ディストピアゲーの運営側に転生したので、住人全員『幸せ』を義務にする   作:はさん

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準備を始めよう!

 当然ではあるけれども、偵察隊には徒手空拳で戦って貰う訳ではない。

 外の世界にはどのような脅威が待っているか分からない。

 一応原作では管理エリアとの間を移動する事があったが、あくまで過酷で命がけとしか語られなかった。

 ただ、怪獣的な奴がいるみたいな感じの事を言っていたような気がした。

 その時の主人公達の語り口が結構ギャグテイストだったのでそれが本当なのかは分からないけど、今回の場合は命が掛かっているので「いる」と思って行動した方が良いだろう。

 

 という訳で私は偵察隊及び自分が扱う武器を用意しなくてはならない。

 この世界の武器というとビームなサーベルとか光線銃とか割とあったりするし、実際主人公達はそれを使って戦ったりするのだが、残念ですが偵察隊は戦闘に関してはトーシロも良いところなのでそういうあからさまに高威力な武器は扱わせる訳にはいきません。

 誤射誤発が連発しそうで怖いので、ここはもうちょっとアナログなもので妥協しないと。

 とはいえ、あまりアナログ過ぎても駄目だ。

 威力は一定以上確保しないと持っている意味がなくなってしまう訳だし。

 なかなかに難しい問題だ。

 

 一応勿論、私はチート武器を装備するつもりだ。

 死にたくないからね、当然だよね。

 ただ、どのような基準でチートなのかはいろいろ考えどころ。

 原作の高ステータス武器を装備しても扱い辛ければしょうがない訳だし。

 現状考えているのは、軽くて、高レンジで、振りやすいブレード武器。

 こうなってくると自分でオーダーメイドした方が良いような気がしてきたので、結局実際に自分の足で工場に出向いて作って貰いました。

 そんな訳で出来た武器がこちらです。

 武器名『ルミナス』。

 電源を入れると蛍光オレンジのブレードが出てきて、トリガーを引くと光線も飛び出てくるというロマン武器。

 十分実践で通用する事は、実際に外に出てから試してみよう。

 

 ――という訳で、試しに来た。

 

 今日の業務を移動中に終わらせた後、三つのゲートを潜り抜けて外に出る。

 この世界に転生してから初めての外の世界は、割と普通でした。

 鬱蒼とした草原が広がっていて、遠くに普通の動物――あれは、鹿だろうか――が、もすもすと地面に生えている草を食べているのが見える。

 特に環境の所為で巨大化している訳もなし、植物も毒々しい葉っぱをしているとか、そんな事はない。

 とはいえ、そう『見える』だけかもしれない。

 後で幾らか回収して、管理エリアの外にある『研究ラボ』に持ち込もう。

 どちらにせよ、外の世界に出た事で私は『汚染』されているので、しばらくはしっかりと洗浄されたのち、管理スペースで経過観察を行わねばならない。

 ただ、これに関しては大丈夫だと思う。

 危険な病原体とかそういったものはない筈。 

 あったら原作で外の世界を通って移動した経験のある主人公達が大変な目に遭っているし、パンデミックが起きていたと思うし、そういうのがなかったという事は特にそういう危険な存在はない、と思う。

 

 では、この外の世界の何が一体問題なのか。

 人間にとって有害な『汚染』とは何なのか。

 これに関しては、多分だけど「もうない」が答えなんだと思う。

 あるいは、土壌や水はまだ汚れているけど、空気はもう綺麗、とか。

 調べたところ、もう長い間外の世界を偵察したという情報がなかった。

 不必要であり、それ以上に管理エリアを運営するのに精一杯と言った感じだ。

 そんな訳で、ある意味私が一位になってしまった感じだ。

 これは総括のオリジンもやっていない。

 まあ、オリジンの場合はほとんど引き籠っているらしいのでアグレッシブな行動を期待する方がダメな気もするけれども。

 

 ともあれ、私は周囲を観察するべく用心しながら歩を進めてみる事にする。

 既に『ルミナス』の電源は入れてあって、いつでも振り回す事が可能だ。

 そうして前へと進んでいると、前方にある木の群生が、がさりと揺れた。

 なんだなんだと思っていると――果たして『それ』は姿を現した。

 

 『それ』とは、巨大なイノシシだった。

 高さが大体私の身長ほどもあって、立派な牙が生えている。

 真っ黒な体毛は如何にもゴワゴワしていて、触れると手の方がボロボロになってしまいそうだ。

 

 そのイノシシ(?)は私の事を確認するなり、いきなりこちらに向かって体当たりを仕掛けてくる。

 は、っやい……!

 でも、対応出来ないほどではない!

 私は横っ飛びにその体当たりを回避し、すれ違いざまに『ルミナス』のブレードを振るう。

 手ごたえ――あり!

 血しぶきが飛び散り、痛みでイノシシがその場でのたうち回るのを見る。

 とはいえ、致命傷には至っていない。

 あまりにもその身体が大きくて、重要な器官まで刃が通らなかったみたいだ。

 このまま放置しても出血多量で死にそうだけれど、だけどここはしっかり止めを刺しておこう。

 私は『ルミナス』の出力を操作し、刃をより長くする。

 そしてイノシシの身体を「ぶすり」とひと突き。

 その一撃でイノシシは絶命、ぴくぴくと痙攣する姿を見せる。

 

「ふー」

 

 私は『ルミナス』の電源を落とし息を吐く。

 普通の刃だったら血のりを拭いたりしなければならないけど、このエネルギーの刃はそれが不要。

 そういう意味で便利だ、これ。

 掃除が不要でエネルギーが続く限り振り回せる。

 逆に言うとエネルギーがなくなったらただの棒に成り下がるというのも考えどころか。

 注意して使わないと。

 

 とはいえ、これ以上の探索は止めておいた方が良いか。

 なんにせよ「巨大な生き物が存在していた」という情報を持って来れただけでもめっけもん。

 直ちに、帰還しよう。


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