オッス、おらフィオレーネ!
……いや、あの冗談じゃなくてね?
俺、実は転移憑依者なんです。
……あ、止めて、殺さないで!
だって、事実なんだから仕方ないじゃん。
以前の俺は、友人の勧めでモンハンをライズから始めたバリバリのライトユーザーで、然して友達以上に嵌まってしまい、いよいよ発売間近となったサンブレイクの体験版を、片手剣でチョロチョロと楽しんでいるだけの男だったんだよ。
だが、いよいよ以て製品版、ダウンロード開始ィ! ……しようかと思ったら、何故か目の前が真っ暗になり、気付いたらフィオレーネさんになっていたのさ!
どういう、事なの……? まるで意味が分からんぞぉ!
まぁ、なっちまったモンはしょうがない。事前知識は体験版と導入の映像ぐらいしかない、全くの未知数だから、新鮮な気持ちで挑めるという物。逆に考えるんだ、ノーチートでやっちゃってもいいさ、と。
しかし、肉体の記憶という物はしっかり残っているようで、彼女の人成りや王国の現状、カムラの里へ来訪した目的など、初めてでも分かり易い状態ではあった。
フィオレーネの王国は現在、謎の大穴より出現した怪生物「キュリア」による生態系の破壊、「王域三公」の活発化と言った未曾有の危機に晒されており、それを打開すべく以前より交流のあったカムラの里へ来たらしい。他にも妹であるロンディーネの工作で加工技術の取入れも同時並行していたそうだが、そちらはほぼ失敗に終わっている模様。ロンディーネさんだからね、仕方ないね。
とは言え、カムラの里がハモンの誘拐など許す筈も無いし、王国随一の加工屋であるミレーネを修行と称して派遣出来ただけでも儲け物だろう。それなら教えを乞うだけだから、お互いに穏便な関係を築けるだろうしね。情けは人の為ならず、なのよ。
そして、数百年前に王都付近に出現し、爵銀龍「メル・ゼナ」との因縁を生み出した謎の大穴と同じ物が、海を隔てた孤島に空いてから約50年――――――再びメル・ゼナが活性化し、その使い魔と思しき生命体キュリアによる生態系の変化が起き始めた。
この火急の事態に対処する為、猛き焔を即戦力として王国へ誘致しようと、フィオレーネ……というか俺は遠路遥々とカムラの里にやって来た――――――のは良いが、縄張りが変化し王域外へ飛び出してしまったルナガロンが大社跡にて猛き焔(とウツシ教官)を襲撃する事態となってしまい、疾風の如く駆け付けた末に共同戦線を張って見事に氷狼竜を撃退し、今に至るって感じだ。
さてはて、そんなこんなでカムラの里へ来訪した訳だが、
「……凄いな」
凄い別物になってる。
建物は大体そのままだけど、オトモン連れたライダーが数名居るし、何なら上位ハンター(自称)のアヤメさんやおにぎり屋のセイハクくんもオトモンを連れている。アヤメさんは頭に最小金冠サイズのウルクススを乗せ、セイハクくんは特殊個体っぽいプケプケの子供と一緒に歩いていた。
他にも船着場にご立派なお家が建っていたり、山よりデカいヨツミワドウが里の流域を優雅に泳いでいたり、「ふれあいブンブジナ」なる施設が有ったり、狗竜タクシーという有ったら便利そうな運送業が運営していたりと、大分意味不明な事になっている。
知らない顔も多いし、おそらくこの世界はゲーム本編と良く似た平行世界か何かなのだろう。オラ、ちょっとワクワクして来たぞぉ!
「フム、そなたがロンディーネ殿の姉君か」
おっと、目移りしている内に里長フゲンさんの前に到着してたわ。
……そう言えば、この世界だと俺を呼び出したのはロンディーネさんじゃなくて、特命隊の副隊長「ラパーチェ」らしい。猛き焔こと主人公くん曰く、「ロンディーネさんはメラル(噂の「第2の猛き焔」)と交易の旅に出てる」のだとか。
うん、天職だと思うよ、マジで。死ぬ程スパイに向いてないからね、あの人。
何れにしろ、王国も穏便に事を進めるような余裕がなくなり完全に切羽詰まっているので、誰の呼び出しだろうと動かざるを得なかっただろう。せっかく安寧を勝ち取ったのに、すぐさま厄ダネを持ち込まれるとか、相変わらずハードな世界だなぁ……。
「……受け取れい!」
と、俺の顔を見るなり、フゲンさんが投げキッスをして来た。受け取れるか、そんなモン!
「いや、あの……困るんですけど」
「うん? そうなのか? ラパーチェ殿曰く、「色恋沙汰に免疫の無い鉄面皮だから、意外とコロッと行っちゃうかもかもよ~ん♪」「是非是非やっちゃって下さいねぇ~♪ 絶対に喜ぶから~♪」との事だが、違ったのか?」
「………………」
その瞬間、俺は超人的な視力と感知能力を発揮、コソコソと草葉の陰に隠れようとしていたラパーチェを発見し、
「ファルコォォォン、パァァァンチィッ!」「うごぁあああああっ!?」
翔蟲で一瞬にして距離を詰め、滅・昇竜撃で天罰覿面してやった。ガノンドルフみたいな声を出して吹っ飛んで行く、きゃぴ★オラァ。そのまま消えて無くなれ。
「ハッハッハッハッ! フィオレーネ殿は、意外と手が出るのが早いのだな!」
あ、しまった。怒りに任せて部下をぶん殴るとか、上司としてアカンやろ。何か言い訳しなくちゃ。
「……いえ、あの馬鹿は特別です。基本的に言っても直らないので」
「ハハハッ、良いのだ。優しくするだけが指導者では無いからな!」
「そう言って貰えると有難いです」
アナタもそんな感じですもんね。
「それはそうと、この異常なモンスターの縄張りの変化と拡大……やはり、例の“大穴”が原因か?」
「はい。流石は里長殿、ご明察です」
そう、冒頭でも話した通り、王国の沖合に存在する孤島――――――現在は拠点化した「エルガド」に、謎の大穴が出現した。それは数百年前に王国付近で発見したメル・ゼナの巣と思しき大穴と酷似しており、何時か必ず災厄を齎すと考えられていたが、それがとうとう現実になった訳だ。
なので、王国としては“メル・ゼナが新たな居を構えようとする影響で異常事態が発生している”と想定して動いているのである。
「王国を傷付けた奴めを斃す事は、我ら騎士団の悲願。再来するというのならば、この命に代えても必ず討ち果たさねば」
メル・ゼナは出現以来、何度も王国を襲撃し、1度は崩壊寸前にまで追い込んでいる。向こうとしては縄張りの邪魔者を排除しようとしているだけなのだろうが、俺たちだって生活があるのだ。おいそれと滅ぼされる筋合いは無い。調和なんて知るか。こっちは滅亡の危機に瀕してるんだよ!
「“この命に代えても”、か……」
おっと、何か言いたげですね、フゲンさん。
まぁ、言いたい事は分かるよ。若い美空で死に急ぐなって感じね。俺だってそんな事はしなくない。
だけど、この身体が魂の叫びを上げているのだ。“騎士の誇りに懸けて王国を守れ”と。流石にその想いを蔑ろには、出来ないんだよ。
何故なら、俺はフィオレーネを嫁にしたいって本気で思ってた、彼女のファンだからな!
……現実は嫁どころか、本人になっちゃったんだけどね。何でやねん。
「ザギよ、お前に任務を与えたい。フィオレーネ殿の王国に協力し、この状況を打開して貰いたいのだ。王域生物が版図を広げれば、この里のみならず、他の地域の生態系も狂ってしまう。あの大穴の影響は、世界規模の物だからな」
すると、フゲンさんが神妙な面持ちで、主人公くん――――――ザギへ任務を与えた。
何の偶然か知らんが、俺のライズ主人公(つまりサンブレイクの主人公でもある)と同じ名前なのよね、彼。そっちの主人公は女だから、性別が逆転してるけど。ナカマー。
「おお、ザギ殿が王国に! これ程心強い事は無い!」
自分で言っといてなんだけど、ホントそれな。カムラの英雄は化け物だからな。
「……50年前、王国に大穴が開いた時、我らもまた百竜夜行に見舞われていた。あの時は互いに自分たちの事だけで手一杯で、協力する事は叶わなかったが、今回こそは手を取り合えると信じてる。……だからこそ、お前に託すのだ、ザギよ。異文化での狩猟は戸惑う事もあるだろうが、必ずお前の糧となる。行って来い。そして、「カムラのハンターここに在り」と、気焔を吐いて来るのだ!」
「極めて了解!」
うーん、熱いね。心も身体も。まるで虚刀流のようじゃないか。マジで素手でも勝てそうだし。
「――――――話は纏まったようだな。では、準備が出来次第、出航するとしよう」
「分かりました。……では里長、行って参ります」
「ウム、行くがいい! ハッハッハッハッハッ!」
こうして、英雄ザギはカムラの里と別れを告げて、エルガドへ出航する事と相成った。
これは同時に、俺の――――――フィオレーネの物語の始まりも意味している。絶対にトゥルーエンドへ導いてみせるぞ!
いざ、冒険と狩猟の旅へ!
◆フィオレーネ
とある王国より遣わされた「調査隊」のリーダーにして、騎士団の筆頭。貿易商(スパイ)であるロンディーネの実姉でもある。
そして、サンブレイクという作品のメインヒロイン枠。王域三公との戦いでは必ず肩を並べ、時に病に倒れたり、まさかの英雄の証へのGONGを鳴らしたりと、これでもかと主人公の相棒を務めている。
得意武器は片手剣。盟友クエストではバランス良く主人公を助けてくれるので、結局彼女を連れて行くのが一番良いという感じになる。
ちなみに、普段こそ生真面目なフィオレーネだが、クエスト中にカメラを向けると照れたり、私室に沢山ぬいぐるみがあったりと、ギャップ萌えの塊でもある。何この可愛い人。