日向如く   作:尾田栄~郎

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第七話 原作開始!俺はモブじゃねえ!

 見知らぬ、天井。

 いやなんとなく解る。木ノ葉病院だ。

 ここ以外に病院知らないし。

 

 あのクソ(ジジイ)――いや、認めよう俺の非だ。

 俺は修行にかまけて、イタチの起こす虐殺事件の日付を忘れていた。

 大好きな作品に転生しておいてとんだ失態だ。

 NARUTO転生なんて夢にまで見ていたのに、実際俺をどれだけ強化しようが、モブはモブという事か?

 

 ネジが主役だって良い筈なのに。

 

 はい、自己嫌悪終わり。

 

 理性的に行こう。体は無事かな?

 イタチの太刀食らって無事なわけないんだけども。

 

 とりあえず白眼は無事。

 両脚も問題ない。

 次に両腕、ここで右手側の上半身に激痛。

 

 白眼で患部を確認すると、右肩から胸にかけ、経絡系が一度引き裂かれた後溶接された様な傷痕が伸びている。

 どうやら傷から右は痛む割に動かせないらしい。

 

 右肩から袈裟切りにされ、右腕右肩がお釈迦って所かな。

 

 俺右利きなんですけど。

 

 しかもこの溶接跡――治療痕だろうが、これが治療と言えるのか?

 治療方法が忍術なのか半田ごてなのかすら怪しい。

 しかもご丁寧に上から大仰なギプスで固定されているし、お世辞にも助かったとは言えまい。

 

 また気分が沈みかけていた時、病室の扉が開いた。

 

 入って来たのはナルトとヒナタ様。

 2人揃ってお見舞いとは、ナルトも中々隅に置けない。

 なんて軽口を言う間もなく、俺の覚醒に気付いたナルトは大慌てで医者を呼びに行き、ヒナタ様はその場で泣き崩れてしまった。

 

 少々太ましい中年の医者が到着すると、父ヒザシもやってきた。

 俺は数日間寝込んでいたらしい。

 だとすると、皆の反応は少々オーバーじゃないか?

 数日寝込む位の怪我、忍にとっては日常だと思うが。

 親バカと情に厚い幼馴染みコンビとはいえ、嫌な予感がする。

 

 しばらく意識やら何やらよくわからない確認があって、俺の容体が伝えられる。

 

 曰く端的に、俺は右肺を失った。

 傷は俺が思っていたより浅く、日々の鍛錬も相まって一命はとりとめたと。

 そして、忍者は諦めた方が賢明らしい。

 

 え、そのイベント俺に来るんすか?

 俺はリーじゃないし、お前はボインじゃないぞ?

 お前はおっさんだよ?おっさんだよね?

 

「あれ?もしかしておばちゃん?」

「は……?」

「間違えました」

「え……ええ、突然の事で混乱すると思います。ゆっくりでも構いませんので、我々も今回の事を飲み込めるよう尽力いたします」

「俺の肺、治らないんですか?」

「はい……」

「つまんな」

「そういう事では!?」

 

 良い反応するなあ、おっさん。かわいくねーぞ?

 

 可愛くないのは俺の状態の方か。

 片方の肺は消え、右側の上半身も怪しい。

 今修行なんかやったら速攻体が千切れてお陀仏だし。

 傷口が観音開きで、世にも禍々しい呪物の完成だ。

 控えめに言って産廃レベルの品質。

 

「どうにかなんねーのかよ!?ネジは!ネジは!火影になるのが夢なんだぞ!?」

 

 不意に医者を怒鳴りつけたのはナルト。

 ヒザシとヒナタ様は黙っている。

 八方塞がりな状況に医者は「しかし……」と言ったきり困ってしまった。

 

 中々深刻そうだが、なんだろうなあ、実感ないんだよね。

 死亡二回目、今回は忍として死んだだけだし、ぶっちゃけ忍界大戦で出兵がなくなった分助かったまである。

 むしろこれはチャンスなんじゃないか?

 原作で死亡が確定しているなら、忍者にならない、つまり原作に関わらない今の環境は一番の生存フラグ。

 現状、最良の選択な気もする。

 

「……良いのかよ、ネジ」

 

 他と俺の温度差に気付いたのか、ナルトは怪訝な顔をする。

 意味を測りかねた俺が黙っていると、ナルトの表情は滾るような憤悶へと転じて、一気に爆発した。

 

「お前はそれで良いのかって言ってんだ!!火影になるんだろ!?それがお前の夢なんだろ!?こんな所で諦めて良いのかよ、俺達と修行したのは夢の為じゃなかったのかよ!!こんなの……こんなの俺らバカみてーじゃねーか!!」

「バカみたいって……そんな言い方はないでしょ!?ネジさんだって望んでこうなった訳じゃないのよ!?」

 

 言い足りない様子のナルトにヒナタ様は声を荒らげる。

 ナルトは声を噛み殺し、またしても室内は静寂に飲まれる。

 

 夢。

 ただナルトと交友関係を持つため、いつか自分が生き残る為に言った言葉だったがーーこいつらにはそんなに重い言葉だったのか。

 いや、あたりまえか。

 ナルトの火影に対する想いは尋常じゃない。

 それも原作で充分知っていた――つもりだった。

 

「どうしても、なんとかなりませんか」

 

 やっと口を開くヒザシの言葉は、半分の諦めと半分の期待が入り混じっていた。

 医者はヒザシとナルトを交互に見て答える。

 

「しかしその……今の彼の肺機能では激しい戦闘は厳しく、肺を再生させられる忍もおらず……治活再生の術でぎりぎり命を引き留めただけの状態ですので、忍の任務は不可能。もし手術やリハビリをしたとしても、どこまで回復するか……」

 

 今度はナルトも黙った。

 ヒザシが深く息を吐く。

 

「腕は治るのか?」

 

 尋ねたのは俺。

 

「腕は、そうですね問題なく治るかと。ですので、日常生活に問題は――」

「治るなら良い。それで俺は火影になれる」

「な……!?」

 

 ナルトに対し、火影を語ったのだ。

 ファンとして、そして師として、夢の続きを見せるのが筋。

 そしてこの日向ネジ、二度の失敗はあり得ない。

 復活劇を見せてやろう。

 

 今度は医者が声をあげる番だった。

 

「冗談じゃない!君は、ほとんど死んでいる状態でここへ運び込まれたんですよ!?」

「冗談じゃない。この眼と両手、これで充分火影に届く。日向は木の葉にて最強なのだから……!」

「ふざけないで下さい!君――」

 

 激昂しかかった医者だが、ヒザシに制止される。

 

「ネジ……儂はお前に任せる」

「そんな!?親御さんの方からも――」

 

 医者が何を言おうと、親バカ発動中のヒザシは止められない。

 俺は父の信頼に応える為にも復活を誓った。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

 日向分家の朝は早い。

 退院し久しぶりの実家と言えども、修行を怠ることは出来ないからだ。

 アカデミー復帰まではもう少し時間がある。

 この間に復活の糸口くらいは見つけたい。

 

「とりあえず、何でも試してみますか!」

 

 俺は拘束具の取れた右腕を回し、作業にとりかかった。

 

 ケーススタディ、影分身を使う。

 

「久々登場、俺2号!勿論右肺はないよ!」

 

 登場と同時に俺のささやかな希望は失われたよ、ありがとう。

 さすが俺だ、空気を読まない。

 

「だいたい俺の肺をお前に移植とか出来ねぇから。そもそも誰が手術すんだよ」

「そんな事は考えてないし、この里に医療忍者が何人いると思ってる。俺のアイデアを馬鹿にするな」

「2行で矛盾起こしてる奴なら馬鹿にして良い?てかメス入れただけで俺は消えるんだよバカ」

「バカはてめーだ、俺2号」

「なんで」

「俺はお前だから」

「……」

「だったら2号、肺が揃っていた頃の俺に変化とか出来ないか?」

「出来なくはないだろうが、機能は戻ってこない」

「あれ、そうなのか?」

「変化の術に機能面を上乗せする特性があるなら、とっくにナルトと自来也の子供ができてる」

「……お前の中で自来也の倫理観どうなってんの?」

「俺が聞きたいよ。本体(おまえ)に」

「……」

 

 しょうがないじゃん、自来也だし。

 素行が作中トップクラスで悪いんだよあの変態。

 

 薄々解ってはいたが、変化の術は見た目を変えるオンリーの術だな。

 忍者と言いつつ誰も忍ばないこの世界だと不意打ちにしか使えん技だ。一番忍者っぽいのに。

 

「そうだ!2号お前、犬塚家行ってこい」

「なんで」

「犬塚家秘伝の獣人分身、あれ人間が人型のまま犬の嗅覚を得てただろ?また逆も然り。つまり右肺がある状態のお前と俺が獣人分身すれば……」

「機能しない生きた右肺をもつ奇天烈人間コンビの誕生だな」

「……」

 

 ややこしくなっただけ。

 失敗。

 

 ケーススタディ、傀儡使いになってやるじゃん。

 

 傀儡使いは、戦闘専用の傀儡をチャクラ糸を用いて操り戦う。

 つまり俺が戦闘できなくても問題ないのだ。

 

 傀儡は手元にない(そもそも木の葉にあるのか?)ので、商店街で人形を買ってきた。

 

 指先から放出したチャクラを細く長く伸ばして成形する。

 これくらいのチャクラコントロールは楽勝だ。

 

 チャクラ糸の端を人形につける。

 チャクラで動かすから、つける場所は人が動く時によく使う点穴を意識する。

 

 結果、人形は問題なく動作した。

 かなり素早く、そして力強く動かす事が可能である。

 ただし指が攣った。経絡系と併せて尋常じゃない疲労感。

 マジで指一本動かせないので、この件は保留にした。

 

 ケーススタディ、パロディに頼る。

 

「俺は天才だァ~!」

「……なあ、そのノリ俺もやんなきゃダメか?」

 

 肺が半分で体が動かないなら、単純に左肺で2倍呼吸すれば良いのだ。

 そこで秘孔の出番である。

 指が動かないので、二号に千本を打ち込んでもらう。

 強心のツボ、肺機能を向上させるツボ、血流促進のツボ、とにかく現状打破に関係ありそうなツボを片っ端から探ってみる。

 血流や肺に関わる点穴も同様だ。

 

 効き目がありそうなら「俺は天才だァ~」、即効性を感じなかったら「ン!?間違ったかな……」と伝え、都度書き留めておく。即効性がなくても後々役立つかもしれないし、返答がどちらでも文字に起こす事は大切だ。

 

「結局記録をつけるなら、そんな回りくどい言い方しなくても良くないか?」

「ン!?間違ったかな……いやいや、これはン!?間違ったかな……雰囲気作りというか願掛けというか、ネジとアミバという二人の天才をン!?間違ったかな……ええと、どこまで話したっけ?」

「……天才ね、はいはい。これでツボは全部だ。しかしたった今もう一つ、効果があるかもしれないツボを思い出した、これだ……パウッ!」

 

 掛け声と共にみぞおちに差し込まれる腕。

 横隔膜の点穴に作用したのか、意に反して息が吐きだされる。

 

「そうそう、肺の中の空気を1㏄残らず絞り出せ」

 

 苦しいんですが!?

 息を吐く間は息を吸えない。呼吸が止まる。

 片肺の人間になんて拷問しやがる……!

 

WRYYYYYYYYY……(ウリィィィィィィ)

「それ呼吸音じゃなくね?」

「言っとる場合かー!殺す気か?いや死ぬ気か?手の込んだ自殺をするな、それは心中だぞ!」

「へへ」

「……」

 

 俺は意外とウザがられてるのかもしれない。

 殴りたい位には。

 

 ともかく、呼吸能力の強化においても保留。

 一朝一夕で結果が出せる分野でもない。肉体改造だからね。

 

 

 

「ネジ……お前本当にそれ食べるのか?」

 

 夕食の席でヒザシは、俺の前の膳――造血丸の山――を指してそう言った。

 

「父様、これは造血丸の山ではありません。ただ主食と副食と椀物の上に造血丸を盛っただけです。俺の食生活に口を挟まないで下さい。食材と料理人その他に対する邪知暴虐の数々は侘びますが、決して冒涜の意志はありません」

「あ、ああ……えー……食べにくかったら、上の造血丸は手掴みで食べても良いからな?」

「はい」

 

 かなり無理な食事だが、それも復活の為。

 やるだけやらなきゃこの世界、生きていけない。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

「えー、これから卒業試験を行う!で……卒業試験は分身の術にする。呼ばれた者は一人ずつ、隣の教室に来るように」

 

 教壇に立つうみのイルカがそう言って数時間、アカデミー前は今年の卒業生でごった返していた。

 聞こえるのは親子入り混じった歓喜の声。

 一人の少年、ナルトの周りを除いては。

 

「ねえ……あの子合格したの?」

「合格したんだって……あんなのが忍になって大丈夫かしら……だってあの子」

「しっ……禁句よ」

 

 その化け狐が一人ブランコからじっとりとにらみ倒しているというのに、木の葉の主婦層は平和な物だ。

 しかし原作と違ってナルトは一人ではない。

 

「ナルト、卒業おめでとう」

「これで俺達は忍だ。フッ……後手はとらねえぜ?」

「ナルト、卒業祝いだ!ラーメン奢ってやる!」

 

 サスケとヒナタ様はいつも通り。

 そして俺が修行をつけていない間に、先手必勝で奪われていたポジションを取り戻したのがうみのイルカ、三人の先生である。

 イルカの一声に、3人は顔をほころばせ――

 

「気になるか?ネジよ」

 

 遠目から眺めていた俺に、後ろから声がかかる……一年前に忍となった俺の直属の上司、マイトガイが不安気な目線を送っていた。

 俺は一年前、アカデミーを首席で卒業した。その後リーやテンテンと同じ班に配属されたが、不完全な俺の肉体は紙面上のナンバーワンルーキーという肩書を許しても困難な任務を許さず、天才と呼ばれた昔の姿は見る影もない。任務と言っても迷い猫探しがせいぜいであり、有体に言って班のお荷物である。

 そんな俺の心情を慮ってか、ガイ先生は俺に一緒にラーメンを食べに行ったらどうかと提案してきた。

 

 しかし俺はあの和に混ざる事は出来ない。

 ナルトへの負い目もあるし、サスケの為でもある。

 

 事件以来、サスケは俺と顔を合わせようとしない。

 そもそも事件があった事すら多くの生徒は知らない。

 事件を知っているのはサスケ、ナルト、俺、ヒナタ様。

 詳しい事件の内容まで知っているのは俺とサスケだけ。

 

 おそらくはダンゾウあたりの根回しだろうが、ナルトとヒナタ様に関してはおそらくサスケの意志だろう。

 サスケだって、俺を放ったままヒナタ様と笑い合えるクズではない。

 ヒナタ様とも色々あって、今の形に落ち着いているらしい。

 

 何の説明もないままナルト達とサスケの交友が続いているのは、逃避とも取れるサスケの行動を2人が受容している証。渦中にある俺の干渉はその均衡を崩す危険を伴う。

 俺はこの後班のメンバーと修行を控えている事を口実に、その場を去った。

 

「ネジよ……お前にはテンテンもリーも居る。気に病む事は無い、熱い友情に全力で向き合えば、それが一番だと俺は思う」

 

 修行場に向かう直前、俺の背中にガイ先生はこう語りかけたが、友情がどちらの方を指すかは判らなかった。

 

 

 

 夜、修行の帰り道にそれは起こった。

 

 暗いので白眼を使っていたのだが、視界の端に闇夜を駆けるある人物を目撃した。

 そいつの腕には一抱えある巻物が掴まれており、今日という日付に違和感を覚えた俺はアカデミーの屋上へと向かった。

 そいつを尾行しなかったのは、体力に不安があったのと()()を使うべきか迷ったからだ。

 

 アカデミーの屋上には既に、多くの里の中忍と上忍が呼び寄せられていた。

 集まった木の葉の精鋭達に対し、三代目火影が緊急の任務を言い渡す。

 

「封印の書が何者かによって盗まれた。里の忍にはその捜索と、犯人の特定を任務とする。これは緊急を要する任務である。また、犯人である可能性が高いナルトを拘束せよ、以上。散!」

 

 精鋭達は一斉に動き出す。

 俺は即座に一楽へと向かった。

 

 

 

「ダイナミック・エントリー!」

 

 お祝いムードに包まれる一楽、そこへ割って入ろうとした俺を更に割って入って来たのはマイト・ガイだった。

 

「ウゲー!めっちゃゲキマユな奴が来たってばよ!?」

「ナルト、汚い!」

「ガイさん!?それにネジ君まで、食べに来るならもうちょっと落ち着いて下さい!」

「それには及ばん、少しナルトという下忍を連れて行きたい」

 

 言うが早いか、ナルトを抱えるガイ先生。

 

 ただならぬ気配にサスケとヒナタ様が応戦に入る。

 ヒナタ様の掌底は簡単に捻って投げられ、サスケの上段蹴りは木の葉昇風をくらい反対にサスケが飛んでいく。反射で倒す、圧倒的な早業だ。

 良心的なのは、両者屋台の外に吹っ飛ばしてる所くらい。

 いつの間にかナルトの意識まで持って行ってるし、信じられない手際の良さ(えげつなさ)だ。

 

 唖然とするイルカに、ガイ先生は歯をギシャーンと輝かせて「じゃ」と一言。

 イルカが一拍遅れて弁明を求めると、彼まで小脇に抱えて去って行った。

 

 後に残ったのは、災害に巻き込まれた一楽だけである。

 

 とりあえず倒れた席を戻し、気を失った2人を介抱する。

 2人ともしっかり受け身は取れていた。取れていたのにこの有様、対応出来なかったら死まであったな。

 

 さすが上忍最高、影レベルの実力者……俺はあそこまで強くならないとナルトに嘘をついた事になるのか。

 1人恐々としていると、一楽のおっちゃんが申し訳なさそうな顔をして言った。

 

「その、お勘定……」

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

 ナルトが目を覚ますと、そこは檻のなかだった。

 檻の外には、こっちを睨む数人の大人の姿。

 

 いつもの目だ、とナルトは呆れた。

 

 なんだって一体、俺をそんなに嫌うんだってばよ?

 

 てかてか、今はそんなのどうでも良い。

 ヒナタやサスケ、イルカ先生はどうなった?

 ネジは、おっちゃんは、それにここは何所だってばよ?

 どうにか聞き出して、ここを出ねーと。

 ラーメンが伸びちまう!!

 

「ナルト!目が覚めたのか!?良かった、無事で」

 

 ナルトに気付いたイルカは檻に近寄る。

 

 無事って……俺ってば、檻に入れられて全然無事に見えねーんだけど?イルカ先生そういう所あるよなー。

 

「ってかそうじゃなくて!ここは何所で、何があったんだってばよ?」

 

 檻の前で屈むイルカに教えられたのは、衝撃の事実。

 禁術を記した封印の書が盗まれ、自分が容疑者筆頭になっているという事。

 ナルトはここ数年ネジが怪我を負ってからというもの、人に修行をつけるネジと同じ立場に立ち「このままではいけない」と自分を律し、悪戯から足を洗った。

 それなのに、存在すら知らない禁術の巻物を、どうして盗むというのか。

 

 聞けば十年ほど前にも一度、巻物は盗まれたらしい。

 であれば、十年前に里の外に持ち出せなかった何者かが十年越しのリベンジに来た可能性だってある。

 十年前の犯人も見つかっていないのに、急にナルトに矛先が向くのは釈然としない。

 

「それは、ほら……意外と自明だから、十年前の犯人。お前もその真似をして、巻物を盗んだんじゃないかって話になってな?」

「なんで俺が知らねー犯人の真似事なんかしなきゃなんねーんだ!?おかしいってばよ!」

「し、知らないって言われてもなあ……」

 

 イルカは苦笑するが、ナルトには本当に心当たりがない。

 

 ナルトは悪者をイルカの後方で自分を睨む大人達だと決めつけて、睨み返す事にした。

 

 

 

 そうして半刻が過ぎようとしていた時、事態は動き出した。

 

 うたた寝していたナルトは微かな物音に起こされた。

 ナルトが目を覚ますと、檻の中を監視する部屋に見知らぬ忍が入ってきた。

 

 全身を黒い忍装束で包み、顔は狐か猫の様な仮面をして隠している。

 怪しい奴だ、直感でナルトはそう悟った。

 

 怪しい忍は、ナルトを寄越せと低い声で言う。

 忍の所属を知っているらしい見張りの忍は、どうしてとか誰の命令だとか言って、斬られた。

 

 壁に血が飛ぶ。胴体をバッサリと斬られた忍はのたうち回り、血の染みをいくつも作って絶命した。

 その間にも、応戦しようとした忍が次々に斬られていく。

 

 一通り殺し終えた怪しい忍がナルトの方へ歩いてくる。

 ナルトは恐怖に半狂乱になりながら泣き叫ぶ。

 

 怪しい忍びが檻の錠前に手をかけようとした時、血まみれのイルカが待ったをかけた。

 

「お前、暗部の忍だな……!誰の差し金だ、目的を言え!」

 

 胸を切られ、血を滴らせながら檻と暗部の忍の間に入るイルカ。

 暗部の忍は、しかしこれには答えた。

 

「誰でもない、俺個人の判断だ……そのガキは生きているだけで木の葉を危険にさらす。俺がそいつを殺すのだ」

「なんでだってばよ!」

 

 嚙みついたのはナルト。

 

「なんで……なんでお前らそんな、俺を嫌うんだってばよ!?いつも厄介者扱いして、睨んで、しかも殺そうとして!なんで皆、ネジみてーにしてくれねえ?俺が何をしたんだってばよ!?」

 

 絶叫するナルトに、冷めた口調のまま忍は笑う。

 

「後生だ、教えてやろう……十二年前、木の葉を半壊させた化け狐の事は知っているよな?その事件の後、里にはある掟が作られた……お前に教える事を禁じられた、里中でお前だけが知らない掟だ……お前の正体が化け狐なのを、お前に悟らせない掟だよ。お前は憧れの火影に封印された挙句、里の皆にずっと騙されてたんだよ!お前は確かに、悲しい、哀れな奴だ。でもしょうがないよな?どんなに悲しくても、健気でも、哀れでも……お前の本性は、化け狐なんだもんなァ!?それにイルカァ!俺は知ってるぜ……お前の父親は、十二年前、こいつに、この化け狐に殺されたんだろ?……善人ぶってないで白状しちまえよ、こいつが憎いってな!殺したいほど憎い、親の仇だってなァ!」

 

 絶句するナルトに、イルカは何も答えない。

 ナルトは心のままに、イルカの名前を呼んだ。

 

「そう……だったかもしれない。こいつが、ナルトが本当に化け狐だったらな」

 

 暗部の忍は低く唸った。

 

「俺は知ってるぞ……ナルト。努力家で、一途で、いつも修行を頑張っていたな。そんなナルトに教室の皆は引っ張られて、いつも授業が楽しかったよ。おい暗部、お前はナルトに、里の皆に騙されていたと言ったな?でもそんな事をしていたのは頭の固い大人だけだ……ナルトの周りにいる子供たちは、皆どこかでナルトを尊敬していたし、認めていた。そこに嘘なんてなかった。ナルト、お前は俺が認める立派な生徒、木の葉の里のうずまきナルトだ……!」

 

 舌打ちする暗部の忍。

 

「つまらん……どうせお前も死ぬのだ。そんな台詞、どうでも良い」

 

 刀にゆっくりと手をかける。

 振り下ろす直前、天井を突き破って降下した回天に阻まれ忍は吹っ飛んだ。

 

 即座に、降下したヒナタ様はイルカの止血にまわり、サスケは檻の錠前を外しにかかる。

 

「暗部……根の者か、どうせダンゾウ辺りに命令されたんだろ?あいつ、いつも要らん事しやがる」

「お前……何者だ!?」

 

 吹っ飛ばされた忍は俺に問う。

 

「俺か?……木の葉流忍者、日向の天才、妖怪大将、今最も火影に近い下忍……日向ネジだ!!」

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

 時は半刻、遡る。

 

 復活したサスケとヒナタ様に、俺は全ての事情を説明した。

 

「犯人はおそらくミヅキ、アカデミーの教員だ。これから可能な限り早く捜索して、巻物を奪取、捕まったナルトを解放する。捜索に当たっては白眼を使う。影分身を用い、ヒナタ様が今できる限界の八体、俺の限界の十五体の総勢二十三体で里全体をできる限り捜索し、可能なら遊撃する。半刻後までにサスケのいる一楽前に集合して持ちよった情報を精査するが、戦闘音が聞こえたら全員でそっちに向かう、良いな」

「待って。つまり遊撃が発見の合図にもなっていますが、ネジさんは、その……」

 

 二人は苦い顔をする。

 ……しょうがない。()()を使うか。

 

「それについては問題ない。奥の手がある。……準備に三年、調整に一年費やしたが、この忍術さえあれば、俺は復活する。……忍法、白毫の術"創造再生"」

 

 三年かけて額に溜めたチャクラを全身に流す。

 繊細なチャクラコントロールで体細胞分裂を活性化させ、傷を治すのではなく"再生"させる。

 医療忍術ならぬ再生忍術。これが俺の秘策だ。

 テロメアの消費に変わりないから奥の手としてきたが、今日この瞬間を逃す気はない。

 

 肺が再生していくのを感じる。呼吸が楽になってくのを感じる。

 むしろ四年間の鍼灸と造血丸摂取によって強化された俺の呼吸機能のおかげで、昔よりも身体能力は強化されているだろう。

 

「大妖怪卍白影、復活だ!そして――散!」

 

 総勢二十三体の俺たちは闇に消えていった。

 

 木の葉広しと言えど四十六の白眼による索敵から逃れられる奴はそうそういない。

 原作で下忍相手に成敗された奴なら、なおさらだ。

 

 発見したのは俺。

 復活後の練習相手にはちょうど良いだろう。

 

「ダイナミック・エントリー!」

「!?」

 

 掛け声と共にミヅキの前に参上する。即、柔拳の構え。

 

「何かと思えば、日向ネジ、お前か……この巻物を持っている所を見られたら、生かしては置けないな?落ちこぼれの天才一人嬲るのは造作もないが……ちょっと心が痛むなあ?命乞いでもしたらどうだ?」

「お前ってそこまで小物悪役だったっけ?」

「なんだと、このクソガキ!」

 

 言葉と共に投げられたクナイを額あてで受け、懐に入り込む。

 小悪党なミヅキは俺の動きに置いてけぼりをくらっている。

 

 叩き込むのは"白毫の術"会得後にできた技。

 点穴に流れるチャクラを増減させ、あるいは止める事で相手の経絡系から破壊する柔拳の特性を"白毫の術"のチャクラで何千、何万倍にも引き上げてできる技。

 これを食らった相手は、あまりの速度に流れが圧縮された自身のチャクラに耐え切れず、経絡系が爆発的破壊現象を引き起こし、最悪内臓がミンチになって死に至る。

 その術の名は――

 

「"北斗八卦・爆殺六十四掌"!」

 

 ミンチになると言ったのは、点穴に込めるチャクラの量やついた点穴にもよる話で、今回の様に表皮の六十四の点穴を軽く突いただけなら、相手の体表がつるりと剥ける程度の威力である。

 元にした技の威力を考えれば「あべ死」しないだけ優しい……よね?

 

「ネジさん怖いです。ていうかミヅキさん生きてます?これからその人を真犯人として持って行かないとナルトの無実は証明できないんですよ?」

「俺は持って行きたくないぜ。そいつ……触りたくない」

 

 集まってきた2人もこの通り。

 うるさい。2号に持って行かせるから良いじゃん。

 なんか2号が両手でバツ作ってるけど、ちょうど白眼の盲点だから見えてない。

 

 俺2号に気を失ったミヅキを担がせ、白眼でナルトを探す。

 サスケをチラ見すると、顔には微笑を浮かべていた。

 俺が修行をつけた時の様な、少年の好奇心を感じさせる顔。

 昔の顔だ。何か吹っ切れたな。

 

 

 

 かくして、俺2号だけ深夜枠のネジ御一行様はナルトのピンチに駆けつけたという訳だ。

 

 格好良く登場した俺達に根の忍は圧倒された様子。

 主人公ムーブって奴だ。

 

「くっ……日向の変態が……!」

「自己紹介聞いてました?もしもーし……まあ良いか。お前、派手にやってくれた様だがこの後どうするつもりだ?ダンゾウに使い捨てにされる腹積もりだったのか知らないが、生憎真犯人を連れてきた。犬死にご苦労。お前は終わりだ」

「そうだな……それで良い」

 

 忍が自身の忍装束を剥ぐと、中の体に巻かれた大量の起爆札が一斉に作動した。

 

 ここまで織り込み済みだったか。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

「これは……生きて居るのか?」

「ピンピンしてます」

 

 多くの忍が火事の火消しに追われる中、俺は三代目にミヅキを差し出す。

 大戦を経験した火影様でも生死が判別つかない怪我人が居るらしい。

 

「今回の真犯人はこいつです。もりのイビキにでも差し出せばスッと全部吐くでしょう」

「この状態の怪我人を拷問にかけるつもりなのか?」

「その方が逆に目が覚めてちょうど良い」

「……そういえばお主、なぜ拷問尋問部隊の隊長の名を知っている?」

「そうだ、こいつを捕らえたのはナルトという事にして下さい。あいつの境遇も少しは楽にしてやりたい」

「悪名が広まりそうだが……そしてお主、儂の質問に」

「そこは情報統制しましょう。里の忍の為です。やってくれますね?」

「……ああ……その様にするが、お主」

「それでは、さよならです」

 

 俺は影分身を解き、消える。

 お得意の「実は俺2号でした」って奴だ。

 

 

 

――――――――卍――――――――

 

 

 

「それでは!イルカ先生の退院を祝して!」

「「「「「いただきまーす!」」」」」

 

 数日後、イルカは無事退院した。

 祝いの席が一楽なのはご愛敬だ。

 

 俺の奢りなのが気にくわんが、流石のナルトも退院したての先生に奢らせる事はしないらしい。

 まあ良いか、一楽でバイトしてる分身の懐は温まる。

 

 俺は久しぶりって事で、四年間の思い出話で持ちきりだ。

 イルカが主役だってのに、全く。

 

「それで、このウスラトンカチの説明が全っ然わけわかんなくてよー……ネジ?何してるんだ?」

 

 俺は造血丸をかける手を止める。

 ……あれ?

日向ネジ、性質変化はどれ?(参考までに)

  • 火遁
  • 風遁
  • 雷遁
  • 土遁
  • 水遁
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