おいらの名前は「スピー」。流離いのアイルーだニャ。
文字通り世界中を旅して来てるけど、此度に訪れたエルガドという拠点は、目新しい物が多くて中々に面白い所だニャ。住んでいる人々も個性的だけど良い人ばかりだし、居心地も結構なお点前だしで、元々は長居する気は無かったけど、最近はもう少し居座っても良いかと思い始めてるニャ。
「チッチェちゃん」
「は、はい!」
「俺は君を当てにしていない。だから、絶対にガルクから降りず、常に逃げ回ってるように」
「は、はい……」
だから、今回の“薬師タドリを捜索せよ”というクエストに付いて来た、チッチェ姫にザギさんが突然要らない子扱いしたのは驚いたニャ。
『おい、あんまり女の子を苛めるもんじゃないみゃ』
「ナベシマちゃん……」
『こんな雑魚でも、粉塵撒く事ぐらいは出来るみゃ』
「DAKARA~!」
何時もは優しい、ザギさんのオトモアイルーであるナベシマさんまで罵倒しているニャ。
まぁ、謂わんとしている事は分かっているニャ。
――――――テロス密林。様々なモンスターが蔓延る陸の孤島にして、汽水湖に浮かぶ小島。
基本的に水棲モンスターや飛竜が多く、かなりの危険地帯だけど、その分自然の恵みを享受できる緑の楽園でもあり、特に卵運搬が非常に簡単なので、意外と人気のフィールドニャ。
そんなハンター御用達の穴場に、受付嬢のチッチェ姫が居る事自体、おかしな話だニャ。武器に至っては「にゃんにゃんぼう改」という、どちらかと言うとアイルーが使うような物を担いで来てるし。
しかし、チッチェ姫も相応の覚悟と意志を持って、ここまでやって来たニャ。
装備も何時もの「シャリテ」衣装ではなく、補助向きの「セイラー」と「サージュ」のキメラ装備(セイラーフード、セイラースーツ、サージュアーム、セイラーコイル、サージュブーツ)を着込んでるし、きちんと生き残るつもりで訪れてるんだニャ。
『止めるニャ! チッチェ姫も相応の意志と覚悟を持って来たんだから、それ以上は失礼だニャ!』
だから、おいらは怒り心頭で、2人を窘めたニャ。ルーチカさんも何か言いた気だったけど、どうせ似たような事だから、勢いで黙らせたニャ。
チッチェ姫は何時もおいらと遊んでくれる、とても優しく可憐な王女様ニャ。そんな彼女を苛めるのは、絶対に許さないニャー!
「あっそう。なら、探索はそっちに任せるわ。行くぞ、ナベシマ。頼むぞ、ナベリウス」『了解みゃー』『ガヴガウ!』
だが、ザギさんは特に堪える事も気にする事もなく、さっさと行ってしまった。あの人、狩場じゃ割と冷たい人なのかニャ?
……いや、あれは怒ってるんだニャ。こんな場所にチッチェ姫が居る事も、誰も彼女を止められなかった事についても。流石にちょっと罪悪感だニャ。
「さぁ、この狩場を支配するわよ!」
「ルーチカ!?」『えぇ……』
お前は豹変し過ぎなんよ。
「フハハハハハハハッ! 全ての敵を粉砕・玉砕・大喝采するわよ! さぁ、タドリは何処!?」
おい、目的を忘れてないかニャ!?
「見果てぬ未来へ向かって脱出するぅ!」
「ああ……」『行ってしまったニャ……』
そして、さっきまで憂いを帯びていた顔をトンデモない狂気に歪め、オトモガルク(名前は「ブリュンヒルデ」)を駆り、密林の奥地へ爆速ダッシュで行ってしまった。
嗚呼、おいらたちの知るルーチカさんは、もう居ないんだニャ……。
しかし、これはある意味でチャンスだニャ。ここでチッチェ姫に良い所を見せれば、もっともっと遊んでくれるようになる筈ニャ!
「――――――とりあえず、ライゼクスはザギさんたちに任せて、わたしたちはタドリさんを探しましょうか」
『そうですニャー』
そう言えば、このクエスト、本来の狩猟対象は電竜「ライゼクス」だったニャ。リオレウスのライバルである千刃竜「セルレギオス」とも肩を並べる“雷の反逆者”――――――どれ程の物か、絶対に確かめたくないニャ。セルレギオスには昔、かなり痛い目に遭わされたから、きっとライゼクスもロクな事にならないニャー。
『バリバリダーァッ!』
「狩猟を開始するッ!」「居たぞぉおおおおおっ!」
おっと、早速エリア2の辺りでザギさんたちがライゼクスと交戦してるようだニャ。おいらたちは、反対側を迂回するかニャー。
『とりあえず、サブキャンプに跳ぶニャー』「はい!」
とは言え、採取目的で訪れているであろうタドリを探すには、上から攻めて行った方が良さそうだニャ。何とかは高い所に居るって言うし。
「……ビックリしました! これが“ファストトラベル”なんですね!」
初めてのファストトラベルに興奮するチッチェ姫、可愛いニャー。途中で上げてた悲鳴も素晴らしいニャー。
『さて……』
タドリとやらは、何処に居るのかニャ~?
情報によれば彼は竜人族らしいから、見ればすぐに分かるだろうけど……どうしよう、その辺の道草を食ってるような野蛮人だったら。
流石にそれは無いかニャー。
「奇麗な所ですね!」
ソウソウ草の群生地を見渡しながら、チッチェ姫がパァッと笑みを浮かべたニャ。フィオレーネさんが死んだ(と思ったけど瀕死だった)からか、ずーっと悲しい表情ばかりだったけど、やっぱり開放感のある場所に来たおかげで、少しは辛さを忘れられたのかニャー?
「あ、ヒトダマドリがいっぱい!」
『ニャニャニャニャー!』
飛んでる奴らを見ると、ついつい弄りたくなるんだニャー!
……落ち着け、スピー。おいらは薬師のタドリ氏を探しに来たのであって、チッチェ姫と密林デートしに来た訳じゃないのニャ。半分くらいそのつもりだったのは内緒。
『でも、何処にも居ないニャー』
だが、肝心のタドリ氏が見付からないニャ。
テロス密林って割と狭い筈なのに、全然見当たらないって事は……やっぱり、下層をうろついてるのかニャー。
「仕方ありませんね。危険ではありますが、下に降りましょう」『そうだニャー』
という事で、おいらたちはスルスルと蔦を下り、エリア5に到達したのだが、
『ギャヴォギャヴォッ!』『グギャーッ!』『ギギギギギ!』
突然、ランポスの群れに襲われた。
『舐めるなニャーッ!』
『『『ギェーッ!?』』』
しかし、大して苦労せずに撃破。
こちとら何年もニャンターやってんだニャ。今更ライゼクスの餌如きに負ける程、弱くは無いんだニャ。あのガンナーさんも、そう言ってくれる筈だニャ。
「頑張って下さい!」『フニャハハハハハッ!』
さらに、この支援である。チッチェ姫の粉塵は、マタタビなんかより、もっとずっと昂揚させてくれるんだニャー!
『カンカンタロス!』『カンタロォォォス!』
『邪魔だニャ、カンタロス共!』
この文字通りのお邪魔虫め!
『おニャ!?』「スピーさん!」
カンタロスは難なく退治したものの、間違えて足を滑らせて、エリア6の洞窟に転げ落ちてしまったニャ。
『ZZZzzz……』
その上、そこには巨大な飛竜が眠っていて、
『あ』「あ」
『………………!』
おいらの武器がヒュンヒュンストンと上手い事、その飛竜の鼻穴に突き刺さり、
『スピルァアアアアアアアアアアッ!』
見事に目を覚まさせてしまったニャ。
棘のような甲殻に身を包んだ、1本角の大型飛竜――――――棘竜「エスピナス」だニャ!
あいつは毒と麻痺の成分を含んだ炎ブレスを吐き散らかし、動けなくなった所へ突進を決めて来る、危険極まりないモンスターだニャ!
「逃げて下さい!」
チッチェ姫が閃光玉を使おうとしてくれているが、慣れていないからか、取り出すのに手間取っている。
嗚呼……これは無理ィ!
――――――と、その時。
「リバースカード、オープン!」
何か力強い声が聞こえて来て、別方向から閃光玉が投げ込まれ、誰かがおいらを抱え、一瞬にして戦線離脱したニャ。
この素早い身の熟し……まさか!?
『あの、アナタは……?』
「――――――ここまで来れば大丈夫ですね。申し遅れました。私はタドリ。旅の薬師です」
やっぱりだったー!
こうして、おいらたちは割とアッサリ、タドリ氏と出会えたのニャ……。
◆エスピナス
「棘竜」の別名を持つ、大型の飛竜種。見た目もそのまんま、棘のような甲殻に覆われた飛竜って感じである。
基本的な骨格はリオレウスに近いが、やってる事はブレスを吐く以外はディアブロスに近いパワータイプ。
しかし、ただの脳筋という訳でもなく、毒と麻痺の成分を含んだ炎ブレスで動きを封じ、そこに止めを刺しに行くという、見た目とは裏腹にコンボを重視したモンスターでもある。
また、狂暴そうな外見をしているが、実際のこいつは能天気で図太い性格で、大抵は堂々と熟睡して登場し、弱い攻撃程度では目を覚まさない。これは硬い甲殻を有しているからで、彼らの祖先は一般モンスターでありながら、クシャルダオラともタメを張れたという。
さらに、怒ると今までの呑気さが一転し、前述のトリプルコンボブレスを撒き散らし、MRの防具でも容赦なくHPを削る超攻撃力の突進で、こちらを全力で狩りに来る。