モンスターハンター:サンライズ・ブレイカー   作:ディヴァ子

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ウツシ教官、アンタって奴ハ……マジでMな奴があるカァ!

※盟友クエストにてウツシ教官を出来心で攻撃してしまったハンターの感想。


故郷へ還れ!

 陰々滅々、のくたーん 

 藪から(ぼーん)に大仰天

 「ただの野晒し案ずるなかれ」と

 油断禁物、化け髑髏 

 下に下に、頭が高い

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 ここは「大社跡」。

 盛者必衰の理を現わした、夢の跡地。

 かつて栄えた文明や魑魅魍魎が、大いなる神々に弄ばれた結果、その名残が苔生し土に埋もれた、自然溢れる緑の大地。

 生息する生物は様々だが、どれも皆大きく、活き活きと生を営んでいる。

 

『キチチチチ……プキャアアアアッ!』

 

 そんな中、見掛けぬ姿をしたモンスターが1匹。

 一見すると、巨大なモノブロスの骸骨に思えるが、実際には“ヤド”に過ぎず、本体はその裏側で“盾”を構えている。

 かの者は“一本角の盾大名”――――――ダイミョウザザミ。

 甲殻種の1匹で、別名通りに盾の如く肥大化した鋏を持つ赤い蟹型のモンスターで、背中の弱点をモノブロスの頭骨でカバーしているのが特徴。温厚な性格で普段は大人しいが、いざ戦闘になれば、蟹の癖に縦横無尽に駆け回り、突然ジャンプしたり、盾鋏でぶん殴ったり、口から水流を撒き散らしたりと、意外な程にアグレッシブで芸達者なモンスターである。

 そんな盾蟹だが、本来は大社跡には生息しておらず、最近になって急に出没するようになったという。

 

「見付けた」

 

 その外来生物と対峙するは、製鉄と戦闘の郷……「カムラの里」からやって来た、“猛き焔”。かつて百竜夜行を駆け巡り、その元凶たる風神龍と雷神龍を討伐した、里が誇る英雄様だ。

 武器は片手剣。百竜の淵源にて共に戦った、“第2の猛き焔”より託された一振り。破壊と復讐の化身「啼鏖魔焔(だいおうまえん)」の素材を活かした究極の武具である。その一閃は敵に永劫の苦しみを与え、その一撃は相手に絶望と破滅を齎すという。

 ……具体的に言うと、剣には「毒」と「麻痺」の状態異常が乗り、盾にはスタン値に加えて「爆破属性」が蓄積するようになっている。

 防具の方は「体力回復UP」「回復速度UP」「スタミナ急速回復」などの回復系、「毒属性強化」「麻痺属性強化」「爆破属性強化」と言った攻撃的スキルが乗るが、何故か頭装備で「キノコ大好き」が付いて来るのが特徴。見た目は鏖魔シリーズに近い悪魔然とした物で、とても日の下を歩くような恰好ではない。

 しかし、彼はこれを敢えて着るようにしている。“彼女”からの厚意を無駄にせず、何時も“彼女”を想っている為に。

 

「狩猟を開始する!」『張り切って行くミャ!』『ガルガルゥ!』

『プシャシャシャァアアアアアッ!』

 

 さぁ、一狩り行こうぜ!

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「見事だったぞ、愛弟子よ!」

 

 全てが一瞬で終わった狩場に、颯爽と1人の男が着地する。筋肉質ながら線は細く、整った顔立ちは幾多の道行く女性を振り向かせる事だろう。防具はジンオウガとナルガクルガをメインに様々な素材を組み合わせた独自の物で、“ジンオウガ風味の忍者”といった感じのデザインである。

 

「ウツシ教官……」

 

 彼の名はウツシ。新人ハンターの育成を務める教官にして、カムラの里でも随一の隠密でもある男だ。ついでに猛き焔たちの師匠でもある。

 

「今頃来たんですか?」

 

 まぁ、あまり好かれてはいないのだが。

 

「う~ん、相変わらずつれないねぇ♪」

 

 ウツシから言わせれば、「それが良い」のだけれど。

 

「それにしても、ダイミョウザザミか。以前、水没林に居るのを見掛けた事は有るが、まさか里の近くにまで進出して来るとはね」

「確かにそうですね。それに、この傷は……イブシマキヒコとも、ナルハタタヒメとも違う。ましてや悪しき赫耀でもなければ、闇黒螳螂でもない。一体何なんでしょう?」

 

 だが、そこは長年の付き合い。おふざけもそこそこに、骸の検分を推し進めていく。何故なら、彼らが今まで目にして来た、禍群の元凶たちとは全く異なる、不可思議な傷跡を見付けたからだ。

 1つは凍て付いた引っ掻き傷。これは氷結系のモンスターの仕業だろうが、カムラの里に棲息するモンスターではここまで鋭利な傷は付けられない。どちらかと言うと牙竜種の爪撃に近いのだが、もちろん氷属性の牙竜種もここには居ない。

 もう1つは何かに噛み付かれ、吸い上げられたかのような化膿傷。丁度フルフルベビーの噛み傷に似ているものの、毒に侵されたような痕跡もある。

 これらは一体、何を意味しているのだろうか。里の外から、新たな脅威が訪れたのか、それとも……。

 と、その時。

 

 

 ――――――ブゥウン!

 

 

『ギザミィ!』

「危ない!」「ハァン♪」

 

 竹林の中からショウグンギザミが投げ入られ、ウツシ教官ごとダイミョウザザミを吹き飛ばした。合掌。

 

『コォルルルルル……!』

 

 さらに、それを実行したであろう、牙竜種のモンスターが1頭、混沌のエリア1に躍り出る。

 ジンオウガと同じく狼のような姿をしているが、こちらはオドガロンと同じく細身であり、真っ青な甲殻に白雪色の突起が毛並みの如く生えた、“鋭利な美しさ”を持っている。

 そして、口や甲殻の隙間から流れ出る冷気が、このモンスターがダイミョウザザミに癒えぬ傷を負わせた1体である事を物語っていた。

 

「何だこいつは……?」『知らないモンスターですミャ!』『ワンワン!』

 

 むろん、こんな奴は知らない。少なくとも、このトリオは。

 

「こいつはまさか……」

 

 ウツシ教官は何か知っているようだが……それを愛弟子に伝えられるような時間は無かった。

 

『カォオオオオオン!』

 

 問答無用でモンスターが襲い掛かって来たからだ。迎撃の構えを取る猛き焔。

 

「はぁ!」『クォッ!?』

 

 しかし、両者が刃を交える前に、盛大な横槍が入る。真紅に金色の紋章が描かれた、燦然と輝く美しき盾が、モンスターの横面をぶん殴ったのである。

 

「………………」

 

 さらに、猛き焔の前に舞い降りる、凛とした女騎士が1人。

 

「探したぞ、ルナガロン! お前は故郷へ還れ!」

『カォオオオオオオオオ!』

 

 そして、彼女の登場こそが、カムラの里が勝ち取った、束の間の安寧が終わりを迎えた事を、深々と告げて来るのであった……。




◆ルナガロン

 とある王国を脅かす「王域三公」の1つに数えられる、牙竜種のモンスター。別名は「氷狼竜」、異名は「月光賛歌」。
 ジンオウガと同じく狼型の牙竜種ではあるが、トビカガチやオドガロンのような細身であり、高速戦闘を得意としている。
 腹部に冷却器官を持ち、取り込んだ空気をここで冷やす事により、身体に氷を纏う事が出来る。この状態の時は牙竜種では珍しい二足歩行となり、自由となった前脚の鋭い氷爪で全てを切り裂く苛烈な攻撃を仕掛けて来るが、逆に氷纏い部分は脆く弱点となっていて、衝撃で砕けるとダウンしてしまう。
 本来はとある王国周辺にしか生息していないモンスターだが、種としてのポテンシャルは高く、かつてのジンオウガの如く、移動した先でも旺盛に繁殖している。
 ……公開された子育ての様子を見たハンター諸氏は、彼らが狩り辛くなったかもしれない。
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