オリンピックの代表として君臨した彼は、友人や孫にも恵まれ幸せこの世を去った。そして彼は青井葦人としてもう一度生を受けた。
彼に強くてニューゲームが訪れる事は無い。世界にやっていたスポーツが無いからだ。
人生を楽しむ為にサッカーを始めた彼が、満足するまでサッカーを続ける物語※続きません
俺は昔、オリンピックで日本に金メダルを齎した天才だ。
いや、それは冗談。オリンピックに出場したってのも金メダル取ったってのも本当だけど、天才ってのは嘘になる。同時期の選手の、天才達のおこぼれに預かって、ちょくちょく足を引っ張りながら優勝させて貰った凡人だった。
エース様の稼いだ点を振り出しに戻しまくった挙句、得意のパスをカットされて勝負が決まっちまった後は練習に身が入らなった。その後らしくもなくエース様がデレてくれちゃって大復活したけど。
俺の諦めの悪さは不死鳥の如く。いや、俺はそんな華々しいプレーヤーではない。どっちかって言うとゾンビに近い。
なんでそんな実力差の激しいメンバーでオリンピックに出場する事になったのかって言うと、中高で絶望的な才能の差を感じてプロを諦めた奴らがダース単位でいたから。
あいつらには勝てなくてとも、日本プロバスケ界でトップになれるような奴らも軒並み辞めた。
まあ俺がどれだけ努力しても、結局あいつらには一生追いつけなかったし、そいつらの気持ちも分からない事でもないけど。やるだけ無駄だよなってなる奴が沢山いるのも仕方ない。
だから日本でプロになったのは、強い奴ってより諦めの悪過ぎる奴らばかりっていう環境だった。
ちなみに天才達は、NBAにさくっと入団して華々しいプロデビューを飾った。
(テーピングのシグネチャーモデル*1にエース様がなった時は爆笑した。それが意外にめっちゃ売れてたから使ってみたら、布の質感というか固定される感じがすげえしっくり来た。さすがに高価なだけある。)
こうやって海外に行きダイヤの原石同士で切磋琢磨した天才と、日本で石ころ同士で研磨した凡人の混合チームが生まれた。
いや、凡人側の選手も今までと比べて弱かった訳じゃないけど、天才と俺達の実力差はさながら自転車と徒歩。その差を分かってて少しでも上を目指す奴らばっかり集まったから、上昇志向だけは半端じゃない。
失点は凡人のミスで、得点は天才の成果。そんな歪な実力差のあるチームだったから、当然
オリンピックに何回か出れたけど、結局あいつらのような活躍は1プレーも出来なかった。
プロ入り前から分かっちゃいたけど、1回だけでも称賛されるプレーってのをしてみたかった。
俺達は最後まで、つまり引退する時まで才能を開花させる事を諦めなかった。天才達とプレーするにはそれなりの努力がいる。俺は凡人だけど、人事を尽くした同士達を蹴落として代表入りしたんだ。下を向いてる訳にはいかない。
俺達日本バスケプロは、代表選手に文句を言う暇があれば、一分でも長く練習して代表枠を取るガッツを見せろってのがスローガンだった。
俺達の世代は、努力して、努力し続けて。天才様との差をミリ単位で詰めていって。そうして代表枠を取っても罵倒ばかり。それでもやる覚悟がある奴だけがプロになる資格を持つ。
どれだけ努力をしたとしても、あいつらと日の丸を背負うには役不足。足手まとい兼穴埋め要員が称賛される筈もない。そんな事、プロになる前から覚悟してたけど。でもそれなら、何でプロになったんだよって色んな人に聞かれた。
そんなの試合が楽しいからに決まってるだろ!
格が違う敵をどうやって引きずり下ろすか。最高のエース様を俺達がどう活かしてやれるか。世界一を目指す奴らとの試合は、何度やっても心臓が破裂するような高揚を覚える。
そもそも日本人は均一的に体格が小さいから大体のスポーツで不利なんで、世界一の奴らと思う存分対戦出来る奴なんて、海外でも活躍できるような極一部の天才だけだ。他の競技のプロは、国旗を背負ってランキング世界一を倒す経験をした事ある奴は殆ど居ないだろうと思う。俺のやってた競技も
でも俺らの世代は金メダルを取れた。要因は明確だった、だって日本には
俺の役割は、天才を輝かせる事。昔ライバルが言ってた言葉を借りるなら、影は光と共にある。つまりエース様が上に登りつめる為の踏み台として、俺は立候補した。
高校に入った当時は、なんで
中学時代うちの学校を公式戦でボコボコにした後、勝って当然雑魚など知るかって顔で優雅に歩いていった恨みが俺の原動力だった。
なんの因果か同じチームになったんだ。それであいつに勝つんじゃなくて、あいつに俺を認めさせるのを目的に変えた。後々考えると、地元で偏差値高くてバスケの強いチームをお互い選んだ訳で、偶然じゃなくて必然だったんだけど。
まあいつしか、エース様を最高に活かしてやる事が俺の生きがいになっていた。天才は努力なんてしなくても強いんだろうって、心のどこかで妬んでた。けど俺達のエースは、凄まじい努力家だ。
地獄の練習の後も対抗心に身を委ねて、最後までまで一緒に居残り練習してる内に俺達はあいつを尊敬するようになっていた。俺はあいつの生き様を体現したような、微かなブレすら無い、キセキみたいなシュートの軌道に魅せられた。
俺はこいつを羽ばたかせる為に存在するんだって、人生の使い道を悟った。
俺は
そんな人外魔境のコートの中を思う存分楽しんで、辛い事も沢山あったけど幸せなまま引退して、オリンピックの監督にも選ばれちゃって(
ってのが前世の俺。
気付いたら「青井和成*2」という少年になりランドセルを背負っていた。まだ金色の帽子を被る小学一年生。最初は困惑したけど、なんか精神年齢とか自動的に下がってたのであっさり適応した。
そしてもう1回人生を生きるなら、俺はもっと強くなれると思ったけど甘かった。バスケが存在しなかったから。
幸せなまま天国へ行かせて欲しかったって一瞬思ったけど、俺のモットーは「人生楽しんだもん勝ち」。くよくよ考えるより今生も全力で楽しもうってサッカーを始めてみてから、のめり込むまでは一瞬だった。バスケをやっていた時程ではないけど楽しい。やっぱり俺にはスポーツが性に合ってる。
ちなみに今生でも天才では無かったが、アシストセンスはそこそこあった。俺は地元のユースに入り、バイプレーヤー*3としてそこそこ名を馳せた。
欲を言えば、アシスト系の俺はもっと強いチームメイトが居ればもっと活躍できただろうし、もし家に金があればもっと強いチームに入れたかも。
けど別に、母さんが悪い訳じゃない。そもそも俺が、強豪チームに所属して下さいと言わせるだけの実力が無いのが悪い。金が無いとか才能が無いとか、そうやって現状を嘆くだけの奴にプロになる資格は無い。それが俺のモットーだ。
俺達のチームは順当に県大会を勝ち抜いて、ギリギリだったけど四国大会への出場を決めて、どうにか全国大会に出たけど一回戦負けだった。
負けは、いつ経験しても悔しい。
元々実力差はあった。相手は激戦区のエリアを制した強豪で、俺達は四国という正直弱いエリアをどうにか勝ち抜いた中堅校。同じ全国大会出場校でも部員全体のレベルが違う。
でも敵に
まあ田舎のチームだし、高校に上がっても全国制覇は無理かも。けど敵に天才が居なければ、全部に勝てるチームを作る。その為に俺は、もっとチームを活かせる何かを学ぶ。
「なあ。そこの君。」
(順当に負けたって言えばそうだけど、やっぱ悔しいな…けど次勝てない程じゃあなかった。俺は、全国でもそこそこ通用するんだ。)
「おい、梅津寺の5番*4。ちょっと聞きたい事あるんだけど。」
気付いて無かったが、俺は観客の一人に話しかけられていた。中学サッカーファンの人かも。俺に話しかけるなんてコアな人だ。俺の活躍は紙一重の微妙な物ばかりで、スター性を示す事をが出来た覚えはない。
とりあえず俺は自校の監督に許可を取った後に、話しかけてきた観客に向かって走る。
今回の反省点と今後の課題を、今の感覚を忘れない内に考えておきたい所だし、負けが悔しくてファンサービス所じゃないんけど。でもファンサービス無しで生きてけるのは、極一部の超天才だけだ。俺は極一部の人間ではない。
まあ弱小チームの選手をわざわざ待ち伏せしてる位だし、もしかしたら強豪チームの監督かも。俺のいぶし銀な実力を評価してくれていたりして。
冗談混じりにそう思い立った直後、すぐさま人受けすると評判のニカッとした笑顔を浮かべ、謎の男*5に近づいた。少しでも推薦の確率を増やす努力は超大事。俺はプロになってもう一度、天才達と日の丸を背負う。
その為に、少しでも強いチームに入る努力をするのは当然。推薦ギリギリの実力だったら、監督からの印象によって合否が決まる。
「はい!なんすか?俺に答えられる事だったら答えますよ!」
話しかけてきた男は、無精髭が生えていたり格好がダサかったりで気付きにくいけど、鍛え上げられた肉体をしている。もしかして、マジで強豪校監督かも。
そう思って見てみると独特の雰囲気を感じる。何というか、得体のしれないというか、只者では無いような雰囲気だ。それに俺は、この人をどこかで見たことある気がする。まあ俺は強豪高校の監督の顔なんて覚えてないし、恐らく気のせいだと思う。人の顔を覚えるのは自信あるんだけど。いや、やっぱり見たことがある気が。
「今日の試合、お前のチームは0-1で負けた。この点差で済んだのはお前のインターセプト*6成功率によるものが大きい。
特に眼を見張るのは、前半のこの場面…お前ら梅津寺のドン引き*7に対し敵が中央突破からのサイド攻撃を選択した18分。唐突にお前は、フィニッシュゾーン*8の死守を放棄して敵サイドをインターセプトした。」
あの場面を聞いてくるのか。たしかに俺もあの場面はヒヤッとした。ゴール目前で敵10番*9に味方を振り切った上で突破されかけて、9番*10もその横で虎視眈々とゴールを狙ってやがった。
つまり俺がポジションの中央を守っているだけじゃ右側が突破されるし、守備を引いて立て直したくても既にゴール目前。オマケに混戦状態だし味方の守備も手薄。立て直す余裕も無かったし、これは点入れられると思った。
「一見破れかぶれの選択*11に見えるが、お前にとってはそうじゃないだろうな。現に諸刃の剣に見えるポジション放棄した上でのインターセプトを、お前は何度も成功させている。
お前はこの場面、何を考えていた?」
この男性、かなり試合を詳しく観察している。物見遊山の観客は俺のプレーを見て、ほぼ確実に俺が捨て鉢になった上での特攻だと思うだろう。
守備を統率する*12俺が、指示も出さずに敵エースをフリーにして、ボールを持っていない所で何故かカットを狙いに行ったんだから当然。右ニアゾーン*13にいる敵9番*14が、味方を振り切りかけているから行った苦肉の策だった。
まあ試合を諦めた訳では断じて無いので、破れかぶれの突撃と言われるのは心外だ。けどホークアイ*15を持つ俺も、瀬戸際になってようやく気付たせいで、味方にまともな指示すら出せなかった。全国屈指レベルの思考力を持っていないと、試合終了後ですら俺のカットの狙いに気付かない。
まあそもそも俺が読みを外した瞬間得点される苦渋の決断だったので、破れかぶれと言われても反論しにくい。
「あっ、その場面ですか!敵10番と9番辺りを見て、多分右サイドの9番からシュートする気だろうなって思ったんすよ!
けど指示出しする時間が無かったので、自力でカット出来る可能性に掛けました。もう少し前に気付いてたら7番にカットお願い出来たんですけど。」
「なるほどね…ただこの時、ゴール目前に敵10番へのマークが外れてお前1人の状況だった訳だ。彼はそのままシュートしても入る距離だったし、君を抜いてシュートしても良かった。
どうしてそこで、彼がパスを選択すると気付いた?抽象的な感覚でも良い。*16なんでそこで、ゴールを離れるリスクを取った?」
この人は選手の立場にたって試合を見れてる。読みを外したら即失点の場面で、俺が博打を仕掛けた訳じゃないって気付いたんだ。
他にも俺が最善を尽くした試合運び、つまり俺を目立たせる動きをしてない事に気付いた上で、抽象的な感覚すら訪ねて来たって訳だ。どう見ても素人じゃない。
この人に関心を持たれれば、マジで強豪校の推薦を貰えるかもしれない。イコールここが俺の正念場。
この人の裁量によっては、支援金込みで強豪校に入学させて貰える可能性もある。少しでも印象を良くしたいけど、彼に嘘は通じない。だから俺の考えを、感覚を少しでも理解してもらう事がベストだと直感した。
「……敵10番がボールホルダー*17として前線に突入したので、中央から強行突破をしてくるかなって判断してました。
うちの3番の密着マークを外して強行突破に成功した10番がフィニッシュゾーンに来た時、当然シュートして来るかと思ったんすけどね。
一瞬、彼の身体が少し右向いているのがみえて。8番と3番*18もよく見ると、俺達を中央に誘導してきた*19んすよ。だからこれは右側から攻める気だなって直感しました。
それで、10番が右側の9番とアイコンタクトして味方守備陣も内側に傾きつつあるのが見えたんすよ。*20でももう指示が間に合わなねぇし、咄嗟にインターセプト*21を選択したんです。
俺の足でもギリギリの位置だったし*22上に、10番が普通にシュートしてくるかも*23賭けだったんですけど…どうにか勝ちました。*24」
偽予告
「…久しぶりだな。唐突な再開にも関わらず、随分と口が回ることだ。お前とサッカーをすることになるとはな、流石に想定していなかったのだよ。」
「とーぜん、俺は受かる気だし。晴ちゃんの相棒はこの俺、青井和成だからな。」
「だから青井はダメなのだ。奴には天賦の才能がある…だからアイツは、世界一のMFになる義務があるのだよ。」
「俺はコートの全部を把握して…晴ちゃんに最高のパスを出すよ。」
「これがゾーン………今の俺には、全てが分かる。」
「俺にはサッカーしかねぇんだ。……だから、お前にも絶対負けない。」
今回の敵は主将兼エース
主人公の能力をちゃんと書こうとするの凄く難しかったです。
注釈が邪魔なので、下に出ないようにしたかったんですけど出来ませんでした。
タグ等もミスがあったらすみません。
スポーツ漫画の二次創作を皆さん書いて下さい!アオアシ、ハイキュー、スラムダンク、黒子のバスケ、DAYS…色々読みたいです。