諦め猫熊はかく語りき   作:幽 

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ドラゴンとスパンダムの一幕、次にルッチが出る。
あと、二話続きます。


それでは、贄の子どもたち。優しい夢はもう終わる 2

 

「・・・今日は、人がいないのか?」

「・・・ええ、もうすぐ、帰ってこられると思いますよ。」

 

その日は、やけに人気が無かった。起きれば必ずと言っていいほど、人のベッドに潜り込んでいるロブ・ルッチの姿が見えない。

それを疑問に思っていれば、己のお付きのブリントが答えた。

なんでも、必要最低限の準備のために出払っているらしい。それに、黄昏はそうかとうなずき、そのまま流してしまった。

 

(・・・・この島に来てから、妙に、落ち着かない。)

 

疲労感にスパンダムは浸っていた。それを上手く表現は出来なかったが、ただ、確実に墓参りの時間が長くなっている自覚はあった。

 

覚えなんてないのだ。どの墓を見ても、特別なかんじょうは浮ばなかった。ただ、何か、落ち着かない。

どこかに行かなければいけないと思う。それが、どこかはわからない。

それとも、その感情自体がその墓への感覚では無く、今、捕らえられている現状への焦燥なのかもしれない。

 

(・・・・どちら、だろうか。)

 

ぼんやりと考えても答えなんてでない。ただ、それについて深く考えようとすると、大抵誰かに邪魔される。

彼らは、黄昏に話しかけるだけでとても嬉しそうな顔をするのだ。

これ以上の事なんてないような顔を。

 

「忘れてしまってもよいのです、長官。」

 

一人が、そんなことを言った。それは、ほんの少しだけ、なんとか時間を縫ってやってきた男で、とても、物静かだった。

けれど、自分を前にした時、それは心底痛ましいというか、こちらが申し訳なくなるような顔で黄昏の手に額をこすりつけた。

 

「例え、忘れてしまっても。私たちがすることは変わりません。貴方がしてくださったことも。私がしたことも、何も。変わりはしないのです。」

 

それに黄昏は、慰めてやらなくてはいけないと思う。思って、それと同時に、何故か砲弾が撃ち込まれるような爆発音を空耳した。

 

そんなことを考えていた時、ばたばたと港の方向から走ってくる存在があった。

 

「どうしたんですか?」

 

ブリントがやってきた男にそう声をかけた。留守役の男は青ざめた顔で叫ぶ。

 

「大変だ!」

「だから、どう・・・・」

「奴らだ!今、海の向こうに見えた!逃げるぞ!」

 

黄昏は聞こえてきた会話に、ああと何か、理解した。

 

彼らが、そうだ。

 

「ドラゴンが・・・・」

 

黄昏が思わず呟いたそれに、誰よりも早く、ブリントが反応する。そうして、振り向いたと同時にそれは黄昏の口元に何かを被せる。

キツいような臭いと同時に、意識がもうろうとしてくる。

 

「・・・大丈夫です。長官。」

 

ぐらぐらとする感覚と共に、意識が薄れていく。ブリントは、まるで、幼い子どものように、とても無邪気な声で。

 

「弱い、あなたのことを、必ずや、守って差し上げます。」

ああ、そんなことを、確か、誰かが・・・・・

 

薄れた意識の中で黄昏の意識がどぼんと沈んでいった。

 

 

 

革命軍にとって、それは非常にやっかいな問題だった。

拠点である場所を何者かに襲われ、それと同時に、メンバーの一人が攫われた。

が、不思議と拠点に被害があったわけではなく、相手はただ黄昏のことを攫うことが目的であるようだった。

 

(・・・・スパンダムか。)

 

ドラゴンも知っているその名が、あの空虚で、そうして激情を備えた女の名前であったことに驚きながら、納得も出来た。

 

拠点でロブ・ルッチが目撃されたのだ。

少し前の新聞で、彼らの所属する機関の崩壊が報道されていた。そんな彼がわざわざ動いていること、そうして、黄昏の髪と瞳の色。

 

ロブ・ルッチが動く、紫色の髪と瞳の人間には一人だけ心当たりがあった。

今更、性別自体には考えなかった。諜報機関で働いていれば、その程度の偽りは可能性として存在した。

 

革命軍は現在、平行して拠点から動く準備をして、そうして黄昏、いやスパンダムの奪還に動いていた。

 

「・・・本当に奪還に動いて良いのか?」

 

ドラゴンはとある船の一室で、参謀であるサボにそう問われて顔を上げた。

それが拠点についての移動を主だって行わなくていいのかという事と、スパンダムが元々スパイだったのでは無いかという話であることはすぐに察せられた。

現在、拠点は最低限の引き上げだけを行っている。

 

「・・・CPの長官をこちらの手の中にある方がいいというのは皆の意見だったと思うがな。」

「あちらの罠だったんじゃないかという話もあっただろう?」

「それはないな。」

 

ドラゴンは至極冷静にそう告げた。サボはそれに何故、というように首を傾げた。ドラゴンは目の前のそれが全て察しているだろうと、話し合い出した結論を口にした。

 

「・・・大前提で、現在のCP9は政府とは無関係だろう。仮に関係があり、スパンダムが政府側であったのなら奪還のさいに拠点は落ちていただろう。」

 

こつこつとドラゴンは指先で椅子の肘掛けを叩いた。

 

「そうして、スパンダムがスパイでないだろう根拠だ。こちらへの潜入のための前準備としてはデカすぎる。彼女がこちらに拾われたのは本当の偶然だ。そうして、CP9の長である彼女は、こちらにとって貴重な情報源だ。確保しない手はない。」

「だが、記憶喪失は嘘だったのでは?」

「ないな。」

「何故?」

 

ドラゴンはそれに何でも無いことのように言った。

 

「女の嘘程度は見抜けるさ。」

 

それにサボは軽く息を吐いた。

 

「・・・・私情、入ってないか?」

「かもな。」

 

短く返したドラゴンはそれに少しだけ微笑んだ。

 

 

拠点が襲撃されたと聞いて、どれだけの被害が出たのかと思えば。

被害は、軽く、強いて言うのなら新顔である黄昏が攫われたことだった。けれど、それは確かに革命軍に動揺をもたらした。

 

彼女はスパイだったのか?

 

そんな憶測も思考を繰り返せば落ち着き、そうして、結論に至った。

 

ドラゴンは、その、ずっと夢を見るようにぼんやりとした目をした女の激情を覚えている。

それは、怒りに塗れていた。

地獄を見て、そうして、それを産んだ全てを憎む目だった。

けれど、女は、一度も暴力を是としたことは無かった。壊せと言うことも、賞賛もすることは無かった。

 

力によって回る全てをそれは憎んでいた。

 

 

故に、ドラゴンはそれを信じたのだろう。

それのことを、その女のことを。

 

 

 

 

 

「・・・・どう、やって。」

「お前と共にいなくなった子ども、あれの体の一部を使ってビブルカードを作っていたいんだ。」

 

その言葉に、奪還された黄昏を、いいやスパンダムを見つめてドラゴンは静かにそう言った。

それにスパンダムは納得したように脂汗を流しながらベッドに横たわりドラゴンを見つめた。

 

スパンダムの奪還はあっさりと進んだ。

というのも、ドラゴンたちはビブルカード以外にスパンダムの居場所について情報を掴んでいたのだ。

 

スパンダムがよく立ち寄る墓の乱立した島の話は、革命軍もすでに掴んでいたのだ。

けれど、立ち寄るのは不定期であるし、すぐに立ち去ってしまうため手出し自体はしていなかった。

けれど、スパンダムを攫ってすぐに人のいないその島に、人が集まっているという情報が入ったとき。

ドラゴンは彼らがそこに立ち寄るだろうと予想した。

 

(・・・わざと動けば、彼らは見事にそれに嵌まった。)

 

ロブ・ルッチの、スパンダムへの執着は有名だった。彼は、スパンダムをけして手放しはしない。

ならば、考えられるのは二つ。

連れて逃げ出すか、それとも、迎え撃つか。

 

そうして、CP9の彼らは、船を幾つかに分けて、バラバラに逃げ出したのだ。けれど、ドラゴンは彼らの船にスパンダムは乗っていないだろうと予想した。

なぜなら、仮に船に乗せるのなら、革命軍のメンバーをある程度さばける存在で無くてはならない。

けれど、それでは戦力を乗せすぎればばれてしまう。が、戦力を分散させれば目立つ。何よりも、船にスパンダムを乗せてしまえば、己の意思で革命軍に戻る可能性もある。

そういった動きをしてくれるようにわざと情報を流した部分もある。

 

彼らは、島に最低限の人間とスパンダムを置いていったのだ。

出航した船をカモフラージュに。

 

「・・・私と、共にいた、人間は?」

「今は拘束しているが。お前のことを引き合いに出せば、今は大人しくしている。」

「そう、ですか・・・・」

 

今は、丁度スパンダムを回収した船の中だ。

ドラゴンは、人払いした部屋の中で、二人きりでスパンダムと共にいた。

スパンダムは、どうも薬か何かを盛られて意識を失っており、現在も、目の焦点があっていない。

どうも、効き目の強い薬を使ったことと、スパンダム自体に薬への耐性がある程度あったことなが重なり、半端に意識が覚醒している状態であるらしい。

ドラゴンは、スパンダムを確保した当時の女の台詞や、わざわざスパンダムの動きを封じるような態度に理解した。

 

スパンダムは、未だに、記憶戻っていないのだと。

 

「・・・・辛いなら、暫く眠っても構わないぞ。」

 

ドラゴンは、一応は、それに情報を吐かせるという体で立ち会っているが。記憶の戻っていない女に聞き出せることはない。仮に、それが演技の可能性も考え、このまま見張り続ければ良い。

そう考えたが、スパンダムは弱々しい手つきでドラゴンの袖を掴んだ。

 

「ドラ、ゴン、さん・・・」

「どうし・・・」

「あなたは、私が誰か、知っているはずだ・・・・!」

 

まるで、叫ぶようにスパンダムはそう言った。それにドラゴンはスパンダムを見下ろし、そうして、探るように見つめた。

 

「何故、そう思う?」

「今、あなたが、優先すべきなのは、拠点が、襲われた事への対処、の、はずだ!なのに、その、中心であるべきなあなたが!私のために、こんなところまで、やってきた!」

 

ぜえぜえと息を吐きながらスパンダムは隈の目立つ、けれど、ギラギラと輝く目でドラゴンを見る。

 

「私には、あなたにとって!その価値がある人間だったんだろう!教えて、教えてくれ!私が、誰だったのか。」

「・・・・何故、知りたい?」

 

ドラゴンはそう聞いた。

問いかけた理由は、あるようでない。

言って思い出せるとは限らない。そうして、ドラゴンは理解してしまったのだ。

 

「・・・・思い出せと、あいつらは、言った!なあ、どんな顔をしてたと思う?」

まるで、子ども見てえな、顔してるんだよ。

 

そう言った女。

丁寧な、静かな声音など忘れてしまったかのような、荒々しい声音で、それは言った。

今、その女は、忘却故か、それとも生来の気質か。

黙り込み、言うべき言葉を選ぶのではない。内にある全てがむき出しになっているのだと。

 

 

スパンダムという存在の話は有名だった。それは、長官という表立ったものもそうだが、それと同時に裏の方でも有名だった。

特に、癖の強いという話をよく聞くCP9の面々の手綱を握る、歪な顔具を付けた男。

それは、意図的なものか、真実かはわからないが、スパンダムがよく黒い髪をした男を連れているのは有名だった。

 

ドラゴンは、疑問だった。

政府の暗殺者である人間達に慕われる人間は、どんなことで彼らのことをつなぎ止めているのか。

権力による闘争か、政府からの洗脳か、それとももっと違うことなのか。

政府への忠誠というものの高さを作るノウハウは、今後、革命を成功させた後の壁になるだろう。

だから、知りたかったのだ。

いいや、違うのかも知れない。けれど、今はきっとどうでもいい。

けれど、ドラゴンは、スパンダムを確保したときの周りの、護衛であるだろう存在達の言葉を思い出す。

 

止めろ!止めろ!

その人に何かしてみろ!殺してやる!

嫌だ!

私たちのものだ!

 

それは、まるで。

子どものようで。子どものように必死で、むき出しの、感情でそれらは自分たちに手を伸ばしてきていて。

ドラゴンは知りたかった。それは、己の立場のためなのか、もっと違う感情なのか。

 

いや、本当は分かってしまっているのだ。

目の前の存在が、どんな存在なのか。

彼らにとって、それが、どんな存在なのか。

 

スパンダムはぜえぜえと息を吐きながら、袖を握りしめた手を震わせて言った。

 

「ずっと、分かっていた。何もかも、忘れて。それでも、一つだけ。一つだけ、覚えていた。俺は、いつかに、間違えた。子どもに、酷い、約束をした!」

 

スパンダムは目の前の男を見る。

それは、その、目は。

 

とても、悲しそうな、目だった。

 

その女には分からない。

その、哀れみの理由が分からない。けれど、たった一つだけ分かる。

その男は、自分が何かを、知っている。

 

叫ぶ、怒鳴る。

薬でもうとうとした意識の中で、それでも、何か、頭の奥で鮮明に何かが、夕焼けが瞬いている。

 

ずっと、あの島に居続けて、何かが女の心をひっかき続けていたから。

少しずつ、何かが薄れて、境が曖昧になって。

 

守ってあげる。

 

あの、言葉に、無邪気で、とても、愛らしい声で、何かが、女の中で、ひびが入って。

 

「ドラゴン!なあ、革命家、ドラゴン!お前は知っているんだろう!私が、なんなのか!?何者、なのか!」

「何故、そうお前は聞くんだ、黄昏。」

 

ドラゴンの袖を握り、それはベッドの上で膝立ちになった。そうすれば、丁度椅子に座っていたドラゴンと視線が合う。

血走った、殺意や憎悪、ありとあらゆる激情を混じらせた目がドラゴンを見つめる。ドラゴンは、それに問いかけた。

 

「しらねえと、私は、私は・・・」

「黄昏。」

 

ドラゴンは、その女の瞳をそっと手のひらで覆った。

 

「何も、思い出さなくていいんじゃないのか?」

それが、お前を傷つけると。それはお前を壊すのだと。ずっと、お前は知っていた。

 

それに、女は、ゆっくりと、手のひらの下で目を大きく見開いた。

心がひしゃげて、崩れ落ちて、その場に蹲ってしまうような、そんな、感覚がした。

それにドラゴンは、言葉をかける。

 

「過去を知れば、傷つくと知りながら。その苦しみが輪郭を帯び、お前を傷つけると分かりながら。それでも、お前は、知りたいのか。自分が何者かを。」

 

女の体から力が抜ける。

それに、ドラゴンは女の顔から手のひらを放した。

茫然とした瞳から、だらりと、雫が零れた。

うなだれるように、薬によってぼやけた思考で、思い出せもしない過去に苛まれて、のたうち回るその女。

 

もう、いいじゃないかと、そんなことを考えてしまった。

 

 

革命家ドラゴンは、自分が茨の道を行くことを理解していた。

ろくな死に方など期待できないような道だ。

だから、それ相応に残酷なことをしていくのだと思っていた。

 

なのに、こんな、こんなことで哀れみを出すことの愚かさをよくよく理解していた。

 

それが記憶を思い出し、自分たちにとって有利な情報を引き出すこと。それこそが、自分のすべきことなのかも知れない。

けれど、女を確保をしたときの、彼らの言葉。

 

父への懇願、誰かの幸福への祈り、生かしてしまった事への後悔。

 

女のうわごと、その全てで、理解してしまったのだ。

 

彼女は、確かにひどく、とても、残酷なことをしたのだ。

日の光の下を生きられない生き物に、それは、愛を教えてしまったのだ。

 

(・・・・それは、ひどく、残酷だ。)

 

ドラゴンはずるずるベッドの上に蹲る女のことを抱きしめた。

華奢な体だ、弱い、脆い。それは、なんて、この世から守られてしかるべきものだろうか。

 

いいじゃないか。

女は、その、哀れな女は、あろうことかこの世界に暗がりに押しやられ、消費され、誰にも知られることなく消えていく生き物を愛し、そうして、愛されてしまったのだ。

それがどれほどくだらないようなままごとか、ドラゴンにだって分かっている。

けれど、それを罪だと言いたくない。

 

(いや、それだけは、それだけは、言えるはずがない。)

 

必死に、この世の闇の中に消えていくはずだった子どもを抱えて、抱きしめて、守り、泣きじゃくった、世界を憎みながら、世界のシステムの中で生かそうとした女をどうして責められるのだろうか。

それはとても、只の人間には精一杯のあがきで、祈りで、そうして、愛だったはずだ。

 

「・・・・黄昏、思い出さなくていい。お前は、黄昏、それでいいじゃないか。」

 

その言葉はとても残酷だ。

それは、女のしてきたことを、生かされた子どもたちから目をそらさせることだ。

 

赦せなかったから、だから、それを覆したかった、変えたかった。

ドラゴンは、その女の気持ちが痛いほどに、嫌という程に、分かってしまう。

わかる、わかるのだ。

 

きっと、その女は、罪を思い出し、罰を求めるのだろう。

ドラゴンは、その気持ちが分かる。

自分の世界への憎悪によってなされる革命の罪深さを、彼は知っているから。

けれど、それを見て、ドラゴンは、ひどく素朴な祈りを持ってしまった。

 

忘れていてもいいじゃないか。

祈って、願って、そうしてそれを遂げながら女はずっと苦しみ、のたうち回り、罰せられることを望むしかないのなら。

女が、何のためかは分からずとも、それでも必死に行った救いは、その女を苛むだけならば。

ならば、ならば、そうであるのなら。

 

忘れてしまうことは、罪なのだろうか。

 

「・・・・やだ。」

 

掠れた声が、ドラゴンの思考に割り込んだ。ぎちりと、己の背中の服を女は精一杯の力で掴んだ。

 

「たのむ、おねがい、うばわないで・・・・!」

 

掠れた声なのに、なのに、それは、とても強いものだった。

 

「わたしの、ひかりを、どうか・・・・・!」

 

溺れる人間が、海の中で吐くもがく声のように聞こえたその声は、それでも、確かにドラゴンに届いた。

 

「・・・・そうか。」

 

女のうめき声に似た声が聞こえる。ドラゴンは女から体を離した。そうすれば、薬にならされた体のおかげで保っていた意識は、体力切れなのかそのままベッドに横たわる。

 

脂汗を流し、痛むのか、頭を抱えるそれにドラゴンはそっとあやすように撫でた。

 

「・・・・すまない。そうだな。私にも、わかるよ。」

 

それでも、その罪を犯すことは、それでも。

 

(・・・・納得できない、目をそらし続ける自分への、確かな救済だったのなら。)

 

ドラゴンは、その女にそっと囁いた。

 

「・・・・眼を覚ましたその時、話をしよう。」

それまでは、ゆっくりと休むといい。スパンダム。

 

黄昏の瞳が、ゆっくりと見開かれる。

女の中で、何かががしゃんと、壊れた音がした。それと同時に、女の意識は、ゆっくりと闇に沈んでいった。

 

 

「ドラゴンさん!」

 

けたたましく部屋を出た自分に駆け寄ってくる存在に、ドラゴンは顔を向けた。

 

「船が接近しています。」

「・・・・わかった、出迎えよう。」

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