深き深緑~、苔生す奥地~
――――――ベベン!
清水流るる避暑地と、
――――――ベベベン!
落つる雷~、死天の霹靂~
それは凶声、叛逆の雷~
――――――ベンベンベンベンベンベン!
次はお前じゃ、哀れな供物よ~
……演者:NAKIME
◆◆◆◆◆◆
やぁ、皆!
俺の名前はウツシ!
カムラで教官を務める、ナイスGUYだ!
ちなみに、裏では
まぁ、ようするに陰に日向にカムラの里の治安を守っているって事さ。モンスターの脅威は愛弟子たちに任せっきりになりがちだけどねー。
そんな俺だけど、最近は1番の愛弟子であるザギに付いて来る形でエルガドに滞在している。ついでに王国側の動向調査もしてるから、割と忙しい身だ。今の所、カムラの里に対して強硬的な態度を取って無いし、ロンディーネさんの言う通り、大丈夫だとは思うけど、何事にも保険は要るからさ。誰にも内緒にしてるけど。
さて、ザギくんと共にこちらに来てから数ヵ月は経つが、彼の活躍は目覚ましい物があるね。王域三公とは交戦済みだし、謎の生物キュリアによる事件も少しずつではあるけど、解決しつつある。
しかし、良い事ばかりではない。つい先日、ロンディーネさんの姉である筆頭騎士のフィオレーネさんが、メル・ゼナに打ち込まれた毒により倒れてしまった。
そして、ザギたちは彼女を救うべく、それを成し得る薬師タドリ氏を探しに、密林へ来ている。
……で、俺も来ている。こっそりとね。
というのも、ガレアス提督から直々にお願いされたんだよ、「チッチェ姫を頼む」ってね。
そう、今回のクエストには、受付嬢である筈のチッチェ姫が、周囲の反対をゴリ押しで跳ね除けて参加している。彼女とフィオレーネさんは本当の姉妹のように仲が良いとの事で、居ても経ってもいられなかったのだろうが、中々に無茶をする。そういうのは、ウケツケジョーくんだけで良いのよ。あの子、普通にハンターとしてもやって行けるから。
それから、雑貨屋のオボロさんにも護衛を頼まれていたりする。あの人、チッチェ姫の守り手だからね。ただし、秘密裏に行っているので、クエストまでは同行出来ず(というか普通は想定してない)、仕方なく同じ隠密である俺にお願いね、って訳だ。
皆素直じゃないなー。愛が有るなら、正面からぶつければ良いのに。そうすれば殴って貰えて、一石二鳥だよ?
――――――とまぁ、冗談はこれぐらいにして。
「……あれがタドリ氏か」
幸運のスキルでも発動しているのか、チッチェ姫が割とあっさりタドリ氏を見付けてしまったので、俺の仕事も半ば終わったも同然である。
ならば、こちらに意識を向けつつ、愛弟子たちの活躍も観るとしよう!
『バリリリリリッ!』
エリア3の浅瀬広場にて、エリア2から移動した電竜ライゼクスが咆哮する。
鈍い金色の甲殻に蛍火色の翼膜及び発光器官を持つ大型の飛竜種で、鳥らしい鶏冠に蟲を思わせる後脚や尻尾と、飛竜種と甲虫種(もしくは甲殻種)を融合させたような姿をしている。「電竜」という別名の通り、強力な放電攻撃を得意とし、特に強力な個体は電磁場まで操るようになるという。
今回の個体は歴戦の猛者のようで、既に電荷の一部が青電化し始めている。このまま生き延びれば、新たな「青電主」となるかもしれない。
……ま、ザギが居る限り、それは無理だろうけどね。
『ギャリリリリ、バリバリダァッ!』
「フッ! はぁっ! とぉるぁっ!」
ライゼクスの翼で打つ攻撃と尻尾ぶん回しをヒラヒラと躱し、尾先からの放電攻撃を横にバックステップで回避して、鋭い溜め斬りからの空中コンボをお見舞いする。
「お前も蝋人形にしてやろうかぁ!」
同伴のルーチカさんも良い味だしてる。キャロライナーリーパーくらいの辛みを。……こんな人だっけ?
『ギィグァヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ!』
あ、怒った。ライゼクスは元々凶暴な種族だから、怒るのも早いな。一部が青み掛かった浅緑色に輝く爪や鶏冠に尻尾、虹色にスクロール点滅する翼膜と、見た目だけは美しいのにねぇ。
『ギガガガガガガガガッ!』
「危ねぇ! ……フンッ!」
おっと、必殺のライトニングブレードを躱して、しかも反撃までするか。
ただ、タイミング的には滅・昇竜撃の使い時かとも思ったんだけど。
うーん、滅・昇竜撃の使い方は、悔しいがフィオレーネさんの方が上手だな。回避や道具の使い方はザギが上手いけど。
『バリバリッシュゥゥッ!』
「甘いぞ! 滅・昇竜撃!」
『ゴギャアアアアアアッ!?』
……前言撤回。割と同レベルだわ。あんなグルグル荒ぶる尻尾突き滑空攻撃に滅・昇竜撃を合わせるとか、どういう動体視力してんのよ。一撃で部位破壊してるし。
あれだね、フィオレーネさんは攻めにも使うけど、ザギは完全にカウンターって感じ。メインは風車とガード斬り(とバックステップ)だし、基本的にザギのスタイルは「攻めの守勢」だ。ほぼガードをしないフィオレーネさんとは対照的だよねー。
『ビリリリリリ……ダマァアアッ!』
「うぉおおおおっ!?」「ぇはぁん!」
おお、ライゼクスの大技だ。空中で帯電しながら狙いを定め、勢い良くダイブしつつ広範囲に大放電を行う、必殺の一撃である。ザギは緊急回避出来たけど、ルーチカは直撃したみたいだね。ありゃあ、もう1発攻撃を食らったらキャンプ送りかな?
と、その時。
『スピナァアアアアアアアッ!』
エリア8の洞窟から、別の巨大な飛竜が現れる。棘のような甲殻を持つ、1本角の大型飛竜――――――棘竜エスピナスだ。
「うひょぁあああああああっ!?」
しかも、何故か居る筈の無い新米騎士のジェイくんを追い回している。何で居るし。
あ、これはマズいね。このままじゃ……、
『ギィグァヴヴヴヴッ!』
『シィィゴォオラスッ!』
あちゃー、案の定かち合っちゃったか。その上、衝突事故を起こしたせいで、両方共怒っている。ライゼクスもエスピナスも、怒り状態になると攻撃力が馬鹿上がりするから、混戦状態は危険極まりない。このまま操竜待機状態になってくれれば良いんだけど、流石に無理か?
……仕方ないなぁ。
「カムラ忍術「操竜波」!」
『バリァド!?』『ピァッ!?』
俺は隠れ身の術を解除し、戦場へ躍り出て、操竜波を決めた。
「えっ、ウツシ教官!? 何でここに!?」
「皆まで聞くなよ……♪」
「じゃあ良いや。何かカッコ良くてムカつくし」
「愛弟子ィイイイイッ!」
ともかく、お膳立ては済んだ。あとは若人たちだけで……、
『ゴァアアアアアアアアアアアアッ!』
「へっ? ……ィクゥゥゥゥゥゥッ!」
と思ったら、エリア10の遺跡から飛び出してきた何かにぶっ飛ばされた。
黒光りする甲殻に覆われ、禍々しいマントの如く翼膜をたなびかせる、盲目の黒竜。やがて古龍へと至る、分類不明の種族――――――黒蝕竜「ゴア・マガラ」の登場である。
「よし、何時ものウツシ教官だ! それでこそ豚野郎! 死ね、そのまま!」
「愛弟子ィイイイイイイン♪」
愛弟子の愛が素晴らしィイイイイイッ!
……って、喜んでいる場合じゃ無い。
ゴア・マガラは狂竜ウイルスをばら撒く危険生物。放っておけば、周囲のモンスターが次々と狂暴化し、死ぬまで暴れ続ける事になる。キュリアとは別ベクトルで問題が大有りなモンスターだ。脱皮を許してシャガルマガラにでも成られたら、堪った物じゃない。
ならば、ここはハンターらしく、
「……一狩り行くぞ、愛弟子!」
「了解!」「わたしのスーパーパワーを見せてやるわ!」「その前に回復しましょうね、ルーチカさん」
『ゴァアアアアアアアアアッ!』
こうして、俺たちは成り行きのまま、降って湧いた黒き災厄へ立ち向かうのであった!
◆ゴア・マガラ
「黒蝕竜」の異名を持つ、分類不明の大型モンスター。その正体は、天廻龍「シャガルマガラ」の幼体。マッシブ化し翼が生えたゼノモーフみたいな姿をしている。
翼脚の翼膜から「狂竜ウイルス」という猛毒の鱗粉をばら撒き、感染させたモンスターを狂暴化させる能力を持つ(これを「狂竜症」と言う)。これは感知装置でもあり、眼の無いゴア・マガラにとっては生命線でもある。
親共々雌雄の存在しない「単為生殖」で増える種族であり、シャガルマガラのばら撒く狂竜ウイルスからゴア・マガラが生まれて来る。
つまり、「狂竜症」とはマガラ族の繁殖(及び捕食)活動と言え、シャガルマガラの狂竜ウイルスに感染したが最後、死ぬまで踊らされた挙句、内部からゴア・マガラに食い破られるという悲惨な末路を辿る事になる……。