷を妹にまで負わせる事にもなりかねない。それではこれから生まれてくる妹に申し訳がたちません。

 だから私は父様ではなく、私の眼を覚ましてくれたネジさん自身に教えを乞いたいのです。

 私に、なぜそんなに強くなれたのか教えて下さい。お願いです」

 

 言い終わると、ヒナタ様は綺麗に座礼なさった。

 

 ……頭でも打ちました?

 え、3歳だよね?

 バックボーンが成長しすぎだろ、誰だよ。怖いよ。

 知らん。俺知らんぞこんな武士みたいなヒナタ様。

 ていうか、頭下げられてるんだけど。

 断る選択肢、もしかして無い?

 

「ちょっと待ってください。話が急すぎます。こう……ヒアシ様ではダメなのでしょうか?自分には宗家の方の修業がどこまで進んでいるかも分かりませんし。何より、荷が重いです」

「お父様の許可はとってきました」

「うっそぉ」

「本当です。昨日お父様に『すぐにでもネジさんの様に強くなる方法はないか』と聞いた所、『無理だ。お前にはまだ早い……というより、儂にもあれの成長速度は謎だ。お前がそれで納得できないというのであれば、さしあたって明日あたりあれの修業を見に行け。儂の話に納得できたなら帰って来ても良いぞ』と言われました」

「許可取ってないよね?」

「見て盗め、と受け取りました」

「受け取っちゃったかー」

 

 闇落ち前のネジに会って気弱になるくせに、俺がのしたらこうなるのかよ。

 でもヒアシ様、ナイスファインプレーだ。

 俺がこのバイタリティ溢れるsssレアヒナタ様の眼を覚まさせてやるぜ。

 

「それでしたらヒナタ様、まずはヒアシ様のお言葉通り、俺の修業を見てみてください」

 

 数分後、修行場には俺とヒザシ、そしてヒナタ様を含む大勢の見物人が集まった。

 見物人はヒナタ様以外、全員分家の門下生。

 門下生が一堂に会するその異様な光景に、ヒナタ様も多少面食らった様子である。

 

「ネジ、そろそろ良いか?」

 

 ヒザシの言葉に向き直る。

 これから始まるのは、ヒザシと俺の一対一の手合わせ。

 準備運動などはない。実戦に準備などないからだ。

 

「はい!」

「よし。では行くぞ!」

 

 瞬間、重なる掌底。

 そこからの攻防に、ヒナタは思わず絶句した。

 周囲の門下生たちも食い入るように見つめている。

 見て盗め、と言われているからだ。

 

 掌底。チャクラで受け止め、反撃。今度は受け流す。

 流されては流す。はじいては押す。引いては打つ。

 一手一手が次の手を決め、それが延々と繰り返される。

 その数多の手の流れが、まるで二人が舞を踊っているかの如く現出される。

 

 こんな事は実戦では起こりえない。

 地形、忍具、忍術。

 そういった不純物が入り混じる戦場では、拳技など喧嘩殺法に等しい。

 

 だからこの現象は、ある程度拳法を極めた二人が、平地、体術のみを条件に戦う事で発生する。

 一族の門下生の中でこれができるのは、上忍を除き俺一人。

 武道ならぬ舞踏。俺の柔拳はその域にまで達していたのだ。

 

「ふぐっ!」

 

 一時間後。姿勢を崩した俺を咎めた鋭い掌底に、俺は倒れた。

 チャクラを乗せた柔拳での試合は内臓にも負担がかかる。しばらくはまともに動けない。

 

「まだまだ踏み込みが甘いな、ネジよ。だから次第に呼吸が合わず、隙が大きくなっていく」

 

 父の助言を聞き、門下生たちは一礼して退出していった。

 これからは各々、俺の拳と父の言葉を反芻して煮詰めていく時間だ。

 

 体の疲労に唸っているとヒナタ様が寄ってきた。

 どうでしょうか、ヒナタ様。

 俺の実力はヒザシに劣る。

 宗家であるヒアシ様に教えを乞うことが一番の近道。

 気づいてもらえましたか?

 

「……すごかったですネジさん!私、やっぱりあなたと修行をしてもっと強くなりたい!」

 

 そうですか、もう知らん。

 俺の知ってるヒナタ様はもうこの世にはいない。

 解釈違いだ、こんなに変わるなんて……。

 

 

 

 その夜、俺は頭を抱えていた。

 隣には一族に混ざって雑魚寝するヒナタ様。

 ヒナタ様は「納得するまで帰るなと言われた」と意地を張って分家の家へ泊ると言い出した。あまり急だから部屋も用意しておらず、ヒアシ様とヒザシの間で半ば喧嘩じみた言い合いの結果、ヒナタ様の意志を尊重するという事で決着した。

 もちろん喧嘩の争点になったのは俺の存在。

 ヒアシ様の中で俺はなかなかの危険人物らしい。

 そんなに俺が怖いか、ヒアシよ。

 

 それよりも俺を悩ませるのは……ナルト。

 分身が今日一緒にラーメンを食べてきたこの作品の主人公である。

 

 なに楽しんじゃってんの?こっちはバリバリ修行中だったよ?

 

 とにかく、熱血ヒナタ様とナルト。

 この二人の要人との出会いがバッティングしたのはなかなかにバッドでハード。

 

 午前中は自分の修行、午後はヒナタ様の修業を行わなければならなくなった今、同時に分身体がナルトと会うのは至難の業である。

 しかし、両方と接点を持たなければ俺の将来に不安が残るのは確か。

 

「ぐぐ……俺は、いったい俺はどっちの裏切り者になれば良いんだぁ……?」

 

 悩む俺だった。

 

 

 

 翌朝。俺はナルトの家の戸を叩いた。

 

「んん……誰だってばよ……?」

 

 今起きたばかりのナルト。

 寝巻に眼をこすりながら出てきた。

 

「あ!お前ってばネジ!」

「よっ。ナルト。遊びに行こうぜ」

 

 目を輝かせるナルト。

 音をたてて扉を閉じると、一分もしないうちに出てきた。

 やっぱり、どっちを取るべきかは明白だったな。

 

「なあなあ、どこ行くんだってばよ?」

「うーん。ちょっと近所の公園まで、かな?」

 

 ナルトの家を出て、商店街へ抜ける。

 生花、食品、焼き肉、駄菓子屋、色々な店が並ぶ中、誰一人として俺たちを客として見ていない。

 厄介者が来たぞと言わんばかりの白い目。なかなか良い白眼をしている。

 お前も日向にならないか?

 ナルトは少々俯き、俺の三歩後をついてくる。

 

「なあナルト、腹が空いたな。なんか買っていこう」

「ネジ……!?」

 

 俺は近くにあった八百屋に向かう。

 目が合ったのは店番のおっちゃん。

 

「おい!お前何してる!?」

 

 案の定、おっちゃんは声を荒らげた。

 何もしていないというのにカンカンだ。

 

「何って……ちょっと小腹が空いたもんで、何か買おうかと」

「あーあー。迷惑だ。この疫病神が!これ持っててさっさと出てけ!」

 

 投げつけられたリンゴを手で受け止める。

 

「まいど!」

「フン!さっさとどっかに行っちまえ!」

「へいへい」

 

 リンゴを齧る。

 うまいのに勿体ない。

 

 ナルトはやはり下を向いたまま、三歩後をついてくる。

 商店街を越えてから公園に着くまで、ずっとナルトは黙っていた。

 

 公園には先客がいた。

 この近所の子供たちは毎朝、今ぐらいの時間にここで集まって遊んでいる。

 

「なんだよ、先客か」

 

 俺の言葉に、談笑していた子供たちは一斉にこちらを向く。

 なかには怪訝そうな顔もちらほら。

 

「なんだよ、ここは俺達の場所だぞ」

 

 最初に口を開いたのはグループのボス格。

 周りの取り巻きも続く。

 

「そうだそうだ!パパが言ってたぞ、お前らとは口をきくなって。ばけものだからって!」

「どっか行け!」

「ばけもの!あっち行け!」

 

 石でも投げてきそうな勢いだな。

 ちらりとナルトを見ると、ふるふると震えている。

 今にも途切れそうな小さな声でナルトは言った。

 

「ネジ……もう良い、行こうってばよ……」

「嫌だ」

「ネジ……!?」

「おいクソガキ。化け物だと?化け物見せてやろうかこら!ぁあん!?」

 

 ヤンキーだったかもしれねえ。

 ツカツカ近づく俺にクソガキも黙ってはいない。

 

「なんだよ!文句あるか!?」

「お前、やんのか!?一人で勝てるわけねえだろ!」

「勝てるわけないだと?影分身の術!」

 

 ボン。これで俺は二人。

 ガキ共がどよめく。

 

「は!?増えたぞこいつ!なんだ!?」

「白眼!」

「うわ!?目が変わったぞ!?」

「気持ち悪っ!」

「やばい、こいつマジでばけものだ!逃げろ!」

「我が柔拳の味を知れ!逃げるな!逃げるな卑怯者!」

 

 ガキ共はきゃあきゃあ騒いで公園を出て行く。

 ナルトはただ呆然とその様子を見ていた。

 

「けっ。口ほどにもねー」

「なあ、ネジ」

 

 呆然としたままナルトが尋ねる。

 

「お前ってば、なんでそんなに強いんだ?……商店街でも、さっきも、なんでお前はそんなに、平気な顔が出来るんだってばよ?」

 

 ……計画通り……っ!

 商店街、公園。全ては9か月間の修行時代のリサーチに基づき綿密に練った計画の上、ガキもおっちゃんもナルトも俺の掌の上!

 この時、この言葉の為に!

 

「ナルト。お前、夢はあるか……?」

「夢?」

「俺はな、ナルト。火影になりたいんだ」

「……!」

 

 やはり。まだナルトに夢はない。

 一楽すら知らないナルト。賭けてみる価値はあった。

 

「火影はな、ナルト。みんなに愛されて、みんなを導く偉大な人のことだ。俺は火影になって、この目を気持ち悪いという奴全員を見返してやるんだ……白眼で。そして俺はそのために強くなりたい。だから修行をして、日々成長をし続けている!」

「……さっき増えたのも修行をしたからなのか?」

「そうだ」

「そうか、なら……俺も!俺は、この里のどんな火影をも超える!もちろんお前も超えて、そんでもって、里のみんなに俺の事、認めさせてやるんだってばよ!」

 

 ナルトは胸をはった。

 

「ナルト。その夢、もし本気なら、昼に日向の分家まで来い。お前とは別だが、俺と一緒に夢を追いかけてる奴がもう一人いる。俺達三人で修行をしよう」

「良いのか?」

「友達だからな」

 

 友達だもんね?そうだよね?

 お願い頷いて!

 

 俺は家までの簡単な地図をナルトに渡した。

 さて。後は影分身を解いて、来るのを待つだけ。

 

「じゃあな。ナルト」

 

 ボンと白煙。俺は消えた。

 そう。朝からナルトに会いに来ていた俺は2号。

 本体は柔拳の修行中。

 

 ヒナタ様とナルト、どっちも同時に修行をつける。

 これが俺の回答だ。

 

 昼下がり。

 日向分家の裏庭に、三人の子供の姿があった。

 

 一人は日向の天才。一人は熱血お嬢様。そして一人は化け物。

 三者三様、抱える物も掲げた目標も違うこの三人。

 

 はてさて、これから一体どうなることやら。




 急に伸びててびっくりしました。
 暇つぶしに書いてる小説なのに、大勢の方に見て貰えてとても嬉しく思います。
 今後ともどうぞよろしくお願いします。

※ここすき、感想、高評価をして頂けると一生ニヤニヤ出来るので助かります。

日向ネジ、性質変化はどれ?(参考までに)

  • 火遁
  • 風遁
  • 雷遁
  • 土遁
  • 水遁
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