漏れ出でる光は微かに
闇の中、彷徨は続く
地を踏み締め、歩みは止む事なく
その身の全てを研ぎ澄まし
いよいよだ。雲を分け月は姿を表し
地を、山を、銀光が降り注ぐ
躍り、駆け出し、湧き出でる力に震え
歓喜の咆哮に、真なる姿を曝け出す……!
◆◆◆◆◆◆
「……調子はどうだい?」
「とりあえず、薬は飲んだから、じきに良くなるだろう。……苦労を掛けるな」
「別に構わないさ。仲間だろ?」
てくてくてく。
「それはそれとして、ルーチカ。別に静かにやれとは言わないが、少しは考えて突っ込め。そんな事では、倒せる相手に付け入れられるぞ」
「すいません、狩場に来ると、どうしてもこう……漲って来まして」
「まぁ、無理のない程度に意識はしてくれ」
てふてふてふ。
「そう言えば、さっきのハンターの事は良いのか?」
「別に良いさ。知り合いかとも思ったが……その時は、いずれ会う事になるだろうし」
「そうか……」
てんてんてん、と。
「おっ、ここがそうか」
「そうだ。ここが“凍て付きの洞窟”だ」
そんなこんなで、ゆうた装備の人と分かれて数分後、凍て付きの洞窟にて。
「居たぞ……ルナアーラ」
「惜しい」
いや、ポケモンなんよ、それは。タイプも棲み処も真逆だし。
つーかお前、1回遭ってるだろ。忘れっぽいんか?
「奴のせいで、多くの騎士が犠牲となった……」
ルナガロンは強大で凶暴なモンスターである。同じ王域三公と言えど、ガランゴルムのような優しさは微塵も無く、慈悲など望むべくもない。
彼らは何処までも無慈悲で、奢る事も油断する事も無く、確実に獲物を仕留める狩人なのだ。
故に件の縄張り拡大の際、食い止めようとした騎士の多くが返り討ちに遭い、結果的にルナガロンの生息域が大社跡まで達してしまった。フィオレーネにとっては、まさしく仇敵であり、雪辱を果たすべき相手なのである。
だが、俺にとっては追憶の悲哀にしか過ぎない。命を捨ててまで勝ちを取りに行く気は無いし、いざとなれば戦略的撤退も辞さないつもりでいる。
……使命感のまま死に急ぎそうだからな、フィオレーネさん。
悔しいのは分かるけど、貴女が死んだら悲しむ人は結構居るのよ。チッチェ姫とかね。むろん、俺だって悲しい。道連れだもん。
「――――――大社跡での借りを返すぞ!」
「了解した!」
「さぁ、今度こそ蜂の巣にするわよ!」
だから、俺はこいつらと挑むのだ。生きて、エルガドへ戻る為に。
……という事で、後は頑張って下さーい。粉塵とか閃光玉とかはやるんで、思い切り頼んまーす。
『ウォオオオオオオオン!』
俺たちを察知したルナガロンが、大きな遠吠えを上げる。ジンオウガのそれと違い、バインドボイスに分類される為、きちんと防がないと暫し動きを拘束される……が、流石に引っ掛かるような奴らじゃないか。
「はぁっ! とぅっ! せぇい!」
「来た来た来たキタァアアアッ!」
滅・昇竜撃とタックルで咆哮をやり過ごしたザギとルーチカが、遠慮容赦なく袋叩きにした。ザギの武器は言うまでも無いとして、ルーチカの「王国騎士重弩プライド」に関しては未だに本領を発揮していないので、今回が初お披露目となる。
王国騎士重弩プライドは、斬裂弾や徹甲榴弾こそ使えないが、全属性の貫通弾を装填出来る優れ物である。防御力ボーナスのおかげで生存性も高く、馬鹿みたいに暴れ撃ちさえしなければ、古龍級生物にすら対抗出来る。
「アーッハッハッハッハッ! 悉くを滅ぼしてやるわよ!」
まぁ、それをやっちゃうのがルーチカという女なのだが。適正な弾を選ぶ頭はあるようだが、撃つ事に喜びを見出すバーサーカーだし、何よりさっきまでの会話をまるで覚えていないようだから、期待するだけ無駄かもしれない。
それよりも、ヘビィボウガンらしい大火力の弾幕を囮に、俺たちが陰からサポートしてやる方が良いのは、ゴシャハギ戦で痛い程に思い知っている。何とかとハサミは使い様なのよ。
だから、頼むぞ、ザギ。勝利の鍵は、お前の姑息な手腕に掛かっているのだ。
「ほい」『キャィイイン!?』
ほーら、ちゃっかり拾ってたシビレガスガエルを早速使ってるよ。一旦間を置いてから落とし穴とシビレ罠も設置しているし、こりゃあルナガロンは暫く動けないな。
というか、よくもまぁ、あの弾幕の中で作業が出来るな、あいつ。それどころかルナガロンを盾に弾を防いで、大タル爆弾Gと風車のコンボ攻撃仕掛けるとか、頭がおかしいんじゃなかろうか。流石は猛き焔と言っておく。言うだけなら只だし。
だが、これで大分ダメージを稼げたな。俺の後方支援でステータスも上がってるし、最低でも体力の3割くらいは削れているだろう。
つまり、ここからが本番という事である。
『グヴォオオオオオオオオオン!』
開始早々に嵌められまくったせいか、拘束から抜け出すと同時に怒り状態となり、色々な段階を吹っ飛ばして全身の至る所に氷衣を纏い、氷刃の鈎爪を生成した。最初からクライマックスだ。
『グヴォルゥッ!』「ハァン♪」
と、いきなりバク宙しながら両爪で抉じ開けるような動作でルーチカを切り裂き、吹っ飛ばすルナガロン。何じゃありゃ!?
「やってくれるじゃない! ぶち殺してやるわ!」
しかし、頑丈さが取り柄のルーチカが、それしきの事で力尽きたりはせず、彼女もまた怒り状態となる。こうなったら、もうどうにも止まらない~♪
……マジで頼むぞザギぃっ!
『クォオオ――――――「バルス」……カォオッ!?』
よし、閃光玉で目を晦ませたか! 本来は俺の役目だけど、ナイス判断!
「オラオラオラ、オラオッ!」『ギャヴォァッ!?』
しかも、ハードバッシュとバッ旋でスタンも取った。今の内に、叩き込めぇっ!
「ハイヤァアアアアッ!」『コァッ!?』
良いぞ良いぞ、ルーチカの弾幕で氷衣が砕けたな。これで大ダウンが発生し、更なる攻撃のチャンスとなる。このまま一気に、やーっておしまい!
――――――ドドドドドドドドドドッ!
だが、トドメの処刑ラッシュを決めようとした、まさにその時。突如として猛烈な地震が発生し、全員の足を取る。耐震スキルを積んでいたとしても、流石にこの震度は防げない。
『グルルルル……ゴァッ!』
「ぐぉっ!?」「きゃ~ん♪」
すると、その隙を逃さず見事な体幹で跳ね起きたルナガロンが、尻尾の一振りでザギたちを薙ぎ払い、すぐさま凍て付きの洞窟を脱出していった。
「クソッ、追うぞ!」「分かってる!」「逃がさないわよ!」
狩りはまだ、始まったばかり……。
◆大穴
現大陸のそこかしこに開けられた、謎の崩落。特に王国周辺に多く、昔は「サン」という名で呼ばれていた。
予兆として地震が頻発し、次いでモンスターの狂暴化や疫病の蔓延など、異常な現象が発生するという。
穴の近くでメル・ゼナが目撃される為、王国観測所としてはかの古龍が全ての元凶と睨んでいるが……。